第三十話 コミケに初参加だけど、立場が違う。
朝から電話がなり、柘魔達はコミケに狩りだされるのだった。
朝方、姉貴の携帯が鳴り響いた。
電話の相手は、会話から桜さんだと分った。
最初は何か断っている様子だったが、直ぐに断念した様子。
かなり戸惑っている物の、断り切れないみたいだ。
「分ったわ…条件として、変な事を教え込んだりしない事。あと危険な事は避けて…他の子達?聞いて見ないと…分ったわよ、それじゃあ目的地まで送るから」
とっても嫌な予感がしてきたぞ、顔を見てたら分る。
明かに困った顔をしてこっちを見てる。
「タッちゃん…実は桜から電話が来たんだけど。コミケだか、なんだかが今日の予定らしくて…出て欲しいと来たのよ」
コミケ…学祭でのツケが回ってきたか!
考えたら、以前に利用料金の代わりに手伝うって、約束をさせられたんだった。
それを条件にして、写真撮影から現像まで、無料にしてもらったのを忘れてた。
まだ俺一人だけじゃなくて、浩寺のヤツも関係しているから気が楽だ。
もし一人だけだったら、辛くて逃げ出したかもしれない。
「アイツ、この時間帯起きてっかな」
浩寺は大抵、部活がない休日は遅くまで寝ていたいタイプだ。
俺自身が部活の事には詳しくないから、今日が部活ある日なのかすら把握をしていない。
むしろ把握している方が、おかしい話だけどな。
「なんだよ春魔か…せっかくロリッ子達が沢山のプールで泳いでる夢を見てたのに、タイミング悪過ぎだぜ」
ロリッ子達が沢山のプール…アイツにとっては、夢どころか天国に感じただろうな。
「お前の夢の話はどうでもいいんだよ。それよりもだ、桜さんから、コミケへの出動命令が出たから準備して待っておけ」
「なに?コミケって…あの写真の時みたいに、またコスプレをするのか!?」
電話の向こうから、浩寺のテンションが上がるのが分った。
そんなにコスプレをスルのが楽しかったのか?
ドタバタと音が聞こえ始め、何時頃に迎えに行くかを打ち合わせした後、こちらも準備を始める。
ただ姉貴の方が、あまり乗り気ではないのが見えて分る。
隣の部屋からも、色々と騒がしい音が聞こえてくるが、もしかして盗み聴きされていたか?
夏美ならやりかねないが…扉が開いたから、確定だな。
「浩寺と出かけるなら、私を連れて行きなさいよ!アンタ達だけで、面白い所に行こう立って、そうわ行かないわよ!」
お前は一体、何を聞いてたんだ!?
誰が楽しい所に行くなんて言ったんだ!?こっちは楽しくねぇよ!
もういっそのこと、お前がコスプレして出てこいよ!
気づけば冷蔵庫から俺のエナジー飲んでるし、ここは自由の国か!?
姉貴も姉貴で、既に着替え始めてる。
朝からシャワーを浴びるのは良いが、裸でうろつくからな。
横から夏美の攻撃が来る可能性もある。
「んでどこに行くわけ?遊園地とかなら、奢らせてあげるけど」
集る気で居たのかよ、言い出しそうではああるが。
とりあえずは、誤解を解いておかないと行けないのだが、
着いてくるとか言い出しそうだな。
夏美を刺激しないように、着替えながら説明をした。
すると目をキラキラさせながら、着いてくると言い出す。
多分俺と浩寺が、コスプレをしてる姿が見たいだけだろうに。
それを携帯で写真を撮って、見せびらかしたりするんだろうな。
別に夏美の学校に知り合いはいない、女子校だから会った事すらない。
「あ、そうだわ。蘭華ちゃん達にも迎えに行くと伝えて置いて頂戴」
「へいへい、仰せのままに…姉貴、考えたら家の車ってポルシェだから、俺達四人しか乗れなくね?」
驚愕の顔に変る姉貴だが…先に服を着ることを覚えろよ。
いつもいつも平然と裸で部屋の中を歩く癖、なんとかならないものか。
外から覗かれてたら、一体どうするんだよ。
家の仲に入ってくるかもしれないんだぞ、今ピッキングしてる狂子みたいに。
…またピッキングしてんのか!?
