第三十三話 人間誰しも、完璧とは言えない。
ついに学校が始まった。
だが登校初日に、柘魔を待ち受ける者達が居た。
昨日で夏休みが終わり、今日から学校が始まったわけなのだが。
俺はどうして…放課後に生徒会室に呼び出されてるんだ?
夏休み中に問題行動なんて起こした覚えは…あり過ぎるな。
いつになく三人の顔も真剣だしで…まさか狂子が現在俺の家に居候する事が、バレてしまったのか!?
それに登校初日から、顔に大きいガーゼをつけて来てるからな。
登校中もそうだったが、教室内のざわつきようと言ったら凄かった。
浩寺のヤツは、夏美から愚痴られでもしたのか、かなり詳しくしっていたしな。
ただでさえそれでテンションが下がってるのに、生徒会室に呼び出されるとか、余計に下がるってものだ。
「春咲柘魔、折り入ってお話があります。貴方は、生徒会所属の小百合の事を、どうお思いですか?そして顔に付けているガーゼについて、説明を求めます」
真面目な顔で言う生徒会長、その隣には不満げな顔のマコト先輩と、顔を赤くしながら俯く小百合。
現在の置かれている状況を飲み込めずに、俺は答える事すら出来ない。
とくに傷についての説明を求められるのは…なんて答えたら良いのだろうか。
幼馴染みに引っ掻かれました…いや、それを言ったらなんでその状況になったか問われる。
姉の友人が飼っている猫に引っ掻かれたとでも言うか?
とにかく最初の質問の意味すらも理解出来ていないのだから、答えに困ってしまう。
これから学校が終わって帰ろうとしたら、突然放送が流れ始め、生徒会室に呼び出されたわけだ。
蘭華と狂子もついてくると言ったが、生徒会長達が入り口で追い返した。
だから今、この生徒会室にいるのは俺達四人だけ。
「質問の意味がよく分らないのですが?」
「質問の意味が分らないですか…ではこう言えば分りますか?貴方は小百合の恥ずかしい一面を見たわけですから、どう責任を取るのかとと聞いているのです」
責任を取れと言われましても、海で起った出来事というのは、事故としか言えない。
「私とマコトは今年で高校最後になります。その後は、我が生徒会に残っているのは小百合ただ一人…私達が居なくなった後の生徒会をどうするかが、今後の問題なのです」
言われてみれば、二人は今年で三年生最後。
来年には卒業をしてしまうわけだ…そして生徒会は現在三人だけしかいない。
つまり、二人が卒業をしてしまえば、生徒会に残っているのは小百合の一人だけになってしまう。
俺の学年には生徒会に所属している人物は、何故か一人もいない。
きっと皆、面倒くさそうという理由でやらないからだろうな。
「よって私達が考えた結果。春咲柘魔、貴方を再教育する事で…次の生徒会長の座を受け継いで貰います」
「ハイドなら絶対に問題なく引き継げる!力と暴力を駆使して、この高校に帝国を築きあげられる!」
力と暴力で支配する生徒会って、もう問題点だらけじゃねぇか!?
あと帝国を築きあげるってのはもう既に、学校生活を送るとかのレベルじゃないじゃん!?
生徒会の話だよね!?学校を世紀末に変える話じゃないよね!?
もう別次元の話と化してる気がするんだけど!?
