第二十七話 お泊まりする時は、なかなか寝付けないよね?
新たな宿泊施設を建てたと言う事で、泊まりにきた柘魔達。
海だ!水着だ!青春だ!っと行きたいが、いつもの如く、トラブルばかりの大波乱!
楽しい海水浴から温泉はどうなるのか!?
夏の醍醐味と言えば、海水浴へ来る事。
普通ならば、皆で水着を見に行ったりするのだろうが、そんな余裕はなかった。
海水浴と言う名の、宿のお試し体験。
狂子の母であるキャリーさんが考案した、宿泊施設。
若者向けに作っているらしい施設と言うわけで、娘の友人である俺達が招待された。
近くに海があると言うのが嬉しいのだが、これが全て所有してるものと言うのが凄い。
どんだけ金をつぎ込んでるんだ。
「にしても凄いよな。会社を数社持ってるんだろ?プラス宿泊施設まで用意してるとか、どんだけって感じだな」
「俺達とは、住む世界が違い過ぎるんだよ。そのうち学校とか作りそうで怖いけどな…海パンのサイズがピッタリだと?」
昨日突然に決まった故に、海パンとかを用意する事が出来なかった。
しかし、既に海パン等の水着は用意されているという、用意周到さ。
種類だけでも100をを超えてるらしいから、逆に恐ろしいレベル。
サイズから何もかもがピッタリで怖すぎるんだけが。
「…俺、理性保てるかな。姫華ちゃんの水着姿を見て、何かあったら頼む」
「安心しろ、手だそうとしたら…顔面に新技のサイクロンテールキックをお見舞いしてやる」
まぁ冗談だけどな、そんな新技は無い。
「お前はまだ大丈夫だ。問題は夏美の方だよ…アイツが狂子達を見て、発狂しないか心配だよ」
「そうえいば…前に秋恵さんと海に行った時、発狂と言うより奇声を上げてたよな」
お互いに深呼吸をして、海へと静かに向かった。
砂浜には既に、全員が殆ど揃っており、大半がバラバラに遊んでいた。
姉貴は日傘の下で姫華に日焼け止めを塗ってるが、ここからだと姉妹みたいだな。
まだこれならほのぼのしてるから良いんだが、問題はその奥で行われてる戦い。
「死ねぇ!この脂肪の塊共が!」
「おっぱいがあって何が悪いんですか!?」
「そんな物をハイドに見せるな!」
「これは私達が悪いのか!?私は怒られるようなことをした覚えはないぞ!?」
夏美と富閖野先輩の貧乳チームと、狂子と蘭華の巨乳チームの対決か。
殺人サーブを打ち込む夏美達に対して、必死に打ち返す狂子達。
無き者達の憎悪が、持つ者達へと牙を剥いたか。
「止めなくていいのか?あれはかなりヤバそうだぞ」
「お前は猛獣の檻に自ら入るのか?あれは人間の手に負えるものじゃない、触らぬ神に祟りなしってヤツだよ」
俺達は静かに、黙祷を捧げた。
「あら?二人共、やっと出てきたの?」
「種類が豊富過ぎてな。結局は一番楽なヤツにして来たが」
「なんでッスか!?なんで二人してパーカー着てるッスか!?どうして食い込んでるヤツ履かないんッスか!?もっこりしてないじゃないッスか!?」
背後からかカメラを構えながら、由実が文句を言ってくる。
別にいいじゃねぇか、パーカーを着てたって。
あと楽だからこれにしてんだよ、確かにあのタイプは置いてあったけどよ。
そういや、小百合と生徒会長がいないな。
一緒に来ていたはずなんだけどな…まさか、ああいう展開とかか?
ないない、絶対にありえないな。
「タッちゃん、あとでお姉ちゃんに塗ってくれる?背中に上手く届かないのよ」
「ククク…コイツは良い物が撮れそうッスね。先輩、股間にモザイクかけとぎゃあ!」
俺はふざけた事を抜かす由実に、いつもの如くアイアンクローを仕掛ける。
そして熱い砂浜を引きずり回しながら、最後に海へと廃棄した。
水切りみたいに行くかと思ったが、結構難しいものだな。
カメラだけは外しておいたが…また変なのばかり写していそうだな。
あとで確認をしておこう、皆の安全の為だ。
「春咲柘魔!今ハッキリと見ていましたよ!女生徒に暴力を振るっていましたね!?これは見過ごす訳には行きません!」
どこから見てたんだよ?岩場から出てきただろ?
