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第二十五話 ホラゲーやってると、妙に背後が気になってくる。

待ちに待った夏休みが、ついに始まった!

初日からゲームで遊び倒す予定の柘魔と浩寺だったが、思わぬ事態が発生。

二人は計画を実行するのか、それとも諦めてしまうのか。

 夏休みが始まった、ついに始まったんだ。

 しばらく生徒会に目を付けられなくなる、大分楽になる。

 宿題も、貰った日に大半を終わらせてやった。

 後々追われるのが嫌だし、一気に遊び尽くしたいからな。


「お菓子よし!飲み物よし!食料よし!ゲームよし!着替えよし!テレビよし!始めるよし!」

「まずは夏休みの始まりを記念して、クリーチャーエナジーで乾杯しようぜ!春魔が沢山のゲーム機を持ってて助かったぜ!」


 今日は俺の部屋でゲームをする予定だ、それも一日中。

 朝早くに集合して、コンビニへ買い出しに行く。

 買った物を部屋に運び込んだら、プレイ開始。

 一昨日購入したホラゲ-で遊ぶが、ここで問題が1つ発生した。

 先ほどまで寝ていた姉貴が、目を覚ましてこちらを見ている。

 昨晩は仕事をしていたのだが、俺も隣で宿題をしていた。

 ただ仕事の作業が進まなかったらしく、理由を尋ねると、キーボードが気に入らないらしい。

 以前の仕事で使ってたのは、もっと良い物だったらしいのだが、今回のは付属の物。

 打鍵感が気に入らない上に、キーボードの堅さも気に入らずに、苛つきながら仕事をしていたらしい。

 そのせいで、仕事に時間が掛かってしまったゆえに、いつもより眠ったのが遅かったのだ。


「二人は元気で良いわね…私は寝たのが遅くて」


 寝たのが遅いと言ってるが、俺より一時間は早く寝てる。


「私はあと二時間くらいは寝るから、あまり大声を出さないでね」


 …先手を打たれてしまったか。

 これで予定が思いっきり狂ってしまった。


「どうするよ…これじゃあゲームが出来ない。まだ六時だから、八時まで何をして待つ?」

「何をして待つって聞かれてもな、こっちも何も思いつかねぇよ」


 こんな時間に開いてる店も、コンビニくらいしかないだろうし。

 流石に直ぐに同じコンビニに行って、二時間も漫画を立ち読みするわけにもいかない。

 絶対に怪しまれる。


「適当に漫画読ませてもら…春魔、窓に人影が見えるぞ」


 窓に人影がいると言う事は、大体一人しか考えられない。

 俺は窓へ近づいて行き、締めていたカーテンを思いっきり開けた。

 するとそこには、予想通りに狂子がおり、今にも窓ガラスを開けそうな所だった。

 窓にこれ以上穴を開けられるのは嫌なので、とりあえずは開けたのだが…玄関から入れよ。


「気づかれてしまったか、驚かそうと思って居たのだが失敗してしまった」

「いや脅かすのは別に良いんだけどさ…せめて玄関から入ってくれよ。このままだと、窓がエメンタールチーズみたいになっちまう」


 部屋の中に狂子を入れたが、ゲームが出来ない事に変わりない。

 作戦を考えないと。


「なぁ、エレメントチーズってなんだ?」

「エレメントじゃねぇ、エメンタールチーズだ。なんだよエレメントって、燃えたりしてんのか?」

「エメンタールチーズというのはだな、アニメとかに出てくるチーズの事だ。特にトム&ジェリーに出てくるのが有名だな」


 まさかの狂子の説明が入って来た!?


「それにしても、凄いお菓子の数だな。何かパーティでも始めるのか?」

「違いますよ。これから二人で、ホラゲーをやるんです」


 狂子の顔が一気に笑顔に変わり、コントローラーを握ってスタンバイしている。

 プレイする気満々みたいだけどよ、違うのを握ってるよ。

 俺の買ったのは旧式のゲームで、狂子が握ってるのは最新型のヤツだ。

 コントローラーが大分似てるが、全然性能が違うんだよな。

 一応シリーズで出てるが、最新作がFPSに変わってしまった。

 三人称視点だから良かったのだが、一人称にしたら、殆どカメラ構えてるのと変らない。


「狂子…姉貴が寝てるから、まだゲームは出来ないんだ」

「…なら、別の場所でやろうじゃないか」


 別の場所って、一体どこでやる気だ?