焦り出す俺と同様に、生徒会長と小百合も一緒に、マコト先輩を見つめ始めた。
「ま、マコト?それは流石に違うかと…私達の目的は、秋恵元生徒会長の弟である彼を再教育して、安心して卒業すると言う事が目的で」
「…なら私は留年する!ハイドがしっかりと帝国を築きあげられるまで、私もハイドと共に生徒会に残る!」
「ちゃんと卒業してください!マコト先輩、ただでさえネットで顔を知られて居るのに、再び留年なんてしたら色々と危ないですよ!?」
三人で言い合いを始めているが、その間の俺は静かに眺めているだけだった。
完全に置いてけぼりにされてしまった俺だが、生徒会長の話していた事を、ここで深く考え始める。
生徒会長の話によると、俺自身を再教育することで、自分の後継人に仕立て上げようとしている。
その理由としては、俺が元生徒会長をしていた姉貴の弟だからだそうだが。
別に姉が元生徒会長をしていたからと言って、弟も同じくやると言うのは全然理解が出来ない。
元々俺たち姉弟は根本的に、出来が違い過ぎる故にどれほど比べられて来た知らないから、簡単に言えるんだろう。
姉貴は確かに優秀だというのは知っているが、同じ事を俺に求めないで欲しい、つか無理すぎる。
「このままではマコトも心配で、卒業が出来ないと言っているのです!貴方の責任で、一人のこれから先へ進む未来への経歴へ傷がつくのですよ!?」
「会長!何を言ってるですか!?それだと脅迫しているのと同じです!もう殆ど責任転嫁してるようなものですって!」
激しくなる争いを見せつけられていたが、平行線で進まないと判断したのか、小百合が俺の手を引きながら飛びだした。
入り口付近で狂子達が居たようにも思えたのだが、気にする暇もなく引っ張られていく。
周りの目などを気にせずに、ただただ力強く手を握りながら、学校を後にしていた。
そしてしばらく歩き続け、連れて行かれた場所はDVDレンタル店。
ここをチョイスした意味が分らないのだが、止ることもなく店内へと連れて行かれた。
「ごめん…会長とマコト先輩が、色々と勝手な事ばっかり言って。止めようとしてみたんだけど…二人が相手だと、私じゃどうすることも出来なくて」
「俺に謝る必要なないし、悔やむ必要もない、むしろ俺はお礼を言いたいくらいだよ。あの状況から連れ出してなかったら、続きを考えるだけでも恐ろしい」
ただただ小百合には感謝しかない。
あの生徒会長がやりそうな事を考えると、再教育と言う名の洗脳とかしてきそうだ。
もしかしたら、メタ○ギアのオセロッ○がやってた、他人の人格を植え付けるヤツとか。
見た目からは想像出来ないだろうが、あの生徒会長ならやってのけるだろう。
隣にマコト先輩がいれば、確率は更に跳ね上がる事間違いなしだ。
「つい癖でここの店に来ちゃったけど…どうする?このまま学校に戻っても、会長に捕まるだろうし…多分アンタの家の方は、秋恵先輩がいるから安全だと思うけど」
姉貴が居るから安全か…そう思っているのなら残念だが、今日は留守にしてる。
いつものメンバーで久々に買い物の後、飲んでくるって言っていたからな。
あのメンバーで飲みに行くとなると、帰りは夜中または朝方になるだろう。
南さんが相当な酒豪らしいから、ハシゴさせられるんだろうな。
以前にも愚痴っていた程だ、財布が空っぽになるのが早かったって。
「確かに姉貴がいれば安全だろうが、今日に限って出かけてる。しばらくの間は帰ってこない」
「そっか…一つ提案なんだけどさ…実は今、家に親居ないんだよね。てか三日くらい居ないんだけど」
こ…これは、漫画とかで読むあの展開か?
親が居ないから、家に来ない的なあれか?
