メシャー!
んえっ!?
ん?人の声?
今、何て言った?
唐突だったのでよく聞き取れなかった。
というか、この静寂の中でいきなり喋らないで欲しい。
マジで心臓に悪い。
『所持ポイントを使用し、スキル〔暗視〕を取得します・・・』
おい!人の思いを無視するな!
何なんだ、この声。
脳内に響く様に聞こえる気がする。
妙に機械的な声だな。
言っている事が意味不明だ。
それよりも、人が居るのなら助けを呼ぼう。
おーい、助けてくれー!!
「グギッ…グガガッ…グ……」
喋れない……?
まずった。これでは助けが呼べない。
『〔暗視Lv1〕の取得に成功しました』
この言葉が聞こえた次の瞬間、視界が一気に明るくなる。
うおっ!?目がっ!!
チカチカする!突然明るくするな!
徐々に周りが見えてきた。
だが、ぼやけて良く見えない。
『続けて、スキル〔視力強化〕を取得します・・・〔視力強化Lv1〕の取得に成功しました。〕
視界が一瞬でクリーンになった。
おおっ。周りが良く見える様になった。
ほうほう、周りの地形からして・・・ここは洞窟か?
うわー、洞窟かよ。
・・・ヤバくね?
どうせだったら山の方が良かった。
誰にも見つけてもらえず、孤独に死ぬ・・・?
……いや、俺は死なない!死にたくない!
動かない体など、気合いで動かしてやる!いや、動かす!
諦めたらそこでマジで人生終了だ!!
俺は生きるぞ!
うぐっ。本気で動かしても腕が動かない!ならば!
うおおおおお!!!
思い切り顎を上げる
これを何度も繰り返して少しずつ進む!
うううぅぅ・・・全く進まない・・・
力無く首が地面に落ちる。
丁度、自分の体が見える様に。
”それ”はそこにあった。
ハァッ!?
岩・・・!?
いや、違う?何か変なのが生えてる?
“それ”から管みたいな物が側面からズラリと生えてる。
管と言うより虫の……
……足?
よく見たらなんか若干蠢いてる。
キモッ!
は!?
何で!?
あ、俺の体!無い!
え!?何で!?
まさか!!まさかの!?
嘘だろ!?マジで!?
************************
確実に今年一番驚いた。
これで驚かない奴は居ないだろうに。
さて、説明しよう!
あれから俺は驚きまくった!
そして理解した!“それ”は俺の体だとね!!
そして良く観察した!!
“それ”にはちょっと見覚えがあった!みんなにも見覚えがあると思う!
家に出る人も居る、忌ま忌ましいアイツ!
ゴキブリじゃないよ!
そう!!ヤツの名は・・・ムカデである!!
そして今に至る!
シャレになんねー!!
忌ま忌ましいアイツに俺はなってしまった!
恐らくこれはアレだ!ネットで流行っているヤツだ!
そう!転生!
実際にあったとは!!
一つ言いたい!!
何故ムカデ!?ガチの化物じゃん!!
もっとマシなのがあったでしょ!?
うぐぐ・・・
文句を言ってもしょうがない。
事実を受け入れるのだ自分!
俺はムカデとして生きていく!
生きていく事が出来るか分からないけど・・・
ムカデになった事が分かったのなら色々と謎が解ける。
まず、最初に入っていた謎の物の正体は卵の殻!
卵の中ってあんな感じなんだね・・・なんか凄い。
そして体が動かなかったのはこの体に慣れていないからだ!
いきなり体変えられてはまともに動ける筈無いでしょ。
え?そうだよね?
声が出なかった原因はムカデになったからだ!
ムカデが喋れたら異様だし!
なんか本当に出て来そうで怖い。
ただ、一つ謎がある。
あの声は何なんだ?やはり気になる。
まあ、考えた所で分かる事では無いか。
よし、ではあの声を 導師 と命名しよう!
なんか導いてくれたし!
これからも導きお願いします!
さて、まずはこの新しい体に慣れなければ。
何事も慣れが必要なのだ(個人的な意見)。
数十分後・・・
腹減った。 メシィー!!
そりゃ生まれてから何も食って無いから、当然こうなるわな。
めっちゃ後悔した。もっと良く考えれば良かった。
体はぎこちないが動かせる様になった。だが代償は高くついたよ。
このままでは餓死する!死ぬ!!
