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【犬】と呼ばれた男。

 『ほら~ワンちゃん、大好きなシャンパンですよ~こぼさずに全部飲みましょうね~』


 目の前に座っている女の嘲るような目を見て、心の中でウンザリしながらも、顔は精一杯媚びを売る愛想笑いを浮かべる。

もうすっかりと顔の表情を作る事にも慣れてしまった。


 「ワン! ワン! いただきますワン! 香里奈さま~」


 何が香里奈さま~だよ! お前なんか男に股開いて、ち○こしゃぶって金稼ぐしか能の無い女じゃねぇかよ。

心の中で目の前に座る、店に来る度に俺に無茶ブリをさせて楽しむ女に悪態を付く。


 俺はシャンパンのボトルを両手で掴み、ボトルの口と俺の口を重ね合わせて、一気にボトルを上に傾けた。


 ご丁寧に担当のホストに指示まで出した、炭酸が抜けないように静かに開けられたシャンパンの強烈な刺激が、俺の喉を一気に襲う。逆流して吐き出しそうになるのを必死に堪えて、胃の中にシャンパンを流し込む。


 噴き出したりしよう物なら、店中の客やホスト達にボロクソに言われるのは目に見えている。気合いと根性でシャンパンを飲み干した。750mlもの炭酸が強烈なシャンパンを飲み干した俺は。

襲ってくる猛烈なゲップをしたいと言う、体の反応を無理やり抑え込む。


 シャンパン1本一気飲みと言う無茶ブリを命じた女に、最大の笑顔を向けて。


 「香里奈さま~、シャンパン美味しかったワン! 犬に高級シャンパン飲ませてくれて、ありがとうだワン!」


 バカみたいな礼を言う。そして、役目を果たした俺は、このバカ女の担当をしているホストの顔色を伺うと……

あ~はいはい、分かりましたよ。


 「香里奈さま~、犬はシャンパンのオカワリ欲しいんだワン! 今度は、四つん這いになってペロペロとシャンパンを舐める犬の姿を見て、香里奈さまに楽しんで貰いたいんだワン!」


 そう言って、担当ホストが望むような事を口にする。

バカ女は、俺のオネダリがお気に召したようで、ヘルプに付いてるホストに、もう1ランク上のシャンパンを持ってくるように言った。


 一緒に持って来られた大きなガラス製のフルーツ皿に、並々と注がれたシャンパン。

座っていたヘルプ席からシャンパンが並々と注がれた皿を持って、バカ女からよく見える位置の床に置いた。

その後、床に四つん這いになって。


 「香里奈さま~犬の大好物のシャンパンありがとうだワン! ペロペロ舐めて飲むから、犬の姿を見て笑って欲しいんだワン!」


 そう言ってから、フルーツ皿に顔を近付け舌を伸ばしてペロペロとシャンパンを舐める。


 しばらく舐めていると、何が気に触ったのかは不明だが、バカ女が立ち上がり俺の後頭部を、ヒールの高い靴で踏み付けた。


 その後、一気に不機嫌になったバカ女は店を出ていった。


 俺は直ぐにバカ女の担当ホストに呼び出される。


 『おい! バカ犬! お前が下らねぇ事するから、怒らせただろ! ほんと使えねぇ犬だな』


 お前が、もっとオネダリするように指示出した結果だろうが!

そう言ってやりたかったが言えない。


 ひたすら頭を下げて、解放してくれるまで、ホストの愚痴を聞く。解放された俺は、次のお呼びが掛かる前に急いでトイレに向かった。便器真ん前に立ち、腰を曲げて、大きく口を開くと、ほんの少しだけ空気を胃の中に送り込む。

それを合図に、一気にさっき飲み干したシャンパンが胃の中から逆流して、便器の中目掛けて滝のように落ちていく。


 昔は吐くのにも指を突っ込んだりと苦労もしたが、今じゃ便器の前に立つだけで、猛烈な吐き気が襲ってくるまでに、吐く事にも慣れてしまった。


 トイレから出てからも散々な目に合った。

上半身裸で、客の女の手拍子に合わせて、小瓶の瓶ビールを10本一気飲みさせられた。


 No.1の太客には、ズボンの中に手を突っ込んで、ち○こを擦りボッキさせながら、ブランデーをボトル半分ほど一気に飲まされた。


 店が終わる明け方頃には、いつものように、店の裏手のゴミの詰まったゴミ袋の中で、ぶっ倒れていた。


 俺の名前は【犬】ホストクラブの中で一番の底辺に居る存在だ。

俺の役目は、客の無茶ブリに必ず応える事。


 こう見えて、ほんの数ヵ月前までは、そこそこの売り上げも誇るホストだった。新規で来た客のが2回目に来た時に、俺の名前を告げて指名したのが、運の尽きだった。始めはバンバンと金を落としてくれる上客で、俺のエース候補になるような客だった。

金を稼いでいる風俗嬢って事から俺はどこか油断していた。


 その女の掛け売り……つまりはツケ飲みを承諾してしまったんだ。

気が付いた時には、未収金が500万近くになっていた。


 俺は女に連絡を取ったが、音信不通。

客の未収はホストが被る。がホスト業界の常識。

こうして、俺は500万の借金を店から負うことになってしまった。


 そして、中々借金を返す事の出来なかった俺は、店の店長から犬になる事を命じられてしまった……


 俺の名前は【犬】ホストを始めた時に考えに考えて付けた【結城 零士】と言う名前を久しく名乗ってない。


 今日も俺は店に出て、犬として客のストレス発散のオモチャに使われる。


 あ~もう! 飛んじゃおうかな~…… 


 

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― 新着の感想 ―
[良い点] アングラ?感出てて良いですw 夜の仕事も難しいですよねぇー(´・ω・`) 500の借金は首くくる案件・・・w >あ~もう! 飛んじゃおうかな~……  これは本人になってみれば心境が分かると…
2019/05/21 09:58 退会済み
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