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前世社畜な辺境伯は物語から退場したい(過労のため)  作者: もちだもちこ


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29/31

29、心の準備をする辺境伯

更新、遅くてすみません!


 いつになく、すっきりとした目覚めを迎える。

 どれだけ寝たのかは分からないけど、寝起きでここまで体が軽く感じるのは何年ぶりだろう。


「デューク様、お目覚めですか」


「ああ、どれくらい寝ていた?」


「ほんの数刻ほどです。まだお休みいただいても……」


 バスチアンの結界魔法は防御するだけではなく、中にいる人間の状態も感知できるようになっている。ここまで細密に陣を組めるのは、彼の魔法練度の高さがあってものだ。

 彼ほどのレベルで魔法を使える人間は、国中探してもほとんどいないと思われる。転生した俺は、こういう人材に恵まれすぎている気がする。


「そうはいかないだろう。それで? 事は進んだか?」


「思ったよりも早く国王軍が到着しました。王都に先代様が来られておりますので、守りは万全かと」


「父上が帰ってきたのか?」


「国王様は此度の一件で、一気に帝国を制圧するようです」


「むやみに戦争をふっかけられたり、訳の分からん勇者召喚をされることがなくなるのは良いことだな」


「まったくです」


 ここまでのシナリオは前世で読んだ小説にサラッと描かれていて、過程はアレでも結果は同じだから大丈夫だろう。たぶん。

 それよりも重要なのは……。


「王子は? どうしている?」


「王子ではなく、カオリ殿のことをお聞きになりたいのでは?」


「うるさい。両方だ」


「王子はすっかりおとなしくなられて、今は自国の将軍と一緒にいるようですよ。カオリ殿はデューク様が起きたら知らせるように言われておりまして、ここに来られています」


「おい! それを早く言え!」


「……失礼します」


 少し震えているけれど、耳に入る柔らかな声に俺は口元を緩める。


「カオリ殿、このような格好で申し訳ない」


「いえいえ! とても、素敵だと、思います!」


 簡易の寝床から起き上がった俺は、野営地ということもあり鎧の下に着るシャツとズボンだけを身につけている。人と会うような格好ではないけど、カオリが気にしてないならいいや。


「帝国には色々と辛い思いをされただろうに、彼の国の王子を保護していただき感謝する」


「あんなに小さな子をどうにかするなんて、帝国はゲスすぎます! それに王子を助けたことで、戦争を終わらせることができるなら保護して良かったなって思います」


「カオリ殿は……優しいな」


 そうだ。彼女はそういう子だった。

 取引先から嫌なことをされていても、そこの社員が困ったことになっていたら助けたりしていた。


 うん。

 彼女は、カオリは、どこにいても変わらない。


「帝国の将軍が、密かに王子の家族を保護しているようです。帝国の名はなくなってもいいから、とにかく戦争をしない国にしたいとのことでした」


「そうか……そうだな。それが一番だ」


「あ、あの、それで……」


「ん?」


 なぜかカオリが頬を染めてモジモジしている。

 これまでの流れで、彼女がこんな愛らしくなる理由がわからない。

 説明カモン! バスチアン!


「ここでお休みになる前に、デューク様は彼の国の王子に一言物申しておりまして」


「物申した? 王子に?」


 どことなく楽しげなバスチアンの様子に、嫌な予感がする。


「はい。デューク様は王子に『私の大切な女性に甘えるのは、たとえ幼子でも容赦はしませんよ』と言って、大人気なく殺気を放ってました。半泣きになった王子は、将軍の元へ走ったそうですよ」


「な……んだと……」


 睡眠不足からの意識朦朧としていたせいで、色々とタガが外れていたらしい。

 どおりでカオリの様子がおかしいはずだ。


「あの、デューク様は、その、私のことを……」


「カオリ殿」


 寝床から体を起こしていただけの俺は、布団から抜け出して彼女と向き合う。


「カイト殿をはじめ、無理矢理この世界に召喚された方々を、国の事情に巻き込むのは大変心苦しいことだ」


「え? あ、はい」


「私は、カオリをとても大切に思っている。無事に元の世界に戻れるよう、最善を尽くすつもりだ」


「……そう、ですか。ありがとう、ございます」


 淡々と述べる俺の言葉に、カオリは悲しげな笑顔で礼を言った。

 天幕から出て行く彼女を見送ることもせず、ふたたび寝床で横になる。


「デューク様」


「こればっかりはダメだ。彼女は元の世界に帰る」


「私からは、何も言ってないですよ」


「顔が『引き留めろ』と言ってるだろう」


「そりゃあ、カオリ殿ならデューク様の伴侶にふさわしいですからね」


 カオリが俺の伴侶にふさわしい? うちの家に、そういう決まりとかあったっけ?

 首をかしげている俺に、バスチアンは苦笑している


「ありとあらゆる女性に対して無関心だったデューク様が、唯一気にかけてらっしゃるのがカオリ様ですからね。ふさわしい理由など、それで充分でしょう?」


「……そうだな」


 カイトたちは、異世界へ行けるアーティファクトは手に入れている。

 前世の俺を助けるために、彼らは元の世界へ帰るだろう。


 さてと。


 心の準備をすませておかないとなぁ。



お読みいただき、ありがとうございます!


もう少しで終わりです。

バタバタしてて、滞っておりました。

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