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三十六話 辛い過去を語るのは、どんなことよりも厳しい。

柘魔のことについて、真実を知る為に全員が集まった。

そんな中でもやはり、いつものように問題が発生していく。

 姉貴と夏美の誕生日に、かなり酷い目に遭わされたのだが、今日に関してはもっと酷い事になるような予感がする。

 俺達は今、わざわざ自分達の実家に帰還して、この話合いが持たれている。

 集まったのは昨日誕生会に集まったメンバーと、生徒会長とマコト先輩だ。

 どこから漏れたのか、この話合いをする事を二人は知っており、学校帰りに着いて来られてしまった。


「それじゃあ、始めるわよ。最初に放しておくことがあるとすれば、私達の両親についてね」


 リビングに集まった俺達を仕切り始めた姉貴は、俺達の親による扱いを語り始めた。

 小さい頃から両親は姉貴が優秀なのを自慢として、俺はその姉貴よりは劣るから、よく説教される事が多かった。

 例えテストで98点とれたとしても、ケアレスミスを激しく責められた。

 元々両親は完璧主義故に、完璧過ぎる姉貴はいつも褒められている事が多い。

 対しての俺は笑っても笑い返してくれるどころか、勉強等をして入れば良い、姉を目標に常に努力しろと言われ続けた。

 両親は俺の事は、あくまで姉貴に何かあったときの為のスペア程度にしか思われて居ないだろう。

 その事を姉貴も幼い頃から気づいていたらしい。


「私達の両親は、タッちゃんに対して冷たかったわ…だから私はいつも一緒に居たけれど、この子は幼い頃にグレてしまったの…まぁ、私も少しはやんちゃしていたけど」

「あの有名な怪獣バーサーカーッスね。小学生にして、相当な悪ガキだったって聞いたッスよ」

「悪ガキは間違いだ。春魔は確かに喧嘩好きだったが、途中からはイジメッ子相手にしか喧嘩はしてない、それは俺と夏美が見てきたから間違いない」


 由実の言うとおり、俺は確かに有名な悪ガキだった。

 喧嘩をするのが日課だったし、学校でも喧嘩すれば蹴り一つで決着がついた。

 大抵相手が泣き出して終わり、相手に非があっても泣かせた方が悪い。

 突然後ろから頭を殴られて、腹パンされたから蹴り返しただけで、理不尽にも正当防衛すら認められない。

 それで親からも大きく見放されて、余計に勉学に身を入れる様に言われた。

 元々姉を見習えと言われて、俺は強い姉貴に憧れた結果、蹴り技に集中した。

 強くなりたくてそうなった…言われたとおりに勉強だって頑張ってきたさ。

 だけど…どうやっても姉貴を超える事は出来ないから、両親からはキツく当たられる毎日だ。

 いつからか…両親は家に居なくなり、学校にも誰も来なくなった。


「姉弟姉妹で差別される辛さは分ります。私も、姫華と全然違い扱いをされてきました」

「今で言う所の毒親だよね…ウチの親って。結局は、私も猫に比べて見捨てられたようなものだけど」


 蘭華達の家もそうだ…両親から蘭華は興味すら持たれてなかった。

 いつも姫華ばかり可愛がられて、学校でも家出も居場所がなかった。


「でも私は、あの時に先輩と出会えた事で、自殺をしなかったんです。ずっと家に帰らずにネカフェで生活をしていた私に…本屋さんで優しくしてくれた先輩が」

「ネカフェ代の殆どは、私が負担してたッスけどね。一応毎月は帰って来てるけど、ウチの親に感謝は忘れないでよ?頼み込むの大変だったから」


