表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
30/45

第二十九話 動画配信をするって、かなりの挑戦だよな。

旅館に泊まるのも、ついに最後。

最後くらいはゆっくりとしたいと思ってる柘魔だったが。

旅館に泊まって三日目の今日、ついに帰る日が来てしまった。

温泉で体が癒やせたかと聞かれると、正直微妙ではある。

殆ど浸かる前に、攻撃を受けたりしたからだ。

そして狂子がある提案を出してきた。


「よし!コンヨクに入ろう!皆で入れば問題ないだろう!」


狂子が提案してきた混浴、これに賛成したのは役三名。

言い出した本人の狂子、そして蘭華に富閖野先輩。


「いやいや、普通にアウトだろ。狂子は混浴が何か分ってるのか?」

「皆で楽しく入る温泉だと聞いた!若い男女は普通に混浴に入ると、母も轟さんも言っていたぞ!」


あの二人…純粋な狂子になんて事を教えたんだ。

蘭華と富閖野先輩の考えている事は分る、大体良くない事しか企んでない。

目が光ってるし、息が凄く荒い!

完全に狙ってるよ、こっちを狙ってるよ。


「ちょっと待ちなさい。混浴をするのなら、そこの二人は入れないことを条件にするなら良いわよ」

「待ってください!そんなのは困ります!私は絶対に入りません!秋恵元生徒会長のご命令だとしても、聞き入れる事は出来ません!」


別に誰も強制とかしてないだろうに。

あと俺は入る気すらないんだが、既に決定してる風に言われてもな。

温泉にまともに入る事が出来なかったから、ゆっくりと浸かりたいのに。

あと夏美…お前はどうして俺の足を蹴ってくる?

ふくらはぎを集中して攻撃されるから、徐々に膝が曲がっていくだろうが!


「やりすぎだぞ夏美。春魔が空気椅子に座ってるみたいになってる」

「知らない。なんかむかつくから」


ただの八つ当たりじゃねぇか!理由もなく人を攻撃するな!


「あの真手場先輩、水着を着て入るとかっていうのは駄目ッスか?」

「水着ということは…悪く無いな。よし、掛け合ってくる!」


走り去って行く狂子、その顔は笑顔に満ちていた。

それにしても夏美の攻撃が、激化してきたな。

右足に集中し始めてきた…痣が出来てるかもしれない。


「おお…ハイドが空気椅子で、足を組んでる」

「だぁぁぁぁぁ!なんで転けないのよ!?タクのくせに!転んでよ!馬鹿!」


理不尽過ぎる…俺が何をしたと言うんだ。

しかし、ここで姉貴から鍛えられた時にやらされた、空気足組が役立つとは。

少しだけ前屈みになってないと、直ぐに後ろにひっくり返るんだよな。

あと足に凄い負担が掛って、バランスがキツい。

もし蘭華に掴まれたりしたら…あれ?腰が楽になった?

尻の下辺りに、何かがある。


「蘭華…ついに落ちる所まで墜ちたッスね。幸せそうだから止めないッスけど」

「なぁ浩寺…もしかしてだが、俺の下には蘭華が居るのか?」

「安心しろ春魔。もの凄い笑顔で椅子になりきってる」


どこが安心しろだ馬鹿野郎!?安心出来るわけがないだろうが!

急いで立ち上がり、蘭華を確認すると、凄い不服そうな顔で見つめてくる。

お前は時に、理解に苦しむ行動をとってくるな。

妹である姫華が可哀想になってくる。

もしこんなのが姉貴だったら、死にたくなるな。


「ちょっと姫華ちゃん?一応お姉さんなんだから、上に乗ったら駄目よ?」

「なんで?椅子になってるなら、別に私が座っても問題なくない?」


姉がドMに目覚めたかと思えば、次は妹がドSに目覚めたか。

本当にとんでもない姉妹だ、もうこれでバランスが取れてるのかもな。

姉貴すらも完全に諦めてるところを見ると、何か底知れぬ物を持って居るのか。


「喜べ皆!掛け合った結果、教科が降りたぞ!それどころか、水着の案が検討される事になった!着替えて入ろう!」


結局は全員参加させられるのか、まだ水着を着ているなら大丈夫か。


「み、水着なら許可します。ただし、しっかりと見張っていますからね!」


そして俺達は水着に着替え、浴場に飛び出したのだが。

ここでまた1つ問題が発生したのだ。

蘭華と姫華の水着が、異常な程にきわどい。

他にも狂子は水着というより、ふんどしにサラシを巻いてきた。

また変な知識を叩き込まれたのか…てか止めろよ!


