第二十八話 思ってる事を話すには、場の空気が大切。
旅館に泊まって二日目。
昨晩の事がなかったかのように振る舞う蘭華。
そんな中で、昨日の海辺でのマッサージが話題になり始める。
昨晩の件があってから、俺と小百合は寝不足になっていた。
助けを呼びに行った浩寺だったが、寝ぼけた姉貴に技を掛けられていたらしい。
その間に夏美と狂子は遊び疲れて爆睡、富閖野先輩は押し入れに引き籠もっていたそうだ。
疑問なのは、由美だけがどこにいたのか知らなかった。
「大変だったみたいだけど、大丈夫なの?気持ち悪くない?無理はしちゃだめよ?」
「はい!先輩が優しく介抱してくれたので、このとおり復活しました!」
復活したのは分ったが、全然懲りてないな。
「俺だけじゃねぇよ。小百合と姫華も助けてくれたのを忘れたのか?小百合は一緒に見ててくれたし、姫華はずっと手を握ってたんだぞ?」
「知ってますよ。でも…裸の私を抱きしめてくれた上で、そっと耳元で囁いてくれた先輩が忘れられないんです」
緊急自体だったからな、ああするしかなかった。
まぁ、無事で居てくれて何よりなんだけどな。
てか日傘の下にいるというのになんて暑さだよ、炎天下と変わらないぞ?
一つの原因は蘭華だつてことは、間違いないがな。
さっきからジュースとか飲んでるが、全然涼しくもならない。
「離れろ蘭華、汗でベタつくだろうが」
「私は先輩の汗なら飲めます!さぁ!もっと下さい!」
もっと下さいじゃねぇ!いい加減にしろよ!
「これはいい肉。縛ったら美味しいチャーシューに出来そう」
「勝手に触らないで下さい!私のお腹に触っていいのは、先輩だけなんです!」
突如現れた富閖野先輩が、蘭華の腹部を摘む。
最近思っていたが、だいぶ弛んできたな、
昨日も乗っかられた時も、結構目立ってた。
少し運動をさせないとダメかもしれない、そうするとするか。
「少しぽっちゃりしてる方が可愛いんです!由美も言ってました!私はほんのりぽっちゃりしてる方が可愛いって!」
「まぁ…最初にあったころに比べたら、かなりマシにはなったよな。あの時は本当に焦ったぞ」
本当にあの時は焦ったな、涙も出そうになった。
今はここまで太ってくれて、お父さんは嬉しいぞ。
「でも少しぽっちゃりし過ぎてるかもな。一緒に筋トレでもするか?二の腕とか引き締められるぞ?」
「筋トレは遠慮しておきます…それより、昨日やっていたマッサージ!私にもしてください!先輩の手でイカせて下さい!」
最後のは聞かなかったことにして、こいつにマッサージか。
昨晩は辛い思いもさせたから、リラックスさせるには良いかもしれないが、変なことになる気がする。
俺は蘭華に条件を出して、受け入れるのであれば、マッサージをしてやると言った。
条件の内容は、こちらに変な事をしてこない。
発情しない、変な事を叫ばない等を出した。
破った場合には即、マッサージをやめてこの場を離れると。
最初は悔しそうな顔をしていたが、結局は条件を飲んで、マッサージを開始した。
「そんじゃあ始めるぞ。おい、なんで水着外してんんだ?」
「水着があると邪魔になると思ったんです。紐が引っかかるじゃないですかぁ」
言われてみればその通りか、途中で指が引っかかるな。
となると、彼女自身の判断は正しい。
実際にマッサージをしていても、引っかかりがないから、やりやすい。
てか結構肌がスベスベしてるんだな、モチモチしてる。
やっぱり肉が付いたって証拠だ、いい感じに栄養が取れてるみたいだからいいか。
「んんっ!そこです!そこをもっと激しくしちゃって下さい!そのコリコリしてるところです!あああああっ!」
もうマッサージやめようかな、うるさいんだけど。
隣で由美はビデオ撮影開始してるしよ。
狂子は指を咥えてこちらを見つめてるよ、そんなにマッサージして欲しいのか?