いい加減にインターフォンを押せっての!どんだけ拘るんだ!?
あとどうやってここまで上ってくるんだ?謎が深まるばかりなんだが。
よく見たら、鞄からフックショットが見えてる。
「頼むから、玄関を使う事を覚えてくれないか?まぁ丁度連絡をしようとしてたから良いが、来るまで来てるのか?」
「もちろんだ…ただ今日は轟さんじゃなくて、黒里さんが送迎をしてくれてるんだ」
黒里さんってたしか…あのヤンキーの人か。
姉貴と面識があって、かなり敵対心を向きだしにしてた。
でも妙だな…いつもは轟さんが運転手なのに、今日に限って黒里さんか。
もしかすると、姉貴が狙いで無理矢理来たとか?
「ところでだ、柘魔。私は今日!コミケと言うイベントに行ってみたい!毎年母が遊びに行って居るらしくな、とても楽しいイベントだと聞いている!」
なんだか凄いタイミングで言い出してきたな、ベストすぎるだろ。
あとキャリーさんも、毎年行っている事にも…別に不思議じゃないか。
アルプスの上でバーベキューをしたと言われても、おかしくないかもな。
それよりもだ…俺、コミケって行った事ないんだけど。
漫画とかでは見た事があるが、実質行くきには鳴らなかった。
同人誌だって、ネットや店で買おうと思えば買えるから。
「それでどうだ!?私と一緒に、コミケに行かないか!?柘魔の好きな物も沢山あるかもしれないぞ!?」
「必死にならなくても、今日はコミケに用事があるから、どちらにしろ行く事は確定だ。ただ仕事として行くから…恐らくは一緒に回れない」
嬉しそうだった狂子の顔は、一瞬にして絶望した顔へと変ってしまった。
まぁ仕方がないが、へたり込む程にショックだったのか。
イベントの隙になんとか抜け出す事が出来れば良いが、どれくらい人気があるかだな。
実際は、アニメとかみたいに並ぶ事は無いだろう。
絶対にとは言い切れないが、多分そんな気がする。
「皆、行くわよ。桜ってば、昔から時間にはうるさいんだから」
準備が終わった姉貴に言われ、俺達は外へ出た。
すると直ぐに、黒里さんがこちらへと近づいてきて、姉貴に対して啖呵を切り始めた。
だがそれを姉貴は、ことごとく無視してポルシェを取りに向かった。
見事なまでの、無視スキルだ。
目の前に回り込まれそうになったら、綺麗に横へと避けていく。
さらにヒールを履いた上での、超早足で歩いて行くから凄い。
「お前の姉はどうなってんだ!?アタシを悉く無視して行くぞ!?」
「俺に訴えられましても…どうする事も出来ませんよ」
てか顔が近い!あと目付きが凄い悪い!
「やめてください、柘魔が困っています。最近様子が変ですよ?」
「お嬢には悪いけど、アタシはあの女と決着をつけなくちゃ行けないんだ。あの春咲秋恵と」
姉貴が何らかの恨みを買ってる事が分ったが、別に今日じゃなくても良いだろ。
これから忙しくなる可能性があるから、無駄な体力を消耗したくないのに。
こんな所で喧嘩をされたら、他の人にも迷惑が掛る。
話し合いで解決をしたいのだが、それが通じる相手かすら分らない。
むしろ通じないと考えるべきだな。
怒りで既に、我を忘れそうな顔をしてる。
「二人共、車に乗って。夏美ちゃんは助手席ね」
…姉貴のポルシェの後部座席に乗るのか。
いっその事、狂子が乗ってきたBMWの方が楽そうだな。
ポルシェの後部座席って、結構キツいんだよな。
よし、頼んで見よう、その方が楽に決まってる。
「狂子、俺も狂子が乗ってきた車に」
「タッちゃん…後ろに乗って。二度も言わせないで」
い、威圧が凄すぎる。
俺は姉貴の威圧に耐えられそうになく、車へと向かおうとした瞬間だった。
背後から突然、羽交い締めにされた。
そしてBMWへと放り込まれ、俺と狂子を乗せたままに走り出したのだ。
状況が全く理解出来ていない俺に対して、笑顔を向けてくる狂子。
考えたら蘭華達を回収しないといけな…丁度歩いてた!?
