出会いの時
勇者は魔王によって殺された。
その事を聞いた人間は絶望する。その中でも僕が見た"その人"は、他の人間とは違い、光を無くした目をしてた。
勇者と共に旅をした魔女だけが瀕死の状態で帰ってきた。瀕死だと言うのに魔女はある本を、"その人"に渡して王城へ運ばれて言った。その後、死んだという。
それよりも僕は"その人"が気になっていた。1人、森の中へ歩いてゆく。1本の木に触れ、懐かしそうに眺めたあとその木下に座る。
ずっとある本を読んでいる。魔女に渡された本を。
「そんなにこの本が気になる?」……バレてたか。
「いいや。僕は君が気になるよ」"その人"の目に映ったのはどう見てもまだ成長中の10歳くらいの男の子。この世界では珍しい黒髪。
そして僕の目に映ったのは、木漏れ日が照らす綺麗な長い銀髪に美しい顔。そして、僕を見ているはずなのに僕を見ていないような青色の目。
「子供がこんな所でなにをしてるの」
「連れてって」その時、"その人"は初めて僕を見た気がした。「行くんでしょ。僕も連れてって」
「君、何?気持ち悪いんだが」青色の目は鋭く僕を睨む。僕は怯まずに答える。「昨日で12歳のただの人間だよ。名前はツキカゲ チハヤ。呼び方はなんでもいいよ。それでもう1回言うけど僕も連れてって」
「断る。君みたいな子供を連れていく訳には行かない」そして"その人"は本に目を戻した。
その時、何かが"その人"目掛けて飛び出す。
"その人"は目を瞑り、ここで死ぬのも悪くない。というように笑みを浮かべた。僕はため息をつく。