 理解出来ていない俺と浩寺に、狂子が説明をしてくれたのだが。

 どうも場所は蘭華のマンションの事らしいが、朝早くに行くのは大丈夫なのか?

 一応連絡はしてみるが、一晩中ゲームをするのは難しいかもしれない。


「私の部屋は使えません…姫華が友達を呼ぶと行って追い出されました」


 いつ侵入してきやがった!?

 驚く俺達に対して、申し訳無さそうな顔を見せる蘭華。

 いや…マジでいつ入って来たんだよ。


「今日泊めてください!先輩の言う事ならなんでも聞きますから!奴隷でも肉○器にでもなります!」

「なるな!あともう少し声量を下げろ…姉貴が寝てんだ」


 まだ姉貴は眠ってる、良かった。

 下手に起こされたら地獄が始まる所だ、恐ろしいな。

 これで殆ど全滅したな、ゲームを諦めるしかないのか。

 でもせっかくお菓子とか買ってきたのに、悔しすぎる。


「イヤホンを着けてやれば良いんじゃないか?」

「ダメだ…びっくりした時に声を出すだろ?それで姉貴を起こしちまう」

「前に試した事があったな…見事、春魔に間接技決めてたっけ」


 結局、俺達は姉貴が起きるまでゲームをせずに漫画を読んで過ごした。

 姉貴が目を覚ました頃には、人数が増えている事に驚いていたが、浩寺が可哀想になったよ。

 興味のない歳上の裸を見せられそうになって…着替えを枕元に置いておいて正解だ。

 気づいた姉貴は、布団の中に引き込んで着替え始めた。

 普段は人に色々と言うくせに、自分はやるのかよと言いたいが、状況が状況だからな。

 浩寺もちゃんと目をそらしてる。


「皆、ご飯は食べてきたの?」

「俺は一応、来る前にコンビニで買って食べました」

「私も一応食べてきました!冷蔵庫に入っていたハムを豪快に!」

「私は何も食べてないです…基本家に何もないので」


 飯を食ってないのは、蘭華だけか。

 つか狂子、ハムを豪快に食べてきたって、チャーシューみたいなあれか?

 あれを一人で全部食べたってのか!?

 だとしたら相当凄いぞ!?


「そう…なら待って居なさい、今朝食を作るから…アレルギーはないわね?」

「ないです!あるとしたら…動物くらいで」


 蘭華って、動物アレルギーがあったのか。

 そういえば、妹の姫華もアレルギーを持ってたな。


「お腹空いてたら言いなさい、一応は多めに作っておくから」

「それじゃあ俺も手伝うとするか。蘭華も手伝ってくれるか?料理を覚えて置けば、便利だぞ」


 嫌そうな顔をするんじゃない、お前の為になるんだぞ。

 蘭華は今、姉妹で暮らしているが、食事は基本俺達の所で食べていく事が殆ど。

 もし俺と姉貴に何かあったときに、食事が確保出来なくなる可能性だってありうる。

 そうなったらどうなる…狂子に頼めば、なんとかなるかもしれないが。

 そんなことでは、二人のためにはならない。

 だから無理矢理にでも料理を手伝わせてやる。


「私、先輩の料理を食べる方が好きなんです」

「アナタ、一人暮らししてるんでしょ?小学生の妹も居るらしいじゃない。だったらアナタが保護者なんだから、色々と出来るようにならないとダメよ」


 そこから料理が作り終わるまで、蘭華への説教が始まってしまった。

 姉貴と俺に挟まれたせいで、逃げる事も出来ない。

 何より凄いのが、しっかりと手を掴んで、手順を教えながらの説教。

 数回ほど言い返していたが、直ぐに押し負けてしまっている。


「タッちゃんにご飯を作らせてるけどね、アナタもしっかりと作って見なさい。何でもかんでも人任せにしてたらダメなの、分った?」

「夏美先輩はなんで料理してないのに、怒らないですか?」


 あ…姉貴が言葉に詰まった。

 蘭華が…初めて姉貴に勝つというのか?


