第三十八話 相談を持ち込まれても解決しきれるわけではない。
学校が終わった柘魔達の前に、姫華と剣斗君の二人が校門まで待っていた。
学校帰りにそれは突然起った。
校門の入り口に鞄を持った見覚えのある小学生が二名。
一人は蘭華の妹の妹である姫華なのだが、もう一人が珍しい事に小百合の近所に住んでいる剣斗君だ。
剣斗君が校門前にいるだけでも珍しいというのに、まさか姫華と揃って待ってるなんて予想すらしていなかった。
最初は蘭華と小百合が連絡でもしたのかと思ったりもしたのだが、二人も驚いていたから違う様だ。
「おっとこれは?もしかして二人はデートの最中ッスか?お熱いッスねぇ!姫華はいつの間に彼氏なんて作ったッスか?」
「彼氏?…ハァッ!?何でコイツが私の彼氏なのよ!?第一に私、お子様に興味なんてないから!」
お子様って…小学生のお前が言える事じゃないだろうに。
「本当ッスか?実は先輩の元に、結婚の許しを請いに来たとか」
「俺はまだ独身で子どもも居ねぇよバカ。ややこしくなるから少し黙ってろ」
「剣斗、今日って学校に来る約束とかしてないよね?確か友達と遊ぶって話じゃなかった?」
小百合が事情を聞いてみるも、狂子を見たり蘭華を見る度に顔を赤くして黙り込む剣斗君。
この様子だと、祭りでの出来事が相当来てるんだなと分る。
公衆の面前で浴衣をほどいた時には驚いたが、剣斗君にもかなりのダメージが入っていた。
鼻血まで出していたから…胸への何かしらの反応が出ているのだろう。
「小百合、少し落ち着けよ。姫華は何か知っているのか?」
「知るわけないでしょ?私はいつも通りに来てあげただけなんだから」
来てあげただけって、暇で来てるだけじゃないのか?
あとさっきから剣斗君が足を蹴ってくるんだけど、脛を集中して蹴ってくるんだけど。
威力高める為に鍛えているから、思いっきり蹴られなければさほど居たくもない。
だが制服を汚されるのは気分が悪い。
帰ったら洗濯しないとしないとダメだ…思いっきり泥を付けられた。
剣斗君の行動に気づいたらしい小百合から拳が落ち、それを見て爆笑する姫華。
周りから視線が集まってくるので、とりあえず場所を移動する事にした。
いつも通り俺の家へ集まろうとしていたのだが、途中で姫華が鞄が重いと言うので蘭華達のマンションに寄る事になった。
「うひひ、先輩が久しぶりに私の部屋に来てくれました。今日こそ先輩と熱い夜を過ごすチャンスです」
「そういうことは心の中で言ってくれ。まず来ないだろうけどな」
「いやぁ、普段から美少女二人に挟まれた状態で寝る時点で過ごしてるじゃないッスか。しかも!二人共全裸ッスからね!更に実の姉まで素っ裸で寝てるッスから!」
今の由実による発言で顔を赤くして震え始める小百合だったが、隣で鼻血を出しながら倒れた剣斗君を介抱し始めた。
多分想像をしたのであろう、凄い勢いで鼻血を出したせいで再び小百合に頭を上に上げさせられている。
あと姫華が俺と剣斗君を引いた目で見てくる。
「愛神の住んでるマンションがこんなに広いなんて、全然知らなかった。私の部屋より断然大きい」
「元は私の母が使用していた部屋だったのだが、使わなくなったので全て二人に譲ったんだ」
「ここはもう私と先輩の愛の巣なんです!本当はもう同棲しても良いはずなんですけど…なんで先輩は一緒に住んでくれないんですか!?」
「住まいないも何も、こっちだって部屋を借りて住んでるんだよ」
ため息を着くと同時に腰に蘭華がしがみ付いてくるが、面倒なので放置。
「そういえば夏美と浩寺はどうしたんだ?二人がいないと妙に静かな気がするが」
「ああ、夏美は友達とショッピングに行くって連絡が来てた。浩寺のヤツはそろそろ部活がヤバいから、今日は来れないらしい」
目の前で鬼の形相と化した三年生に首根っこ掴まれて引きずられていったからな。
助けを求められても、俺にはどうする事も出来ない。
「それで剣斗、今日は何しに学校まで来たの?」
鼻にティッシュを詰めた剣斗君に耳打ちをされた小百合は、真剣に聞いていた顔が驚きの顔に変わり、少しずつ小麦色に焼けた顔が赤く染まり始めた。
一体何を耳打ちされたのやら分らないが、小百合が顔を赤くするときは何か恥ずかしい時か、下ネタに関する時だ。
しかも顔が赤い上でこっちを見ては恥ずかしいのか視線を逸らすのを何度もしている。
内容が気になって仕方が無いが、もう少し様子を見てみるか。
「だけど流石にそれは…確かにそうだけど、ちゃんと自分の年齢を考えて…あくまで漫画の中の話でしょ。分った…だけど本人に聞く前に、私じゃなくて重要人物であるアレにも聞いてもらって」
おい、人を指刺しながらアレ呼ばわりは酷くはありませんか?