「それはもしかして、またキャリーさんから聞いたのか?」

「ああこれか?夏美が教えてくれたのだ。柘魔はこういうのが好きだと、どうだ!?似合っているか!?」


色んな意味で涙が出てきそうだよ。

てかどうしてこんな物が用意されてるんだ、普通の水着だけでいいだろ。

よりによってなんでふんどしなんだ!?てか夏美、アイツも変な嘘をついてんじゃねぇ!


「入るぞ柘魔!」

「ちょっと待て!流石にその恰好は…布が長い!?」


俺はしっかりと見ていなかったのだが、狂子の履いているふんどしは、布が異常に長かった。

女性側の出入り口から続く布は、余裕で温泉まで続いていた。

湯船の中でもプカプカと浮いている光景は、なんとも言えない気持ちにさせられた。


「よっこいしょ。ふぅ…なかなかの良い湯だ」


おっさんクセぇ!狂子の入り方がおっさんそのものだ!

頭にタオルまで乗せてる!完全におっさん化してる!

女の子なんだから、もう少し可愛くしたらどうなんだよ!?

隣で浩寺がポカーンってしてるぞ!あまりの事にどうしたいいのか戸惑ってるぞ!?


「こうして誰かと温泉に入るのも良い物だな。コーラが欲しくなってきたな、誰か冷えたコーラを頼む!」


狂子の声に反応して、女将さんが冷えたコーラを運んで来たんだけど。

それも瓶コーラを運んで来た、それも全員分ある。

これは流石に贅沢のしすぎだろ。

俺がそんな事を考えている間にも、狂子はコーラの栓を抜いて飲み始めていた。


「先輩!先輩!似合いますか!?どうですかこのチラリズム!?」

「別に何を来ていようが勝手だが、隣に浩寺がいる事を忘れるなよ?」


蘭華が浩寺の存在を認識した瞬間、俺と狂子の間に逃げ込んできた。

そして何もしていない浩寺を睨み付け始め、警戒をし始める。


「私、徳江先輩は嫌いです。一昨日、裸を見られたのが許せません!先輩だけに見せたのに!」

「あれって…俺が悪いの?どう考えても、理不尽過ぎると思うんだけど」


浩寺よ…世の中は理不尽だらけだ。


「アンタの体なんて見ても嬉しくないでしょ!ねぇ浩寺お兄ちゃん?」

「胸のない姫華に言われても、大してダメージがないけど?」


張り合うな!胸を使って張り合うな!

見ているこっちの方も考えろ、比べる意味も無いくらいに差があるんだから。

お互いに押しつけても、身長の差もあるのだが、顔が遠いな。

完全に蘭華が原因なのだが…やめなさい!人を蹴るのはやめなさい!

胸で完全に見えてないのを利用して、人を蹴るんじゃないよ!

蘭華があまりの痛さで半分涙目になってるよ!

イマイチ喜んでるのか分かり難い顔をしてるよ!


「あまり喧嘩をするなよ…んで、一体何をされてるんですか?」


足元から腰に掛けて違和感を感じた俺は、手を突っ込んでそれを取り出した。

このときの気分は、コタツから猫を取り出すようだった。


「だって、ハイドの近くに寄れなかったから」

「いや、だからってゴーグルとか着けてこないでくださいよ。顔が真っ赤ですよ」


温泉の中を、海水浴気分で潜水するなよ。

そのままにしておくとヤバそうなので、とりあえず膝の上に置いてみたが。

なんだか子どもを膝に乗せてる気分だ。

不思議なのは、膝に乗せたら大人しくなってくれた所だ。

いつもなら、何かとされるのに、温泉だからか大人しくしてくれてる。

やっぱり温泉で騒ぐよりは、ゆったりとしたい気持ちは同じなのか?