「夏美ちゃんはね…ダメなのよ…いくら教えても、命の危機にさらされちゃうのよ」

「関係無いです。私に教えるなら、皆に教えるべきです」


 完全に優位に立ち始めてるが、俺を盾にして言うな。

 しっかりと背後に隠れてって…なんだこの手の位置。

 俺の胸板にしっかりと手を置いているより添えて、何かを探す動作。

 まさかコイツ…とんでもない事をしでかそうとしないか?


「おい蘭華…この手は一体何だ?」

「先輩の乳首を探してます!乳首当てゲームです!見つけました!」


 見つけてんじゃねぇよ!変な気分になるだろうが!

 料理中になんて事をしてんだ!?筋肉バスター掛けてやろうか!?


「ごめんねタッちゃん…お姉ちゃん、少し調子悪いから、お仕事してくるから、続きはお願い」


 戦線離脱しただと!?

 つか手が!手が服の中にまで進入してきた!

 後ろに回られてるせいで、全然つかめない!

 手を出しても、直ぐに察知して逃げられてしまう。

 勘で動いているのか、それとも動きを読まれてるのか、全然分らない!

 悪銭苦闘するも…結局、俺が負けてしまった。

 蘭華、初の大勝利か…ゲームでビビらせてやる。

 あのゲームの真の恐怖は、悍ましい程のトラップエンド。

 それが一番怖いのが、今回遊ぶ作品だ。

 泣かせてやるよ…絶対にな。



 テレビの電源が入れ、ゲーム機の電源も入れる。

 不気味な音と共に写り出す骸骨、そして幽霊達。

 次々と画面が切り替わり、タイトルが現れる。


「わ…私…このゲーム知ってます…小学生の頃、噂になりました。これをプレイしてショック死をした子がいるとか」

「甘いぜ、俺と春魔が聞いた噂は違う。コイツをプレイしたら、精神が崩壊したってのも聞いたぞ、あのドグラ・マグラを読んだ時みたいにだ」


 いや…ドグラ・マグラぐらいのレベルだが、そんな噂は聞いたことがないぞ。


「このゲームはそこまで凄いのか?母がプレイしている所を見た事があるが…ああ、これが原因で私をトイレに連れて行くようになったのか」


 あの人…良い大人だろうに。

 自分でホラゲーをしてて、夜は一人でトイレに行けないって子どもかよ。

 自業自得過ぎる上に、付き合わされる狂子が可哀想だな。

 深夜とかトイレに行くのに不安があるのは分る、あの巨大な屋敷なら相当怖いだろう。

 俺なら迷子確定になる。


「そんじゃ始めるぞい!ゲームスタート!」

「何してんのよ?私を仲間外れにするなんて、タクのくせに生意気過ぎなんだけど。このポテチ美味しい」


 俺が恐る恐る横を向くと、姉貴のベッドに夏美が偉そうに、ポテチを貪りながら座っていた。

 お前、そこでポテチ食うなよ。

 姉貴はベッドでお菓子を食うのを嫌うんだ、忘れたとは言わせたくないが、忘れてるんだろうな。


「何その馬鹿みたいなゲーム」

「フロッグタワーの新作だ。お前大好きだろ?」

「そうそう、夏美はあまりの楽しさに春魔にしがみついてたからな」


 俺と浩寺が夏美をからかい始めると、狂子と蘭華がニヤニヤし始める。

 顔を真っ赤にして蹴りを入れてくるが、動きは大体読めてるから、避けるのは簡単だった。

 しかし喧嘩なれしていない浩寺には、見事蹴りが決まってしまった。

 鼻血を吹き出しながら倒れ込む浩寺を支えながら、適当に鼻にティッシュを突っ込む。

 コイツ、サッカーになると動きは凄いんだが、喧嘩とかになるとテンパるからな。


「なんで避けるのよ!?馬鹿じゃないの!?よりによってフロッグタワーとか買わないでよ!私蛙嫌いなんだから!」

「知ってる知ってる。蛙嫌いはどうでもいいからゲーム再開するぞ」


 このゲームをするのをどれほど楽しみにしていた事か、邪魔をされてたまるか。

 ゲームの難易度を設定した後に、ムービー画面に入ったのだが、夏美がやらかした。

 どうでも良いと言った事に腹を立てたのか、ゲームのコンセントを抜きやがった。

