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前世社畜な辺境伯は物語から退場したい(過労のため)  作者: もちだもちこ


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25/31

25、争いの果てを見る辺境伯


 どうしたって、人間同士の戦争となれば命のやり取りをすることになる。

 俺は物心つくかつかないかって時に、野山の獣で慣らされ、国境あたりで暴れる魔獣らを退治しまくった。それから、各地にはびこる盗賊退治という流れで、色々と経験済みだ。

 前世で平和なブラックに生きていた俺は、もう居ない。


「つまり、オトナになったってことだな」


「寝言は寝てからおっしゃってくださいませ、デューク様」


「バスチアン……最近、色々と遠慮がなくなってきたな」


「遠慮してましたら、デューク様のお子様を見ないうちに死ぬ予感がするので」


「バスチアン……」


 いや、もう、ぶっちゃけ養子でいいんじゃね?って思うんだよね。バスチアンも部下たちも優秀だし、うちの領地はこれから先、末永く安泰だと思うんだよね。


「養子をとるとか考えてらっしゃるようですが、お断りしますからね」


「心を読むなよ……」


 軽口を叩いているのは、遠くに見える隣国の軍勢とやり合う直前だからだ。

 これまで常に、辺境伯として自領の兵たちを強化してきた。あの程度の相手に負ける気はさらさらないが、やはり「戦争」となると嫌な気持ちになる。

 それに、人間たちの争いに精霊たちを巻き込むのも、できれば避けたかったんだよね。


「カオリ……カイトたちが戻ってくるまでに、決着をつけたい」


「そこはもう、カオリ様のためと言い切って良いかと思われますが」


 砂埃をあげながら向かってくる軍勢。多勢に無勢ではあるが、相手方の大将はすでに打ち倒されているだろう。

 先ほど、俺の耳元で「任務完了したヨ」って囁きが聞こえたからな。


 まったく、できた息子たちだよ。







 なぜか、すごく嫌な予感がした。

 早めにダンジョンの探索を切り上げた私たちは、王都近くの町で宿をとり、翌日には辺境伯の領地への向かうことにした。

 カイトも「胸騒ぎがする」って言っているから、もしかしたらデューク様になにかあったのかもしれない。


 そわそわしていたら、ユウコちゃんが背中を撫でてくれた。


「カオリお姉さん、絶対大丈夫だよ。あの人、ほら、なんか強いみたいだし」


「うん、それは分かっているんだけどさ……」


「異界へ渡る魔道具を見つけたタイミングで、隣国が攻めてくるんだよね。そろそろなのかな?」


「小説だと、そうなっているんだけど……」


 いつもなんだかんだ理由をつけて遊びに来る蛇苺むすこから、連絡が途切れて三日になる。

 会社の先輩からすすめられ、かなり読み込んでいたはずの小説がうろ覚えになっていることに苛立ってしまう。もしや自分の予想よりも早く、隣国からの襲撃があったのかもしれない。


「姉さん、ここであせってもしょうがないよ。落ち着いて行動していこう。俺たちは隣国との戦争を止めることができるんだよね?」


「……うん。ゲススギール帝国の正統な後継者が、こっち側に来ているはずなの」


 精霊の存在をかなり強く感じ取れるようになったカオリは、自分につけてもらっている風の精霊にこっそりお願いをする。

 本当は「彼」に頼るのは出来る限り避けたかったけれど、今はそんなことを言っている場合ではない。


「……待ってて。もうすぐだから」







「待て。もうすぐだ」


「しかし、もう限界です。さっさと倒してしまいましょうデューク様」


「そういうわけにはいかないんだよ」


 今回のは「戦争」という名がついているけれど、中身は「国境での小競り合い」だ。

 ここで完膚なきまでに叩きのめしてしまった場合、確実に「報復」として帝国の中央軍が出てくることとなる。


「ここで勝ってしまうと、あいつらに大義名分ってやつを渡すこととなる」


「ですが、このまま長引かせるのもよろしくないでしょう」


「そうだな。ま、俺が精霊たちに頼んでなんとかしてもらうから、あと三日は大丈夫だろう」


「……三日も眠らないおつもりですか?」


「それくらい軽いもんだ」


 前世のブラックな会社で社畜してた時は、五日の徹夜くらい軽くやってたもんな。


「そうですか。それほどまでに、カオリ様を信じてらっしゃるのですね」


「まぁ、俺にとっては女神だからな」


 自分で言っておきながら熱くなる顔を、ごまかすように咳ばらいした俺は、バシッと両手で頬を叩いて気合を入れなおす。


「よし、なんとなーく相手に勝たず、そして負けずに耐えていくぞー」


「締まらないですね」


「ところで、物騒な息子はどこにいるんだ?」


「真ん中のを引っ張ってくる、と言ってましたが」


「うーん……まぁ、死なない程度にがんばるように言っておくか」


「そうですね」


 奴が「さすがにそれは無いだろう」と思うようなことをやるタイプだと、俺は知っていたはずだ。

 だのになぜ、彼なら大丈夫だと思ったのだろうか。

 それは永遠の謎である。


 いや、永遠の謎ではなかった。

 答えは翌日、寝起きの俺を目の前にした奴は、とんでもないことをやらかすのであった。




 ……もうちょい、つづく。


お読みいただき、ありがとうございます。


もう少しで終わる予定なのですが

予定は、未定で、すみません。

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