いつも姉貴にはやってるから、こういう反応をされると、逆に困る。
昨日だって小百合も似たような反応をしめしてた。
ただ…前に夏美にもやらされたことがあったが、痛がって秒で中止したっけか。
「なかなかエロい指使いッスね!そのまま激しく行きましょう!」
「そういや由美、お前昨日どこに居た?あの騒ぎの中、寝てたのか?」
黙秘する由美に対して、俺は不信感を抱いていた。
こいつは、何かを隠している、それもバレたらまずいことを隠してる。
どこかで隠し撮りでもしてたんだろうな。
「大島には私の手伝いをしてもらってた。だから昨日は居なくても仕方がない、ハイドは怒る必要はない」
手伝い?由美が生徒会の手伝い?
俺は疑いの眼差しを向けてると、すぐに目をそらされる。
疑わしいが、富閖野先輩の目は純粋に見えた。
俺も眼科に行く必要がありそうだ。
「手伝いってのは、生徒会の手伝いか?」
「そ、そうッス!生徒会での書類製作の手伝いを」
「違う、生配信をしてるから、カメラマンをしてもらってた」
…はい?
「な…生配信?それって言うののは、動画サイトとかの?」
「そう!何を隠そう私こそが、ニヤニヤ動画の生放送大人気絶賛中の無表情系ロリアイドル!マコニャンこと!ヘンリー・マコニャン!」
む、無表情系ロリアイドル…マコニャン?
なにこの人?生徒会なのに、そんなことしたの?
つかマコニャンってなに?名前がマコトだから?
まだヘンリーの意味は分かる、ジキル博士から取ってるからだろう。
名前になんでニャンを付ける必要がある?無表情でニャンを付けるか?
あと動画中に何をしてんだ?表情無く何をしてるというだ?
「主にコスプレとか、ゲーム実況をしてる。あとギターを引いたり、雑談したり…禁断の遊びしてみたりしてる」
最後のだけが、超気になるんだけど!
いやいや、結構色々やってることにも驚きなんだけどさ、ネットアイドルしてんの⁉︎
「昨日は真夏と言うことで、怪談を話してたけど…次回はハイドに出演して欲しい!」
「丁寧にお断りさせていただきます」
俺の事を巻き込むなよ、いやだよ。
まさか顔出とかしてんのか?もしそうだとしたら、かなりヤバイだろ。
生徒会長とかにバレたりしたら、大騒ぎだぞ。
あの会長の事だ、俺が原因とか言い出すに決まってる。
あと蘭華!お前ちゃっかり寝てるな⁉︎寝る前に水着を着けろ!
寝返りでもしたら大変な事になるぞ!分かってんのか⁉︎
「よし、次は私の方を頼む!大分肩こりが酷いんだ、母曰く胸が原因らしいんだ」
狂子、肩こりの原因以前に、どうして全裸になってるんだ?
まだ蘭華みたいに上を脱ぐなら分かるが、どうして下まで脱いでるんだ?
浩寺が居るのに脱ぐなよ!俺が居ても脱ぐな!
「どうしたんだ?早くして欲しいんだが?もし私の体を心配しているのなら大丈夫だ、母によって鍛えられている」
そういう問題じゃないんんだけどな…これ、やらないといけない雰囲気だよ。
背中にまたがってやる形だが、最近の俺は調子がおかしい。
今…こうして狂子を見ただけで、胸と尻に視線が行ってしまう。
心の中で半分修羅場と化している俺に、催促してくる狂子。
もうこうなったらやけだ!絶頂でも失神でもさせてやるよ!
「は…始めるからな?痛かったら言えよ?即終了するから」
「準備は出来ている。蘭華も小百合も気持ちよさそうにしていたからな、この時を楽しみにしていたぞ」
俺は背中にまたがり、マッサージを始めた。
すると蘭華達のように声があがるが、予想以上に大きかった。
「 いいぞ!いいぞいいぞ! イエス!イエスイエス!」
日本語と英語を混ぜて叫んでる…てか心臓がバクバクする!
俺、もしかして興奮をしてるのか?
狂子の声を聞いて、興奮してきているとでもいうのか?