俺はしっかりと見てたぞ、言わばから大将の首を討ち取ったような顔で、こちらに出てくるのを見たぞ。
「そのカメラもアナタの所有物ですね!?没収させてもらいます!」
「別に構いませんが、一応持ち主は由実の方ですよ。中の写真に関しても、俺達は出て来たばかりなので、撮影自体が不可能なので」
カメラのデータを確認して顔を赤くしてるが、一体どういう物を撮影したのやら。
「た、確かに不可能のようですね…ですが!アナタが指図した可能性も捨てきれな」
「つまり、私自信による教育が間違っているとでも言いたいのかしら?これでもしっかりと教えて来てるのよ?ねぇタッちゃん?」
俺は静かに頷いた、というかそれしか出来ない。
海にまで来て姉貴を怒らせるなよ、あと浩寺は何処行きやがった!?
「浩寺お兄ちゃん…私の水着、変じゃないかな?」
「とても似合ってるよ。凄く可愛い」
何…あのやりとり?エロゲですか?
見ててこっちが恥ずかしくなる程の、超仲良し兄妹にしか見えないんだけど。
なんであそこまでイチャイチャしてんの?誰もツッコミいれないの?
怖い怖い怖い、めっちゃ怖い。
もう姫華に関してはべったりじゃん?蘭華並に引っ付いてるじゃん?
やっぱりあの二人は姉妹なんだなと、実感をさせられる光景だった。
「んでもって…お前は日焼けってか?」
「うん…水着ずらしたら殺すから」
ずらさねぇよ…ずらす気すらねぇよ。
とりあえず、小百合の隣が一番静かで良いか。
「どうして隣にくるの?泳いでくれば?」
「そんな遊ぶ程…海が好きってわけじゃないんだよ。正直行って、昔のトラウマで半分拒絶してる節がある」
しばらく沈黙が続いた後、突然オイルを渡された。
これは濡れと言う事なのだろうか?無言で渡してくるから分らん。
てか良く見たら、小百合の来てるのってまた豹柄か。
豹柄が好きなのか?
「早く塗ってよ…こっちは恥ずかしいんだから」
「本当に良いんだな?塗ってて文句とか言うなよ?」
結局は塗れって意思だったようだが、最初から言えよ。
手にオイルを取り、小麦色に焼けた肌に塗り込んでいく。
日焼け止めは塗ったことがあるが、オイル自体を使うのは初めてだな。
基本的にはごま油とか、オリーブオイルとかしか使わないから。
…結構…肩凝ってんだな。
そんな事を思って居る間に、癖で小百合のマッサージを始めていた俺。
いつも姉貴のマッサージをさせられてきたから、一応ツボ等の位置は知っている。
小百合自身が気づいて居ないだけで、結構肩が張っているな。
オイルが結構滑るが、逆にスムーズに手が動いてくれるから楽だ。
「んんっ…気持ちいい、そこっ!そこを強く押し上げて!もっと強く!ああっ、いい!もっともっと深く!」
変な声を出すのをやめて頂きたい!?
ギャラリーが集まり始めてるだろ!悪いのは俺だけどさ!
マッサージで気持ちが良いと言ってくれるのは嬉しいが、こうもう少し声のトーンを下ろして貰えると助かる。
生徒会長と姫華が顔を赤くして見てるから、あと蘭華が頬を膨らませてる。
「こ、ここ今度は小百合に、せせセクハラですか!?もう許しまきゃぁ!?」
「先輩!次は私にも塗ってください!先輩の白いせ」
生徒会長を突き飛ばした蘭華だったが、後頭部にボールが激突して、こちらに倒れてきた。
一瞬胸でバウンドしたな…これが持つ者の身につけて居るものか。
そしてボールを投げつけたのが、富閖野先輩という因果。
威力がデカ過ぎるだろ…あの小さい体にどれだけのエネルギーを溜め込んでるんだ?
「先輩…蘭華も小百合も、気絶してるッス。蘭華の方はわかるッスけど、マッサージだけで白目絶頂させるって…どんなテクを持ってるッスか?」
白目剥いて気絶してるだと?俺そんなになるまでやった覚えないぞ?
