表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
38/45

第三十七話 祭りはいくつになっても楽しみたい。

柘魔達の住んで居た実家近くで行われる祭りに参加したメンバー。

いつも行く度に遊んでいる射的屋に行く予定が、とんでもない事態へ発展してしまう。

 実家の近くで毎年行われる祭りに、俺達は一年ぶりに参加する事にしたわけだが。


「どうして俺達が女装をする必要があるんだ!?浩寺のはまだマシだが、俺のに関してはどうしてゴスロリ系を選んだんだ!?なんだこの右が赤で左が黒いツインテは!?」

「似合ってるから良いじゃないッスか!しかもそのウィッグ、耐熱性のあるヤツで結構するッスよ!それもウェーブタイプは人気で残り少ないのを、蘭華を戦場に放り込んで取らせたッスから!!」


 蘭華の顔に絆創膏とかが貼ってあるのは、それが原因だったのか。

 頑張ってくれたのは分る…姉貴を連れて着物を買いに出かけて行ってから、傷だらけで帰って来たの時には驚いたが。

 酷い無茶をしてくるものだが、その気力をもっと別の事に生かすことはできないのだろうか?

 以前にもバイトを始めると言い始めてから、全くの進展が無い様に思える。

 基本的に俺の側に居る時間が多いことから、面接にも行ってないことは確実だ。


「い、違和感とかないか?俺、春魔みたいに伸長とかもそこまで低くないから、デカ過ぎたりとか」

「全然問題ないッスよ。誰がどう見ても、イケメンなロリコン男だとは思わないッス」


 昨日の件で浩寺は由実にロリコンだとバレたようだが、俺にはどうもロリコンだけで収まらない気がしてならない。

 もしかして…女装趣味に走るのでは無いかと、少しだけ心配してしまう。

 親友だからこそ心配するのだが、別に俺は否定とかはする積もりはない。

 まだロリコンで犯罪に手を染めるよりは、女装趣味でそこら辺を徘徊されている方が断然マシだ。


「なぁ春魔…今回の女装に関しては俺の提案なんだ。待て!納得のいく説明をするから裾を上げて蹴り体勢に入るのはやめてくれ!聞いちまったんだ!あの射的のオヤジが、今年は春魔に撃たせないって!」