恥ずかしいからなのかまでは分らないが、いくら何でもアレ呼ばわりは傷つきますが?
夏美にすらアレ呼ばわりされたことないぞ?いや、あったかもしれない。
にしても剣斗君が凄い敵意剥き出しの目で俺を見てくる。
首でも差し出したら喰らいついて来る勢いだよ。
「あの、お願いがあるんだけどさ…剣斗が相談したいらしいんだよね。なんでも好きな人が出来たらしいんだけど、これが数人居るらしくて」
…いやいやいや!俺に相談されても役に立たないって!
もう恋愛に関する相談とかだろ!?無理だって!
「私は真手場先輩達を連れて別室に居るから、じっくりと話を聞いてあげてよ」
丸投げしてんじゃねぇよ!?
剣斗君の顔をしっかりと見てやれよ!殺気でいっぱいだよ!?
さっきだって脛を蹴ってる所を見ていただろう!?
それで拳骨も落としていたよな!?姫華が見て爆笑してたよな!?
と訴えたいところだが、本人を目の前にして言えるはずもなく二人だけにされてしまった。
これはこれで結構気まずい空気ではあるのだが、俺達だけになった瞬間から視線を合わせようとしてくれない。
もう話掛けるのすら面倒臭くなってきた。
「…ら…で…か?」
何かを言っているようだが、声が小さすぎて全く聞き取れねぇ。
お互いに食卓テーブルを挟んでのやりとりだが、かすかに聞こえてくる程度で全然解読が出来ない。
聞き返してみたものの、全然声の音量が変わらない。
ビビってるのか、または緊張でもしてるのかは知らないが、やっぱり小百合でも連れてくるかな。
もう通訳がいた方が絶対楽に進む…うん、そうしよう。
善は急げだ、早速小百合を連れてくるか。
「どうやれば…どうやれば!モテるんですか!?」
…はい?
立ち上がった瞬間に大声を出されるとビックリするんだけど。
あと相談したい事って、どうやってモテるのかだと?
別に何かしているわけでもないからな。
普段から料理して、筋トレとかしてるだけだしな。
確かに狂子とか蘭華達の面倒を姉貴と見ている事は間違いない。
もうほとんど俺達が保護者みたいになってるからな。
「ちょい待ち…えっと君はモテたいから、小百合に相談するために学校まで来たと言うわけでいいのかい?」
急に黙り込みながらも、首を縦に振る剣斗君。
俺はモテようとする努力なんてした事はないし、筋トレをしているのも強くなりたい為だ。
だから話を聞いても、お悩み解決の相談までは出来そうにない。
「悪いんだが、俺はモテる方法とかは教える事は出来ないんだ。勘違いしないで欲しい、別に意地悪で教えようとしないんじゃなくて…なんて説明すればいいのかな」
「俺、モテたいです。あの金髪のお姉さんとか、愛神のおっぱい大きいお姉さんとか、お祭りに居た綺麗なお姉さんとかの事を考えてたらなんか…体がおかしいんです」
お、おお…かなりデリケートな悩みが来たな。
結構ディープな所まで行ってるから、やはり俺にはどうする事も出来ないような気がする。
剣斗君は思春期特有の悩みだが…俺は早い段階で思春期が一気に過ぎ去って行った。
姉貴の裸に見慣れ過ぎてしまったせいもあるだろう。
二次元とかも試して見たことがあるが、ただただ虚しくなって苦しい思いをするだけだった。
あの苦しみは二度と忘れない…そして二度と同人誌なんて読むものか。
「まぁ…何というか、それは人間としては正常な事だよ。俺もそういう時期はあったよ…時間も経てばおかしいなと思った事は落ち着くはずだから」
「じゃあモテる方法はどうすればいいんですか。俺、女の子にモテて、チヤホヤされておっぱいとか触ったりしたいんです」
ああ…コイツ…ただのエロガキじゃねぇかよ。
完全に下心丸出しにしてきたよ、もう相談とか乗りたくねぇよ。
なんで俺が相談に乗るって形になった挙げ句に、こんなしょうもない願望を聞かされる羽目になってんだ?