「映画鑑賞でもしない?嫌なら別にいいんだけど」
「映画鑑賞か…俺は全然良いが、そっちの方は大丈夫なのか?俺と二人っきりになるわけだろ?」
二人っきりと言葉を聞いた途端に、顔を赤くしながらDVDを物色し始める小百合。
本人はテンパって気づいてないのかもしれないが、小百合が手にしているDVDはパロディ系。
それも最悪な事に、エロパロと呼ばれるアダルト系の代物。
パロディの厄介な点というものは、元ネタの映画を利用してくるから、関連商品と勘違いしやすいというところ。
俺も以前にネットで調べてたときに、そんな罠に引っかかった事がある。
だからこそ俺は、そっと小百合の手から危険物を取り上げた。
「ちょっと私まだア○ンジャーズ見てな…え?何それ?なんでそんなのがここにあるわけ!?」
「誰かのイタズラだろうな…子どもが見たらどうするんだよったく。本物は直ぐ隣にあるからな、俺はこれを店員に渡してくる」
他の客に見られると面倒だから…別の作品を利用して隠す。
ようはDVD三枚を使ってサンドウィッチにして、隠すという方法。
本当は放置しておきたいのだが、結構客も集まり始めてる。
しかもこっちは制服のままで来ているから、かなり危険な状態である。
いっそのこと戻してしまうのもありだと思うのだが。
もしこいつを戻すとなると…DVDをケースに戻すときは、辺りを気にしなくてはいけない。
周りから見られると思うと恥ずかしい上に、学校に通報されるかもしれない。
やっぱり店員に渡すとしよう…そうしよう。
「待って、私も一緒に行く。それ持っていくなら、一人で行くよりは信用性があると思うし…何より、顔から不安そうなのが伝わってくる」
DVDを二人でレジまで行ってみたが、危うくレンタルする客かと勘違いされそうになった。
最初は睨まれた上で別の店員に話し始めたが、事情を説明したら理解してもらえたからまだよかった。
問題としては、睨み付けて来た店員に対して小百合が、更に怖い目で睨み返してたこと。
事情も聞かずに睨み付けた上で、睨んだ事も謝らずにまだ睨み付けてくるなら、怒っても当然だ。
でもよ…相手が引き下がっても、追いかけていく執念が凄い。
流石に以上はマズイと引き留めたが、怒りは収まらない様だった。
「前からあの店員、接客態度が悪くて気に入らないんだよね。私がホラー映画の所にいると、突然睨み付けて来て、横を通ると舌打ちとかしてくるから」
「気に入らない以前に、あの店員が接客に向いてないな。思い返すと、俺も以前にやられたよ…つか、レンタルさせてくれなかった、ム○デ人間3見たかったな」
あれ?なんか引かれてる、小百合から送られてくる視線が超冷たい!?
「私…あれ苦手。最初のヤツで…中盤行く前に気持ち悪くなってきて」
「中盤でやめて正解だ。かなりエグいが…2なんて、思い出すだけで気持ち悪くなる」
そんな状態でも、新作とかが出ると見たくなってしまう。
俺自身にも困ったものだな…また後悔するって言うのに、同じ事を繰り返す。
人間って怖いな…あ、小百合がチ○イルド・プレイを手に取った。
「こここ、これでも見ようかなぁ!まま、まだ見たことないしし!み、見た事ないでしょ!?ないでしょ!?」
めっちゃ動揺してる…でもなんか可愛い。
珍しい物を見れたというか、意外すぎる一面を見せてくれたというか、新しい印象を受けた。
あと人形が苦手なのか?それともチャ○キーの方が苦手なのか分らないが、ダメならやめておけば良いのに。
DVDを持っている手が震えて、目も若干泳いでる。
「これ、実家にシリーズ全部あるから、見るのは今日じゃなくてもいいだろ。こういうときは、ホラーより、アクションかコメディ物だ」
気を遣ってみたのだが、逆効果だったか。
手に持ったまま恐縮しながら後ろに下がり、ピンク色の世界へと突入していった。
助けに行きたいが…無意識と意識して行くのでは、かなり違うからな。
ここはしばらく様子を見て…飛び出すと同時に、跳び蹴り入れてきた!?
「入る前に止めろっての!」
綺麗なフォームで飛んでくる蹴りだったが、警戒心が強くなっている俺には通用しない。
片目がまだ使えない状態だからこそ、普段以上に回りに気を配りながら、行動をしている。
体を軽く横にずらすだけで、簡単に攻撃を避けてしまう事が出来る。
それだけじゃない、不意を突かれて避けられた相手をそのまま、受け止める事だって出来てしまう。
周りから拍手が起るのだが…これはこれでとても恥ずかしい。
下手に棚に突っ込まれでもしたら、棚のDVDとBDを弁償しなきゃいけないからだ。
「な…なな、おお下ろせ!今すぐ早く下ろせ!出ないと殺す!顎叩き割ってやる!」
「暴れるな、ここで暴れるなって。後ろに商品があるだろ?お前が突っ込んだら大変な事になるんだぞ?」
冷静に話してるのだが、錯乱してる相手には通用しない。
言われた通りに下ろしてみたものの、ずっと尻を蹴ってくる。
下ろさないと顎を叩き割る、下ろしたら下ろしたで無言で蹴ってくる、結局は正解がない。
「満足したら言ってくれ、下の段も確認しておきたい」
無言で蹴り続けていたが、徐々に蹴る力が弱まって行く。
「怒らないの?あんだけ蹴り続けてたのに」
「夏美の理不尽な八つ当たりに比べたら、このくらいなら可愛いもんだ。アイツは噛みついたりしてくるからな…蹴り程度なら全然平気だ」
実際、そこまで平気でもない。
連続で蹴られすぎたから、絶対に痣出来てる!