 最悪な事を為てくれやがったな…これで何度目だ。

 昔はゲームのセーブ中にやられて、データぶっ飛ばされた事がある。

 あの悪夢が、悪夢の再来が。


「ざまぁ味噌漬けぇ!私を馬鹿にした罰よ!」


 俺は無言で立ち上がり、笑いながら転げ回る夏美に、無言で技を掛ける。


「いだだだだだだだ!痛い!痛いってば!離してよ!」

「これは、なかなかに綺麗な逆エビ反り固めだな。良い形をしている」

「カッコいいです!怒りに満ちた先輩の笑顔、まさに悪魔的になってます!」

「悪魔の弟は、怪獣から悪魔へと変化するか…目が喧嘩してる時の秋恵さんそっくりだぞ」


 姉弟だから似てもおかしくないだろ。

 夏美も五月蠅いから技を解いてやり、俺はゲームのコンセントを刺し直した。

 もう一度最初から始め、やっとプレイ画面まで到着するのに、大分時間が掛かってしまった。


「ドキドキします…ホラーゲームするの初めてで」

「春魔。小百合から、暇だから遊びに行って良いか入ってるぞ」


 小百合か…ホラゲーやるのに、人数は多い方が盛り上がるな。

 浩寺に呼ぶように良いながら、進めていく。

 正直言うと、結構怖い。

 もう雰囲気とか、BGMとか、演出とか全部怖い。

 キャリーさんがビビるのも理解出来る、下手な映画より断然怖い。


「わ…私、今日怖くて眠れないかもしれなぎゃぁ!」


 抱きつくのはいつものことでいいんだけどさ、その状態でしれなぎゃぁ!は止めようよ!

 とくに耳元でやられると超ビビるからさ!

 心臓が止まるかと思った!


「確かに…これは怖いな。すまない、私も近くに居てもいいか?」


 返事をする前に、狂子がこちらにしがみついて来る。

 そして、ベッドの方から感じる殺気。


「こ…浩寺…私、隣に」

「断る!お前ビビったら攻撃して来るだろ!俺忘れてないからな!フロッグタワーやってた時、泣きながら俺に頭突きしてきたの!」


 そういや、そんな事もあったな。

 すっかりと忘れてた、懐かしい事を思い出させてくれる。

 あの時、浩寺の鼻血が吹き出して、俺のベッドが血まみれにされたっけか。

 さっきも似た様な事態が起ってたけど。

 もうそろ小百合の方も来そうだな…なんで居場所をマメに知らせてくるんだよ!?

 お前はメリーさんか!?ホラゲーをしてる時にやめろよ!


「小百合のヤツ、もう入り口付近まで来てるってよ…夏美、玄関開けてくれ」

「今ジュース飲んでるから無理。蘭華、アンタ行ってきてよ」

「私はここから離れたくないんです!それに鍵はしっかりと開いてます!」


 鍵を開けたら閉めろ!誰か入って来たらどうするんだよ!?

 とりあえずは、扉が開いてるから勝手に入ってろと伝えるんだけどな。

 心配なのは、富閖野マコトを連れてこないかと言う事だが。

 多分連れては来ないだろう…結構ギクシャクしてるらしいから。

 さて、じゃあ小百合が到着するまでにセーブポイントを見つけるとするか。


「柘魔、そこの階段の裏が光ってるぞ…クソ!トラップだったのか!?アイテムで引き寄せるなんて、とんでもなく卑怯なヤツだ!」

「まぁそれで死んだんだけどな…あそこの階段は即死トラップありか、覚えておかないとな」


 このゲーム、予想を遙かに超える程に難しいな。

 初見殺しばかりで、心が今にも折れそうなんだけど。

 ソフト間違えたかな…マジで初見殺し過ぎて辛い。

 俺、これクリア出来る自信がないんだけど。

 ガチで怖い上に、即死トラップの恐怖が強すぎて、全然進めない。

 気づけば同じ所をグルグル回ってるけど、誰も指摘すらしてくれない。

 こうなったら…最後の手段をとらせてもらうか。


「なぁ?交代でやらないか?せっかく集まってるんだからよ」


 皆して一斉に青ざめてんじゃねぇ!これを俺一人に託す気でいるのか!?