「あまり人前でそういう話はしない方が良いぞ。モテる以前にどん引きされる」
「じゃあどうすれば…どうすれば、モテてハーレムが出来るのか教えてくれよ!?」
はい、ついに本音が出てきましたよ!!
最近の深夜アニメとかの影響なのか?
何がモテてハーレムが出来るのか教えてくれよだよ!?
小学生にはまだまだ早い内容なうえで、現実的に考えてヤバい状況になるんだよ!
実際学校内でも俺がハーレム作ってるとか言われてるけども、実際にはハーレムなんていらないから!
ややこしい上に色々と大変な事態しか見えてこないから!
「俺は知ってるんだ…小百合姉ちゃんがある日から、ずっと悩んでるのを。お前が小百合姉ちゃんとエッチな事をしたから、おかしくなったんだろ!?ズルいぞ!」
剣斗君が大声で叫んだ瞬間に、扉から勢い良く小百合が飛び出し剣斗君の頭上目掛けて拳が飛んだ。
今の鈍い音からして、相当痛いのは間違い無い。
「…今日はもう帰る。変な事に付き合わせてごめん…剣斗には後でしっかりと話をしておくから」
「俺の方もあまり力に慣れずに悪い。相手はまだ子どもだから、あまりキツくするなよ?」
襟首を掴み引きずりながら小百合は部屋を出て行った。
後味が悪い結果になってしまった。
少し時間が経った後にでも、一度連絡をしてみるか。
まずは一段落がついたところで、狂子達をこっちの部屋に呼び戻した方が良いだろう。
にしてもやはり後味がかなり悪い結果になったから、俺が夜に眠れるか心配になってきた。
「先輩!蘭華が先輩との将来計画日記を書いてたッスよ!内容が殆ど官能小説と変わらないッス!」
「やめて!私と先輩の美しい未来を予知した言書を返して!」
相変わらず元気にしてるな…この二人。
珍しいことに狂子と姫華が仲良く一緒にいる。
仲良く携帯ゲーム機で遊んでるから、心配をする必要はなさそうで安心した。
よく見ると姫華のゲーム機、超デコってある。
もう面影がないレベルでキラキラ光ってる。
絶対に使いにくい上で、持ち手の部分が痛いと思う。
だってあれ…細かいパーツで構成されているんだけど、一つ一つが先端に向かって飛び出してるヤツだから確実に痛いだろ。
「ん?小百合はどうしたんだ?それにあの少年もいないぞ?」
「二人共帰ったよ。あまり力にはなってやれなかったがな」
「声は聞こえてたけど、剣斗は学校でもああだよ。他の男子と一緒になって、女子がいる前でも平然と自分達がどうやったらモテるとかの話ばっかして、ばっかみたい」
つまり小百合の前では比較的大人しいが、あれが素の剣斗君なのか。
「ねぇお腹空いたんだけど。この部屋って、物は沢山あるけど食べ物がないんだよね」
「確かに小腹が空いてきたな。よし!出前と言う物を頼んでみよう!アメリカに居た頃はピザをデリバリーする事は何度かあったが、こっちでのデリバリーしたピザは食べた事がないからな!」
たまにビザを頼むのも良いかもしれない。
蘭華と姫華の部屋だとまともな食材も揃ってないだろうから。
人数も今日は五人だから…五人だから…蘭華と姫華が結構食べるんだった。
特に食べ盛りの姫華の食欲は凄まじいから、下手をすればLサイズを一人で食べるのも可能だろう。
数日前にも夕飯を沢山作ったのに、半分以上を食べられた時には全員で唖然とした。
しかも驚いたことに姫華の体型に変化がないのも凄い。
姉の蘭華はここ最近、少し太り始めたようにも思えて来てる。
最初に会った時はガリガリだったのが、今では見る影もない程にぽっちゃりしてきた。
まぁ健康で良いんだけどな…太り過ぎなければが前提での話だ。
「ピザッスか?めっちゃ良いッスね!ホラー映画を見ながらマルゲリータでも食べるッスか?もちろん全員コーラで行くッスよね?」
「俺は別に良いが、相当怖い上にグロい映画を選ぶが良いか?時計仕掛けのオレンジみたいに、目を閉じれないように固定しやるから安心しろよ。目が辛い時は目薬はしっかりとさしてやるから」
出来る訳もないんだけどな、冗談で言ってみたが由実には本気に取られたようだ。
実際のところあの映画は一回見れば腹がいっぱいになる。
かなり胸くそ悪い展開が続くから、二回目はいらないと感じる程に。
もし姫華と狂子に見せたりしたらトラウマになる。
ところで…由実は時計仕掛けのオレンジを知っているのだろうか?