これしばらく座る度にダメージ入るパターンだ!毒の効果出てるみたいにジワジワくるやつ!
うちの姉貴に蹴られるよりマシだろうが、地味に来る痛みなんだよな。
「きょ…恐怖の振子…マジかよ?冗談だろ?こんなマニアックな映画取り扱ってた…キラークラウンだとぉ!?」
ヤバい…なんか手が震えてきた、もしかして興奮してるのか?
最近はこの店を利用してないから知らなかったが、ここの店はマニア殺しかって言いたい。
利用してるレンタルショップだと、最新のは取り扱ったりしてるが、古いのがそこまでなかった。
対してここにある作品を見てみると、結構品揃えが良くなってる。
「うそ?それって両方とも、私が見たかった作品。借りよう!一緒にそれ見よう!いつも借りられてるから見れなかったから!」
珍しく小百合が背中にのし掛かってくるってことは、それだけこの映画が見たかったと言う事か。
さっきまでの事を忘れているかのように、凄い体重を掛けてくる。
てかこの感覚は蘭華に似てるのだが、もしかして本人は自覚してないのか?
別にこう言うことはもうなれたけどなぁ…違和感も感じないというのがなんとも。
「あ…ごめん、テンション上げすぎた。なんか今日、私おかしい」
それから他に数本のDVDを借り、コンビニで適当にジュースや菓子類を購入して、小百合の家へ向かった。
学校からそこまで遠くもなく、ましてや近くもない絶妙な位置に立てられてるマンション。
近くには小学校があり、公園も直ぐ近くに設置されている。
そこでは沢山の小学生達が遊んでいて、少し騒がしいくらいだ。
見ていて懐かしいな、昔は公園でよく喧嘩とかしてたから。
イジメをしてる連中に対して、ブランコの勢いを利用してからの、怪獣ドロップキックを喰らわせたりとか。
滑り台を利用して蹴りを入れようとしてるヤツの背後に回って、後ろから蹴り入れて失敗させたりしてた。
「ちゃんと金持ってきたのかよ?自転車に付けた傷の修理代、三十万はいつ払ってくれるんだよ?」
「これだと今日も、お仕置きが必要だな」
物騒な会話が聞こえてくる方を見ると、どうみても中学生としか見えない男子三名が、小学生一名を囲んでる。
こういう展開って本当にあるんだな…ある意味驚きだ。
まぁ似た様な状況を昔経験した事あるけど、俺の場合は濡れ衣着せられたからな。
直ぐに姉貴が来て、相手をフルボッコにした後、誤解だと分ったが。
「小学生相手に何してんだよ!?アンタ等中学生だろ?恥ずかしくないわけ?」
いつのまにか小百合が間に入り、小学生を後ろに隠してる。
「お前には関係がないだろ!スッ込んでろクソアマ!」
「もういい、お前なんかウザいから殴るわ。つかぶっ殺す!」
「あ~あ、怒らせちゃった。コイツ切れさせると、マジ何するか分んねぇよ?」
三人で小百合を睨み付け始めた頃合いに、俺は五人の元へと移動していた。
その間、ずっと笑いを堪えるのが辛かったが、なんとかバレずに接近できた。
今どき、マジ何するか分んねぇとか…いつの時代のセリフだよ。
そんなの漫画とか、映画とかでしか聞いた事がねぇ。
吹き出しそうになりながらも、小百合を殴ろうとしてる男子の背後にピッタリと着いた。
もうこの距離までくると普通は気づくはずと思うんだが、頭に血が上がってるようだ。
これならば、余裕であれが出来るな。
「もうどうなっても知らねぇ!泣いて謝るなら今のうぉっ!?」
「はいちょっと失礼しますよぉっと。小学生相手に恐喝とかすんなって…喧嘩なら、俺が相手してやるぞ?噛みつきから金的、目つぶしまで全部ありでどうだ?」
膝カックンを仕掛けて相手を制す、大分丸くなった証拠だ。