「柘魔のマッサージ…そんなに気持ちがいいのか」
「そうなのよ。タッちゃんってば上手過ぎて、やってもらってる間に気づいたら寝ちゃうんだから」
小百合を抱き上げて、日陰の方に移動を始めたのだが、オイルでパーカーがヌルヌルする。
小百合を下ろしたまではよかったが…上の豹柄がない。
というより、上が二カ所を残して小麦色なんだけど!?
ヤバい!水着を忘れてきた!なんで誰も気づかないんだよ!?
いや、こういう時は冷静になれ。
水着がないのであれば、俺の上着を着せれば済む話だ。
「これはこれは…綺麗なピンク色してるッスね。そのままダイブするッスか?」
「由実…お前、今欲しい物あるか?なんだったら焼きそば買ってやるぞ?」
俺は見た、由実が悪そうな笑みを浮かべたのを。
「…何をやってるッスか!?上の水着を脱がして!見損なったッスよ!ちょ!水着を脱がないでくださいって!」
やりやがった!?この馬鹿やりやがったよ!?
声に釣られて全員が集まり始める中で、俺は急いでパーカーを上から被せ、頭に濡らしたタオルを乗せた。
これで多少は隠し通せるだろうと思ったが、妨害を開始された。
せっかく人がパーカーを被せたのに、わざと下へずらされる。
この馬鹿、蘭華以上にとんでもない事をしでかすな。
「おお!段々と立って来たッスね、カメラに収め」
「シャアアアアア!」
俺は大声を上げながら、蓋の開いた日焼け止めを投げつけた。
中身が飛び散る日焼け止めが、二人の体に掛かる。
ただこれのおかげで、由実へ好きが出来た事で、小百合に掛けたパーカーを上げることが出来た。
「一体どういう状況なのかしら?説明して貰えるわよね?」
背後から姉貴のデビルクローが炸裂、俺の頭を見事に捕らえた。
傍から見れば、非常にマズイ状況である。
男が一人に、顔や体に白い液体が掛ってる二人。
しかも片方は涙目、もう一人は白目でこの状況だから。
俺が説明をする前に持ち上げられて、姉貴の殺人技の1つである、デビルバッグブリーカーを掛けられた。
この技が出るのは大抵、俺が相当マズイ事をした場合だけだ。
ようはこの状況の説明は不要で、問答無用で掛けられたと言う事。
「反省しなさい!こんなに迷惑を掛けて!」
背中と大胸筋から鳴ってはいけないような音が鳴り、俺はその場で意識を失った。
この教訓は、下着類を忘れないようにすることだろうな。
次から気を付けよう、特に由実に対しての警戒心を強くする。
姉貴から技を掛けられてから、大分時間が経った頃に、俺は目を覚ました。
先ほどまで海辺に居たはずなのに、布団の中で眠って居たから驚いた。
気になったのは、蘭華と小百合が左右に寝かされているという点。
それも両方、腕にしっかりとしがみついてるんだけど。
特に蘭華に関しては、しっかりと腕を抱き枕の如く抱え込んで、身動きが取れない。
てか手が胸と太ももに挟まれてるんだけど!?
小百合に関しては、顔がもの凄く近い…てか近い。
寝息が顔に掛ってくる…なんか不愉快だ。
そして俺の顔を覗き込む人物が一名。
「ハイドが目を覚ました。目覚めの接吻を与えて、自由の空へ解き放つ」
「何をしてるんッスか?ダメッスよ、悪戯したら」
簡単に持ち上がるんだな、あの人。
「おい…これはどういう状況だ?」
「いやぁ、実はあの後大変だったッスよ。先輩が完全に意識を失った後、秋恵さんがやり過ぎたって泣き始めちゃった後、皆で大慌てで運んだッス」
姉貴が泣き始めたか…ならやるなよ。
三途の川まで行った気がしたぞ…川の向こうで、スーツ着てダンスしてる人とか居たし。
とりあえず…俺は現在、パンツを履いていないことが分った。
さっきから股間がスースーするな的な感じはしてたが、着物に着替えてあるからか。
「先輩が起きたならもうそろ二人を起こした方が良いッスね。皆揃って、温泉に入りたいと言ってたッスから」
「起こした時点で、小百合からボコられそうな気がするんだけど」
由実と色々な方法を試した結果、俺は着物を犠牲にして抜け出せた。
素っ裸になる前に、由実からパンツを取らせておいて正解だ。
腕を引き抜くときに、かなり苦戦させられたが…やっぱりベタベタになってる。
「先輩…どうだったッスか?蘭華に腕を股に挟まれた感想は?」
「…早く温泉に入りたい…挟まれたせいで、全身が汗だくだ」
「私、ハイドの腹筋好き。良い具合に割れてる」
人の腹筋をなぞるのはやめなさい!くすぐったいでしょうが!