映画好きの小百合なら見ていそうだが、由実が映画を見ているとかという話は聞いたことがないからな。
「冗談ッスよ…はは、流石にあの映画の真似は本気で勘弁お願いします。興味本位で見てから駄目なんッス」
「分ってる、俺も冗談で言っただけだ。とりあえずピザを注文するが、何か要望とかあるか?ないなら適当にミックスとか頼むが」
「私は何でも良いぞ?柘魔と同じ物で良い」
「じゃあオプションでチキンとポテトの大盛り付けてよ!あとコーラは二本で!ピザはチーズたっぷりのヤツね!」
「姫華がそれだけ食べるなら私も注文します!私はシーフード系とカレー系をお願いします!」
け、結構な金額になりそうな予感がする。
まず俺はミックスで良いから狂子と合わせて一枚と、姫華のチーズ多めのを合わせて二枚。
そこへ蘭華のカレーとシーフード系、オプションポテトとチキンの大盛りか。
もう既に一万円近く来てるんだが。
「先輩、私も先輩と真手場先輩のと同じで良いッス。あと出来たらッスけど、サラダも付けて欲しいッス」
「じゃあ由実も俺達と同じで良いんだな?じゃあ注文するが、後から変更とか出来ないからな」
全員の確認をとってから、ピザを注文した。
配達まで時間が掛ると言う事で、その間の暇を潰す方法を考えてみたが、何も思いつかなかった。
狂子と姫華はゲームに夢中だから放置しても大丈夫だ。
対して蘭華と由実はまだ日記なのか官能小説なのか分らない物を取り合っている。
途中で由実が内容を読み上げる度に生々しい内容が出てくるが、ゲームに夢中の二人には聞こえていないようだ。
てか蘭華の日記の内容が進むにつれて子どもまで誕生してる。
しかも子どもがもう5人程も出てきているんだけど?
名前も明かに悪魔の名前を使ってるし。
「もう先輩のお嫁に行くしかありません。ちゃんと責任とってください」
責任取れって、俺は聞かされただけなんだけど。
どう考えても被害者側だと思うんだが、蘭華からしたら俺は加害者側になるのか。
「そろそろ蘭華をからかうのも飽きてきたッスね。ピザが来るまでの間、三人で野球拳を混ぜた遊びでもしないッスか?」
「お前、軽いノリで野球拳とか言ってるけどな。負けたら脱ぐんだぞ?例外なくお前もだぞ?」
自身が相当あるのか、由実はドヤ顔で親指を立ててくる。
その後ろでは鼻息を荒くした蘭華が腕を振り回しながら、まるでこちらを打倒する気満々と言った感じが伝わってくる。
蘭華の魂胆は直ぐに分るが、分らないのは由実の方だ。
何か面白いネタを手に入れたりするのには必死になったりするが、自分の身を犠牲にしてまでの事はあまりしなかった。
嫌な予感がしてくるが、二人はもうやる気で止めても聞かないだろうな。
「んで、何で勝負をする気だ?トランプか?ジャンケンか?」
「アームレスリングなんてどうッスか?先輩対私と蘭華のペア。私達がペアなのは、先輩が鍛えてるからハンデと言うことで頼むッス」
「もしこれで私達が全部勝てば…先輩を丸裸に出来る」
二人がかりで俺を倒しに来るか…おもしろい。
昔はよく夏美や浩寺達の四人でやっていたな。
基本姉貴が圧勝してて、途中で三人の力を合わせても勝てなかった。
数人を相手に腕相撲をする日が来るのが、まさか今日だったなんて。
「ルール確認ッス。一回負ける度に一枚脱ぐ、例外なくッスね」
お互いに席に着き、腕を机の上に乗せる。
俺の腕を蘭華が掴み、覆う様に由実の手が被さる。
…考えたら、誰が試合の合図を出すんだ?