 説明書を良く読んでみろ!絶対に一人でプレイしないで下さいと書いてあるだろ!

 まぁ俺もさっき読んだときに知ったんだけど!


「あ、私だけ仲間ハズレでゲームとか…てか、この部屋暑くない?窓開けて良い?あと手ぶらじゃ悪いから脱水症状起こさないようにスポドリ買ってきたから」


 小百合、お前は良い子すぎるぞ。

 こちらへの気遣いまでしてくれるなんて…涙が出てきた。

 脱水症状を起こさないように、しっかりとスポーツドリンクまで買ってきてくれた。

 俺と浩寺と言ったら、ジュースとエナジードリンクくらいしか買ってない。


「なんで泣くの!?私何か悪い事したとか!?」

「いや…お前が良い子過ぎてな、嬉しいやらで」

「そうだな、俺達はただ遊ぶだけの事しか考えてないから…体の事なんて1つも考えずに」


 浩寺、お前も泣いていたのか。


「お土産で泣くとか、馬鹿みたい」

「ただ飯食って文句しか言わないお前に、馬鹿とか言われたくねぇ!」

「そうだそうだ!夏美はいつも春魔に色々と奢らせ過ぎだ!確かに春魔の所の飯は美味い!でも夏美も努力をしろよ!俺だって家で料理勉強してんだぞ!」


 ぐうの音も出ない夏美に対して、俺達は勝利したと確信した。

 そして、敗者である夏美にコントローラーを握らせ、続きをやらせる。

 面白いのは、やらせた瞬間に即死トラップに引っかかり、交代した事。

 次のプレイヤーは蘭華だが、俺のプレイを見てただけはある。

 見事にトラップを回避しつつ、敵を倒して行く。

 もうこれは無双と化しているのではないだろうか、完全に無双だな。

 的確に攻撃チャンスを見極めて、クリティカルをたたき出す。


「お前、このゲームした事あるのか?」

「初めてやりました。私、ゲーム事態するのが初めてです」


 なるほどなぁ…ゲームは初めてか。

 いや、だとしたら俺の動きを見ただけで覚えたのか?

 もしそうだとしたらお前、相当な記憶力だぞ。


「この謎解き、難しいです…どう考えても分らないです」

「パズルなら私得意だからちょっと貸して、子どもの頃はよくやってきてたんだよね」


 プレイヤーが蘭華から小百合に交代、物の数秒でパズルを解いてしまった。

 蘭華が長い事苦戦していたあのパズルを、糸も簡単にだ。

 謎解きには経験がある、俺と浩寺ですら苦戦したパズルを。

 悔しい!だが!これで進める!


「結構簡単じゃん。てかこれって惨シリーズだよね?私これ結構プレイしてるけど、こんな雰囲気だっけ?私がやってたのって、ゲーム機がもっと新しいヤツなんだけど」

「意外だな。こいつは結構昔出たヤツで、姦姦陀羅編だ」


 小百合の顔が一気に興味津々な顔に変わり始め、こちらに詰め寄ってくる。

 よく見たら小百合のやつ、今日服が派手すぎな気がするんだが。

 胸とかの露出度が高すぎる。

 いや、これは多分のせいで暑いからこうなってるに決まってる。

 小百合はそいんな事をする子じゃないと、俺は信じてる!


「変な恰好で先輩に近づかないでください!変態なんですか!?」

「へ、変態!?私のどこが変態!?アンタの方がいつも変態らしいことしてるじゃん!?」


 蘭華と小百合の取っ組み合いが発生したが、止めに入る隙がない。

 叩こうとする蘭華に対して、それを防ぐ小百合。


「もうどっちもどっちでしょ。胸思いっきり出してるほうもだけど、タクにへばりついて離れないほうもぶふっ!」


 見事に蘭華の蹴りが、夏美の腹部へと直撃。

 その結果、クリーチャーエナジーを飲んでいた夏美が、こちら目掛けて吹き出すという事態に発展。

 口から飛び出した炭酸が、俺の目の中に入って来た。

 つか痛ぇ!ヤバい!痛すぎる!

