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第二十四話 電気屋に行くと、結構色んなものを見てしまう。

姉の仕事が決まり、必需品を買いに来た柘魔達。

しかし、全員が電気屋で見たい物の所で止まり、買い物が進まない。

パソコンを買いに来たはずが、思わぬ事態へと発展してしまう。

 我が姉の仕事が決まり、今日は必要な物の買い出しの予定だったのに。


「あのテレビ、結構小さいと思うんだけど、タッちゃんはどう思う?それにオーブンレンジもあったら便利ねぇ、これも良いわね、ノンフライヤー、ヘルシーに出来上がるんでしょ?」


 かれこれ三時間近く、姉貴が家電コーナーに止まっているからだ。

 どうも俺の部屋を見て、台所がシンプル過ぎるのが、お気に召さなかったようだ。

 元々パソコンを購入するために来たのに、このままだと別の買い物になりそうで怖い。

 つか無職だったのに、どんだけ金を貯め込んでたんだよ。

 それと…問題児が数名着いて来てるのも、困りものだ。


「うぉぉぉぉぉぉ!?見てくれ柘魔!もの凄く楽しいぞ!母が飼っている馬並にお転婆なマシンだ!気に入った!私はこれを買うぞ!」

「マジッスか!?これ先月買ったばっかりなのに!?もう新型出てるとかどうなってるッスか!?陰謀ッスか!?孔明の罠ッスか!?」


 今日の買い物には、狂子と蘭華と由実が付いてきたのだが、後悔してる。

 蘭華は妙に大人しいから良いが、二人がやけに騒いでる。

 ロデオマシンに乗ってはしゃぐ狂子に、カメラの値段でキレる由実。

 狂子に関しては、周りにお客が集まり出してる始末だ。

 まぁ…あれだけ胸を揺らせば、集まってくるか。


「はいはい、すいませんね。見世物ではないので、写真を撮るのもやめてください、狂子もいい加減に降りる」

「ふむ、柘魔がそう言うのなら降りよう。それにしても、良い物を見つけたぞ、これは柘魔の家にも設置しよう!」


 そんなの置くスペースねぇよ、つかいらねぇ。

 ロデオマシンを買うくらいなら別の買うわ、新しいダンベルとか。


「さきほどから静かだが、蘭華は調子が悪いのか?」

「俺にもさっぱりだ。いつもならへばりついてくるのに、今日は大人しい上に、若干ビクビクしてる…体調でも悪いか?帰りたいなら帰るが」

「大丈夫です…ただこう言うお店に、あまり来たことがなくて…壊しそうで怖いんです」


 なるほど…不安と恐怖心から来てたのか。

 由実と一緒にいるから、てっきり馴れてると思ってたんだけどな。

 少しは着いててやった方が、本人も安心するだろ。

 本当に何か壊されても困るからな。

 とろあえずは、騒いで店員に絡んでる由実を止めるのが先か。


「一体どうなってるッスか!?これ出たばっかりって言ってたじゃないッスか!?詐欺ッスよこんなの!」

「落ち着け、他のお客さんに迷惑が掛かるだろ」


 羽交い締めにすることで止めたが、店員さんビビってるよ。

 謝罪をする間もなく、どこかに行かれちゃったし。

 もういっそのこと、適当にパソコン勝手帰った方がいいかもな。

 だがパソコンを買う本人が、殆ど家電コーナーから離れてくれない。

 既に引き替えの紙持ってるし、何を買う気だよ。

 俺の部屋にそこまで沢山置けねぇっての。


「春魔。俺は今日、どうしても必要なのか?」

「そういやお前の事忘れてた。晩飯奢ってくれるって言ってたから、いいんじゃねぇか?お前確か、今日親居ないんだろ?コンビニで済ませるより良いだろ」


 今回、浩寺は元々部活だったのを、理由を付けて来て貰った。

 姉貴によると、荷物持ちに、男手が欲しかったらしい。

 そこで収集された訳だが、浩寺にとっては気の毒だな。

 ただ姉貴に逆らうと言う事が出来ない、というより、刻まれてるんだろう。


「晩飯は食いたいけどよ…お前の家で食べるのか?」

「多分どっか連れて言ってくれるだろ。家電とかを買った時は、結構機嫌がいいからな」


 今回の買い物で、一体幾らぐらいの金額がかかるのやら。


「ねぇ、パソコンってどれにしたら良いと思う?安いので良いかしら?」

「余計な物を買いすぎなんだよ。とりあえず戻してこい、家に入りきらないだろ」


 頬を膨らませながら戻しに行く姉貴、どんだけ欲しいんだよ。

 買うなら仕事で成果を出してから買えっての。

 料理するのが趣味なのは分るが、せめてもう少し自重してくれ。

 持ち帰るのも大変になるんだ…電車で来てるから。


「ちょい先輩…話があるッスけど、いいッスか?」


 俺の返答も待たずに、連れて行かれた先には、カメラコーナーだった。