「私も先輩の上に座ります!」

「お前が座ったら潰される。少しは落ち着いたらどうだ?二人を見てみろ、ゆったりとしてるだろ」

「温泉と言うのは素晴らしいものだな…眠くなってきたぞ」

「なんだか幸せ。ハイドの腕の中で寝たい」


狂子と富閖野先輩が体を預けてくるんだけど、温泉だから結構暑い。

そして姉貴達と一緒にいる夏美が、こちらを睨み付けてくる。

私不機嫌ですよアピールをしてるつもりなのだろうが、別に構うつもりもない。

だって身動き事態取れないから、気づけば蘭華まで来てるから!

ため息をついたらついたで、こちらに近づいてくるし。

文句があるなら直接言えばいいのに、本当に世話が焼けるヤツだよ。

今回は特別に…切っ掛けを作ってやるか。

水中の水を手に溜めて、夏美目掛けて飛ばす。


「ぶっ!ちょ!何すんのよ!?頭おかしいんじゃないの!?」

「言いたい事があるなら言えよ、うっとおしい。俺もお前に聞きたい事があるから、こっちに来い」


顔を真っ赤にして、夏美が殴り掛ってくるも、途中で器用に転けやがった。

そのまま富閖野を押しつぶした挙げ句、俺の顔に頭突きを噛ましてきた。


「痛ったー!なんでここで滑るのよ!?」

「こっちのセリフだ!なにナチュラルに顔面頭突き喰らわしてくれてんだ!?」


隣で心配してくれる狂子と蘭華だが、夏美の下から泡が出ていた。


「夏美…お前、屁こいたか?」

「はぁ!?ばかじゃないの!?普通女の子にそんな事聞く!?浩寺はデリカシーがないのよ!?」

「喧嘩してる場合か!?お前、富閖野先輩の上に居るんだぞ!?」


夏美を退かして、助け出したが、完全に気絶していた。

俺は富閖野先輩を連れて、温泉を出た。

とりあえず部屋に運んで布団に寝かせて、頭に冷たいタオルを乗せたが、半分のぼせてるな。

あとで夏美をシメておかないと駄目だな、普通は一緒に着いてくるだろ。


「先輩の様子どう?何か手伝える事ありそう?」

「小百合か。今の所は様子見しかできそうにない」


本当に良い子だな。

問題を起こした夏美は、全然来ないし。

姉貴に締め上げられている事を祈ろう、そうしよう・


「今日のマコト先輩、寝不足ぽかったけど…疲れてたのかな?」

「うう…ん。小百合…喘ぎ声がうるさい…黙れ」


とんでもない暴露をされた気がするんだけど…ただの寝言だよな?

隣にいる小百合に関しては、顔が真っ赤で硬直してる。

事実だったのだろうか、それとも寝言だったのだろうか。

でも小百合の方を見てると、なんだか怪しい雰囲気だしな。

まぁ思春期だからな、仕方ないよな。

あれ?涙目になってる?泣いてらっしゃる?