 あの出店のオヤジが、今年は俺に射的は撃たせないか。


「それを聞いて、私が提案したのが変装ッス。先輩は女装すれば殆ど別人になるッスから、バレないと思ったしだいであるッス」

「なるほどなぁ…だからメイクまでしっかりとゴスロリにしてるのか。これなら姉貴に瓜二つになる俺でも、大分違う雰囲気に出来ちまうってわけか…考えたな」

「もちろん俺も顔は割れてる。だから分かり難いように男装をしている様な女装にしてもらってるんだ」


 ふむ…小百合が頭を抱えていたのは、浩寺の要望が原因だったのか。

 男装をしているような女装って、相当矛盾しているような要望だが、それを可能にしてしまう小百合も凄い。

 俺の方はスマホで顔と画面を見比べながら、難しい顔をしながらも納得の行く出来に仕上がったらしい。


「それにしても…この指のアクセが邪魔なんだが。狙撃する為に重要な人差し指が…引き金に指を掛けるのに」

「オシャレには犠牲がつきものッス!片手が使えないなら、もう片方を使うッス!男にはそれが分らなのですッス!」


 ですッスって何!?言葉めちゃくちゃで理解が不能になってきた。

 とりあえずオシャレして、俺だってバレない様にしておかないと射的が出来ない…景品全部落として、今年も泣かせてやるか。

 今年に関しては狂子も居る上で、一応は自称射的のプロと言っていたマコト先輩もいる。

 毎年色んな対策を取られてきた。

 あるときは景品に重りを入れられ、ある年は相当な遠距離からやらされたりもした。

 そのたびに家に帰って、エアガン等の装備を利用してこちらも対策を練ったりもした。

 スコープを付けたり、倍の料金で銃を二丁構えたりだとか。

 それで毎年恒例の戦いと化しているわけだ。


「…先輩が…先輩が、私の理想の姿になりました!私が憧れるような姿になってしまいました!この美しすぎるダークな雰囲気はまさしくリリスです!」

「抱きつくな!着付けた浴衣が崩れるだろ!あと下駄になれてないんだよ!」


 なんとかバランスを立て直すも、隙をついては浴衣の中へ手を入れようとしてくる。

 まるでセクハラオヤジと同じだと思いながらも避ける。

 途中からマコト先輩が混じってくるも、小百合が防衛を手伝ってくれたが、最後は姉貴の鉄拳で終わった。

 着崩れた浴衣を直してもらいながら、これからの予定を話す事にしたのだが、狂子から一つやってみたい事があると言われてしまった。


「実はだな…一度やってみたかったんだ。この帯というのを引っ張って、よいではないか!よいではないかと!」

「あれ目が回りそうだからやりたくないんだが。それに下駄でやるものじゃないだろ」


 俺は拒否をした…それでも狂子は諦める事はなかった。

 帯を掴まれ一気に引っ張られたことで、テレビのように回転をしたが…目が回り過ぎて吐き気がしてきた。

 いくらなんでもいきなりすぎるだろと怒ろうとするも、また姉貴の鉄拳が落ちていた。

 三度目の着付け直しをしなければならないなんて…なんて日だよ!?


「大丈夫か?凄い回転力だったぞ?昔遊んでたあのコマみたいだった」

「気持ち悪ぃ…どうして俺がこんな目に遭わないといけないんだ。しかも三回も着付けするから、腹筋が締め付けられる」

「そのうち慣れるから、早く行こ。タクの顔怖いから、早くメイクを落として欲しいんだけど」


 無言で夏美を見つめてみると、静かに視線を逸らされた。

 少し面白いので無言の上で真顔にして、視線を逸らす夏美の顔を覗き込んでみる。

 また逸らされるので、先読みをして向く方へと待機する。

 昔から夏美はホラーが苦手な所があるから、この顔は思いっきりダメだという事は分かっていた。

 以前に店でゾンビの人形を見た瞬間に、絶叫した後に気絶された事もあった。

 あの時は客の目を引いた上で、家まで背負って帰るはめになったんだよな。


「あの夏美が攻撃出来ない程に怯えるとは…流石は春魔の眼力は凄いな」

「あれは眼力というより、一切の感情を持たないマネキンに怯えているようにしか見えないッスよ。特に今回二人は一言も話すのは禁止ッスからね」

「代わりに私達が色々と説明とかするから、喋りたい事とかあったら耳打ちして」


 由実と小百合によると、俺の場合はまだ姉貴と同じ声が出るから問題ないが、浩寺はそれが出来ない。

 だから浩寺が喋ると俺の方も怪しまれるから、一切喋るなということらしい。

 これがもしあの全身赤タイツの傭兵だったら、作戦が一気に崩壊するだろうな…女装は喜んでするだろうが。

 それにしても喋る事が出来ないというのは、色々と不便だろうな。

 他にもトイレに行くときはどうすればいいのだろうか…やっぱり女性用に入るべきなのか?

 考えてみたら、小学校か中学校の同級生に遭遇した場合はどうすれば良いんだ?


「あっ…ごめん、ちょっと用事出来たから先行ってて。あとでちゃんと合流するから」

「ユリリン浮気するの巻、なんちゃって」


 去り際に小百合から蹴りが放たれ、見事に由実の尻を仕留めた。

 なかなかにい蹴りだ。


「ちょっとふざけただけで…こんな強い蹴りを入れるッスか!?尻が地割れ起こしたかと思ったッスよ!」

「あの蹴りは鍛え方次第で化け物になる。ハイドの蹴りもかなり良いけど、一緒にコンビを組ませれば最強の蹴りコンビが出来る」

「マコト、何を言ってるのかわかりませんが…私達の目的を忘れてはいけませんね?春咲柘魔が問題を起こそうとするのを止めることです」


 だから俺は別に問題を起こす気なんてないんだって。

 逆に問題の方から来るから、こっちが困ってるくらいなんだよ。

 今だってまた蘭華とマコト先輩がしがみ付いてきてるのに、生徒会長は俺ばっかり睨んでる。

 完全に俺を悪者にしたいのは分ったが、こっちだって悪者にされるのは気分が悪いってものだ。

 つうか…この状況で祭りに行っても、逆に怪しまれて終わりだと思うんだけどな。


「どうやっても反省しないようね?これ以上タッちゃんの嫌がる事をするなら、財布を没収するわよ?」


 没収とか良いながら、俺が数日前に誕生日プレゼントに渡した新しい財布を見せびらかすな。

 使ってくれるのはとても嬉しい、渡した時なんか号泣された挙げ句に、俺が窒息死寸前になるまで抱き締められたんだからな。

 謎なのは…どうも俺の周りに巨乳が多い気がする。

 今も偽物を入れてるが、浩寺に比べて明らかに大きい。

 しかも足元が見えないレベルで大きいから…バランスが取りにくいと来てる。

 以前はメイドのコスプレを二回させられたが、あの時はまだここまで大きくもなかった。

 なのに今回だけ倍はある!明らかに詰め込みすぎな気がするよ!?