もしかして家に向かってる途中だったのか?どう考えてもそうだよな?
隣に由実と姫華も一緒に居るから間違いないよな?
「黒里さん、あそこの三人を拾って貰えませんか?」
「お嬢、冗談はよしてください。アタシのブラックホークは四人、あと一人か、小さいガキも含めて二人が限界だよ」
ああ…三人をスルーしてしまった。
蘭華だけ気づいた様な気がしたが、もしそうだったらアイツはアンテナでも立ててるのか?
あと気になったんだが、黒里さんの車名がブラックホールって、戦闘ヘリかよ。
にしても運転が荒いな!酔ってきそうだ!
「もう少し、もう少し落ち着いた運転をしてください!」
「黙ってな!秋恵の弟のくせに、随分と根性が内容だね!」
「駄目だ…運転が荒すぎて、酔ってきた…柘魔、袋をくれ」
袋って、こっちにそんな物ねぇよ!
背後から走ってくる真っ赤なポルシェ。
姉貴の怒りを表現するには、もってこいの色だ。
そして前の席から何か臭ってく来る上に、悲鳴が上がり始めた。
「お嬢!?なんでもう少し我慢出来ないんだ!?アタシのブラックホークがゲロ塗れだ!」
「アンタの原因だろ!?これ以上は狂子が可哀想だからやめてくれよ!?なぁ!?頼むよ!車を止めてくれ!」
俺は必死に訴え続けたが、車を止めてくれる様子は無かった。
そのまま来るまでカーチェイスを続ける黒里さん、ぐったりとする狂子。
いい加減にキレそうになった俺は、いっそのこと顔面に拳を叩き込んでやろうと思った。
だがここで相手に手を出したりしたら、車が横転してしまう可能性が高い。
もしそうなったとしたら、俺達三人はただでは済まない。
この状況を打破するためには…考えろ俺。
黒里さんが恐れる相手は…轟さんの連絡先は知らない。
いや待てよ…一人だけ知ってる人がいる。
「車を止めてください…後悔することになりますよ」
「黙ってろよ!こっちは今、頭が混乱してんだから!」
俺は携帯を取り出し、連絡準備をする。
「よく聞け、こいつが最後の警告だ。今すぐこの車を止めねぇと、お前は職を失う事になるかもしれねぇが、良いんだな?俺は一度決めたら、もうやめねぇからな!?」
ルームミラーに連絡先を写し、相手に俺の意思を見せる。
指はコールボタン近くに添えておき、いつでも掛けられる様にしておく。
最初は何をしているのか理解は出来ないだろうが、相手を確認したら青ざめ始めた。
なんたって電話の相手は、雇い主であり狂子の母親であるキャリーさんだからだ。
もしこの状況を知ったりしたら、大変面白い事になるだろう。
「お…脅す気か?流石は秋恵の弟なだけはある、たいした根性だよ」
「根性?これが根性だって?だったら、アンタも雇い主に根性を見せてみろよ」
コールボタンを押し、呼び出し恩が車内に広がる。
青を通りこして、白色へと変っていく黒里さん。
そして電話の向こうから聞こえてくる声は、キャリーさん本人。
一斉に奇声を上げて携帯を取り上げようとしてくるが、後部座席の奥までは、手が届かないようだ。
「もしもし、急にお電話をお掛けして申し訳ございません」
「クソが!良いからそいつを寄越せ!このクソガキが!」
電話の向こうで困惑してる様子なので、丁寧に状況を説明する。
最初は高かったテンションは、徐々に下がり始め、声のトーンも低くなって行く。
そして車は一時停止をしたと同時に、俺は電話を掛けた状態で、狂子の安否を確認する。
ぐったりとしているものの、怪我とかはしていない様子で安心した。
電話の途中で取り上げられてしまったが、狂子を楽な体制にする方が先だと判断した。
「すまない…迷惑を掛けてしまって」
「謝る必要はないさ。悪いことなんて、何もしてないだろ?」
それからしばらく電話の方で謝罪をしている黒里さんが、綺麗に車のボンネットへと転がって行く。
ブチ切れた姉貴が蹴り飛ばした事で、そのような状況になったようだ。
後部座席で狂子の介抱をしていたから、いきなり揺れた事には驚かされた。
もう一つの扉が開くと、夏美が驚いた顔で見ていたが、車内の臭いで貰ってしまったようだ。
酷い状況になってしまったが、BMWの後ろにかなりランボルギーニが一台止まった。
だがよく見てみると違う、俺の記憶が正しければ、あの車は光岡のオロチだったはず。
危うくランボルギーニと間違える所だった、てかマニアックな車だな!