「泣くな小百合、富閖野先輩の寝言だ。きっとそうに決まってるって」

「…私…生徒会長に、無事だって報告してくるから」


フラフラと部屋を後にする小百合。

それと同時に富閖野先輩が目を覚ました。


「地獄を見た…死の予告は、一本道を上から見せられた」


…何を言ってんだ、この女。


「目の前にハイドがいると言う事は、夜這い?」

「これが夜這いに見えるなら、問題ないのかもな」


先ほどまで、一体何が起ったのかを説明したが、覚えていないらしい。

相当なダメージだったのか、それとも気づく暇もなかったのか。

直前に見えていた物はあったらしいが、本人(夏美)にしられたら、ボコボコにされそうだ。

ただのこの人と二人っきりにされるというのは、安心が出来ない。

下手をすれば、蘭華以上の危険行為をしそうだからだ。

まさに未知数の女だと、俺の勘は警告をしてる。


「ハイド!一生のお願い!私の生放送に出て!」

「はい!お断りします!」


突然の頼み事に驚きつつも、瞬時に俺は断る事が出来た。

我ながらの素早い反射神経だと、褒めてやりたいくらいだ。

そして俺が断ったことで、捨てられた子犬のような目で見つめてくる。

そんな目で見つめられても困るだけなんだけど、てかそういう目が出来るのね。

いつ無表情が多いから、逆に新鮮に感じ取れるわ。


「もう宣伝しちゃってる!ゲスト出演があるって!私の大切な親友って題名で!出てくれないと嘘つき呼ばわりされる!」

「何勝手に宣伝してるんですか!?そんな事を言われても自業自得じゃないですか!?」


人を勝手にゲスト出演させようとするなって!

まずは先に許可を取れよ!?順序がおかしすぎるだろ!?

一体何を考えているんだ!?俺はそこまでお人好しでもないぞ!?


「私の気づき上げてきたリスナー達の信頼がぁぁぁ!ハイドの裏切りで全部失われるぅ!ということで、皆に襲われたと言いふらしてくる」


悪質な手段を取って来やがった!?

もし俺に襲われたなんて言いふらされたら、生徒会長からの攻撃が来る。

そして蘭華のトリガーを引き、夏美からも蹴られるかもしれん。

もしかして、全てを計算しているのか?

俺が断るから、この状況を利用出来る事まで、全部が計算済みだったとでも言うのか?

いやいや、ありえないだろ…そんな高いIQを持ってるようにも見えないし。


「私の期末テスト、学年順位は一位。静子ですら三位」


完全に心を読まれた…だと?

つか…学年一位を取ってるだと?


「もう残された道は、1つしかない。私と一緒に生放送に出て貰う」

「顔出しを…しないのであれば」


交渉の結果、マスクで顔を隠しての出演になった。

帰りに富閖野により、帰りは姉貴が迎えに来てくれる。

その代りに、俺への出演料が支払う形で決着。

出演料を言い出したのは姉貴だが、ちょろまかされないか心配だ。



旅館から帰宅途中、富閖野家に寄ることとなった俺。

正直言うと、あまり帰宅は無かったのだが、仕方なく来る事となった。

俺、動画の生放送とか経験が無いんだけど。


「多分家に家族が居るけど、気にしないで堂々としていれば良い。何だったら、ハイドらしく大暴れしても構わない」

「構わないって、俺が困るんですが」


家の中にお邪魔させてもらうと同時に、小さい少年少女が玄関まで走って来た。


「マコト姉ちゃんお帰り、お土産頂戴」

「マコトお姉ちゃんの隣誰?その人がお土産?」


少年少女は、富閖野先輩より少し小さいが、どことなく顔は似ていた。

少年は短い刈り上げ、少女はポニーテールをしていたが、顔は無表情だった。

そして富閖野先輩を姉と呼んだから、弟と妹である事は確かか。

あとさらっと俺の事を、お土産扱いされた。


「お前等にやる物なんてない。それよりも、お前等が持ち出した私の変身アイテム、早くあった場所に戻せ」


お土産が無いと聞いて、絶望した顔をする二人。

無表情だった顔が一気に歪み、目に涙を溜め始め、大声で泣き始めた。

なんだか見ていて可哀想になってくるな。

見た様子だと、まだ小学生くらいだろうに。


「お菓子で良いなら、一応飼ったやつがあるが」

「お前等にやるものなんてない!中学生のくせに、子どもの泣き真似はやめい!みっともない!」


ちゅ…中学生?

忘れてた、この人の体型を見れば違和感がない!