「ねぇ、退屈だから早くお祭りに行きたいんだけど?」

「そうだったわね。早くしないと時間が無くなるから行きましょうか、久々にリンゴ飴とか食べたいわ」


 またリンゴ飴か…相変わらず姉貴のリンゴ飴好きは健在だったか。

 姉貴は祭りに行くと必ずリンゴ飴を買う、しかも最低でも二つは買う。

 不思議なのは祭りから帰る頃には、全て綺麗に食べられているところだ。

 目を離した隙に食べ終わってるから、俺達の間では七不思議的な感じで語られている。


「お姉さんはリンゴ飴が好きなんですか?私、食べた事ないんですけど、先輩も買うなら半分食べかけの下さい」

「キモい上に俺はまず食べねぇよ。昔からリンゴ飴は苦手なんだ…あの表面を覆ったアメで舌を切ってから、どうも苦手だ」

「あんなに美味しいのに、リンゴ飴が苦手とか人生の53%を損してるッスよ」


 微妙な量を損しているとか言うな、妙に引っかかるだろ。

 しかもどっかの帝王様の戦闘力みたいな数値にしやがって。

 別に良いじゃんリンゴ飴苦手でも!あれ何気に食べきるの大変なんだよ!

 あとよく見ると蘭華の浴衣が少しおかしくね!?なんでそんな胸元開けてんの!?

 足元も短すぎないか!?もう太ももとか殆ど丸出しじゃねぇか!

 一緒に買いに行った姉貴もよく了承したなって…よく見ると姉貴も蘭華程じゃないが、まぁまぁ短い。

 いや、全員の足元が短ぇ!まだ長いの俺達だけだ!

 唯一生徒会長だけまだ長いの来てるけど…マコト先輩に関してはもう子どもの浴衣じゃん!?

 姫華の来てる浴衣のデザインの方がまだ大人っぽいぞ!?似合ってるから違和感ないけど!?

 俺達の浴衣が足元まであるのは、見せたらバレると判断したのだろうが、俺達は既にすね毛処理もさせられてるんだよ!

 徹底しているのは分るが、そっちの方は方で怪しさを増さないか!?

 バランスとかがおかしいよな!?やっぱりおかしいよなぁ!?


「柘魔…祭りははしゃいで良いと由実から聞いたが、どうはしゃげばいいんだ!?日本の祭りに出るのは始めてだから、緊張してきたぞ!」

「緊張する程の物でもないさ。はしゃぐというよりは、出店で遊んだりすればいいだけだからな」

「そうよ、お店があるだけだから楽しむだけよ」

「出店によってはくじが引けるッスよ!しかも真手場先輩の好きな銃も景品にあるッス!」


 銃という言葉を聞いて目を輝かせ始めた狂子は、俺の手を引きながら走り始めた。

 途中で転ぶのではないかと不安だったが、意外と狂子は転ぶ事もなく、同時に俺も転ぶ事は一度もなかった。

 階段も急ぎ足で上って行くも、それですら転ぶ事もない。

 そんな奇跡のような時間も直ぐに、祭りの入り口で終わってしまう。

 ここから先は喋る事が出来ないから、普通に会話が一切なくなる。

 出来ることとしては、俺が指で指示するか耳打ちをするしかない。

 あと狂子が間違って俺の名前を呼ばない事を祈る事だ。

 俺と浩寺はあくまで、姉貴と俺の親戚という設定になっている。

 なんとも複雑な気分であるが、まぁ今回は仕方ないので我慢しよう…もう女装するのにも抵抗がなくなってるのが怖い。

 化粧をされている間も何も感じなくなった上で、ついに頭の中を空っぽにしてる方が楽だということに気づいた。


「これは…チョコバナナだな!ん?冷やしきゅうりとはなんだ!?キュウリは漬け物にする食べ物じゃないのか!?おお金魚すくいだ!金魚すくいがあるぞ!こっちにはカメすくいというものもあるぞ!?」


 大はしゃぎする姿を見ると、心配する必要はなさそうだな。

 周りから来る俺への視線が痛いが…これも結構馴れて来た。

 もう堂々としていれば良いだけのことだ!姉貴にそっくりなら男とバレない!