俺自身の体が反応して…体が震えて来た⁉︎
手が酷く震えてる、というより全体的に震えて来てる。
「何か背中に硬い物があるのだが、一体なんだ?ん?」
狂子の手が背中に伸びた瞬間に、勢いよく立ち上がる。
そして俺は振り落とされたが、同時に狂子が悲鳴をあげながら抱きついてきた。
「ヘルプ!ヘルプだ!また出た!白いコックローチ!ホワイトコックローチだ!」
「落ち着け狂子!それは多分フナムシだ!似てるがゴキブリじゃない!」
恐怖で怯える彼女は、しがみついたまま離してくれない。
現在裸の状態で、こちらに抱きつかれるなんて、思いもしなかった。
それ以上に、俺の中でも警報が鳴ってる!
てかしがみ付き方がコアラみたいになってるぞ!?
しっかりと腰にホールドを掛ける程に怖いのか!?
「NO!絶対に嫌だ!あんな悍ましい生物が居る所に私を下ろさないでくれ!頼む!一生のお願いだから!」
その後は、どうしても離してくれないでの、腰にタオルを巻いて落ち着くのを待つ事にした。
いくら引きはがそうとしても、泣き叫んで抵抗を繰り返すばかり。
最終的には、旅館に戻った事で落ち着いて貰う事が出来たが、狂子からしばらく追求が続く事になった。
そういや、蘭華と泳ぐ約束をしていたが、出来なかったな。
日が沈み始めた頃に、突然小百合が肝試しがしたいと言い始めた。
同調する夏美と蘭華と富閖野先輩。
だがこの中で一人だけ、猛反対する人物が居た。
「絶対に嫌ッス!断固反対ッス!やる意味すら分らないッス!」
由実が嫌がっているのだが、俺を盾にして抗議をするなよ。
「そういや、お前はホラー系が苦手だったな。一人で旅館で待機してるか?」
「いやいやいや!やめましょうって!普通ここは、気を利かせて中止する流れッスよ!?脳みそが大きく腫れてるんじゃないッスか!?」
地味に酷い事を言ってくるな。
俺の脳みそは腫れてない、まぁ怖いのは仕方がないけどよ。
俺は別に強制しているわけじゃなくて、ただ肝試しに参加したいだけなのだが。
訴えているつもりなのだろうが、背中をバシバシと叩いてくる。
結構痛いんだよ、たまに拳を混ぜてくるから悪質過ぎる。
「旅館でテレビを見ていればいいだろ?」
「か弱き乙女を一人旅館に残すって、本当に男ッスか!?」
「馬鹿みたい。いい年してお化けが怖いとか、なさけない」
姫華よ、相手を煽る前に、足が震えてる事に気づいたらどうだ?
「た…確かに、夜の山は危険だからな」
「そうですね。狂子の言うとおり、肝試しは中止にするべきでしょう」
狂子と生徒会長も反対みたいだが、二人も足が震えてる。
別にビビる必要はないだろ…道のある山なんだから。
ライトを持って、無心で歩いて行けば。
「私は先輩と肝試しがしたいです!そのまま悪魔と化した先輩が、力任せに私の衣服を引き裂いて」
変な妄想を始めるな、こっちは反応に困る。
肝試しをするにしても、チーム決めと幽霊を誰がするかを決めないとダメだな。
いっそのこと、俺が幽霊役を演じた方が楽かもしれない。
蘭華達の相手をするより、楽しい可能性もあることだし。
「悪いな、俺は脅かし役に回らせてももらう」
「その必要はございませんよ。脅かし役でしたら、私が承ります、むしろさせてください」
突如現れた轟さんに、俺達は驚きを隠す事が出来なかった。
数人が悲鳴を上げていたが、生徒会長が一番大声を出してた。
「脅かし役をするのに適役の者達を呼び出しますので、少々お待ちくださいませ。この真手場家使用人の金剛こと、運転手担当の轟に!」
なに?真手場家使用人の金剛って?
全然理解が出来ないんだけど、誰か説明して?
轟さんが携帯で呼び出すと、一斉に三人が集まって来た。
全員が全員で雰囲気が違うんだけど、この人達が真手場家の使用人なのか。
「ご紹介します、こちらの私より背が大きい女は、真手場家メイド長の桐山でございます。基本無口ですので、話かけても意味はございません」
じゃあなんでメイドしてんだよ!?
話かけても意味ないって、なんの意味があるってい言うんだよ!?
よくそんなんでメイド長になれたな!?どうやって指示出すんだよ!?
にしてもデカいな!?色んなところがデカいな!?