そんなオロチから降りてきたのは、私服姿の轟さん本人だった。
「お嬢様!ご無事ですか!?」
轟さんがこちらへと掛けより、狂子を抱えて車に乗り込んだ。
「この度は大変ご迷惑をお掛けしました。お嬢様は、私が責任を持って送り届けます」
そう言うと、車は走り去ってしまった。
呆然として見ている俺達の前に、二台のワゴン車が止まった。
扉が開くと、蘭華達が乗っており、運転席には桜さんが乗っている。
どうも姉貴が、呼んでくれていたらしい。
俺達を追いかけている途中で、歩く蘭華達を見つけて、桜さんに連絡と言う流れ。
「びっくりしたよ。いきなり柘魔君が拉致られたって聞いたから、心配したんだから…まぁ三人とも乗って、会場に行くから」
「無事で良かったです!何もされてませんか!?童○は私にくれますよね!?」
「いやぁ、なんか面白い事になってるッスね。てか見てくださいッス!桜先輩が、今日は道具を貸してくれるって言ってくれたッスよ!」
興奮してる二人に、ふてくされてる姫華。
とりあえず落ち着かせながら、車に乗り込み、そのまま会場へと向かって行った。
会場に到着した俺と浩寺は、車から降りた途端に、桜さんに別のワゴン車に乗せられた。
そこへ待って居たのは、初めて見る女性二人。
綺麗に化粧をしつつ、メイド服を着た美女二人の手には、明かに衣装らしき物があった。
片方は金髪のツインテールに、軍服。
もう片方は、黒髪のウィッグに海軍服。
一体何のコスプレなのか、検討すら着かない。
「えっと、このイケメン君が私担当の柘魔君?」
「違う違う。アッキーの弟の柘魔君はこっちで、そっちはお友達の浩寺君」
見るからにがっかりされたんだけど、結構傷つくんだけど。
「桜本気!?このコスプレって、女装だよ!?絶対に浩寺君にやらせた方が良いって!」
「フフフ…柘魔君、いや…我がサークルの秘密兵器になる、このクリスティーヌに不可能はなし!むしろ、今回の同人誌のモデルは、この二人なんだから!」
なんか俺と浩寺、同人誌のモデルにされてんだけど!?
あとちゃっかり俺の事、クリスティーヌって呼ばないで!
もう不審な目で二人が見てくるから、完全にクリスティーヌじゃねぇだろって目で見てるから!
むしろ浩寺の方が似合うだろ的な感じになってるから!