 以前から気になっていた蘭華のネカフェの金は、やはり由実の方から出ていたのか。

 結構な金額になっただろうに、友情って時には凄いな。

 俺の場合は基本的に夏美の世話で金が飛ぶから、聞いていたら俺って、ある意味奴隷なのかと思えてくる。


「由実ちゃんは蘭華ちゃんと話す時は、口調が変わるのね」

「そうッスね、どうも蘭華とはタメで話せるッスけど…他の人だと妙に緊張してこの口癖が出るッス」


 なるほどな、俺も一度聞いてみようと思っていたが、すっかりと忘れていた。


「ちょっと、話が違う方向に行ってる。今は違う話ですよね?私は真実が知りたいんです…だから皆がここに集まったんじゃないんですか?」


 別の話に進んでいたのを、小百合によって全てが戻された。

 本当のところ、実家に帰ってきて自分の過去を話すなんて事は、したくはなかった。

 良い思い出だってあるが、両親との記憶は思い出したくない物ばかりだからだ。

 いつも比較されて、次第に相手にすらされず、話掛けられるのは遊んでいる時だけ。

 それも勉強をしておけば良い、出かけるから夏美の相手をしていろ、ゲームなんかより辞書を買えと。

 唯一の楽しみと言えば、夏美と浩寺、そして姉貴と遊ぶ事だった。

 信用出来る仲間と、怖い姉が居たからこそ、不良とまでは行かなかったのかもしれない。

 実際に姉貴の友人でヤンキーとかは居たが、次に会ったときはまともに変わってたし、本能的に察したんだろう。

 髪を染めたり、ピアス開けたりしたら、半殺しにされるって。

 あとは…やっぱり魔銃淑女の真射子も、強く影響してるだろう。


「もしやと思ったから聞きたいのだが、柘魔は恋するのが怖いのか?それとも誰かに止められたりしているのではないか?」


 一斉に視線がこちらに集まると同時に、何かを思い出したのか、青ざめ始める。

 同時に俺は狂子の言う事には驚かされていた。

 彼女の発言した予想は、その半分が当たっていたからだ。


「先輩って元アニオタッスよね?テレビであのシーンがあったせいで、ショックのあまり卒業。でも学生にしてはグッズの持ちが良すぎるのが、気になってたッス」

「言われてみると確かに。何度か家に行ってるけど、部屋の中にフィギュアとか凄いあった…フィギュアって結構するんでしょ?マコト先輩は詳しいですよね?」

「物によるけど、魔銃淑女関連は前はオクでもかなり高騰してた。今はテレビの影響で視聴率激減の上で、PTAとから苦情が殺到して、離れたファンも多いらしい…あれアニメオリジナルだから、原作者も可哀想になってくる」


 三人で新しい考察が開始されてる!?


「だが柘魔がアニメから離れてくれたおかげで、私にもチャンスが訪れると言う事だな」

「このチャンスは逃せません。またオタクに戻って仕舞う前に、先輩の心と竿を我が手にします!」

「あ、愛神さん!?貴女、い、なんと言いました!?不純異性交遊は拘束で禁止されています!狂子も同様に、私の目が黒いうちは認めませんからね!」


 また別の所で三人によるやりとりが開かれてる。

 俺はある意味取り残されてしまったようだが、浩寺や夏美もどうしたら良いのか、首をかしげる始末だ。

 姫華に関しては…興味事態がないらしく、ウチのテレビで映画を見てる。

 別に勝手に見てくれて構わないんだけどさ、チョイスが少しばかり渋くないか?