てっきり小学生の中学年くらいかと思って居たが、まさかの中学生だったか。

もう泣き止んでるし、無表情に戻ってる。

危うく黙れる所だったな、恐ろしい家系だ。


「チッ、つまんね。姉ちゃんが珍しく人を連れてきたかと思えば、ただの男かよ」

「でも私は嫌いじゃないかも。お姉ちゃんから奪うってのも、あり?」


妹さんが、恐ろしい事を言っておりますが。

となりへ振り向くと、無表情から放たれる殺気と言う物を、初めて見た。

直視出来ぬ程のオーラを醸し出しながら、一瞬にして二人の腹部へとボディブローを叩き込んだ。

目にも止まらぬ早さだった…俺ですら、腹筋に力を入れるのが精一杯だろう。


「私のハイドを今度馬鹿にしたりしたら、ピラニアの水槽に叩き込む」


物騒な事を言い始めたよ!姉が一番怖いよ!


「スグル、カオル、さっきからうるさ…マコト?あれ!?今日帰ってくる日だっけ!?あれぇ!?お姉ちゃん、明日かと思ってた」


次に現れたのは、三人とは違う、表情豊かな女性。

身長に関しても大きい、富閖野先輩の倍はありそうだ。

ただやはり、俺からしたら若干見下ろす形になるのか。


「姉か…五月蠅いのが帰ってた。ハイド、あれは気にしないで私の部屋に行こう」

「ちょっと待った!へぇへぇ、ほおほお、ふんふん、なるほど…えい!」


突如両手の人差し指で、乳首を攻撃された。

地味に爪を立てて攻撃されたせいで、結構痛かった。

だが相手の方もダメージを受けた様子で、声にならない悲鳴を上げながら、しゃがみ込んでいた。

どうやら突き指をしてしまったようだが、自業自得でしかない。


「だ、大丈夫ですか?突き指なら、冷やした方が」

「ククク…なってくれたな…私のニップルスティンガーを破るとは…ただ者ではないな!?」


理解が追いつきそうにない…結局は何がしたかったの?

半分涙目だから、相当痛かったんだな。

思いっきり突いて来たからな、こっちもまだ痛い。

本当にこの人が、富閖野先輩の姉なのか疑問が浮き上がってくる。

俺は信じるぞ!姉貴と似てない姉弟と言われ続けたらな!


「これは私の姉、ミコト。無視して部屋に」

「うぉぉぉぉぉ!マコトォォォォォ!何処だぁぁぁ!?」


今度はなんだよ!?めっちゃ発狂してる!?


「兄のマサル。攻撃してきたら構わず殴って良い、むしろ見たい」

「ゆ、愉快なご家族ですね」


いやだ…長時間も居たくない。

もう帰りたいメーターがフルスロットルなんだけど!

今なら十秒以内で家に帰れそう!何でも振り切れそう!


「マコト!寂しかったぞォォォォォ!」


ぎゃあああああ!階段からゴリマッチョが飛び降りてきた!?

あれが本当に、この人の兄なのか!?

もう別人過ぎてやばいだろ!伸長差もありすぎるだろ!?


「マコニャン・マキシマムドライブ!!」


マキシマムドライブって、アンタそれ二人で一人になるヒーローの技じゃん!?

それに回し蹴りを繰り出してるが、スピードが速い。

スピードだけなら、姉貴程ではないだろうが、俺のよりは明かに早い。

更に躊躇なく横顔に叩き込むと言うのも、また恐ろしいというか。


「チャ~オ!…部屋は二階にある。早く行かないと放送に間に合わない」


家よりもかなり、騒がしい家族だな。


「このゴリラは踏んづけても大丈夫、逆に踏んづけない方が安全。多分トレーニング後だから」


状況に戸惑う俺は、そのまま部屋に連れて行かれたのだが。

想像はしていたのだが…かなりのマニアだと実感させられる。

部屋の壁中に変身アイテムや武器が飾られ、ガラスのショーケースには未開封品が保管されていた。

パソコンデスクの上には、三枚のモニターに、ギラギラと光るキーボード。

完全にガチゲーマーの部屋じゃねぇか!?カーテン開けろよ!