「じゃあ二人共、着替えたら教えて。私達は外で待ってるから。ほらほら、出た出た!」
桜さんに追い出された二人は、浩寺にだけ手を振っていた。
隣では苦笑いをする浩寺だったが、何故か謝ってきた。
それに対して妙にイラッときたので、とりあえずは一発蹴りを入れる。
少しだけスカッとした辺りで、俺達は着替えたのだが、女性用下着まで用意されていた。
一体何をさせたいというのだ、あのお馬鹿レイヤー。
「春魔…この際、言っても良いか?お前なら、受け入れて貰えると思うんだ…俺の告白を聞いてくれ」
「おいおい、まさかロリの窓辺から、ゲイの翼を広げるつもりじゃないだろな?」
冗談で言ってみたら、慌てながら否定された。
「ち、違う!俺はロリッ子以外には興味無い!…ただ、最近は…女装する事に、妙に興奮するんだ」
頬を染めながらそう呟く浩寺に対して、俺は何も答えなかった。
コイツが女装に目覚め始めたのは知っていたが、性癖までに至っていたのか。
気づかぬ間に、引き返す事が出来ぬ所まで進んでいたのか。
「もうそろ終わったでしょ?これ以上は、メイクする時間がないから」
三人が車の中に乗り込むと、俺達のメイクを開始し始めた。
メイク中に、桜さんが二人の紹介を始めた。
浩寺のメイクをしているのは、可憐さん。
桜さん同様のコスプレイヤーで、同じ同人サークル活動をしているらしい。
そして俺のメイクをしている人が、彩さん。
この人も同人サークルで活動をしている人で、現在大学生とのこと。
あと一人ほどメンバーがいるらしいのだが、今日は来ていないとのこと。
サークルの作家担当らしいが、基本的に家に引き籠もっているらしい。
「信じられない…殆ど別人レベル!私って、メイクの才能あるかも!?」
「残念だけど彩。これが我がサークルの秘密兵器、その名も『クリスティーヌ』なの」
クリスティーヌを兵器名にするな!
やっと吹っ切る事が出来たって言うのに!
俺は再び、怪獣バーサーカーではなくて、クリスティーヌに変るのか。
てか
このままだと、クリスティーヌで売り出されそう。
それはそれとして、こっちはかなり困りものなのだが。
「何というか、同人誌の世界から飛び出してきた見たいな見た目してる。写真撮らせて」
「あ、ズルい!私にも撮らせて!」
可憐さんと、彩さんに言われるがままに写真を撮らされたが、再び悪夢が蘇ってきた。
学祭で販売する為に行った写真撮影、あれと大して変らない。
いろいろなポーズを決めて写真を撮らされたが、桜さんに言われ、車から降りた。
外では沢山のレイヤーがおり、なんだか巨大な列まで出来上がっていた。
そして蘭華達の姿が見えないのが気になるが、大丈夫なのだろうか。
まぁ、姉貴が居るから大丈夫か。
「よく聞いて。二人はあくまで、うちのサークルの売り子さんだから、それを忘れないで」
桜さんに連れられて、会場に入る俺達。
途中で列が騒がしくなってきたが、気にせず進むように言われた。
会場内の方では、姉貴達が既に待機しており、全員が疲れた顔をしている。
背後にある段ボールを、皆で運んだのかもしれない。
あの段ボールの中身は全部、同人誌で間違い無いな。
「お疲れお疲れ。この御礼は後でするとして、蘭華ちゃん?と夏美ちゃん?にはこれ、お願い」
桜さんが二人に財布とキャリーバッグを渡し、姉貴には二人の護衛を頼み始めた。
そして由実に対しては、カメラでコスプレイヤーの写真を撮ってくる様指示。
ただ由実に関しては、高いカメラを使える事から、簡単に了承していた。
問題は夏美と蘭華と姉貴だ。
嫌そうな顔で、桜さんを見てる。
「お願いだから、後でお金も払うから。私達の仲でしょ?」
「私の報酬は、高く付くわよ?それでもいいの?」
姉貴達が交渉をしている間にも、会場内に人が溢れ帰り始める。
テーブルには既に同人誌が並べられ、可憐さんと彩さんが椅子に座り販売を始めた。
てか行列が出来てるんだけど!?殆どが女性!
よく表紙を見れば、俺と浩寺のコスプレしてるキャラが写ってる。
あれ?よくよく見ると、18禁って書いてある。
それに俺のキャラって、設定上はもしかして…男なのか?