 今日は全員女同士でお祭りに遊びに来てるだけなんだ!そうだお祭りに女子だけで遊びにきただけだ!

 まさか誰もこんなゴスロリ女が男だとは思うまい!


「こっこれが由実の言っていたくじだな!見ろ柘魔!銃が沢山あるぞ!?」


 早速やらかしてくれたよ、この天然お馬鹿ちゃんは。


「興奮してる所を悪いが、俺の名前は伏せてくれ。女装してるのがバレるとマズイ」

「おお、そうだったな。すまない!つい柘魔と間違えてしまった!」


 もう先が思いやられるな…演技っぽくて見てられない!

 顔も焦ってて変な汗をかいてる!少しだけ俺もかいてるけど!

 まずはこの空気をなんとかするために…くじを引いてみるのが良いのか?

 くじも一回三百円だから、そこまで高くもないか。

 前に動画とかでくじ引きの闇を暴くとかって話題になってたが、あれって本当なのか気になるな。

 そんな沢山引くほどの余裕もないから、三回くらい引かせて、終わらせるか。


「すまないが、これで買えるだけくれ」


 一瞬俺を見てビクッと動く店主は、マジマジと狂子の手を見始めた。

 狂子が財布から取り出したのは、なんと諭吉さんを五枚。

 これから店主のもとへ、特殊諭吉部隊が出撃しようとしている…普通に出し過ぎだろ!?

 確か最近の小遣いは姉貴が管理をしているはずだった。

 轟さんから姉貴が用意した通帳へ振り込まれ、そこから狂子に毎月の小遣いが支給される。

 なのに狂子の財布が閉じるのに圧力が必要な程に、膨張しているのはなぜだ!?

 見るからに大金詰め込んでますよね?狂子さん!?一体どこからそんな大金を!?


「ん?どうした?私はただくじを買おうとしているだけだぞ?」


 俺は思わず狂子の手を掴み、こちらへと引き戻した。

 いくら金持ちでもくじびきに五万は使い過ぎだ。

 もし五万なんて大金を使い込んだなんて姉貴に気づかれたら、俺達二人まとめてしばかれる!

 あと店主が笑みを浮かべてたが、俺が手を引っ込めさせた途端に露骨に睨んでくるんだけど!?

 もう狂子を金づるとしか見てないな…いや、普通に商売だからしかたがないのか。

 決めた…狂子は一人で歩かせるのはやはり危険だ。

 ここは俺がとりあえず千円で、三回だけ引かせて別の場所に移ろう。


「チッ…ほい、おつりの百円。好きなの三枚まで引きな」

「おお!この中から好きなのを三つ選べばいいんだな!?かなり悩むな…よし、この三枚にするぞ!」


 悩むと言っておきながら、最後には適当に重なった三枚を選ぶ狂子。

 対して五万が手に入らなかった事で不機嫌になる店主…顔に出すなよ。

 あと俺が無表情なのも怖いのか、真顔で見つめると顔を逸らされた。


「………」


 …妙に狂子が静かになった?やっぱりハズレを引いたか?

 俺も小さい頃は出店でくじを引いた事があるが、一回もゲームとか当たった事がなかった。

 あれからは全然引いてたことなかったからな…良い体験になったか。


「当たったぞ!ゲーム機三つの当たりだ!!これで私も一緒に遊ぶ事が出来る!」


 当てちゃったよ!?

 大当たり引いちゃったこの子!?お店が大赤字だよ!?

 飛びはねるせいで浴衣もはだけて来てるって!危ないってそれ!


「遠くからはしゃいでる姿が見えたッスけど、何か良いことでもあったッスか?」

「見てくれ!三枚買ったら全部ゲーム機が当たったんだ!これで皆とゲームが出来るぞ!私も一緒にゲームが出来るぞぉ!!」

「あ!しかもれって最新型の可愛いヤツじゃん!なんでアンタが普通に当ててんのよ!?私一回も当てた事ないのに!」


 適当に買って全部が大当たりって、どんだけ強運を持ち合わせてるんだ。

 もし狂子に宝くじとか買わせたりなんかしたら、きっと一等数億とか当てるんだろうな。

 そして夏美は何故、俺を揺すって八つ当たりをするんだ。

 別に俺が当てたわけでもないのに…といつもなら飽きるまでさせておく。

 だが今の俺は夏美にとっては強大な天敵そのもの!!