昔だったら、問答無用でテールキックとか、間接技を仕掛けていただろう。
とりあえず…アイアンクローで一人を仕留めておく。
「いきなり何しやがっ痛ぇ!痛ぇよ!なんだよこの馬鹿力!?」
「喧嘩はもう始まってるぞ?そこの二人も早く掛って来い、殺すんだろ?今さら無理とか言うなよ?俺の友人に殺すって言った時点で、お前等全員土下座させるつもりだからよ」
低めの声で言い放つと、掴まれてるヤツを置いて、二人が自転車で逃走していった。
もう少し骨があると思ってたんだが、やっぱりガーゼを付けてるってのも効果があるのかもしれないな。
にしても最近の中学生ってのも、思って居いたよりも弱くなったな。
さっきから掴んでるヤツも、ごめんなさいしか言わなくなってしまった。
とりあえず、何故こうなったのか事情を聞いてみたところ、小学生の方が以前に自転車に傷を付けたらしい。
だが小学生の話では、別の子が傷を付けて逃走、罪をなすりつけられたと言っている。
そして面白いことに、この小学生が小百合の知り合いだと言う事だ。
同じマンションに住んでいて、部屋の階も同じらしい。
「剣斗、アンタ本当にやってないの?」
「だからやってないってば!俺は止めたけど、アイツ等が逃げたんだ…それで何回も違うって言ったんだけど、信じてくれなくて」
難しいところだよなぁ…どちらの言い分を聞いたとしても。
中学生の方にも自転車の傷を見せてもらったが、なんかドライバーとかでガリガリやった様な傷が残っていた。
十円とかで横とかに擦るならまだ分るのだが、結構フレーム本体にもめり込んだ傷があるから、固い物で叩いて削ったか。
小百合の方は、剣斗君を信じてるみたいだが、やってないという証拠事態がないからな。
俺も自転車屋とかじゃないから、断言するということも出来ない。
「どうっすかね?やっぱりアイツが」
「お前さ…あの剣斗って子が、この自転車の近くに居たときに工具とか持ってたの見たか?つかこれ、いつやられた?」
自転車を傷つけられたのは、丁度一昨日の夕方。
公園に自転車を置いて、トイレに行っている間の出来事らしい。
そして戻って来たときに自転車の側に居て、掴まえたと言う事らしいが、工具は持っていなかったらしい。
「一昨日にやられたか…まずこう言う事態が起きた時は、ちゃんと親に相談してから警察に行け。お前等がやってたのは恐喝で、立派な犯罪だ馬鹿野郎…どっかに指紋とか残ってるだろ」
「親とかに相談するとか、そんなみっともない事が出来るわけ」
再びアイアンクローを喰らわせながら、もう一度親に相談しろと言い聞かせる。
実際の所、これは悪質過ぎるから、本当に警察に行った方が良い。
一応金は取ったのか聞いてみると、まだ取ってはいないが、頭を数回殴ったりしたらしい。
そこはしっかりと謝罪をして、親御さんと話しを着けるように言った後、剣斗君の前に立たせて一度謝罪をさせた。
剣斗君に関しては災難な結果になったのが、気がかりだ。
「君の家にも警察が行くから、その時はしっかりと見たことと、あったことを正直に話す。誰も怖い事はしないが、もし犯人が何かしてきたら、直ぐにそこの小百合に報告すること、俺も何かあれば助けるから」
「い、いらない!小百合姉ちゃんがいれば…問題ないんだ!」
勢い良く公園から飛び出して行く剣斗君。
そのうしろ姿を見て、大丈夫だろうと見守った。
中学生の方には、転ばせた詫びにジュースを渡したが、それより強くしてくれと頼まれてしまった。
また面倒なのに絡まれそうになったなと思っていたが、真剣な目を見て今度鍛える事を約束し、帰ってもらえた。
連絡先まで交換してしまったが、良かったのだろうか?