「龍先生の作品、楽しみにしていました!これ先生に渡してください!」
「いつもありがとうございます。先生の励みになります」
「あの…あそこに居る方達って、今回の作品のですよね?写真は」
「写真撮影は自由ですが、本をお買い上げ下さった方は特別に、ポーズの指示からツーショットもありです」
ツーショットと言われた瞬間に、悲鳴と歓声が入り交じった物が、会場内に広がった。
直ぐに買い上げ頂いた方から撮影指示が出されたが、前以上に過激な物を指示された。
本当に良いのかと聞きたくなるが、桜さんは親指しか立ててくれない。
そしてポーズの指示が、同人誌のページを見せて指示される。
俺の思ったとおり、内容はBL漫画。
ただ過激過ぎる物は控えるように、桜さんから注意は入る物の、俺達にはかなり苦痛だった。
体を絡め会いながら、顔を近づけたり、服の中に手を入れたりするからだ。
たまにキスシーンを言われるが、流石にそれは出来ないと断りを入れさせて貰った。
「お二人は本当に男同士なんですよね!?クリスティーヌ様はどう見ても女性なのですが…は、生えてるんですか!?」
ガッデム!
「もちろん生えていますよ。二人は正真正銘男ですから、ファンの期待は裏切りません」
「じゃあ見せてください!下着の上からでも良いので、どうか!」
うわぁぁぁぁぁ!近づいてきた!?
目が!目が若干逝ってる!
何!?この感じは蘭華とかに似てる気がするが、どう対処すれば良いんだよ!?
戸惑う俺に対して、助け船を出してくれたのは、彩さんだった。
カンペをこちらに向けてきたのだが、ドSキャラで通せってアンタ!?
一応セリフも書いてくれてるけど…思いっきりゲイ発言なんですけど!?
だけどこれをやらないと…引いてくれそうにないな。
「お…俺に気安く触るな。俺に唯一触れていいのは、コイツだけなんだよ」
やけくそでセリフを言いながら、浩寺を引き寄せてみたが、かなりの好評だった。
行列から一気に声が上がり、眩しいフラッシュと激しいシャッター音が鳴り響く。
よく見たら、三人も写真撮ってる。
あと浩寺に関しては、何故か赤くなってる…やめろよ。
「私、私感激ですぅ!」
白目を向いて倒れた!?
つか完全に失神してるんだけど!?俺のせいで失神した!
ざ…罪悪感が凄いけど…運ばれて行った。
会場内もざわつき始めるものの、なんだか列が更に増えてる気がする。
想像と全然違いすぎるんだけども…なんなのこれ?
もう新しい行列も出来てるし、もしかして撮影待ちとかですか!?
「大成功だよ!これなら次回も頼みたいくらい!むしろお願い!バイト代も弾むから!」
「つ、次私です!私6冊買ったので…壁ドンお願いします!」
あれぇ?写真撮影だけじゃないのぉ!?
確か桜さん、写真撮影だけとか聞いていたような気がするんだけど!?
急に壁ドン要求とか、俺の頭脳がキャパオーバーしそう!
三人に助けを求めても、もう視線でやれと伝わってくる!
俺達四人、意思が精通してるんだね!?もう親友レベルだね!?
「えっと…じゃあ、ご希望とかあれば…こちらもやりやすいというか」
「希望言って良いんですか!?じゃあ壁ドンじゃなくて床ドンでお願いします!そして私に『この雌犬、俺の手を煩わせやがって…お前が泣き叫ぶまで、お仕置きしてやる』って」
もう別の要望と化してるんですけど!?
別に俺はイケボとかじゃないよ!?それでもいいんですね!?
なんなのもう!?やっぱり見た目が良ければ何でも言い訳!?
もうここまで来たら、やってやるんだけどね!
「この雌犬、俺の手を煩わせやがって…お前が泣き叫ぶまで、しっかりとお仕置きしてやる」
やべっ!若干セリフを間違えたかもしれないが…問題は無かった様だ。
隣の方でも、浩寺が…うん、攻められてる。
客に思いっきり攻められてるね、ドM感丸出しだ。
これはつまり…俺と浩寺でキャラが正反対と言う事か。
ドSキャラとドMキャラの同人誌で、俺が攻め側と言う事なのか。
この状況を蘭華達に見られたりしたら、大暴れ確定だ。
とにかく客をさばぁぁぁぁぁぁ!更に増えてる!
これもう!写真代を軽く超えてる仕事量だろ!
