奪われた日
冒険者となり、依頼をこなして経験を積んでいき、Ⅾランクとなったフレイたちは、初めての船団護衛任務を受けることにした。
船旅は、日数はかかるものの、大して危険もなく、昇格祝い代わりに先輩パーティーに誘われ、連れて行ってもらえることになったのだった。
先輩パーティーたちにくっついていくだけの、人数合わせの簡単な依頼。
その筈だったのだ。
出港して3日間は、何事もなく過ぎた。
そして4日目。
引き返すには遠すぎ、目的地にもさらに遠い、その日。
襲撃は起きた。
勝敗は、あっという間に決まった。
どこにも逃げ場はない。
戦力差がはっきりと判明した時点で、実にあっさりと、船団は降伏した。
海賊たちも、本腰を入れて討伐隊を組まれたくはないので、わけもなく虐殺をしたり、船を沈めたりはしない。
無闇に抵抗をせず、降伏をした場合、積み荷を奪われるだけで済む可能性は、極めて高い。
妥当な判断であった。
フレイたちのパーティーも、粛々と従った。
フレイが、海賊の頭の目に留まり、連れ去られることになるまでは。
商人たちも、先輩パーティーの誰も、そしてフレイ自身も、逆らうことはなかった。
ただ一人、フレイの恋人、マルティスは、黙っていることはできなかった。
雄叫びをあげ、マルティスは、頭に殴りかかった。
武器は取り上げられていた。
軽々とかわした海賊の頭は、左手を掲げて、手下の報復を制した。
そして、約束をする。
海賊の頭と、マルティスとの、一対一。
マルティスが勝てば、フレイは返される。
海賊の頭が勝てば、フレイは連れていかれる。
要するに、ノーペナルティだった。
マルティスは、武器を返された。
誰からも文句のつけようがない、一騎打ちであった。
結果は、敗北。
そうして、フレイは連れ去られ、海賊島で過ごすこととなった。