「こちらはコック長の田中でございます。現在は中二病を発症しており、自分の事をフランシスだがフランソワと名乗りますが、気にしないでください」
「フランソワールだ!何度言えば分る!?貴様はいつもそうだ!?おい!私を無視するんじゃない!?」
真手場家の使用人って、変った人しかいないのか?
今こうして見ているとだ、癖がありそうな人物ばかりなんだけど。
あと今のだけで、既に偉い人が二名だぞ!
メイド長とコック長、こんな所に来ていたらダメだろ!
仕事しろよ!部下に全部やらせてるのか!?
「馬鹿は放置しまして、こちらに居ます金髪ヤンキー女が庭師…誰でしたっけ?」
「テメェ…いい加減に人の名前を覚えてたらどうだんだよ?このド変態に代わりに名乗ってやる。俺様の名は」
「彼女は黒里亜依莉、私の知り合いよ。久しぶりね、アイリ…河原での決闘以来かしら?あの後は無事に帰って来る事が出来たみたいね」
今度はヤンキーの上に、姉貴の知り合いかよ。
もう既に睨み合ってるしで、喧嘩なら余所でやってくれ。
「これで全員でございます」
「待って!私の紹介を忘れてる!家令担当の私を忘れてる!いつもそうやって私を苛めてどういうつもり!?」
今度はちんちくりんなのが出てきたな、ちんちくりんは十分なんだよ。
ただでさえ小学生と、ロリ体型の無表情女がいるんだぞ。
これ以上ロリ枠を増やすなっての。
あと背後で既に喧嘩に決着が付きそうなんだけど、てかもう殆ど姉貴の圧勝だ。
ラリアットを喰らわせた後に、足掴んで振り回してる。
だがそれを、誰も止めようとしない。
「では始めるとしましょう。全員参加と言う事で、こちらも全力で楽しませていただきます」
この人の笑みが怖い、良からぬ事を考えてるよ!
何かをやらかす気満々だよ!いやな予感しかしてこねぇよ!
全員が不安な視線を送っている間にも、五人は山へと走っていた。
脅かし役が決まったと言う事は、俺は完全に蘭華達の相手をしないと行けなくなったわけだ。
肝試しをするにしても、人数が人数だから、何組かに分けるのが良いだろう。
組み分けをするにしてもだ、どうやって分けるか。
「組み分けをしよう。私は柘魔と行くぞ」
「私も先輩と行きたいです!先輩と二人っきりがいいです!」
「ハイドは私と行く。昔からそう決まってるから」
勝手に決めないでくれます!?
「柘魔様、こちらをお使いくださいませ」
再び現れた轟さんに、大量の割り箸を渡されたのだが。
これはくじ引きで決めろと言う事か?
「二人一組になるように調整はしたのですが、人数敵に三人一組のグループが出来ますので、ご理解お願いいたします。では、お待ちしております」
そういうと、轟さんは山へと帰って行った。
二人一組だが、三人一組のグループか。
俺的には、俺と浩寺と由実がそれであって欲しい。
あの二人のどちらか、あるいは三人同じグループならば、安心出来る。
そう願っていたのだが…現実というのは非情な物だ。
グループ分けの内容は、浩寺と夏美はまだ良いだろう。
由実と富閖野先輩、小百合と姫華、姉貴と蘭華になった。
残されたのは、俺と狂子と生徒会長。
無論反対されるのは、目に見えてた。
「いや…こんなケダモノのような男と山に入るだなんて!小百合!私と好感しなさい!これは会長命令です!」
「無視して良いわよ。元生徒会長の私の権限を使って、小百合は従わなくて良い」
会長権限を乱用してるよ。
まぁ正直、狂子までならいいんだけどさ…生徒会長と一緒か。
姉貴と組んでる蘭華は、こっち見て涙目になってるし。
富閖野先輩は、生徒会長を睨んでるよ。
「なんですか!?私じゃ嫌だとでも言うのですか!?私もアナタと居るのは嫌なんですよ!?ですが狂子が心配なので一緒にいる事を許可しましょう!光栄に思いなさい!彼女だって、本心は一緒に居ることが嫌なはずです!」
「私は柘魔と一緒になれて、とても嬉しいのだが?」
俺って相当嫌われていますな。
別に嫌われてても、良いんだけどさ、狂子を巻き込むなよ。
ちゃっかり狂子は腕を絡めてきてるんだが、それを見て睨み付けられる。
これから肝試しをするというのに、先が思いやられそうだ。
「じゃあどの組が先に行くか決めようぜ、俺は春魔達が先で良いと思うぞ」
「賛成ッス。生徒会長と柘魔先輩待機してたら、安心ッスからね!」
俺達以外の全員が賛成し始める。
この中で、一部の人間が同じ事を考えていたのが分った。
とくに
蘭華と富閖野と小百合に関しては、戻って来た俺を連れて行く気でいるだろう。
絶対に行かないからな!お前等の考えてる事なんてお見通しだ!