「この日を待ちわびてた。ちゃんとハイド専用の赤い椅子も用意してある」


あの赤い椅子と青い椅子って、そういう意味だったのか。

もう半分呆れてきたが、半分尊敬が持ててきた。

色々な物が置いてあるんだが、もの凄く貴重そうな玩具まで置いてある。

見るからに超合金のロボットとか、ブリキのロボットとか。

もしかしてこの人も、かなりの金持ちなのか?


「生放送を始めるから、椅子に座って。あとこれえを身に着けて」


…ホッケーマスクに、焦げ茶の帽子。

完全にホラーカリスマ二名の特徴じゃないですか!?そして青いツナギを渡されましても。

せめて別の緑と灰色の中間みたいな色だったら、三大ホラーになれたのに。

あとそっちはそっちで、朝放送してる少女アニメのコスプレをしてるけど、無表情過ぎて原作の面影がない。

なんか全く別の作品の、コスプレをしてるようにしか見えない。


「準備万端!アーユーレディ!?ジキル&ハイド出撃!」


今までで一番テンションが高いよ!?


「生放送開始まで…3、2、1、コンチッス。マコニャン登場…終わって良い?」


いきなり終了して良いか聞き始めたよ…画面が文字だらけだ。

殆どが始まったばかりだとか、パンツ見せろとかしか書いてない。

お前等…どんだけパンツが見たんだ。

そして隣では、フィギュアのパンツを見せつけてる。


「本日は、前回言っていたスペシャルゲストを用意した。今隣で…賢者タイムに入ってる」

「何普通に嘘言ってくれんだよ!?アンタがやってんのはアダルトサイトでの放送か!?」


いきなり賢者タイムとかふざけんな!

人を変態扱いされても困るんだよ!俺家に帰るぞ!?

あと画面の向こうのお前等!草を生やし過ぎなんだよ!

顔面がマックス大草原と化してるじゃねぇか!


「マックス大草原…皆が盛り上がってきた。じゃあ早速紹介すると、これが私の元半身であるハイド」


ちゃっかりハイドとして紹介されたよ。

これじゃあコメントが混乱、してない…むしろ盛り上がってる?

顔出せとか書かれてる、あと富閖野先輩がカメラに近づけようとしてくる。


「写らないとゲストにならない。顔は出してないから大丈夫」

「大丈夫って…既に殺害予告されてんだけど!?誰だ!?殺害予告なんて書いたヤツ!?今すぐ名乗りでろ!」


びっくりして名乗り出ろとか言っちまったが、コメントが荒れ…ないのね。

逆に便乗して書いてるヤツが増えてる。

あとホッケーマスクとか着けてるせいで、お前の本業だろって書かれてる。

確かにこんな恰好をしていれば、本業と言われても仕方が無いか。


「殺害予告した人。これからハイドがそちらに向かいます」

「俺は邦画ホラーに出てくる幽霊か!?画面を通して移動しろってか!?洋画か邦画のどちらかに絞れよ!?」


もうなんかぐだぐだになってきてるよ!

この人、一体生放送で何をしてんだ?


「そろそろ本題に入る。本日やるのは、ホラゲー実況を二人でやる」


そういうと、ゲームソフトを探しに行ってしまった。

取り残された俺は、喋る事は出来ずに、画面を見つめて文字を読んでいた。

すると沢山の、怖いとか通報しろとかの文字が流れてくる。

まぁ…ホッケーマスクを着けた男が、画面に集中してたら怖いよな。

適当に喋れって…こっちは初心者なんだよ。

ガタイ良いですねって…おい!途中からホモが湧いてるぞ!?

滅茶苦茶ホモっぽいコメントが増えてきてる!


「コメがホモ達に占拠されてる。ハイドの大胸筋を見せれば収まるかもしれない」

「いやですよ…顔出しとかしない約束なんですから」


コメントの方では、大胸筋見せろとか腹筋見せろとかで溢れかえってる。

お前等どんだけ人の筋肉好きなんだよ!?