これ以上腹筋を触られるのが嫌なので、適当に担いでみた。
予想以上に軽い上に、体が小さいから手出しされない。
攻略法を発見した、これで助かるな。
「さて、必要な物を用意して温泉行くか」
「私は部屋に戻ってるッス。ごゆっくりどうぞ」
おい、三人を連れてけ!
由実達と入れ替わりに、浩寺のヤツが帰って来た。
そして隣にはしっかりと姫華を連れてるんだが、超仲良いな。
てか俺の事を軽蔑した目で見てくんだけど。
本当にやめてくれよ、悲しくなってくるから。
「春魔、なんで水鉄砲なんて持ってきてるんだ?海にも持っていかなかったし」
「ああ?コイツは温泉で使うんだよ。1つはお前の分だからな、温泉に行けば分る」
着替えを持ち、温泉へと向かう俺達。
水鉄砲はバレない様に、別にして持ち込んだ。
ただ温泉に入る為の入り口で、一悶着が発生したのだ。
姫華が男湯に着いてこようとするではないか、目的はなんだと言うんだよ?
そんなに浩寺と離れたくないのか?そこまで気に入ってるのか?
「こっちは男湯だ、お前はあっちだろ?」
「海で見たのを忘れたの?ただでさえ海であんなデカい物を見せつけられたのに…温泉に浸かってまで絶望したくないんだけど…あの女、私の年の頃には」
言いたい事は理会出来たが、どうしたものか。
隣にはロリコンがいるから怖いが、コイツも言う事を聞くとはないだろうな。
最悪、浩寺からガードをし続けるしかない。
「もしかして、小学生の私が居て、困る事でもあんの?」
「…分った…そのかわり、あまりタオルを取らないようにしろよ?お前は女の子なんだからな?」
何言ってのお前的な顔をするな、こっちは心配してんのに。
まぁ知らぬが仏ってヤツか、ロリコンだと知ったら更なる絶望するだろうから。
男湯に入るのはこれで四人か…四人!?
あれ?俺達確か、合計で三人であってるはずなのに?
まず俺だろ?浩寺に姫華で…富閖野先輩。
犯人はお前か!?何ちゃっかり男湯に着いて来てんだよ!?
「あの…どうしてこちらに着いてくるんですか?富閖野先輩はあちらですよ?」
「私まだ小学生だから、こっちに入っても大丈夫」
変な悪知恵をつけて来たよ!自分の体型を悪用し始めたよ!