 無言で見つめているだけで、胸元を掴んだ力が緩んでいき、最後にはへたり込ませる。

 へたり込んだままで頭を抱える夏美…ついにこの日が来てしまったのか。


「あまりの先輩の美しさに負けたんですよ!こんなに美しすぎる先輩はもう究極の罪です!!七つの大罪全てを纏う美女なんです!!」

「ハイドの美しさはそれくらいじゃ表現仕切れない。これは動画に残しておきたい!次回の生放送にゲストでまた出てもらう!その時はまた違う名前で出すから安心して!決定で約束!」


 人が喋れな事を良い事に、勝手に約束にするんじゃねぇ!

 道の真ん中で騒ぐ二人を置いて、俺達は目的の射的屋に向かう事にした。

 途中で別れた小百合も合流すると、隣には見覚えのある少年が隠れていた。

 小百合の近所に住んでいる剣斗君だ。

 うん…俺の顔を見てビビってますね。

 あと妙にソワソワしてるようにも見えるが、その視線の先には…刺激が強すぎるわけだ。

 考えてみたら今ここにいる生徒会長以外の女皆が…足元が短い。

 加えて狂子がはしゃいで歩くせいで、浴衣が何度直してもはだける。

 視線が胸元に行ったりしてるから、なんだか可哀想になってくるな…男の子だからな。


「おじさん!今年はちゃんと来たよ!」

「おお、夏美ちゃんか。あれ?あのクソ坊主達はどうした?今年は撃たせる気はねぇけどな!どうしてもって言うなら、五発で千円の特別射的くらいやらせてやってもいいがなぁ!」


 千円で五発が撃てるのか…十発で二千円か。

 やるかどうかは景品に次第だな。


「今回の景品って何?一昨年はゲームとかあったよね?」

「おうよ!今年はスゲぇぞ!最新型のゲーム機に加えて、一緒に遊べるゲームも付いてくる!その代わりにだ…難易度は相当上げさせてもらうから、余裕があるなら挑戦しな」

「五発で千円とはかなり安いな。では一万円で五十発討たせて貰う!」


 突然胸の谷間をさらけ出す狂子。

 あまりの事に唖然とする俺達を気にせず、谷間に自分の腕を突っ込んだと思うと、そこから突然リボルバーを取り出す。

 久々に見る狂子愛用のマテバリボルバーのモデルガン!

 いやいや…よく見ると銃が違う。

 以前持っていたモデルはマテバ2006Mモデルだった。

 対して今手にしてるのはマテバモデロ6(セイ)ウニカモデル。

 フレームに施された独特な彫刻エングレーブに、少し使い古されたアイボリーの銃把グリップは俺には見覚えがある。

 思いっきり俺の部屋にあった限定予約受注生産された真射子モデルじゃねぇかよぉ!?

 何普通に持ち出してるんだよ!?胸の谷間に挟んで持ちあるているんだよ!?


「ダメじゃない!?女の子が人様の前でむやみに肌を晒す物じゃありません!アナタはまだ二十歳にも満たない女の子なのよ!?そんなアナタを守るのも保護者である私の勤めなの!分ったら次からはこう言うことをしないと約束しなさい」

「…ホルダーが無いので由実に聞いたら、胸に挟んでおけば良いと言われたが、ダメだったのか。なら銃は全て手に持って歩くとしよう」


 再び胸から銃を取り出す狂子と、怒りながらも胸元を閉める我が姉。

 射的屋のオヤジの鼻から血が垂れているが、直ぐに気づいたのか鼻を拭き始めた。

 同じく剣斗君も鼻血を出したのか、小百合がハンカチで鼻を押さえて上を向かせてる。

 天然恐るべし!!