無事に解決をしてくれるといいのだが、最近の小学生のイタズラは悪質だな。
「助けてくれてありがと…まったく、剣斗ってば、ちゃんとお礼を言えっての」
「普通の事だ、それよりもだ…念の為に、生徒会の方でも報告しておいた方が良いんじゃないか?結構悪質だから、うちの高校でも被害が出るかもしれないぞ」
確かにそうだと言わんばかりの顔で、スマホを操作し始める小百合。
生徒会長に連絡をしているのかと思ったが、直ぐにポケットに戻し、手を引いて部屋へと連れて行かれた。
家にお邪魔して彼女の部屋へと通されると、そこはあらゆるところが全て、ショッキングピンクパンサーで埋めつくされた部屋だった。
絨毯からベッドまで、何もかもがピンクの豹柄で染まり、カーテンも同じく豹柄。
とても目がチカチカしてくるようなお部屋ですね、目薬が欲しいです。
「恥ずかしい…部屋に年の近い男入れるのって、初めてだから」
顔を赤くしながらベッドに腰掛ける小百合、対してどう反応をすれば良いのか困る俺。
いつまで経っても座らない俺にしびれを切らしたのか、手を引かれながら無理矢理ベッドに座らされた。
てかこの部屋、結構甘い香りするんだけど。
一体どんな芳香剤を使ってんだ?かなり甘ったるいぞ?
「…ねぇ…そのガーゼって、本当に何があったの?もしかして夏休みの間に、誰かと喧嘩してやられたとか?」
喧嘩という点を突いてくるとは、かなり鋭い。
俺はゆっくりとガーゼを剥がして、夏美と一悶着があった事を話した。
ただ傷を見られたときに、蘭華達と同じような反応をされた事がショックだが、瘡蓋になってるから大分マシになってるはず。
「ふ、フ○ディにやられたみたいでカッコいい。写メ!写メ撮らせて!あとどういう風にやられたのか詳しく教えて!」
横から写真を沢山撮った挙げ句に、傷の具合を詳しくメモまで取り始めた。
映画を見ようと思って来たはずのなのに、全然違う目的に変わってる。
そして先ほどからピンポンピンポン鳴ってますけど、出なくていいんですかね?
俺の携帯には、蘭華と狂子と夏美と由実…四人から連続着信が来てる。
特に夏美からは馬鹿とか死ねとか色々暴言が送られてきてるし、蘭華からはポエム的な物まで送られてきてる。
あと狂子からも来ているが…全部英文で、解読が出来ない!
「やっば…会長達が来たかもしれない、てか絶対にそうじゃん。あの人達、部屋に入れたくないのに…もしかして、そっちにも連絡行ってる?」
「こっちは狂子達から来てる。もう外で待機してる感じだろうな」
このままでは埒があかないので、扉を開ける事になった。
というよりは…入れないと近所迷惑になる上に、スマホの電池が切れそうだ。
そして扉を開けた瞬間に、一斉になだれ込まれた挙げ句に、ワイシャツを引っ張られてダメにされた。
あとで蘭華とマコト先輩から請求をするとして、両肩が涼しくなってしまったな。
両肩が千切れるって、どんだけ力有り余ってるんだよ。
「小百合、これはどういうつもりですか?大切な会議を放棄した挙げ句に、自分の部屋に男子を連れ込むなど…恥をしりなさい!」
「生徒会に入るというのは本当なのか!?答えてくれぇ柘魔!本気なのか!?」
小百合は生徒会長に、俺は狂子に尋問されいる間、蘭華と由実と夏美が部屋を探索しはじめた。
直ぐに蘭華と由実を抑えつけ、夏美はマコト先輩に任せようと思ったが、気づけばすでにベッドの下に潜り込んでる。
「先輩は生徒会に入るって聞きました!入ったら、私も一緒に入ってもいいですか!?絶対に入ります!先輩と二人っきりの生徒会にします!」
「何を言ってるんだ!?柘魔を静子の元に置くつもりはないぞ!どうしても入ると言うのなら、生徒会長は私がやる!」
「それはそれで面白そうッスね!だったら私も入るッスよ。それで生徒の弱みを握って、色んな写真を撮りまくるッス!」
三人揃って、生徒会をやるとか言ってるけど、全然意見が一致してませんが?
あと狂子さんや、アナタはもう卒業するんですから、生徒会長になる事すらできませんよ?