人の筋肉を眺めても楽しくないだろ!?少なくとも俺は楽しくない!


「いつもは兄に頼んでるけど、私がパーフェクトでノックアウトしたから来れない。だからハイドがやるしかない!」


涙目で訴えられても…分った見せますよ!見せればいいんでしょ!?

俺の中に、新たな黒歴史が刻まれた瞬間だった。

一体何処の誰が見ているのかも分らない生放送で、自分の裸を晒すことになった。

それも微妙なコスプレをしながらで。


「ハイドの筋肉が大好評、あちこちに傷があってカッコいいって。ヤンキーとか書いてあるから、リスナーに答えてあげて」

「ヤンキーとかじゃないですよ。昔やんちゃ坊主だったので、その時に怪我をした痕です」


段々とコメントが筋肉祭りと化してる、ゲーム実況なんて出来るのか?


「ハイドの筋肉つながりで今日やるゲームは、安全帽を被ったマッチョな殺人鬼が襲い掛かってくる名作。ゴリマッチョ・ハウス」


ご…ゴリマッチョハウスを、所持してるだと?

生産数は僅か数百と言われている、伝説のPC専用クソゲーホラー。

キャラクターが異様にカクカクするのに対して、敵はヌルヌルと動く。

それに敵からの攻撃判定はガバガバなのに対して、こちらからは一切の攻撃が出来ない。

一番恐ろしいと言われてる点は、主人公選択で男か女かと性別を聞かれる。

男を選択した場合には、難易度は高いものの、敵にやられるとホモエンドが待っている。

対して女を選んだ場合には、難易度が急激に上がる挙げ句に、鬼の様な形相で瞬間移動等をしてくる鬼畜に変る。

噂によると、あるコマンドを入力すると、難易度が下がると聞いた事がある。


「これの入手法?父親が持ってた。うん、いつものパターン…多分他にも沢山あると思う」


画面を見ながら、一人で喋ってるよ。

知らずに眺めてたら、独り言を喋ってる様にしか見えないな。


「私にとってのハイド?半身で彼氏」

「訂正させて頂きます。先輩後輩の中であり、恋愛関係は一切ありません」


一瞬彼氏と言う言葉で、コメントが荒れそうになったが、直ぐに否定しておいて正解だった。

直ぐに落ち着いたが、こちらの表情が見えないせいで草がまた増えた。

隣では既にゲームをスタート画面まで進めてるし、色々と手慣れ過ぎてる。


「じゃあ始める。難易度は女性にするけど、噂の真相を知りたい人いる?…分った、やってみよう」


手慣れた動きで、パソコンにコマンドを打ち込んでいく。

すると男の声で変な事を良いながら、画面が一気に変った。なんだか筋肉マッチョのシルエットが出たと思えば、画面が全体ピンク色に。

なのに表情を変える事もなく、一人でゲームを進めていく富閖野先輩。

途中で交代をされたりしながら、楽しくプレイをしていた。

時間が経つのは早い物で、気づくと心配した姉貴が迎えに来ていたのだが、リビングで寛いでた。

完全に富閖野先輩の兄と弟を骨抜きにして、姉と妹には相当懐かれていた。


「ハイドの姉を見習って欲しい。見ていて恥ずかしい」

「うぐぐ…喰らえ!指先に回転を加える事により、更なる火力を引き出す事に成功した、真・ニップぐぁぁぁぁぁぁ!」


まだこちらに攻撃をしてくるならまだしも、よりにもよって姉貴に対して攻撃をするなんて、自殺行為と言っても良い。

突如突きだされた二本の人差し指を、両手の人差し指と中指で挟んだだけでダメージを与える。

それも指の太さは大して変らない、むしろ姉貴の方が細い。

なのに、挟むだけで相手に激痛を与える破壊力。

流石は悪魔と呼ばれるだけはある、人間離れをし過ぎている。


「私に攻撃をしてくるなんて、良い度胸してるわね。このまま指の第一関節を粉砕するのも面白そうだけど、いっその事逆反りにするのもありかもしれないわね」

「お慈悲!お慈悲を!指を破壊されると、漫画が描けなくなります!」


漫画が描けなくなるって…漫画家なのか?