 宇宙大怪獣ギララって、完全に世代が違うだろ。

 俺も世代が違う上に、産まれてすら居ない時代の作品だけどさ。

 もう少しメジャーなゴジラを選ぼうぜ、マニアック過ぎる…俺が言えた事じゃないけど。


「ちょっといい?浩寺君と夏美ちゃんも一緒に来てもらえない?多分、皆は話し合いに夢中みたいだから」


 姉貴に連れられて、二階の部屋に俺達四人は集まった。

 この状況になるのは本当に久しぶりで、何年ぶりだろうか。

 ベッドに夏美が内股でくつろぎ、座椅子には姉貴が体育座りの様な形で座る。

 浩寺は壁によたれ掛る形で座り込んで、俺が机の背もたれに腕と顎を乗せて座るこの光景。

 自分が自分で、何年経っても決まった場所が存在する。

 子どもの頃から俺の部屋か姉貴の部屋でも、全く同じような状態になる。

 全員が部屋に入った瞬間から、自分の居るべき位置へと、無意識に進んで行く。


「急にどうしたの?少し顔色悪いよ?なんて言うか、青白いけど」

「やっぱりそう見えるのね…私自身、ある事を思い出した瞬間に、血の気が引く思いをしたの。私達の両親が昔…タッちゃんに言い聞かせていた事を」


 青ざめた顔で話し始めたのは、俺達がまだ小学生くらいの時に遡る。

 それは姉貴が部屋で勉強をしており、俺は両親からリビングに呼び出されていた。


「私は勉強の合間に、飲み物を取りに階段を降りていったの…タッちゃんは丁度、両親と話をしていたわ。その時に聞こえてきたのは、タッちゃんへの厳しい決まり事ばかり…特に、将来に関しては聞いてたのよ」

「ここから先は俺自身で話す…正直、姉貴はまだ知らないと思ってたんだけどな。姉貴が見たってのは…親父達が、俺には将来結構とかはせずに、姉貴の身に何かあれば待機しろって言われた事だ」


 驚いた少し驚いた顔に変わる浩寺と夏美だが、大きいリアクションまでは取らなかった。

 二人もまた、ウチの両親の事を知っているからだろう。


「元々俺は、姉貴のスペアとして両親が作った子どもだ。だからガキの頃から何かあったときの為にって、言われ続けたんだよ…だからオタクになるのが、俺の逃げ道だったって訳だ」

「そういや…オタクになってから、喧嘩とかしなくなってたな。もしかして、アニメグッズを沢山買うことが許されてたのは、春魔が誰かと恋愛等をしない様にするための手段って事か?そんな酷い話があるかよ!?」


 怒りをあらわにする浩寺に対して、俺は頷いた。

 するとその場で姉貴は顔を覆いながら泣き始め、夏美は枕を床に何度もたたきつけ始めた。

 まるで嘘の様な話だが、これが俺達の両親がやってきた事だ。

 グッズを買うことを許されたのも、全部が俺に恋愛等への感情を向かわせない為だ。

 この話をしても、狂子達は信じるのだろうかと、不安だけが残ってる。


「人間ってのはよぉ…何年も続けられると、感覚ってのは麻痺してくるもんなんだよ。小さい頃から、念入りにやられた結果がこれだ」

「信じられない…じゃあ私の親も…それを黙って見てたって事?家族ぐるみだから、知ってんでしょ?私だけ仲間ハズレにされてたってわけ?」

「それは違うだろ!悪いのは大人達で、春魔や秋恵さんは関係ないだろ。俺だってこの事実には驚いてるが、なんて言えば良いんだろうな」


 神妙な空気になりかけていた時に、誰かが扉を思いっきり開けた。

 入り口に立っていたのは、狂子と小百合。

 凄い勢いで入ってくる二人は、俺の前に立ち、もう一度詳しく話す様に言い始めた。

 二人の顔は強ばりつつも、静かにもう一度同じ話を、分りやすく説明した。

 思った通り、二人の顔は少しずつ怒りの表情に変わっていくのだが、途中から狂子に椅子から立たされた。

 そして一瞬にして、謎のツームストン・パイルドライバーを決められたが、理由が全然分らない。

 咄嗟に姉貴がクッションを投げ入れてくれた事で、首を壊さずに済んだまでは良かったが、今度は小百合の足4の字固めを決めてくる。

 かなりきつい状況だが、ここで新たに問題が発生する。

 狂子も同じように足4の字固めを決めようとしたのだろうが、首に掛けてきた。

 形としてはある、しかし狂子の向きが逆のせいで大変な事になってしまった。

 こちらの口が股に塞がれた上で、喉までしっかりと足で固定されているから、鼻ですら呼吸が難しい状態になっている。

 タップをしてもただ狂子の尻を叩いているだけで、本人はこれの意味を理解してるのかすら怪しい。


「私は認めないぞ…私は、そんな事を認めないぞ!柘魔の両親が…柘魔の両親が反対したとしても、私は絶対に諦めないからな!」

「私だって…私だって、その考えを改めない限り、この技を解く気はないから!アンタの人生ならアンタが決めるべきでしょ!?親がどうとか言う前に、自分の考えで生きてよ!」