「では更にもう一万で五十発追加だ!合計百発で挑ませてもらう!さぁ、共に戦場へ向かうぞ!」


 目の前に差し出された銃、狂子が常に持ち歩いてるマテバ2006Mモデル。

 恐らくこれを使って撃てと言いたいのだろう。

 しかしな狂子よ、射的は専用のコルク銃を使わないとダメだ。

 きっとルールを知らないから銃を取り出したんだな、誰かがルールを教えてあげてくれれば。


「エアガンを持ってきてるのかい?良い物を見せて貰った礼に使わせてやりたいが、あいにくエアガンは色々とダメでね。専用の銃があるからこっちを使ってくれ」

「ふむふむ…これが本当に撃てるのか?弾を込めても銃口が塞がれて撃てなさそうだぞ?おお!?飛んだぞ!?ワインに付いているあれが飛んだぞ!?」


 適当に銃をいじくり回した挙げ句に、暴発してコルクが何処かへと飛んで行ってしまった。

 辺りが暗くなってきたから、取りに行くのは難しいだろうな。


「なら私も一万で五十発撃つ!ハイドにカッコいい所を見せるのと…動画のネタになる!お祭り企画開始!」

「おっ、お嬢ちゃん!?流石に子どもからこれは受け取れないな。お嬢ちゃんはこっちの五発で三百円の方にしときな」


 慌てながら一万円を換えそうとするオヤジだが、マコト先輩は頑なに受け取ろうとはしなかった。

 それ以上に子ども扱いされたことへの怒りが伝わってくる。

 射的屋のオヤジの事を睨んでぇ狙ってる!?

 銃口構えて禿げた頭を狙ってる!顔に怒りの表情ないけど怒ってるのが分る!


「おじさん!この小さいの、私より歳上だから全然大丈夫!」


 小さいのって、お前は歳上相手をこの小さいのって。


「私は頭にきたから勝負を挑む!今から三人でこの射的に挑む!私達が三人が景品を全部倒せたら他のも全部貰う、負けたら倍額払う!」

「面白い賭けだ。私は乗るぞ!」


 二人のテンションに押し切られる形で、賭けが始まった。

 五発千円の射的のルールは、引かれた線からはみ出さない様にして、ターゲットを狙い撃つもの。

 今までは色んな対策を取られ、こちらも攻略法を探してクリアしてきた。

 今回は遠距離と同時に、極小のターゲットを用意された。

 ターゲットは半分に折ったマッチに、色をつけて得点が付けられている。

 一回で景品が獲得出来ない上に、他にも銃にまでしっかりと細工が施す徹底ぶり。

 本来は狙撃銃ライフルが定番だが、かなり小さい形にされている。

 銃口バレルも通常よりも切り詰められ、簡単に言うならコルク銃をソードオフ・ショットガンにしたと例える方が良い。

 射程距離も大分短いだろうから、射撃時は発砲してからの落下も計算に入れておく必要がある。

 幸いショットガンと違い散弾銃ではないから、弾が飛び散る事はない。

 だとしてもコルク銃故に威力は弱いせいで、射程も大分小さいのが弱点だ。


「これをここからターゲットに当てれば良いんだな?よし試しに私から行くぞ!」


 作戦会議をする前に発砲する狂子。

 銃口から放たれた弾丸コルクは少し上を飛んで行ったあと、綺麗なアーチを描きながら落下していき、一番高い点数を持つ金色を落とした。

 やはり狂子は強運をもっているようだ。

 高得点で百点で、低くて一点だ。

 一番小さい挙げ句に殆ど当てるのすらスコープを使っても難しいであろうのに、簡単に当ててしまったのが凄い。

 まずはゲーム機一つ獲得点数をゲットした。


「次は私が撃つ。ハイドに私のカッコいい狙撃姿を見せて惚れ直させる」


 次に発砲したのはマコト先輩。

 強運を見せた狂子とは反対に、計算をしながら弾道を考えているようだ。


「…カメラセットするの忘れてた。カメラ!小百合カメラ!」

「カメラなら私の出番ッスよ!私のカメテクを舐めてもらっては困るッスから!」


 ビデオカメラを構えながら宣言する由実を見て、マコト先輩は再び集中する体勢に入った。

 静まりかえる中で引き金に置かれた指が後退したとで、銃口に詰められた弾丸コルクは発射される。

 その弾丸は確実に獲物目掛けて飛んで行き、見事にオヤジの光る頭に直撃した。

 オヤジに対してのヘイトが相当溜っていたらしく、これはこれで炎上間違いなしの動画になるだろう。

 人気ゲーム実況者、射的屋のオヤジを狙撃とかって。

 恐らく編集でカットはされるだろうが、俺は批判なんてしない!むしろグッジョブを送りたい!