「別に壊しても構わない。どうせ書いてるのなんて、ただの百合漫画だから」

「ま、マコト!お姉ちゃんを見捨てるというの!?蹴り!蹴りをかませ!この巨大なスイカ2つを叩き割れ!」


蹴りの体制に入る先輩を、適当に担ぎ上げると、発狂する声が部屋に響いてきた。

そういえばゴリマッチョさんを忘れてたな、めっちゃダンベルを振り回してる。

てかダンベルで威嚇をしてくる、ダンベルを叩き合わせてドラミング的な事をしてくるんだけど。


「マゴドッヲブァナズェヴァ!」


もう日本語ですらない!多分本人も理解出来て無い!

ダンベルをこっちに投げつける準備を視点だけど!? 

もう明かに砲丸投げの構えを取ってる!?


「やかましいんじゃ!このボケガァ!」


突然上がるドスの利いた声と同時に、ゴリさんが白目を剥いて倒れた。

そしてその背後に現れた筋肉質の女の人、多分倒した張本人だ。

もしかして…あれも先輩の姉なのか?


「マサル…アタシが寝てる間は、静かにしろってあれほど言ってあるよな?誰が家の中でダンベル振り回して良いなんて、言ったんだこのダボが!」


じゃ、ジャーマンが決まった。

滅茶苦茶綺麗な形のジャーマン、完璧以外の言葉が見つからない。

完璧過ぎる技に対して、うちの姉貴も固まってる…それでも力を緩めないのか。

てかジャーマンの人、どこかで見た事がある気がするんだよな。

あの完璧過ぎる美しいジャーマンを、どこかで見た事がある。

姉貴も見た事がある様子だが、誰だか思い出せない様子。


「なに?客来てんの?ミコト、飯食べてってもらいな。客に出す料理に不味いのを出したら、後でドロップキック喰らわすから…ごゆっくり」

「ちょっとお母さん!この状況で普通放置する!?娘がピンチなんですけど!?将来有望な漫画家がピンチなんですけど!?」


ミコトさんが助けを呼ぶも、そのまま部屋に帰ってしまった。


「タッちゃん…あの人、もしかしてだけど…喰能(クノウ)だと思うの」

「同感だ…あの完璧なジャーマンは、恐らく間違い無く『人食い喰能』だ」


『人食い喰能』、昔俺と姉貴がプロレスにハマっていた頃に見た、女性レスラーの名。

あらゆる相手を、まるで獲物を狩る獅子の様に再起不能する。

色々なプロレス技を得意とするが、特に得意としたのはジャーマン。

その決めに入るタイミングは完璧かつ、掛ける一瞬はまさしく芸術と言われ、スローモーションで見た時は感動した。

俺と姉貴はあらゆる試合のビデオを見て、DVDになっても見ていた。

現在でも家に保管してある程に、大ファンだった。


「ついに気づかれた。私達の母は、元女子レスラー…昔の話しだけど、知ってるの?」

「知ってるも何も…俺と姉貴はファンだよ。姉貴の技開発の切っ掛けの人でもある」


あ、ああ、姉貴が感動で涙を流してる!?


「あとで…サインを貰いましょう」

「そうしよう…一生の宝になる」


それから、俺と姉貴の熱が入ってしまい、プロレス技についての語り合いが始まってしまった。

途中で目を覚ましたゴリさんも語り合いに加わり、結局帰ったのは翌日になったことは、皆に内緒にしないといけない。

マコトの家に行き、生配信を無事に終えた柘魔。

だがなんと、マコトの母が実は元レスラーであり、柘魔と秋恵が憧れる存在だった。

次回、久々に桜が登場!ついに柘魔と浩寺への貸しを返して貰うときが来た!

コスプレから始まる複雑な友情…浩寺がついに打ち明ける!?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