「さ、さっさと行ってしまおう!轟さん達が待って居るはずだ!」
「そ、そうですね…あの方達には、仕事がありますから」
一人先へ進んでいく生徒会長と、俺の腕を引いて進む狂子。
別に勝手に行くのはいいんだけどさ、迷子になられても困る。
二人して、若干震えてるのが丸わかりだ。
「狂子はもしかして、幽霊とか苦手なのか?」
「それについてはだな…苦手と言うより、なってしまったと言う方が正しい。以前遊んだあのゲームが…思ったよりも怖くてな…少し暗闇が怖いんだ」
ああ…あのゲームが原因だったのか。
前までは深夜だろうと、勝手に部屋へと侵入してくる狂子だったのに。
まぁアレは確かに怖いからな、俺も夜中の音に敏感に反応するようになったから。
あのソフトは現在、小百合に貸している。
彼女曰く、続きが気になり過ぎて、一日でクリアをしたらしい。
現在は四週目に突入したとか、難易度を最高にして遊んでるてるとのこと。
「きょ、狂子。怖かったら、いつでも私を頼ってください。従姉妹同士ですから、なんの問題もありませんよ」
無言を貫く狂子は、半分涙目でこちらの様子を伺ってくる。
まさかここまで怯えられるとは思いもしなかった、てっきり怖いのはゴキブリだけかと思ってたから。
そして生徒会長の視線が怖い、今にも俺を殺しそうな目で見てくる。
もう早く終わらせたい、楽しくない。
「いい男はいねぇか!?」
「「ぎゃあああああああああああああ!!」」
突然現れた変態に、二人の悲鳴が上がった。
長いコートを羽織り、年など考えずにスク水にニーソックスを装備して、頭にパンツを被った轟さんが飛び出してきた。
もう破壊力が凄いと言うか、スク水が今にも破壊されそうと言うか。
この人は本当に、変態なんだと確信が持てた。
「何て恰好をしてるんですか?これは肝試しですよ?」
「理解しています。普通にお化けを演じたとしても、面白みがないと思いまして、捻りを加えてみました」
捻りというより、歪みを感じたよ。
アンタは何かを抱えて生きてんのか?ある意味恐ろしいよ。
「ちなみにこのテーマは、幽霊よりも人間の方が恐ろしいと言う事を、滞在とさせてもらいました。突然スク水を来た変態が飛び出して来たら、とても恐ろしく感じませんか?」
「アンタの思考回路と想像力が恐ろしいよ。一体どこからそんな物を用意してきたんだ?スク水に関しては、5年2組って書いてあるぞ?誰のだよ?」
俺が蔑んだ目で見ていると、轟さんは目の前で、謎の踊りを披露し始めた。
本当に駄目だこの人、そのうち捕まるだろうな。
狂子は完全にビビって腕どころかしっかりとしがみつかれてるが、足には生徒会長がくっついてる。
これってかなり屈辱的な感じに取られそうだが、俺は何も悪くない。
だって自分からしがみついてきたんだから!
「どうです?こういう変態女と一夜を過ごすと言うのも、燃えませんか?私がリードしますよ?」
「全力でお断りさせて頂きます。あと姉貴の前でやると、半殺しどころか、警察呼ばれますからね」
警察と言う言葉を聞いて、少しだけ眉が動いたが、気にしてはいないそぶりを見せられた。
「分りました。では、3Pをご堪能下さい」
「だからそっちに話を持っていくな!さっさと消えろ!変態運転手!」
俺が怒鳴りつけると、しょんぼりしながら茂みへと消えて行った。
これで進めると思った瞬間に、茂みから何かを投げつけられ、確認するとニーソックスだった。
本当にいい加減にしとけよ…誰が欲しがったんだよ!?