「私を子ども扱いしたから集中力が切れた。だが次こそは一撃で仕留める!」


 今にもオヤジを仕留めようとするマコト先輩を制して、今度は俺が撃つことにした。

 まずは捨て弾で一発無駄になるが、自分での感覚を掴む為にとりあえず撃ってみる。

 とここで予想していない事態が発生した。

 発砲した瞬間に、狂子の方からも発砲音が鳴り響いてきた。

 ターゲットの方は綺麗に二つが倒れていることから、両方共当たったのだろう。

 ご満悦そうな狂子の顔と相反して、みるみると赤くなっていくオヤジの顔。

 これは予想以上に早く終わる可能性が出てきた。

 あとマコト先輩にはあまり頼る事が出来ない可能性も出てきた…ギリギリを外して、妙にオヤジに当ててるのが逆に凄い。


「射的とは意外と簡単なものだな。弾が大きいから、柘魔の撃った弾に当てるのが簡単だったぞ」


 超凄い技を身に付けちゃってたよ!?

 弾に弾を当てるなんて、ゲームとか映画でしか見たことねぇよ!?

 一体どういう視力があれば出来るんだ!?

 人生で驚愕した事のベスト10に入るレベルだよ!?

 ただでさえ弾に当てたのも凄いが、俺の弾と一緒にターゲットを倒すのも相当スゲぇよ!?


「それくらいなら私でも出来る。だけど今日は調子が悪いから、援護射撃をしてる」

「頼むぞ。私達二人が組めば、ターゲットを殲滅することなど容易いぞ!」


 俺が発砲する度に、タイミングを綺麗に合わせて狂子が発砲する。

 次々とターゲットが倒れていき、気がつく頃には殆どが倒れ、残す景品もあと一つになった。

 正直言うと残る景品は、取って来た景品に比べて高いと聞かれるとそこまで高くもなく、酷く言うとワゴンセールで安売りされているであろうゲームソフト。

 俺も既に所持しているから別に取る必要はない。

 しかしだ…後ろで剣斗君の目が妙に輝いている。

 まさかあのソフトが欲しいのか!?あの微妙過ぎる内容のロボットゲームが欲しいのか!?


「よし…これで終わりだ!」

「そんな…あの坊主以外にも景品を空にされた。もう商売あがったりじゃねぇか!」


 こうして俺達は勝利を収めた…大きい犠牲も払ったが。

 実際に俺と狂子合わせても、消費した弾数は半分も切っていない。

 マコト先輩は本当に調子が悪かったらしく、面白いくらいにオヤジへ被弾していた。

 もう二度と撃たせないとか叫ばせる程に、オヤジへの被害は絶大だ。

 落ちた弾を拾う間に新たに攻撃が来るから、もし俺も同じ状況なら全く同じ事を言うと思う。


「凄かったッスよ二人の連携!特に真手場先輩の射撃能力なんてヤバすぎッス!天才ッスか!?」

「あれは先輩が最高の形で撃ったから、真手場先輩が当てる事が出来たんです!だから一番凄いのは先輩で間違い無いです!」


 大はしゃぎをする由実と蘭華を置いて、剣斗君と姫華の前にしゃがみ込む狂子。

 すると突然、今回手に入れたゲーム機と一緒にソフトを二人に差し出した。

 俺が何か言うこともないが、手に入れた本人がそれで良いのならいいだろう。

 やることがあるとしたら、奢って貰った弾代を返しておかないといけないことだ。


「本当にいいの?これ、お姉ちゃん達が当てたやつじゃん」

「少年、私はあくまで射的と言う物を楽しみたかっただけだ。これはあくまで戦利品であり、私も沢山持っていても手に余すだけなんだ…だらか、二人で遊んでくれ」

「マジ?これで学校の友達に自慢できる!私このゲーム持ってないから超欲しかったんだよね!ありがとう真手場お姉ちゃん!」


 終わりよければ全てよしって事だな。


「今回は子どもに譲る。良い動画ネタも手に入ったから…だけどこの分はハイドに返してもらう」


 マジですか…このロリッ子先輩は。

 今日くらいは綺麗に一日を終わらせたかったのに、この人もやっぱり危険だな。

 もう目が本気…絶対良からぬ事を考えてるよ。

 まぁ…その時はその時で、対処方法を考えるか。


祭りで目的を果たす事が出来た柘魔達。

次回、恋に悩む剣斗君!?その相手とは一体!?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