 返事をしたいのだが…狂子のせいで声が出せない。

 足の骨も大分ヤバい事になってきてるが、意見どころか意識が大変な事になる。

 このままだと落とされる…周りを見ようにも何も見えない。

 多分足が折れるのに三十秒も掛らないかもな…誰か止めてくれるのを待つか。


「二人共、その辺にしておきなさい。あちょっと、貴女達、何をする気!?」

「技がなってない!足四の字固めは相手の顔を股で覆わない!退け!私が手本を見せる!」


 一気に足がほどけて、倒れ込む狂子が見えた瞬間に、先ほどよりも強い力で首を絞められた。

 声からしてマコト先輩なのは理解出来るが、流石は元レスラーの娘、技のキレが違う。

 足の方にも一度技が解かれたはずなのに、また別の重みが感じるので見てみると、やはり蘭華がまたやらかしていた。


「愛神さん!?貴女は本当にいい加減にしないと怒りますよ!?」

「怒られる筋合いはありません!まさか先輩を生徒会に入れる真の目的は、私と先輩を引き離す為ですか!?最低です!とんだ悪女です!」


 自分でやってる行動を鏡で見てみろ!お前は逆にケダモノだぞ!?

 あとマジで首の方が限界だ、このままだと外される可能性も出てくる。


「た、タクが死にかけてる!ヤバいってば!顔が青じゃなくて紫になってる!」


 珍しく夏美に助け出されたが、姉貴は狂子を抑え込んで、浩寺は小百合を落ち着かせていた。

 この中で止められたのは夏美くらいなのを理解出来たが、姫華が居ないのは、まだ下で映画でも見ているのか?


「し…死ぬかと思った。連続で二回も首を絞められるなんて、人生で初めてだ」

「私が、私がハイドに勝った!今日から私がハイドと公認で付き合える!」

「ハァ!?アンタはタクを殺そうとしたでしょ!?」


 夏美、お前も夜中に俺の首を絞めたのを忘れたか?