「アナタ!?私を足元に置くだなんて!それで私を服従させた気でいるのですか!?歳上に対して礼儀がなっていませんよ!そんな事では、秋恵先輩の指導がなっていないんじゃないんですか!?」
「いや…アンタが勝手に、もういいや。このさい聞いておきたいんだが…俺を目の敵にする理由は、狂子と仲良くするのが気に入らないからか?」
俺は静かに詰め寄った、相手が逃げられないようにするために。
別に俺が嫌われてようと構わないが、姉貴の事を言うのは違う。
いつもは先代が絶対だとか言っているが、居ないから本音が出たのかもしれない。
そりゃあれだけ権限を乱用されれば、ストレスも溜るだろうが、姉貴はしっかりと教育をしてくれていた。
だから今だってリミッターを掛けられるようになったんだ。
「この際、ハッキリ言わせて貰います。私はアナタが嫌いです、大っ嫌いです!私が憧れていた秋恵先輩だけでなく、私の大切な狂子まで奪っていった…私から生徒会の仲間まで」
生徒会長は、それから俺を罵り続けた。
聞いている限りでは、逆恨みしているようにも思える。
まず姉貴と姉弟なのは仕方がない、俺にはどうしようもないからな。
狂子がこうしているのも、俺がどうこう出来る物でもない。
生徒会メンバーだってそうだ、まるで俺が誑かしたかのように言われたが、そんな事をした記憶もない。
気がつけば、周りに集まって来ていただけなのだから。
基本的に、本人達の意思は尊重するようにはしてる。
だから出来るだけ、傷つかないように配慮だってしてるつもりだった。
それなのに、生徒会からは、俺が弄んでるとしか認識出来ないらしい。
「どうせ皆…アナタに好きな様に、体まで穢されてしまっているんでしょう!?狂子だって…そのうち私も、アナタに襲われて」
「それが理由だというなら、別にそう思ってれば良い。だが訂正させてもらうと、姉貴はしっかりと教育をしてくれた上し、俺は誰にも手を出してなんかいない」
涙を溜めた目で睨み付けられたが、何も感じる事はなかった。
実際に手を出していないのだから、堂々と胸を張れる。
「俺が手を出さない理由は幾つかあるが、一番の理由は責任を取れないからだ。俺達はまだ高校生だろ?ガキが出来て学校辞めてみろ?その後は責任取って生活が出来るか?」
「知りません!それに証拠がありません!証拠を提示してから言ってください!狂子だって痛い思いをしたんじゃありませんか!?無理やりされたとか!
証拠を提示しろってか…あるわけないものを要求してきやがった。
そして証拠がないと分るや、目の色変えて攻撃をし始める。
間に狂子が入ってくれて、守ってくれたがのが救いと言いたい。
「どうして庇うんですか!?狂子!アナタは騙されてるんです!その男は」
「柘魔は…柘魔は私が幼い頃から、ずっと憧れてきた存在だ!彼が幼い頃に私を守ってくれたんだ!私はそれを何度も説明したはずだ!さっきから何を言っているのか分らないが、柘魔の責任なら私が代りに取る!」
ややこしい方に持っていくなよ!?
俺の責任を取るって、全然理解してない上で発言してませんか!?
生徒会長の顔が引きつってるよ!半分どころか完全に涙目になってるって!