まぁ生徒会長に連れて行かれたんだけどな。
途中、蘭華と姫華による大喧嘩が発生したが、最後はこちらに着いて来た。
そして俺達は温泉に出たのだが、やはり露天風呂が設置してあった。
そして、女湯との堺の仕切りがあり、桶が大量に用意してある。
あの人の考える事だから、予想はしていたが、本当になるなんてな。
「私の声が聞こえるか!?聞こえるなら返事をくれ!特に柘魔!」
狂子の声が浴場へと響き渡る。
「先輩!後で混浴の方で待ってます!絶対に来てください!」
「二人共、変な気を起こしたらダメよ!」
「そうそう!何かあったら大声出して!直ぐに助けに行くから!」
蘭華に続いて、姉貴と夏美の声も響いてくる。
貸し切り状態だからって、ふざけすぎだろ。
俺達は無視して体を洗い始めるが、浩寺と姫華の間に入って洗う。
一応は警戒をしてだが、姫華の方は不満らしい。
先ほどから睨み付けてくるが、こちらが軽く睨み返すと、目をそらす。
頭を洗ったせいで髪を上げてるから、傷が丸出しの状態だからな。
「頼む…春魔、交代してくれ」
「断る…お前は俺の親友。だからこそ譲れない物もある」
体も洗い終わり、俺は水鉄砲に水を溜め込む。
不思議そうな顔で見つめてくる二人だが、浩寺に一丁を渡す。
「せ~ん~ぱ~い。先輩のはだぎゃ!」
仕切りを超えて顔を出す蘭華と、カメラを構える由実。
俺は二人目掛けて、引き金を引いて、撃退した。
すると直ぐに復活してくるわけだが、今度は桶を使って防御してくる。
更に富閖野先輩までこちらを覗き込んでくる始末だから、二丁用意しておいた。
「そういうことだったのか…流石は春魔、用意周到だな」
「あっちの考えそうな事を先読みしてたんだよ。昔ふざけて買った水鉄砲がここで役立つなんてな」
「あ!右上からカメラで撮影してる!」
姫華がターゲットを見つけ、俺と浩寺が撃ち落としていく。
まるで軽いシューティングゲームだな。
ある程度撃ち落とした後、悲鳴が響いてきた。
多分姉貴の拳が落ちたかだな、かなり静かになった。
これでゆっくりと温泉に浸かる事が出来る。
「ジャグジーもあるみたいだぞ、凄いこうぞ危ねぇ!?」
突然桶が飛んで来てびっくりしたが、投げつけてきた犯人は小百合だった。
目に涙を溜めながら、こちらを睨みつけて来る。
もしかすると、あの件がバレたのかもしれないな、次の桶をスタンバイしてるし。
確かに水着の存在を忘れていたのは、俺の失態だ。
よしここは潔く、制裁を受けてやる。
「好きなだけ投げつけてこい!そのかわり!ボディだけを狙え!顔面は流石にシャレにならん!」
「良い…度胸してるじゃん?なら!全身痣だらけにしてやる!この痴漢野郎!」
無数に飛んでくる桶を全て肉体で受け止めた。
実質、飛んできた桶は、姉貴の攻撃に比べたらそこまで痛くもない。
痛いのは確かなのだが、喧嘩なれし過ぎてるってのもあるのかもな。
投げつけてる小百合の方も、徐々にに息切れし始めている。
だがその程度で俺を倒すことなどできブッ!
「桶って言うのは、ああやってストレートじゃなくて、回転を加えて投げつけるものなのよ。中に半分くらい水を入れておけば、殺傷力が増すわよ」
「べ、勉強になります」
あ…姉貴が投げつけてきただと?
こいつは流石に予想外すぎたぜ、ダメージが半端ないぞ。
腹筋に力を入れてなかったせいで、もろに入ってきた。
「うわぁ…今のは超痛そうっていやぁぁぁぁぁぁぁ!」
突如上がる姫華の悲鳴に、女湯の仕切りを登ってこちらを覗き込んでくる狂子達。
ただただ腹部の痛みに耐えていることしたできない俺だが、一部からさらなる悲鳴が上がり始めた。
そして浩寺が俺の前に立ち、何かを隠すようにしていた。
状況が理解出来ていない俺に、耳打ちをしてきた内容に驚かされた。
「腰に巻いてたタオル…落ちて丸出し状態になってるぞ」
この時の俺は、茹蛸の如く真っ赤になっていただろう。
急いでタオルを拾い、腰に巻いたのだが、大量に水を吸っている。
つまりは、姉貴が投げつけた桶が原因ということだ。
「うわぁ!蘭華と小百合が倒れた⁉︎って真手場先輩が鼻血を吹き出して倒れたッス!結構弱い面があるッス!」
「一体何を考えているのですか!?アナタは退学にしてもらいます!絶対に退学確定です!」
全部俺が悪いわけじゃねぇ!水を入れた桶を投げつけた姉貴の責任でもある!
せっかく温泉に入れると思っていたのに、とんだ赤っ恥じゃねぇか!?
「目が腐る…私先に出る!」
浴場を飛び出して行く姫華。
そして女湯の方ではかなりの大騒ぎになっていたが、どさくさに紛れて、富閖野先輩がこちらに突撃してきた。
適当に担ぎ上げてしまえば、手出しが出来なくなるんだけどな。
とりあえずは、部屋に戻るとしよう…てか恥ずかしくてここから出たくない。
あと桶とかシャンプーボトルの雨が降って来るんだけど、夏美の仕業だよな?
