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Dr.ファイスの治療術

 どうも、ファイスです。今、子供背負いながら時速150kmで走ってるんだけど、この世界では割と普通の事なのかな? って、んなわけあるかぁ!! 人間が電車並みの速度出してたら怖いわっ!


 ……はい、すみません。自分の非常識さを実感して思わず現実逃避しました。


 あ、そんなことを考えているうちに街が見えてきたぞ。高い防壁が円状に都市を囲んでいて、その曲率から察するにそれなりの大きさがある事が察せられる。


 これって、いくら急ぎだからって防壁飛び越えちゃダメだよね?


「ちゃんと門を通らなかったら犯罪者扱いされますよ!」


 ダメ元で聞いてみたけど、やっぱりダメだった。しょうがない。しっかり門を通って行くか。


「と、止まれ!」


 通ろうと思ったら門番に呼び止められた。時間無いんだから早くして欲しいな……


「あの! この方は私のお母さんの病気を治してくれる人なんです! 時間が無いんです! どうか通してくれませんか?」

「え、フィーナ? お母さんの具合そんなに悪いのか!? ………分かった。俺が全責任を負うからお母さんの元へ急ぐんだ!」

「ありがとうございます!」


 あれ、なんかこの子のおかげですんなりと入れた。話から推測するに、この子はフィーナっていう名前らしいね。


「えっと、フィーナちゃんの家はどの辺にあるの?」

「ちょっと複雑な道のりなので、私に着いてきてください!」


 そうして走ること10分、目的の家に到着した。


「お邪魔しまーす」


 そう言いながら中へ入る。外観も内装も、これと言って特徴の無い普通の家だな。


「フィーナ! 戻って来たか! ソフィアが、ソフィアが……!」


 ドタドタと足音が聞こえたかと思うと、30歳くらいのおっさんが走ってきて何事かを捲し立てる。あれ、父親は居ないってさっき言ってたけど。ソフィアっていうのはフィーナちゃんのお母さんの名前かな?


「グンターおじさん? 来てたんですか?」

「ああ、シルが教えてくれた。それで、この子は誰だ?」


 そう言いながらおっさんがこっちに視線を向ける。


「ファイスと申します。この子のお母さんの病気を治しに来ました。一刻を争う状況の様なので早くしましょう!」


 一応自己紹介してから患者の元へ連れていくように促す。


「ああ、分かった……」


 何やら不服な様子で渋々案内するおっさん。そりゃ初対面の素性がしれない人を怪しむのは普通だろうけどさ。


 案内された部屋には、見るからにやせ細った女性と、その傍らで泣きじゃくる女の子がいた。この子は妹かな?


「お姉さん、どうか私のお母さんを……!」

「うん、わかってる」


 よし、治療開始じゃ!


 まずは探索魔法の応用で体をスキャン。魔力の波長を変えれば体内をスキャンすることも出来る。


 ……うーん、骨密度と筋肉量が少ないが……待って内臓に所々腫瘍が出来てる。癌か? 無数のリンパ節、腎臓、それに加えて、1番大きい腫瘍がある場所が肺。しかも肺には穴まで空いてる。肺がんか? いや、待てよ、肺が発生源でリンパ節、腎臓に転移、それに肺には穴……まさかこれって肺結核? 結核菌ならDNAの構造で指定して簡単に殺菌出来そう。これが癌なら別の方法を取る必要があるけど。


 結核菌が1番密集してるであろう、肺に空いた穴から結核菌のDNAのデータを殺菌魔法の過程にコピペして……


「sterilization pointing at…… Mycobacterium tuberculosis……!」


 体内全体を走査し、片っ端から結核菌を滅していく。


「recovering……」


 ここで忘れちゃいけないのが回復魔法。肺の穴を塞げるし、免疫力アップも期待できる。多分。初めて使ったけど上手くいくもんだね。


 あとは大量にある壊死した組織と菌をどうするか……体外に排出するしかないんだけど、外科手術で取り出すのは危険すぎるし、何より時間がかかりすぎる。どうするか……


 ……あ! そうだ! 全部亜空間に放り出せばいいんじゃね? 危険だけどその方法以外に思いつかないわごめん。前世で空間操作できたんだから、魔法があれば楽勝な気がする。


「subspace open」


 目標の位置を指定して早速実行。……亜空間開けた。あ、待ってこれめっちゃ魔力消費してる感じがする。何となくわかるよこれ。そりゃ何の機材も無しに亜空間開こうとしたら負担大きいよね。


「subspace close」


 それから約1時間。ほぼ全て取り除いたので、亜空間を閉める。開けたら閉める。扉と一緒で亜空間も閉めなきゃね。開けっ放しはダメだよね。


「これで大丈夫だと思います」


 治療終了のお知らせ。患者も穏やかな寝息を立ててるし大丈夫なんじゃないかな。


「本当だ……さっきまで苦しそうだったソフィアが……」

「お姉さん、本当にありがとうございます! このご恩は一生かけてでも……!」


 驚愕に目を見開くグンターと呼ばれたおっさんと、すごく感謝してくれるフィーナちゃん。ちなみに、フィーナちゃんの妹らしき少女は泣き疲れて寝ている。治療にかなり時間かかっちゃったからね。


「遅くても2日以内には意識が戻ると思うけど、最低でも1週間は絶対安静にね。あ、あと3人も感染してる可能性があるから魔法かけさせてね」

「感染……? 病気が移るってことか。なら、すまんが俺たちにも魔法をかけてくれ。頼む。」


 なけなしの魔力で殺菌魔法を3人にかける。


「じゃあ、夕方頃にまた様子を見に来るからそれまでソフィアさんをお願い……」


 魔力がすっからかんです。はい。目眩と頭痛で倒れそうなので早々に外へ離脱。何か2人が言ってるけど後にしてね……そろそろ倒れそうだから。家の中で倒れられたら大迷惑だかんね。


 なに、魔力切れってこんなに辛いん? まさに医者の不養生じゃん。ごめんちょっともう無理かも。道端で座らせてもらうわ。気合いとかの問題じゃないよこれ。座り込んだらもう体に力入らなくなったもんやべぇよこれ。あ、ごめん意識なくなる。何も持ってないから盗みの心配もないし、ちょいと寝かせてもらいまーす。


 ……次に意識が浮上するのはいつだろうか。まさか永遠に意識が無いままとか……


 そんな不穏な考えが頭をよぎったが、直ぐに思考が途切れた。

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