「ウチの高校の生徒会はなんなんですか!?おかしな人しかいないです!まだ私の方がまともです!」

「どう考えても貴女は我が高の問題児の一人です!三年感生徒会をしてきましたが、貴女のような生徒は初めてです。これもまた、春咲柘魔!貴方が全ての元凶です!」


 それから俺の部屋の中で、変な修羅場と呼べる様ななんとも言えない戦いが繰り広げられた。



 実家に集まったと言う事で、久々にリビングで食事をする事になった。

 俺と姉貴、姫華と小百合で出かけたまでは良かった。

 まさか帰ってくると、家の中がまた戦場へ変わっているなんて、思いもしなかった。

 家中にBB弾が散らばり、狂子と蘭華と夏美がリビングで撃ち合いをしている。

 瞬時に姉貴(ハンター)が三人を仕留め、説教を始めた。

 三人が手にしていた銃は全て、俺が押し入れにしまっておいたはずの物だから、恐らく部屋を漁ったのだろう。

 また夏美はトリガーハッピーを発動してるしで、蘭華は女スパイを真似てか、胸の間にコルトパイソンを挟んでる。

 狂子は…珍しくそっぽ向いてるな、反省の色は無しか。


「二人は二階の様子を見てきて…たぶん、この子達の事だから、嫌な予感がするわ。姫華ちゃんは、映画の続きを見てて良いわよ」


 言われるがままに、俺と小百合は二階へと向かう。

 すると姉貴の部屋からマコト先輩と生徒会長、俺の部屋からは由実と浩寺の声が聞こえてくる。


「私は会長達を見てくるから、アンタは大島達を見てきて」

「了解。もし姉貴の物に何か悪さしようとしてたら、その時は頼む…相当荒れるだろうからな」


 もしそんな事にでもなった絞まったら、夕飯を食べる時間なんて一切なくなる。


「んでよくここで、春魔とベイ○レードをしてたんだよ。そしたらママゴトをしたかった夏美が、回ってる状態のを両手に掴んで、窓から全力で放り投げ事件があってさ」

「昔からかなり過激だったッスね。今でもかなりそうだとは思うっすけど、学校の方では落ち着いてるか心配になってくるッス」


 恐る恐る部屋の中へ入ると、由実と浩寺は仲良くゲームをしていたが、それは俺のゲームなんですけどね。

 こちらを一度だけ見たが、直ぐにゲームへとむき直すなんて冷たい。

 ここは俺の部屋のはずなのに、なんでこの二人は我が物顔で使ってるんだ?

 考えてみたら、俺の部屋中にBB弾が散乱してるのは、下の三人が原因か?