こんな馬鹿な事をするのは大抵、夏美しかいない。
「夏美!これ壊したら全部お前が弁償する事になるんだからな!分ってんのか!?」
攻撃が病んだということは、理解したんだな。
その隙を突いて、部屋に帰った。
富閖野先輩は、生徒課長に渡したが、目すら合わせて貰えなくなった。
別に困る事はないんだがな。
その後は、部屋に戻って食事を取ったのだが、一部が食事が喉を通らなかった様だ。
もちろん俺もそれに含まれている…ただただ気まずい空気が漂う。
この仲で平然としていられるのが、姉貴と蘭華と狂子と富閖野先輩。
とんだ強者達だぜ!ヒャッハー!と本人達の前で言いたい。
「先輩、お口開けてください。私が食べさせてあげます」
「ハイドに食べさせるのは私の役目」
密着されすぎて、食べにくい。
それ以上に、食べ物を頬に押しつけられて痛い。
お箸の先っぽが刺さってんだよ!?地味なダメージ来るんだよ!?
あと刺身だから冷たい!醤油臭い!醤油をつけすぎなんだよ!?
「自分で食べるからやめろ!食べにくくてしょうがないんだよ!」
そんな食事も終わり、やっと就寝に入った所だったのだが、予想はしていたさ。
いつもの事だから、別に不思議にも思わない。
蘭華が侵入してくる事なんて、至って普通のことだからな。
俺がどうしても気になってるのは、俺と浩寺の部屋で姫華が布団を敷いて寝てる事。
流石は姉妹と言ったところなのか?布団に潜り込んでないだけマシかもな。
さてと、こっちはこっちでぼちぼちと始めるとしますか。
「今日は由実達の元へ戻ったらどうだ?」
「いやです。姫華が先輩と一緒の部屋に居るのに、私が別の部屋に居るのが許せません」
小学生に嫉妬すんなよ、実の妹に光景を見せるなっての。
「今なら二人共寝てます…先輩…私、我慢出来ないです」
いつものように蘭華が近づいてくるが、今日は少しだけ違った。
追い払おうとしたのだが、上半身に集中して、痛みが走り始めた。
本日、度重なる姉貴の攻撃が原因だろう、間違いない。
バッグブリンカーを喰らわせた後に、殺人桶をしてくるからだ。
痛みで引きはがしたいが、それすらも出来ない程に酷いぞ。
「今日は嫌がらないですね?私を受け入れてくれるんですね?先輩」
「待て…お前…妹が寝てるんだぞ?考え直せ」
一瞬で着物を脱ぎ捨てる蘭華、お前は早脱ぎ選手か!?
本当にこう言う展開はエロゲだけで十分だろ!?
「姫華達には、聞こえないように声を殺します。先輩はただ、身を任せてくれるだけでいいですから…身を任せてくれるだけで」
そう静かに呟くと、静かに俺の着物を脱がし始めた。
だが同時に、俺の胸の上に暖かい雫も落ち始めた。
彼女の瞳から流れ落ちる涙を見た時に、一番恐れて居た事が起り始めてるのではと、心臓の鼓動が早くなる。
俺が一番恐れていた事とは、蘭華の精神が持たなくなるんじゃないかと言う事。
彼女にとっての性行為と言うのは、トラウマが刻まれてるはず。
過激なイジメのせいで、大切な物を沢山失っている。
だからこそ、こちらも怖かった上に、出来るだけ避けたかった。
「あれ?私…なんで泣いてるんですか?私、わ、わた、わたしなんで…ひ、ひひ、ひひひ」
俺は全身に走る痛みを無視して、無理矢理起き上がり、彼女を抱き締めながら背中を静かにさすった。
半分過呼吸を起こし始めてる。
「ゆっくり焦らず俺の話の指示に従え。息を止めるんだ、その間に俺が十数えるから、息を吐出すんだ?良いな?」
最初から話しておいた方が正解だったのだろうか、こうなる事になるくらいなら。
俺がただ、ビビって言う事が出来なかったからだ。
もしこれを話して、彼女が何を思って、どうするかまで分らなかった。
だとしても、こんなに辛い思いをさせるくらいらな、話した方が良かったのかもしれない。
「十、次は息をするときは鼻からするんだ。リラックスだ、自分も心の中でそう言うんだ、分るな?」