「…レディゴー!」
唐突に蘭華から発された合図と同時に、二人の手に力が入った。
油断をしていたが、予想外に俺の腕が動かない。
俺自身も驚く程に腕が動かない。
一生懸命に力を入れて動かそうとしているのは分る、だけども俺の腕に力を入れ過ぎて起る振動が伝わってくる。
試しに腕を少し下げてみるか。
「よぉぉぉし!蘭華!あと少し!あと少しで先輩を全裸に出来る!」
「先輩の裸は私のもの!先輩の裸は私のもの!先輩の○○○も私のもの!先輩の初体験も私のものぉ!」
蘭華による下品な絶叫を聞いた瞬間に、つい手に力を入れてしまい一回目の試合は俺の圧勝に終わった。
俺が強くなりすぎたのか、元々二人の力があまり無いのかが分らないが、勝ったことには違いない。
別に蘭華が脱ぐのは見慣れている。
興味があるのは勝負を仕掛けて来た由実が、これからどういった行動に出るかだ。
「先輩の為に…恥ずかしいですが、まずは上着から脱ぎます」
「いや蘭華、そこはスカートから脱がなきゃエロくないでしょ。もちろん先輩もそう思うッスよね?せっかくワイシャツ着てるッスから、チラリズムがエロいッスよね?」
「チラリズムとか良いから、口より先に行動に移せよ」
直ぐに蘭華は由実に言われた通りにスカートだけを脱いだのに対し、行動を起こさなかった由実は靴下を片方だけ脱いだだけだった。
確かに野球拳と言う事で布を一枚取っている。
自身たっぷりだったのは、こういう秘策があったのか。
だが自分が靴下一枚を脱ぐだけと言う行為は、俺も同じ事が許されるという落とし穴があると言っているも同じ。
万が一負けたとしても、ピザが来るまでには大分持つ事が出来る。
「ゆ、由実…なんかこれ…恥ずかしい」
「エロい…こいつはなかなかのエロス!蘭華から溢れ出す走れエロス!綺麗なむっちりした太ももに、裾を使って隠そうとしてるのに足りなくて見えるパンティ!そこら辺のAVじゃ味わえない神々しさッスよ!」
俺が、自ら視線を逸らしただと!?
今まで蘭華に対して目を逸らす事なんてしたことなんてなかった!
まるで俺が恥ずかしさのあまりに目を逸らした感じになっているが…ダメだ、やっぱり見ることが出来ない。
違う…いつもと違うんだ。
いつもの蘭華ならこちらに見せびらかしたりアプローチをしてくる。
なのに今は顔を赤くしながら半分涙目で恥ずかしがってる姿を見ると、妙に罪悪感が湧いて来た挙げ句に心臓の鼓動が早くなる。
俺自身が…興奮でもしてるというのか?
やはり俺の体や心境に変化が起こり始めているのは間違いない。
一番驚いている点は、蘭華の反応に対して可愛いと思ってしまったことだ。
これが…これがあの、ギャップ萌えというものなのか!?
「じゃあラウンド2と行こうじゃないッスか。ほら蘭華も恥ずかしがってる場合じゃないって」
「でもスカートだけ履いてないの…恥ずかしくて耐えられない」
わ、分らない…もう蘭華の考えている事もわからない。
全裸やら下着姿は見せつけてくるのに、一部分だけ脱いだ状態が恥ずかしいって、どこかズレてないか?
「…先輩、私一人で挑むッス。その代わりハンデとして、私は両手で挑ませてください!」
「許可する…早く始めるぞ」
第2ラウンドが開始され、今度も俺が圧勝した。
まず勝負にすらならないから、もうやめても良いと思うのだが、由実が三度目の勝負をしかけてくる。
勝負を仕掛けてくる度にハンデを要求してくるのだが、今度は俺が握り拳だけで、その手を由実が覆い被して勝負しろとのこと。
要求がどんどんエスカレートしているが、これはこれでまた楽しいからよしとしよう。
問題は蘭華が次に脱いだのが上の下着だったこと。
もう慣れてしまっているはずなのに、ワイシャツから少し透ける感じで、また自然と目を逸らしてしまう。
「フフフ…私の予想は当たっていたッス。先輩は積極的なエロには強い耐性がある、ならば控えめでおしとやかなエロスには耐性が無いのではないかと予測したのは正解だったッス」
まさか…蘭華の反応も全てが作戦だったとでもいうのか?