 何とんでもない被害出してくれてんだ!?

 頭とかベトベトじゃねぇか…続き出来ねぇ。

 シャワーを浴びて、着替えもしないといけないのか。

 ここで浴びたくねぇ!絶対に浴びたくねぇ!


「なんてことすんのよ!?普通人が何か飲んでる時に蹴り入れる!?馬鹿じゃないの!?死ね!」

「おい夏美。春魔への被害が相当酷いぞ…全身びしょ濡れになってる」

「炭酸は体がべたつくからな、風呂に入ってくると良い」


 仕方ないか…風呂に入ってくるとしよう。

 ただ気になるのは、蘭華と小百合がしっかりと着いて来てること。

 一体何をするつもりだよ…こいつ等。


「お前等、なんで着いてくるんだ?」

「私達のせいで汚したから、せめて背中でも流そうと思って」

「私も同じです!むしろ色々と便利に使って下さい!」


 まだ小百合の方は申し訳なささが出てるが、蘭華はもう下心丸出しだ。

 背中を流してくれるというのはありがたい話なのだが、ここはお断りさせて貰う。

 一名が信用できないのと、最近俺自身がおかしいからだ。

 多分風呂場で大変な事態に発展するから、連れて行きたくない。

 あと俺の部屋の風呂、沢山人が入れない。

 姉貴一人で風呂場が占領されるからな…色々な意味で占領されるが。

 その原因が匹敵する蘭華が入ったら、一人が浴槽に移動しないといけない。


「普通に脱ぐな!?何ちゃっかり準備しようとしてんだ!?二人揃ってどういうつもりだ!?」

「タオルにならないと…服が濡れるし、着替えとか持ってきてないから」

「いつもと同じです!先輩の家に来たら、いつも一緒に入ってるので、いつもと変りません!」


 ちゃっかり嘘ついてんじゃねぇぞ!

 なに新たな既成事実を捏造しようとしてんだ!?

 開いた口がふさがらないってこれだぞ!


「お前に、家の風呂を使わせた事は一度もないぞ。嘘を吐いてるのはこの口か?あ?混乱するだろうが」


 蘭華の頬を軽く掴むと、口を尖らせながら何かを言ってくる。


「え?嘘なの?本当っぽかったけど」

「こいつが言う、俺に関する物は大概が嘘だ。あまり真剣に取り合うと苦労するぞ」

「そんな事ありません!先輩とはよく寝てます!その時は…お互い裸ですけど、まさに裸の付き合いと言う物です」


 余計な事しか言い出さねぇな、このバカチン。

 話がややこしくなるだけだろうに。


「小百合…蘭華を連れて戻っててくれ。ゲームは遊んでて良いぞ」


 赤面していた小百合に笑顔が現れる。

 可愛いな…こうして笑ってるのを見ると。

 ただ少しだけ、純情すぎるんだろうな…変態よりマシだけどよ。

 もしこの場に由実とかが居たなら、盗撮とかされてたんだろうな。

 ゲームしていて正解だ、事前に知らせておいたから、今日は来ない。

 なんだか、色々と予定が狂ったが…最初からこうするのもありだったかもな。

 しっかりと連絡をして、二人でずっとじゃなく、大勢でやる。

 考えが足りなかったわけだ。


「やっとベタベタが取れた、最悪だ。夏美にジュースをぶっ掛けられるだなんて…床とかも拭かないとだめだな」


 はぁ…考えたら、夏美に飲まれたクリーチャー高いんだよな。

 本数的に、値段が相当するから六本しか買ってないのに。

 俺、アイツが飲んでる所見た事もないぞ。

 よくあの目玉の絵がジャケットのを飲めるものだ、俺達が言えた事じゃないが。

 最初こそ、俺と浩寺も目を疑った。

 突然コンビニに、目玉の描かれた缶ジュースが置かれてるんだからな。

 興味本位で飲んでみたら、滅茶苦茶好みの味で、買いまくろうと思ったほど。

 それも段々と新作が発売されて、浩寺はノーマル味で、俺はピニャコラーダ味で落ち着いた。

 ジャケットの目玉も味によって違うから面白い。


「タク…大丈夫?アンタがちゃんと避けないから悪いんだからね!私は別に掛けるのは浩寺でも良かったけど…浩寺に掛けたら、超怒られるかと思っただけで」

「謝罪をするのか、ポテチを食べるのかどっちかにしたらどうだ?あとあの分は俺のじゃなくて、浩寺のだから後で金渡しとけよ」


 …バリバリうるせぇな、どんだけ食べるんだよ。

 謝罪をしに来たのか、ポテチを食べる音を聞かせに来たのか、一体どっちなんだ?