「おい?どうしたんだよ?何があったんだ!?」
異変に気づいて起きた浩寺に、姉貴を呼んできて貰うように頼んだ。
念の為に人では多い方が良いからだ。
「確かここで…三秒だ、三秒だけ息を吐いて、今度は三秒だけ息を吸う。これを十回繰り返せるか?」
「ねぇ…大丈夫なの?死なないよね?本当に死なないよね?お姉ちゃん、死なないよね!?」
不安げな顔でこちらを見つめてくる姫華だが、今は大丈夫だとしか言えなかった。
正直、以前テレビで見たことしかなかったからだ。
殆どが手探りで記憶を思い出しながら対処してる状態、だからこそこちらも余計に不安になる。
でも不安な顔を見せてしまうと、蘭華自身を不安がらせてしまう。
「明日は、一緒に海で泳ごうな?だから、もう少しの辛抱だ。必ず助かるから、頑張ろうな?」
「お願いだから死なないで…お姉ちゃんが居なくなったら…私、一人ぼっちになっちゃうじゃん。私、嫌だよ」
涙を溜める姫華の頬に、そっと手を添える蘭華。
やっと、お互いに歩みよる事が出来たみたいだな。
感動していたい所だが、落ち着いてきた所で、服を着せてやらないとな。
姫華に安心出来るように手を握って貰い、俺は蘭華の脱ぎ捨てた服を回収する。
本当は着せて貰えればいいのだが、蘭華の体重を支えられるとは思えない。
「大分落ち着いてきたみたいだな。このままだと風邪引くから、服を着るぞ」
ゆっくりと蘭華を抱き上げ、着物を着せていくが、ここで生徒会長達が入って来た。
先に姉貴が着てくれればよかったが、緊急事態だから別に良い。
騒がしくしないで居てくれればの話なんだが。
大声で騒ぎながら引きはがそうとしてくるが、姫華が止めてくれた。
そして俺の代りに、小百合が蘭華の帯を締めてくれたから助かった。
「これ以上は見過ごす訳にはいきません!この件はしっかりと報告を」
「役に立たないヤツは黙ってろ!今は学校とか関係ねぇんだよ!退学にさせたいなら後で幾らでも言いつけろ!だから今は…頼むから、蘭華を落ち着かせたいんだ」
「会長…これは私も同意見です。会長はいつも彼を目の敵にしようとしますが、私には理解が出来ません…確かにふしだらな点はあります」
ふしだらな点は認めるのかよ。
「でも見た限りでは、本人が自分の意思でやってる様には見えません!それに私は知っています…会長が、真手場狂子を卑猥な目で見ているのを!」
「わ、私が狂子を…卑猥な目で!?何を言っているのですか!?もう勝手にしてください!」
顔を真っ赤にした生徒会長は、部屋を飛び出して行った。
対して小百合は、冷静に蘭華の介抱を手伝ってくれた。
理由を聞くと、幼稚園でもあり得るかもしれないかららしい。
「こういう時こそ、会長が慌てたらダメなのに。ほんとごめん、うちの会長が」
「いいや、こっちこそ助かったよ。姫華も御礼言っとけよ」
「わ、分ってるから!姉がご迷惑をお掛けしました!」
その後は、蘭華も大分落ち着き、疲れたのか直ぐに眠ってしまった。
俺は心配で結局、眠る事が出来なかったが、小百合も同じだったようだ。
変った事があるとすれば、蘭華と姫華が二人、一緒の布団で眠ったと言う事。
こうして見ていれば。とても仲の良い姉妹にしか見えない。
「こういう仲良し姉妹のいる家族…憧れるなぁ。将来は、旦那とこうして子ども達の寝顔を見てたい」
「そうか…お前なら叶えられるかもな。家事スキルも高い上に、優しいからな」
無言になる小百合だが、顔が真っ赤になってる。
少しからかい過ぎたかもしれないな、反省しないと。
段々とまた体が痛くなってきた…これじゃあ痛くて眠れないな。
痛みが治まるまで、何日かかる事やら。
蘭華を苦しめるトラウマ、それに便乗するかのように、姉妹の不仲は縮まり始める。
次回もまた海がくる、そして皆で楽しく肝試し!だけじゃない!?
生徒会長が柘魔を敵視する理由が語られ、富閖野マコトの秘密まで!?