グゥゥウウウ
腹の虫が五月蝿い・・・
あぁー どこかに飯が落ちて無いかな・・・
そんな都合の良い事、無いかね・・・
ありました。居ました。
飯とは言い難いが・・・
蚯蚓が居ました。
この蚯蚓、無茶苦茶デカイ!キモい!
俺と同じ位のサイズかな。
胴体に牙の跡が複数ある。
そのせいか、弱っている様に見える。
これはチャンス!喰らえ俺の攻撃!
ブスッ!
牙を蚯蚓に刺す。傷口から血が溢れ出す。
フハハハッ!!
お前が失血死するまで離さん!
お。暴れるか。
ぬう!コイツ意外とパワフルだ!
だが離さん!貴様が俺の飯になる事は決定事項だ!
馬鹿め!どんなにダイナミックに暴れても無意味だ!
動けば動く程、お前の体から血は失われてゆく!
ぐっ!体が地面や壁に当たって痛い!
だが俺は負ける訳にはいかない!
ん?コイツ進み出した!
笑止!今更逃げても遅い!
無駄な抵抗は止めて、大人しく喰われろ!
しかし、コイツは逃げているのでは無かった!
俺の体を壁に擦り付けながら進み出しやがった!
ガガガガガッ!
イデデデデデッ!!!痛てえ!!
壁は土で出来ているけど痛い!
ここで逃がしてたまるか!!
牙を更に牙を深く!突き刺す!
んんん!
何か、スピード上がってない!?
シャッ!
しまった!牙が抜けた!
ぁぁぁあああ!!!
お、俺の蚯蚓が!飯が!
あああぁぁぁぁぁぁ……
蚯蚓の姿が遠ざかって行く・・・
ドサッ
あっ!!
た、倒れた!?
死んだか!?
蚯蚓は微動だにしない。
フッ、フフフハハハ!!!
勝ったどー!!!
ムカデになってから初の勝利だ!
だが、俺の顔面は(多分)ボロボロだ!
しかし、結構強かった。
弱ってなければ俺が負けていたかも。
兎も角、俺の勝利だ!そして実食!
蚯蚓を食うのは少し嫌悪感が・・・
ええい、ままよ!今はそれどころでは無いんだよ!
では・・・イタダキマス・・・
ムシャッ
うごおおぉ……
食感はグミの様な感じ。味は・・・
に、苦い……しかも酸味が凄い……
ぐ……食わなければ・・・
これを完食するまでにどれ程掛かるだろう・・・
************************
ぐええぇぇ・・・
か、完食……
あの蚯蚓は過去最高の不味さだった・・・
おふっ……盛大にリバースしそうだ。
まさか、まさかここはあれが普通なの・・・?
毎日これと同等の不味さの物を食う・・・
考えただけで嫌気が差す。勘弁して。
しかし、生きて行くには我慢するしか無い。
人間だった頃の飯が恋しい・・・
さて、飯も食ったし、程良く眠くなってきた。
寝るか。
しかし、どうやって寝ようか。
こんな場所で大っぴらに寝ては、起きる事も出来ず死亡、ってのがオチでしょ。
嫌だね、そんなオチ。
どうしたものか・・・
よし、穴を掘ろう。
壁の隅っこに穴を掘る。
土を咥えて外に積む、この繰り返し。
なかなか面倒臭い。
よし、完成!
まあ、何ていうことでしょう!
ものの数分で素晴らしい穴が出来てしまいました!
この穴、俺が入っても余裕があるほど広い。
何の問題も無し!
巣を掘っている間に蝙蝠にケツを噛まれた事以外は!
しかも凄く痛い。しかもジンジンするし。
もしかして毒?
あれ、結構マズイ気が………
それにしてもまだあの野郎、天井で俺を煽ってやがる!
あれが煽りと呼べるか知らんけど。
クソ野郎め!
ペッ!
ベチャッ!
あ!?
あ、アイツ、俺に唾を掛けた?
唾!?
んん!!
何という屈辱!
ならば同等の屈辱をお返しよ!
ぺッ!!!
ベチャッ!!
唾が蝙蝠にクリーンヒットした。
ざまあ見ろ!調子に乗っているからだ!
ん?蝙蝠が天井にくっ付いている?
あ、もしかして俺の唾って粘着性がある?
わお、新能力発見。
蝙蝠のお陰?で俺の能力を把握できた……けど。
壁を伝って蝙蝠の下へ登る。
けど!!
許すつもりは更々無いね!
ガブッ!