「あ!シシオ君!わざわざ来てくれたの!?可愛い彼女まで連れて!あれ?よく見たら良く来てくれる子だね?もしかして二人付き合ってるの!?」
「違いますよ!リュウコ姉さんに頼まれた物を買いに来ただけです、あとアサヒは彼女じゃなくて、妹の友達です!」
「えへへ、彼女だなんて恥ずかしいですよ。でもそう見えるなら、嬉しいです!」
桜さんが親しげに話すカップルは、厳つい男と、ふわふわ系少女のカップルだった。
カップルでBL同人誌を買いに来るなんて、珍しい物を見させて貰った気分だ。
だけど…なんでVIP待遇風にこちらへ連れてきたんだ?
「すみません、5分程休憩入れさせてください、今日が初参加なので、緊張してるんです!。二人共、紹介しておくね、こちら金田獅子雄君、うちの作家の弟さん」
シシオ…何という厳つい名前だ。
顔にピッタリ過ぎると言いますか、もうオーラが違うよね?
完全にヤの付くお仕事が似合う方ですよね?本職ですよね?
お隣の彼女さんはまぁ、可愛いと言うか清楚系と言うか。
俺の周りにいる女子に比べると、全然違う感じだな。
「えーっと、うちの姉が描いた漫画の為に、ここまでして頂いてありがとうございます…男の人ですよね?」
「ええまぁ…一応は男です。こちらこそ、自分みたいなのを出させて頂いて…可愛い彼女さんですね」
「また彼女って言われちゃいました!恥ずかしい!お兄さん!やっぱり私と正式にお付き合いを」
彼女さんが腕を絡めようとした瞬間、シシオさんは距離を取ったのを、俺は見逃さなかった。
そして俺は感じ取った…この女は多分、蘭華と同類だと言う事を。
蘭華に近いような物を感じた上に、シシオさんの気持ちも分る気がする。
「照れなくてもいいじゃないですか。他の人から見れば、私達はカップルに見えるんですから」
「俺は男と付き合う趣味はない。本当は、この列だってお前だけに並んで欲しかったんだが」
お…男だと?このふわふわ系女子が男だと!?
これが俗に言う、男の娘と言う物なのか。
声も何もかも、殆ど女にしか聞こえな…これ以上は何も言えない。
俺だって似たような事が出来るから、何も言うことが出来ない。
でも蘭華と違って…男であるから…俺の方がまだマシなのか。
「そういえば驚くと思うけど、獅子雄君とクリスティーヌ達って、同い年なんだよ」
同じ年だと!?どう見ても大人にしか見えませんけど!
相手の方も驚愕してると言う事は、同じ事を考えたんだな。
てっきり歳上かと思っていたんだが、まさかの同い年だったなんて。
もしかしたら、また別の場所で会う可能性もあり得るのか。
俺達の方は顔を覚えたが、相手の方は素顔を見ても、全然分らないだろう。
ただ1つ言える事は、コイツとは少しだけ、分かり合う事が出来るだろうということ。
「そろそろ行きます。イベント頑張ってください」
「応援しています!クリスティーヌ様、またお会い出来る事を楽しみにしています!」
二人が場を離れて行くと、再び行列が動き始めた。
その後も、いろいろな希望や要望に応え続け、イベントは無事に終了する事が出来た。
夏美と蘭華は大分疲労した顔した顔をして帰って来たが、俺の姿を見て直ぐに蘭華は抱きついてきた。
正確には、泣きながら抱きついてきたのだが、相当恐ろしい目に遭ったらしい。
姉貴に話を聞こうにも、疲労等で答えたくないと言われた。
由実の方はかなり満足をした様子で帰って来た上で、俺達の写真まで撮る余裕を見せてきた。
問題は、姫華だったが…気づいたら真手場家の方に行っていたらしい。
これには姉貴が退屈をさせないように、機転を聞かせたとのこと、
とにかく…無事にイベントが終了した事が、何よりだ。
後日、桜さんから手渡して現金を渡されたが、その額に目眩を起こしそうになった。
コミケも無事終了、桜への借りを返した柘魔達。
だが狂子だけがコミケに参加出来ないという、残念な事態になってしまった。
次回、真手場家に呼び出された柘魔達。
そこではなんと…柘魔と狂子に何かが起る!?