それから隣にいらっしゃる生徒会長、アナタも卒業するんだから、狂子を引き込むことをブツブツ言いながら考えない。
蘭華の考えに関しても、そのままだと生徒会長と副会長だけで、必要なメンバーが足りないはずなんですけど?
拾うという感じを、捨てると何度も間違える時点で、アウトだと思うけどな。
由実に関しては絶対に入れちゃ駄目だ、何があろうと入れるのは全校生徒を不幸にする。
「俺は生徒会に入るなんて言ってない、生徒会長が勝手に言い続けてるだけだ。それに俺はまず向いてない、生徒会長とかいうタイプでもない」
「ハイドは生徒会長より独裁者向き!ヒトラーの再来!我が高校に新たな時代を!」
人をヒトラーって呼ぶのやめて貰えませんか!?あとベッドの下からワニのゲームみたいに何度も飛び出すな!
「もしかして…ヒトラー最期の12日間みたいな、お怒りシリーズみたいなこと、したりするの?」
お前もかよ、小百合。
あのシリーズ俺結構好きで見てるけどさ、嫌だろ!?生徒会長が空耳とか言い出したら!
俺が鉛筆とか投げつけるのか!?あれ下手したら危ないからな!
半分呆れ気味の顔で辺りを見回すと、生徒会長の方も呆れ返っていた。
このときばかりは、お互いに同意見だと察したようだ。
今の状態では、まともに話合いすら出来ない…俺は入る気はないが。
「時期生徒会長育成プログラムについて話し合うと言うのは、また別の機会にしましょう。まずは小百合についですが、貴方には小百合の事を任せたいと思って居るのです」
「ようはアレっすね。自分達が居なくなることで、小百合一人に生徒会を任せるのは不安だから、先輩を洗脳してしまおうという考えっすか…恐ろしい女ッスね!?」
今の会話から、そこまで推察出来るお前の方が恐ろしいよ!?
しかも大体当たってるってものある意味スゲぇ!
と関心している間にも、丁度左右から視線を感じる。
右からは小百合の視線で、左からは蘭華の視線。
見事に俺を間に挟んだ状態で、睨み合っていると言う事ですか…流石は犬と猫タイプ。
俺がため息を着いた瞬間に、二人の片手が同時に俺の方を掴み、空いた片手でお互いの頬を押し始めた。
綺麗な張り手の音が部屋中に響いたが、俺の方も結構痛いんですけど?
両肩に体重を掛けられてるから、そのまま続けられるとポックリ外れそうなんだけど?
バ○みたいに、器用に肩の関節を外せるわけじゃないからな?
「離れてください!私、今日は先輩と全然ふれ合ってないんですから!」
「アンタはいつもいるでしょ!?今日だって一緒に映画見ようって話で、ずっと見たかった映画も借りれたのに!」
張り手で押し合っていたかと思えば、次はワイシャツを引っ張り合い始める。
もう袖を破かれてるっていうのに、ボタンがどこかへ飛んで行き、喧嘩後みたいな状態になってしまった。
これ帰る時に超恥ずかしいヤツなんですけど?変な目で見られるんですけど?
「これ以上俺の服を破くのをやめろ!?ワイシャツだってただじゃ無いんだぞ!?どうするんだよ!?ボタン全部が無限の彼方へ飛んで行っちゃっただろ!?」
俺が怒ったことで服を引っ張る事はやめてくれたが、今度は肉体を取り合う行動をとり始めた。
そうなったた途端に、狂子とマコト先輩が乱入。
手足を引っ張られるこれは、拷問も同然な状態だ。
こっちも手足に力を入れて耐えているのだが、皆して馬鹿力を発揮してくる。
もう腕とかの関節が悲鳴を上げてる!千切れるって!
ヘル○イザーに出てくる殺人シーンみたいになる!