「そういや昔春魔と夏美、小学二年までだったかな…秋恵さんも一緒に風呂に入ってたんだぜ。信じられないよな?」

「超とくダネじゃないッスか!?これでまた部室の先輩に圧勝ッスね。ジュース一ヶ月分の奢りは私の物ッスよ!」


 この野郎、さては姫華と一緒に買い物に行ったことを僻んでやがるな。

 料理をする関係上、俺と小百合と姉貴が担当だから仕方ないだろうに、全く浩寺(こいつ)は子どもが絡むといつもこうだ。

 そっちがその気なら、こっちにだって考えがある。

 もちろん浩寺にとってのダメージになることで、由実にとっては相当食いつく事だ。


「浩寺はどっちかというと、蘭華の裸より姫華の方を見たかっただろ」

「当たり前だろ!?この世にロリに勝てるものなんて…あ、春魔!嵌めやがったな!?」


 ゲームコントローラーを投げ捨て、掴み掛かってくる浩寺。

 同時に俺の方も掴み掛かるが、先に仕掛けて来たのはそっちだ。

 すっかり忘れていた事を、よくもまぁ覚えていたよ。

 当の本人ですら忘れてしまっているのに、微妙な事だけを覚えてるんだよな。

 正直これは隠しておいてやろうと思っていたのだが、嫉妬で編に攻撃してくるからだ。

 俺から言わせれば、自業自得と言う事だ。


「なるほどなるほど、徳江先輩はロリコンだったと。蘭華が随分とご立腹だったッスけど、これはこれで複雑な気分になるッスよ…まさかイケメンの先輩がロリコンだったんて」

「待ってくれ、頼むから言いふらすのだけは勘弁してくれないか?ただでさえ学校で変な噂が立ってるだけで苦労してるのに、俺がロリコンだってバレると居場所がなくなる」


 本気で頼み込む浩寺と、ニヤニヤと不敵な笑みを浮かべる由実。

 浩寺の方は観念した方がいいだろうが、俺も一応は口止めはしておくつもりだ。

 学校内でロリコンという事実を流されると、こちらも色々と後味が悪い。

 現在は浩寺の学校での扱いは、多少腫れ物に触れるような状態で、俺に近い状況だ。

 一日で俺の辛さが分ったと言ったから、少しは理解したのかと思えば、なんでこうなるんだ。


「浩寺のロリコンという事実はどうでも良い。二人に聞くが、どうして下の三人を止めなかった?」

「えっとッスね…止めたッスよ?ちゃんと止めたッスけど…なんせこちら目掛けて乱射してくるッスよ?丸腰で勝てないッスよ」


 言われてみると、俺でもエアガンを持った三人には勝てない。


「逆に先輩の部屋にエアガンが沢山あるッスか!?戦争でもおっぱじめる気すか!?私結構な痣が出来たッスよ!?本物なら穴あきチーズどころか完全な蜂の巣ッス!」

「そうだ!全部春魔が悪い!お前がエアガンを大量に買うからこうなったんだ!」


 全て俺の所為にしてるけど浩寺よ…あの中にはお前から預かってる品も幾つかあるんだが。

 壊されたとしても、俺のじゃなければ別に良い。

 とりあえずこっちの二人は問題しと言う事だが、小百合が見に行った二人の方はどうだろうか。

 下にいる三人もどうなったのか気になるところではあるが、姉貴がいるから問題はないだろう。


「別に俺が悪いでもいいけどよ、せめて連絡くらいしてくれ。姉貴が下でガチ切れしてるから、二人にも被害が行くかもしれないぞ」


 青ざめながら見合わせる二人をおいて、俺は部屋を後にした。

 次に向かう場所は姉貴の方の部屋だ。

 小百合が見に行ってから、音沙汰がないので何もないのかもしれないが、念の為に確認をしておく。

 もし何かされていたなら、もう俺には手に負えない。

 その事を願って、扉を開ける。


「春咲柘魔。貴方もここに来て、正座をしてください」


 三人は寛ぐというには、とても堅苦しいような、正座で過ごしていた。

 一体何をしたいのかまでは理解出来ないが、とても静かに凄いしていたのかもしれない。

 確認しに行った小百合本人すらも、一緒になって正座をしてるのだから。

 周りを見わたしても荒らされた形跡などはなく、趣味で集めていた人形も、位置などはずらされていなさそうだ。


「あの、一体何をなさってるんですか?」

「ここは元生徒会長のお部屋、それも我が高の新たな時代を築きあげたとも言える偉大なる春咲秋恵元生徒会長の…神聖なる、まさに聖域とも呼べる城です」


 俺はときどき、この人が何を言っているのか全然分らなくなる。

 見た目は真面目そうなのに、急におかしな事を言い出すからな。

 小百合を見ても、申し訳なさそうな顔しかしない。

 止める事が出来なかったということで、間違いはなさそうだ。

 悪さをしなければ、別に言う事はないのだが、時折深呼吸をするのはなぜだ?


「皆、ここの空気を存分に吸うのです。完璧なる生徒会に近づく事ができるのです」


 新たな怪しい宗教が誕生した!?

 完璧なる生徒会って何!?姉貴の部屋の空気なんて吸っても何もないって!


「私はここの空気より、ハイドと一緒の方がずっと完璧になれる。特にこの契約書にサインして、ある場所に出せばまた完全体に」

「それ、婚姻届けですよね?マコト先輩は出せても、柘魔の場合は年齢的に出せないのでは?出そうとしても止めますけど」


 突如取り出された婚姻届けには、既にマコト先輩の名前が書かれていた。

 あと小百合が俺の名前を呼んだのって、始めてだな。

 少し違和感があるが、別に気にするような事でもないな。

 俺が狂子を名前で呼ぶように、仲が悪いわけでもないからだ。


「不純異性交遊は認めません。高校を卒業してからならば、私は何も言いませんが、貴方達はまだ高校生です…今は勉学に励むときではなくて?」

「だけど静子は狂子がどうとか、一人でブツブツ言ってる時がある」

「確かに…生徒会長、たまに外を眺めながら言ってますね」


 生徒会長…やはり危ない人なのか?

 色々と危ないような雰囲気は感じていたが、末期寸前までいってるとは。

 深いため息を着くと、一緒に小百合とマコト先輩まで着き始めた。

 もう二人の顔も若干呆れ始めているが、マコト先輩は人の事を言えない気がするんですが。


「二階に行ったっきり、なかなか戻ってこないと思えば、人の部屋で何をしているのかしらね?なにやら楽しんでいた様子だけども」

「も、元生徒会長!?これには深い訳がありまして…そうです!春咲柘魔が私達を部屋に連れ込んだんです!新たな生徒会を制作するぞって良いながらでしゅ!」


 生徒会長ォォォォ!?このアマァァァァ!!

