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クリスマス・イヴに『死因』の盛り合わせは如何ですか?  作者: リュノキオの小説工房
第1章~最近は刺殺日和ですね~
4/8

3話~攻略、攻略♬♬

 12月24日、ついに来たるべき運命の日が訪れた。今まで何度も、昼を乗り越えるシミュレーションをしてきたが、不安は残る。


 (取り敢えずは、三回目の『死因』までは行かねぇと。)


 今は午前5時30分過ぎ、『攻略』開始まであと、30分足らずだ。開始に向けて、最後の確認をする。


 (最初の『死因』の鉄骨は、工事中じゃなくても何処かの建物から外れて、幾つも降ってくるからな~。)


 もはや悪夢の領域だが、これが現実に起こっている出来事である以上、何かしらの回避方法は存在するはずだ。


 (今回は、町外れの田んぼの所に逃げよう。) 


 前回はやる気が出なくて、建物の屋上に逃げたが、1回鉄骨と共に宙に飛び出しちまったことがあるからな…。 


 (あんなのは2度とゴメンだし、『今回の約束』は1回きりだ。次にみんなで動物園に行けるとは限らない。)


 こんな状況でも、自分のやりたい事を優先してしまうことに苦笑する。


 (でも、こういう目標があった方がやる気も出るのは事実なんだよな。)


 もしかしたら、その勢いのままクリアできてしまうかも知れない、そんな都合のいいことを考えてしまった。


 (まぁ、全力でやるだけだ…。っと、そんな事より確認、確認。準備不足だけはきをつけないとな。)


 (二回目の『死因』はそのまま田んぼの所にいよう。通るのは十数分に一回の軽トラ位だし。)


 ちなみに、この『攻略』の隠しルールに


 『現実であり得ないことは起きない』


 と言う物がある。例えば最初の『攻略』では、


 『鉄骨のあってはならない場所からは、鉄骨が落ちてこない』


 当たり前のように感じるかも知れないが、これは結構重要な事だ。たとえば、空から急に鉄骨が降ってきたとしよう。もう、畑に逃げようが何をしようが、どうしようもない。際限なく降り続けてくる鉄骨を、避け続けるなど不可能だ。それは、俺も覚悟していた。


 『しかしそうはならなかった』


 二回目の『死因』の『攻略』もそうだ。近くの車は呼び寄せられるが、いるはずのない車は来ない。


 そういう所から考えると、やはりこれはゲームのように感じてしまう。


 (やろうと思えば、俺のことなんてどうとでも殺せるはずなのに、それをしない…。やはり、遊ばれているのか。)


 誰かが、自分を笑いながら見ていて、自分はその遊びの駒に過ぎないのではないか、そんな不気味な考えが頭をよぎった。


 (クソッ、本番前にネガティブになってどうするんだよ。しっかりしろ!)


 自分に喝を入れておく。何か頭につっかえている感覚はあるが、少しすっきりした。


 三回目の『死因』では、ひたすら狭い路地を走るだけ。そう、ひたすら走るだけだ。広い道路に出た瞬間終わる。それだけ覚えておけば、後は自分の体力と気力との勝負だ。


 (そこは心配ない。体力には自信がある。卓球部入ってて良かった、心からそう思う。)


 そこまで、駆け抜ければしばらくは楽しい時間だ。

そこを目指して頑張ろう。


 初めから田んぼにいようと思ったこともあったが、そんなズルは認めないっ、とばかりに心臓発作で死んだ。


 (俺が、何処かで心臓発作で野垂れ死ぬのはあり得ることってか。ほんとクソみたいなゲームだ、世間様に売り出したら即販売停止ルートだぞ。)


 とにかくまず、田んぼまで最短距離、かつ全速力で向かう。ここで、『攻略1』はクリア条件達成、しばらく休憩できる。


 次は9時から、車を避け続ける。農家の方には申し訳ないが田んぼのあぜ道を利用して逃げればいつかはまって動けなくなる。ちなみに長靴は必須装備だ。


 11時まで逃げ切ったら、そこからまた全速力で家に帰る。風呂に入り、飯を食ってお洒落な服に着替える。そしたら中心街まで行く。



 12時から1時間、路地裏を駆使して逃げ切る。ここまで来れば完璧だ。1時半の集合に間に合うように、動物園まで行く。ここで、感動のフィナーレと言うわけには行かないが、取り敢えずここまでを目標に頑張ろう。そう決意した。





~7時間半後~


 「はぁはぁはぁ。」


 「クッソ何回やってもキツい。」


 「これなんてクソゲー!!」


 一度言ってみたかった台詞を叫んでみたが、披露が変わることは無い。


 ここから家に帰るのか、いっそもう諦めてしまおうか。そんな悪魔の囁きを振り払って家まで、突っ走った。


 しかし、家に帰って風呂に入ると、ふっと疲れが抜けた。風呂を考えた人は偉大だ、と俺は思う。レトルトカレーが高級ホテルの味に感じてしまう。


 (ヤバイ、自分の環境の悲惨さに涙が出てきた。)


 何かを忘れるかのようにカレーを食べ続ける。何故かレトルトの味がしてきた。


 「あっ、食べてるのレトルトだった。」


 また、涙がこぼれた。


 しかし、今からあいつらと動物園で遊べるのだ。久しぶりに楽しめそうだな。そう思って、家から一歩踏み出した。





 『破滅の(ハジマリ)は近い。何処かで時計の(タイムリミット)が動き出し、彼も破滅(ゼツボウ)への一歩を踏み出した』




 



 

 読者の皆さんに主張したいことが一つあるんです。


 「卓球部って運動部なんですよ。」


 これ結構馬鹿にしている人が多いんですけど、もし近くに卓球やっている人が居たら応援よろしくお願いします。



 気づいている人もいるかも知れませんが、だんだん彼の思考が歪んできてます。そんな、兆候が分かる文があるので、よければ見つけてみてください。

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