「おっと、勘違いしないで欲しいッスけど、あの蘭華の反応は全部が素ッスよ。普段は全裸を見せる事すら躊躇わないのに、何故か服を着たままで一部分だけを少しだけ見せていくのが苦手何ッス。あとは一部分だけ隠すってのもダメみたいッスけどね」
漫画とかで希に見たりする事はあるが、本当に実在するんだな。
読めたぞ!由実が何を考えているのか!
俺は最初からこうなる事を予期されていて、無謀な戦いに挑まされていた。
由実達が負ければ蘭華が辱められ、俺自身へ罪悪感等を芽生えさせて弱らせて勝つ。
逆に俺が加減をして負け続ければ脱がされる上で、自分達の思い通りの展開に持っていくことが出来る。
最初から俺は、由実の撮影スタジオの中で踊らされていたのと同じことだった。
とんだ悪女に成長しそうな女だよ。
「どうするッスか?このまま自ら負けるのか、または脱がし続けて蘭華を恥ずかしめるのか、全ては先輩次第ッス!」
まさしく由実の言うとおり、俺が勝てば蘭華はまた恥ずかしい思いをする。
俺がまければ、俺が酷い目に遭わされる。
この勝負を仕掛けて来た由実にとっては、どっちも美味しい展開にしか行かない。
…美味しい展開にしか行かないのであれば、行かせなければいいのではないだろうか?
どちらの道を進んでもダメならば、歩むのをやめて引き返せば良い。
「…お前、結構頭が良いところがあるよな。今回の事に関してもかなり良い作戦だった」
「妙な言い方ッスね…まるで先輩の勝利が確定したような言い方ッス」
確定したような言い方じゃなくて、確定してるから言ったんだよ。
由実の力じゃ俺の腕を動かす事は出来ない、だからこそあの作戦に出た。
完璧過ぎるように見える作戦だったが、きちんと抜け道は存在している。
「先輩…手を動かさないと勝てないッスよ?」
「ああそうだ、手を動かさないと勝てないな。だけども、お前の力で俺に勝てると思うか?気づいたか?俺は今から勝利を辞退すると同時に、お前の手に入れるはずの勝利も奪う」
動かない…ただただ動かないだけだ。
どれだけ動かそうとしても、俺はその場に腕を止め続ける…ピザが来るまでだ!
制限時間はピザが到着するまで、それまで俺は勝つ事も負ける事もしない。
試合を引き分け(ドロー)に持ち込む。
「良いッス…マジで最高ッスよ、そういう展開!ならこちらも全力で、行かせてもらう!」
「掛ってこい。なんなら、全体重掛けてでも負かせてみろ」
お互いに深呼吸をしてから、再び手に力を入れ始める。
今までと違うところは、俺が言った通りに由実が全体重を掛けているところだ。
片腕に全体重を掛けるといっても、両手で腕を掴みながら後ろに引っ張るだけで、倒れるようにしないだけ良い。
もし全体重を掛けて倒れるようにやられていたら、流石の俺でも腕は折れていただろう。
…本当の勝負はここからだ…お互いのどちらかが力尽きるのが先か、ピザが届くのが先か。
それにしても…由実の後ろにいる蘭華が視界に入ってきて集中力が途切れる。
確かに由実の言うとおり…妙にエロい。
普段とは全然違う雰囲気でいるせいで、目が釘付けになる。
「くっ…先輩…蘭華を見て興奮するのは分るッスけど…力を入れて立たせる部分が間違ってるッスよ。男なら漢らしく○○○を立たせろや!」
「ドストレートに言ってんじゃねぇよ!この変態カメラマンが!」
長い戦いが続いた後、インターホンの音でついに決着がついた。
一度蘭華にくしゃみをされて驚いた隙を突かれ、見事に負けてしまった。
負けたと言う事で靴下を脱ごうとすると、何故か二人からブーイングと蘭華の状況を訴えられた事で、上半身裸になることで話がついた。
ピザを取りに行くときには由実が言ってくれたものの、金を忘れたせいで結局俺も行かないと行けなくなったわけだ。
あと姫華と狂子には驚かされた。
ピザを受け取って戻ってくると、既に椅子に座って待機していたのだ。