 混乱してるとはいえ、俺の所為にするな!!

 姉貴の方も信じてないと思うが、目が凄い光ってるように見える!?

 少しだけ疑ってるのか!?俺そんな事しないって!

 いくら混乱してるからって酷すぎるだろ!?

 下手をすれば半殺しにされるんだぞ!?半殺しだぞ!?

 徐々に不安になってきたせいで、全身が小刻みに震え始めて来た…まさに全身でビートを刻んでる。


「誰が嘘を言って居るのかなんて、見れば大体分るわ…それくらいの事が出来てこそ、真の生徒会長じゃないの?嘘を見破る以前の問題に気づきなさい」


 静かに姉貴は生徒会長の元へ近づき、正座をしたと思った瞬間だ。

 突然倒れ込む生徒会長。

 額には赤い痣が出来ており、目の前に正座していた姉貴の手は、デコピンの形をしていた。

 つまり姉貴が放ったデコピン一発で、生徒会長はダウンしたと言う事だ。

 やっぱり俺の姉貴は…人間じゃねぇ。


「今日はせっかく実家に帰って来たのだから、バーベキューにでもしましょうか。タッちゃん、浩寺くんと一緒に準備してくれるかしら?場所は分るでしょ?二人は下で、三人が下ごしらえをしてるかの確認をお願い」


 三人でそっと部屋を出て行き、俺の部屋にいる由実達を連れて一階へと降りて行く。

 台所では買って来た食材を切っている三人がいたが、こちらに気づいた瞬間に、蘭華と狂子が縋り着いてくる。

 二人の目が真っ赤になっているところを見るに、泣いていたのだろう。

 がっつりと怒られたのは分るが、自業自得過ぎて言う事がない。

 リビングは綺麗になっているのだが…奥の方で夏美が睨み付けてきてる。

 そんな睨み付けても意味がないだろう。


「柘魔…オニオンをカットすると、涙がでるというのは本当だったんだな。いつもこうしてカットしていたなんて、私は感動した!料理をする人を尊敬するぞ!」

「目が痛いです!先輩!目薬さしてください!もちろん膝枕でお願いします!」

「目薬は棚の中に入ってるから自分でやれ。あとタマネギを切るときは、水道から水を流しとくと良いぞ」


 蘭華と狂子を引きはがして貰い、俺達は外でバーベキューの用意を始める。

 小百合とマコト先輩と由実には、三人が何か問題を起こさないように見張って貰うことにした。

 するとマコト先輩が、こちら手伝ってくれるというので、椅子を運ぶの頼んだ。

 俺と浩寺は物置からバーベキューコンロをやらを運びだしたのだが、途中から浩寺のヤツがよそ見を始めた。

 また幼女でも見つけたのかと思ったが、視線の先には一生懸命に椅子を運ぶマコト先輩。

 遠くからみれば確かに、小学生が親の手伝いをしている様にも見えなくもない。

 なるほどなぁ…これなら合法にロリを堪能出来ると言う訳か。

 ある意味考えて来たな、流石は俺の親友なだけの事はある。


「富閖野先輩って、遠くから見ると…結構可愛いかもしれないな」

「だったら告白してこいよ。お前が夢が叶うんだぜ?」


 どうしてそこで渋い顔をする?


「そうなんだけどよ…何というのか、あの先輩って表情が全然ないだろ?どうしてもそこが残念なんだよ」


 言われてみると、最初の頃は確かに表情が無い様に思えた。

 だがいつからだ?俺が普通に表情を見分けられるようになったのって?