 てかどこかに移動してくれないと、俺は風呂場から出ることが出来ない。

 このまま丸出しで行っても良いが、夏美からの攻撃を防いでる間に、蘭華に侵入されるだろう。

 このままだと、逃げ道が一切ないではないか。

 俺だってゲームの進行具合が見たいんだぞ!


「てかアンタ、どうしてあそこまで女連れてくんのよ?正直、モテる要素がないタクになんで寄ってくるわけ?」


 俺が知るかよ、要素がないのは知ってるけどよ。


「昔は怪獣って呼ばれて、怖かったのに…いつからか、オタクに目覚めて…気がつけば、周りに女子だらけって…不思議な感じ」


 そうだろうな、本当に不思議な感じだ。

 昔は、俺と夏美と浩寺と姉貴の四人。

 基本的にそういう構成で遊んでいたから、今の状況は違和感が大きいんだろう。

 たまに姉貴の友人達が混ざって遊ぶ事もあったが、俺は大概喧嘩してる事も多かった。

 でも喧嘩をしない日もあったりした。

 そんな日は、四人でゲームをしてたっけか。

 丁度今日のように、皆でワイワイやりながら。


「ちょっ!?ちゃんと前隠して出てきてよ!馬鹿じゃないのタク変態!」

「完全態みたいな発音で言うな!あと床がポテチのカスでいっぱいじゃねぇか!?どうしてくれんだよ!?これ片付けるの俺なんだぞ!?」


 夏美から繰り出される攻撃を躱して、体を拭いていく。

 お前が幾ら罵ろうが、ここは俺の家だ。

 そして、俺がシャワーを浴びてるのに、入って来たのはお前だ。

 つまり…俺に落ち度は1つしかない!

 前を隠す為のタオルを、壁に掛けて置いた事くらいだ!


「なんで前を隠さないのよ!?いい加減にしてよ!」

「だったら出てけよ。普通は男がシャワー浴びてるところに来るなら、これくらいは想定しておくものだぞ」

「今先輩がフル○ンって聞いて来ました!本当ですか!?夏美先輩だけズルいです!なんで私も混ぜてくれないでんすか!?」


 いつ誰がフ○チンなんて言ったんだ。

 あとお前が来る前に、パンツは履き終えている、残念だったな。


「アンタ正気?この男がどんだけ卑劣で下劣で変態なのか見直した方が良いわよ!?」

「いいんです!先輩は悪魔のような雰囲気の方が、私は更に燃えるんです!夏美先輩には、私の先輩の良さが分らないからそんな事が言えるんです」


 ああ、夏美が完全に呆れてるよ。

 もう何も言っても無駄だと判断したな。

 完全に蘭華を哀れみの目で見ながら、皆の元に去って行った。

 ここからはお決まりの、蘭華ベルトが装着される訳だが。

 ズボンまで履いて、上着だけ着れない。

 別に良いか…どうせ暑いから。


「ファンキーになったな、春魔。頭をオールバックにして、どうしたんだよ?」

「乾かしてねぇだけだ。それより後で、皆でパーティゲームでもするか?由実も読んでよ」

「そうしよ、このゲームって、大勢でやるとなんか白けるだよね」


 おいおい、さっきまで楽しんでたのは小百合だろうに。

 まぁいいか…皆で楽しく盛り上がれば、良い思い出にもなるんだし。

 こういう時の為に、パーティゲームも同時購入為といて正解だった。

 今晩は、徹夜で遊び尽くすぞ。

皆で楽しくゲームをする柘魔達。

次回、なんと蘭華が自立宣言!?おまけに柘魔も脱オタク!?

二人に一体何が怒ったのか!?

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