臭いを嗅ぎつけて来たのか、二人の視線はピザに釘付けで、テーブルに置いた瞬間に箱を開けて食べ始めた。
「…柘魔、ピザが…ピザの上のチーズが、逃げ出したぞ」
涙目で訴え掛けてくる狂子…結構珍しいな。
狂子が食べ物で涙目になるのはかなり珍しいが…また可愛いと思ってしまった。
なんなんだ今日は…蘭華に続いて今度は狂子にまで可愛いと思うなんて。
もしかするとこれが正常なんだろうな。
とにかく涙目の狂子も放置するわけにもいかない。
たまにやるんだよな…ピザ生地の上に乗ってる物が箱に残ること。
「くっついてたんだな。蘭華、フォークとか…恥ずかしいならいい加減にスカート履けよ、風邪でも引いたらどうするんだ」
「だって…由実が先輩は、この恰好の方が興奮してくれるって」
やっぱり由実の仕業だったのか。
ずっと蘭華がスカートをはかないのが気になっていたが、何を考えているんだよ…まったく。
「俺が興奮するとか以前に、お前に風邪を引かれる方が悲しいから下を履いてくれ」
脱いだスカートを履いた蘭華は、さっきまでとは別人の方にまたベタベタと引っ付き始めた。
食べにくいので押しのけても押しのけてもめげない根性は賞賛しよう。
にしても…結構な金額になってしまったな。
家に帰ってくると、姉貴の姿は無く、俺のスマホには姉貴と夏美から大量の連絡が入っていた。
姉貴からの連絡は大切な話があるから、連絡に気づき次第連絡するように。
夏美の方からは何処にいるのか聞いている物から、幼稚な罵倒と帰って来たら食べに行きたいとの連絡だった。
まぁ家に帰って来て数分したら気づいた夏美が突撃してくる、お決まりのパターンなんだが。
「なんで私をほっといてピザなんか食ってんのよ!?私もピザとか食べたかったんだけど!」
「いや、お前友達と買い物に行くって言ってただろ。同じ学校の友達と何か食べてきたんじゃないのか?」
話を聞いてみると適当にクレープとか、タピオカ等だけしか飲み食いはしていないらしい。
別に飲み食いするのは勝手なのだが、帰って来て外食に連れて行けって、いつもより酷くありませんか?
「夏美も何か食べたいのか。そうだな…柘魔、私はラーメン屋と言う物に興味があるのだが、行ってみないか?」
「ラーメンなら私行ってみたいお店があるんだけど。クラスの間でも結構話題で、超美味しいんだって」
ラーメン屋か…ピザ食べてから少し時間経ってるから、俺はまだいけそうだな。
狂子の方も提案するほどだから行ける様子だ。
由実と蘭華はもう疲れ切ってるのか、人の布団に飛び込んでダウンしてる。
はぁ…新しいベッド、どうしようかな。
次からは鉄製のヤツにするか。
それと、もうそろそろ小百合の様子も心配だから確認の連絡をしておいたほうがいいな。
「ちょっと電話してくるから、夏美は準備しててくれるか」
「タクが電話掛けるって珍しい。誰に連絡取る気よ」
お前は浮気を疑う彼女か!?
「夏美には関係ないだろ?そこまで長電話するわけじゃないから良いだろ」
後ろから夏美にクッションを投げつけられながら、外で小百合に電話を掛けてみたが、電源が入ってないのか応答がなかった。
色々とあったから、仕方がないか。
とりあえずはメッセージだけ残して、ラーメンを食べに行くか。
「ああ、小百合か?今日の剣斗君とのことなんだが、あまり思いつめたり、責めたりはしないでくれよ。相手は子どもって言ったが、剣斗君自身も男の子だから、それだけは理解してあげてくれ…また、何かあれば連絡頼む、その時は今度こそ力になれるよう努力するよ」
この日、小百合からの連絡等は一切なかった。
電話に残したメッセージを聞いてくれているのかも分らない。
俺が今出来る事はこれが精一杯だ。
だけども…次の時は、しっかりと力になってあげたいと思う一件だった。
次回、秋恵による突然の引っ越し!?
新たな部屋に引っ越す為にもまた沢山の問題が起る!