 気がついた頃には無表情の中からでも、多少なりとも感情を理解が出来るようになっていた。


「別に表情がなくても、困る事なんて全然ないぞ?気づけば、見ただけで言いたいことくらいなら伝わってくる」

「…まるでペットと信頼を気づいた飼い主みたいなことを言ってるぞ。お前にとってあの先輩は、ペット同然なのか?」


 頓珍漢な寝言をほざく浩寺の尻に、重い一撃を入れた後に、一人でコンロを庭へと運んだ。

 親友が間違ったことを言ったら、正しててやらないとだめだ、それが暴力を使用してもだ。

 問題は…親友じゃない相手の上で、先輩だとこれが出来ないというところ。

 久々に腰にしがみつかれたと思えば、腰にマコト先輩がホールドしてくる。

 小さいからコアラでもぶら下げてる気分になるが、本当にぶら下がってるのか心配になる…軽すぎるからだ。

 蘭華はいつも引っ付くと、大体が引きずりながら進むことになる。

 だがマコト先輩の場合、小さいから足が地面にギリギリつかないで、ぶら下がった状態になってる。


「頑張ったから今日はハイドを独り占めにする。一緒に過ごして、一緒にお風呂に入って、一緒のベッドで寝る」

「そういうのは本当に良いんで、やめてもらえませんか?マコト先輩には感謝してるので、特別に最高の焼き具合の肉を提供するんで」


 もちろん離れることはなかったが、言動に少しだけ落ち着きが見えた。

 かすかに何かを啜るような音が聞こえたような気もするが、知らぬが仏ということわざがある事を思い出す。

 俺はこの状況を逆に考えることにする…これは新しい筋トレだと。

 持久力を上げるための、重りを腰に取り付けているのだと。

 言わばタイヤ引きと同じだ。

 そう思い始めると、作業は素早く終わっていく。


「こっちの食材準備も終わったッスよ。おお!かなりデカいヤツっすね!こんだけ大きいなら、全員分焼くのも余裕ッスね!」

「姉貴が友達と使ってたヤツだったんだが、まさかこんな形で役立つことになるなんてな」

「そうねぇ、友達と夏はよくここで焼き肉とかしていたのを思い出すわね」


 下準備も終わり、姉貴の指導の下でコンロに火を着けて、本格的にバーベキューを始める。

 途中で蘭華がマコト先輩とポジション争いを始めたが、肉が焼けるとそっちに食いついた。

 隣では狂子と姫華がピーマンと睨み合いをしつつも、ちゃんと食べる姿は偉いと思った瞬間に、どこかへと走って行った。

 生徒会長は肉の焼き具合を伺っているようだが、たまに俺の方をチラ見するのをやめて欲しい…小百合も心配してる様子だ。


「昔を思い出すわね…南達も良くここで、タッちゃん達と一緒になってふざけたり、花火をしていたのよね」

「ああ…やってたよ。あの頃は楽しかったな…親父達が居ない時に、本当の息抜きで楽しかった」

「ねぇ、確かうちの近所ってもうすぐお祭りとかあったよね?よくタクが射的で景品を根こそぎ持ってってたじゃん。あれ行こうよ!高校行き始めてから行ってないでしょ?」

「あったあった!春魔が行くたびに店主半泣きにさせるからって、毎年難易度上げてくる射的屋だろ?だったら真手場先輩とお前が組めば、射的屋が潰れるかもな!」


 夏美と浩寺の話を聞きつけた由実が興味を持ち、周りに話した事で、近所で近々やる祭りに行くことになってしまった。

 二人の言うとおりに俺はよく射的屋の店主を、半泣きにさせていた。

 最初は普通にやっていたんだが、子どもながらに悪戯心でふざけたら、景品が面白い程に取れてしまったのが始まりだ。

 それから毎年、俺と店主による戦いが始まっただけのこと。

 今年は久々に祭りで戦いになりそうだ。



柘魔の過去を知った皆だった、それでも皆の思いはさほど変わることはなかった。

次回、近所の祭りに大勢で参加。

そこでも恒例のトラブルが待っている!柘魔と狂子による最強狙撃コンビ誕生!?更なる新展開はあるのか!?


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