「いい加減にしなさい!これは不純異性交遊として報告しますよ!?」
生徒会会長の言葉により、マコト先輩と小百合は手を放したが、同時に蘭華と狂子の方へと引っ張り込まれた。
助かったと思ったのも束の間,速攻捕獲されてしまう。
身動きが全く取る事が出来ない上で、大分面倒な状態にまで発展したわけだ。
「やっぱり最後には私が勝つんです!ということで、先輩は私と一緒で決まりです!これから二人の将来について話すので帰ります!」
「蘭華、柘魔は私と将来について話すに決まっているだろう?なんたって、私と柘魔は一緒に生活をしているのだからな!」
言っちゃったよ!?ややこしくなるから隠してたのに、普通に言っちゃったよ!?
「やっぱり私も一緒に住みます!いっその事、出来婚でもいいです!もうそうなってしまえばこっちの勝ちです!今すぐにもでホテルに行きましょう!先輩が望むなら、野外プレイでも全然アリです!」
「ありなわけあるか!?お前は旅館の事件を何度忘れる気だ!?またそういうことをする度に、苦しい事になるんだぞ?お前は妹を泣かせて楽しいのか?」
妹と言う言葉を聞いて、動きが止る蘭華だが、それでもやはりしがみついてくる。
同時に狂子に引き寄せられ、腹部へマコト先輩の突進が直撃した。
あまりの痛みで前屈みになると、そのまましがみついてた蘭華がのし掛かってくる。
「は、春咲柘魔!狂子が言っている、同棲とはどういう事ですか!?今すぐ答えなさい!その腐った性根を叩き直します!明日から早くに登校!そして生徒会室の掃除をしなさい!」
「ああ…ハイドに包まれてる。本来の私達に戻ろうとしてるのを感じる」
「ちょっと、マコト先輩!普通に死にますってそれ!戻ろうとしてるどころか、天国に行っちゃいますって!」
身動きが取れない状態で、蘭華の体重に加えて、離すまいとマコト先輩のホールドが入る。
そして引っこ抜こうと踏ん張る小百合に、俺の首を掴みながら引き寄せようとする狂子。
色々とヤバい状況だと言う事は確かなのだが、やけに夏美が大人しい。
いつもなら何かをしでかしてるはずなのに、大人しすぎるから、めちゃくちゃ怖い。
もう様子すら確認するのが怖い、怖すぎて見ることすら嫌だ。
「あの、先輩方。ちょっと逃げた方がしれないッス…私はお先に失礼するッス!」
慌てて出て行く音が聞こえる中で、何が起きようとしているのかを、用意に想像が出来てしまった
本当は想像が出来てしまうのが嫌だが、俺にはハッキリと感じ取れる。
長年の付き合いだからこそ、分るこの感じは…相当苛ついている。
由実の反応からして…刃物を持ちだしている様子は無さそうだが、顔を上げたくない。
頼むから勘弁してくれ…俺は無実だ!
「ねぇタク?ちょっと話があるんだけど、こっち来て」
とても冷たい夏美の声は、周りに居る全員を見事に黙らせた上に、俺から引きはがした。
俺は夏美に引きずられながら、別の部屋へと連れて行かれ、恐ろしい物を見た。
顔は笑顔を浮かべているのだが、この顔はあの時と同じだ。
狂子の家で…思いっきり顔を引っ掻かれた時の、怒りと憎悪に満ちた顔。
この時、俺はそうとう青ざめていたに違いない。
少しづつ…ゆっくりと開かれていく夏美の瞳に、青ざめた俺が写っていたからだ。
「覚悟は出来てるよね?この馬鹿タク!死ね馬鹿死ね!」
死ねなのか、馬鹿なのかどっちかにしてくれませんか!?
人の家だというのに、一切のお構いなしに跳び蹴りを入れた後に、マウントポジションを取られた。
身動きが取れない俺に対して、躊躇なく炸裂する乱れ引っ掻き。
罵声を浴びせながらも止ることのない連続攻撃。
為す術もない俺は、ただただ夏美の攻撃を受け続けた。
しばらく引っ掻き続けた事で息切れを起こした夏美は、その場から一気に逃亡。
しばらくしてから、静まった事を確認しに来た皆に、無事に半分死体の様になった状態で発見された。
夏美の猛攻を耐え凌いだ柘魔。
そんな彼は大切な事を忘れていた。
毎年行われる恒例行事であり、それは夏休みが終わってから行われる、悪夢の様な一日。
次回、まさに悪夢の様な一日が、柘魔の身に降りかかる。