ここは俺が冷静にならないといけなさそうだな。
「狂子…少し良いか?」
「あとにしてくれ!これは大切な話合いなんだ!」
興奮してる狂子の耳に、責任の内容を、オブラートに包んで話した。
顔を赤く染める狂子は、自分が何の責任を取るのか理解は下様子だった。
頭を抱えてしゃがみ込む姿は、なかなかに見れる物ではない。
ついでに生徒会長にも、なぜ彼女がしゃがみ込んだのかは説明をしておいた。
信じていない様子だったが、狂子の世間知らず振りしれば分るだろうに。
「生徒会長、これだけは言わせてください。うちの姉貴の指導がどうたら言ってましたが、俺に責任等について叩き込んでくれたのは、あの姉貴ですよ?この意味は、ご理解頂けますね?」
青ざめてていく生徒会長。
「姉にはしっかりと伝えて置きますよ。一応は信用してくれてるみたいですからね?」
姉貴に対して恐怖している生徒会長は、多分話されるのは嫌がるだろうな。
実際は、話すつもりはない。
少しだけ落ち着いてくれれば、こちらとしては万々歳だ。
数人の女と居るだけで、そういう風に持っていかれること自体が、間違っているような気もする。
蘭華とかが問題発言ばかりするのも、原因の1つだが。
「男が誰しも、貞操観念が緩いと思っているのなら、考えを改めた方が良い。俺は昨日の事件だって後悔してる…もっとハッキリと、蘭華に話をしておけばよかったって」
「昨晩の件は、アナタが愛神さんに無理矢理迫ったのではないのですか?」
どうやら生徒会長の頭の中では、部屋に連れ込んだ上で、襲い掛ったと思っていたようだ。
襲われたショックで、過呼吸を起こしたと。
真実は全然の真逆であって、襲い掛かってきたのは蘭華。
そして、自分でトラウマの引き金を引いたと同じ。
俺は生徒会長に、出来るだけ言葉を選びつつ、蘭華の事を配慮しながら説明をした。
過去に犯罪レベルのイジメを受けていて、一時期は酷く痩せていたこと。
今ではああやってくるが、本当は今でも怯えてるところがあること。
最初は納得をしてくれなかったが、狂子も説明に協力をしてくれた。
「愛神さんは、過去に酷いイジメがあったことはわかりました。でもどうしてアナタに固執するんですか?」
「さぁ…昔、本屋であった時に、親切心で棚の本を取ってあげたくらいしか…あとは食事を食べさせてるとか?」
「あと柘魔の家によく泊まっているぞ!前までは一緒のベッドで寝ていたが、最近では秋恵さんに妨害されるから、全然眠る事が出来ない」
今このタイミングで言う事じゃないだろ!?
「男女が…同じベッドで…一夜を過ごすですか?見過ごす訳にはいきませんね」
「…逃げるぞ狂子!」
地面に落ちていた大きめの意思を拾い、殺気が込められた目で見詰めてきた生徒会長。
これには関しては、流石の俺でも逃げ出す程の恐怖を感じた。
いくら怪獣バーサーカーと呼ばれて居た俺でも、意思を持って殺意むき出しの女を相手に出来ない。
ましてや現在は高校生、警察沙汰は困る。
俺は狂子の手を引こうとしたが、戦闘態勢に入られた為に、連れて行けない。
よって俺が取った行動は、抱きかかえて逃げる。
驚いて見つめてくる狂子だったが、気づけば安心した顔をしていた。
背後からは奇声を上げながら生徒会長が走って来たことで、真手場家の使用人達が取り押さえてくれた。
全員が驚きながら、抑え込んだまでは良いが、普通にトラウマを植え付けられた。
「ところで柘魔…さっき私が言った責任は…いつ、行われるんだ?私は赤ん坊の世話などした事がないのだが」
顔を赤く染めながら聞いてくる狂子。
そういや…さっきの説明での責任ってのは、赤ん坊を宿す事って話したんだった。
純粋過ぎるせいで、ディープな内容までは触れてはいないが、赤ん坊が出来るで察したらな。
ただ…狂子の中では、どうやって赤ん坊が出来ると考えているのか?
「赤ん坊の世話なんて、俺達にはまだまだ遠い話だよ。そういうのは、二十歳を超えてから第一歩を踏み出せば良い」
「二十歳を超えてからか…つまり、結婚すると出来るのだな?」
まぁ正解と言えば正解か…順序の話でだが。
「正しくは、結婚した後に夫婦が話し合って決める事だ。学生の俺達にとっては、遠い話だけどな」
「遠いか…私達はあと二年か三年で大人になる…その時は、私は柘魔を婿に迎え入れたい」
そういうと、急に眠り始める狂子。
唐突過ぎてびっくりだ、眠るのが早すぎる。
その後、山から下りた俺達を見て、蘭華と富閖野先輩が発狂した。
生徒会長と狂子との三人で肝試しをした柘魔。
何故目の敵にされるのか知った柘魔だったが、ただの逆恨みだと知り、がっくりしてしまう。
そんな彼らも、次回でついに旅館から帰還。
だがまだ夏休みは終わらない、むしろ始まったばかりだ!
家に帰るとまさかの事態!?マコトのマコニャン大作戦が炸裂する!