 まさか、俺にカメラを買わせる気じゃないだろうな。

 そこまで金持ってきてないぞ、せいぜい飯とかが食える程度だ。


「あそこに見える女数名居るじゃないッスか…あれ、蘭華の同級生ッス。さっきから、蘭華の元気がなくて気になってたッスけど…アレが原因だったッスね」

「…妙な組み合わせだな…隣の男子は…俺の知ってる連中だ…てか昔、ぶっ飛ばして泣かせた」


 そんな軽蔑した視線向けないで、相手から突っかかってくるんだから。

 対して俺は、それに答えただけだ。

 たったの一発、尻に蹴りを入れただけで、泣いて逃げて行ったのは相手だ。

 別に俺が悪いとは思ってない…ハンデとして数発、腹パンも喰らってるから。


「追い払えばいいのか?それとも、蘭華を連れて避難した方が良いか?アイツ等なら、俺の事を知ってるから逃げると思うが」

「そこはやっぱり、先輩が蘭華を連れ出した方が本人も安心するッスよ。マンションに帰る時とか、凄く嬉しそうにしてるッスから…皆には説明をしておくッス」


 結局は…やるしかないのか。

 増長させるだけだら、正直やりたくないのが本音だが、状況が状況だしな。

 俺は蘭華に近づき、そっと抱き寄せる形を取った。

 理由としては、蘭華から連中が見えないようにするためだが。

 相手の方からも悟られないようにするためでもある。


「ここって結構暑いな…どこか涼めるところにでも行くか」


 無言で頷くか、新しい反応を示してきたな。

 幸い、浩寺は姉貴に捕まって、狂子はマッサージチェアの虜になってる。

 俺はチャンスと思い、蘭華を連れて、近くの喫茶店に入ったわけだが。

 入る店を間違えたと後悔し始めていた。

 だって周りの客、カップルか夫婦しかいないから。

 どうすればいいのだ?この状況の打破の仕方が分らぬぞ。


「驚きました…先輩にいきなり抱き寄せられて…私、凄く幸せです」

「びっくりさせて悪かったな、あまりにも元気がなくて、心配になってさ…次から何か不安な事があれば、直ぐに言えよ…黙っててもこっちは気づいてやれないこともあるから」


 目に涙を浮かべる彼女を見てると、昔テレビで見たCMを思い出した。

 保険のCMなのだが、白いチワワが涙目でこちらをうるうるした目で、見つめてくると言う物。

 丁度蘭華の雰囲気が、それに似ている。

 俺も少し変ってきたのかもしれないな。

 前まで、蘭華に対しては適当にあしらったり出来てたのに。

 こう言う姿を見せられて、可愛いと感じるようになってきた。

 あとアニメを見る時間も減ったな…グッズも全然買ってない。


「泣いてる暇があるなら、こうして俺と居る時を楽しんむ方が、お前らしくていいんじゃないか?俺はそっちのほうが、安心出来るけどな」


 気休めのつもりで放った言葉も、人によっては捉え方も変るんだろう。

 急に立ち上がったかと思えば、隣に座り始め、寄り掛かり始める。


「今日は特別だ…落ち着くまでそうしてろ。俺はその間、ゆっくりと珈琲を楽しませて貰うから、お前もゆっくりと休んでろ」


 こういうことを許してしまうから…調子に乗り始めるんだ。

 寄り掛かって来たところに、腕を回して、静かに頭をポンポン叩いてやる事。

 拒絶をしないで、黙って受け入れる事。

 人が良すぎる事なんて、自分自身でも分ってる。

 でもよ…辛い時くらいは、優しくしても罰は当たらないだろ。


「見て、あれ愛神さんじゃない?」

「うわぁ…見せつけてくれるじゃん…てか、相手ダサッ、お似合いだけど」


 声のするほうを見上げると、由実から教えられた連中がこちらを見ていた。

 女子はこちらをニヤニヤしながら眺めていたが、男子のほうは直ぐに察したらしい。

 俺と面識があり、喧嘩をしたことがある事が。

 そこで俺はほんの少しだけ、悪戯がしたくなってきた。

 暑いフリをしながら、軽く髪を上に上げて、連中を睨み付ける。

 たったそれだけの事なのに、直ぐに男子は青ざめ始めた。

 女子の方は、ただ恰好を着けているように見えたのか、あるいはメンチを切られたと思ったのか。

 面白い事に、男子達を煽り始めた。


「彼女が睨み付けられたんだから、カッコいい所を見せてきてよ」

「ほら、表出ろとか言ってさ。愛神さんなら抵抗してこないし、大丈夫だから」

「大丈夫なわけねぇだろ…悪い、俺…用事思い出したから、先に帰るわ」

「お、俺も…考えたら、買い忘れがあったわ」


 そそくさと出て行く男子と、それを追いかけて睨み付けてくる女子。

 正直…まったりとした空気を壊さずに済んでよかった。

 少し珈琲が冷めたが…あとでお代わりを注文すればいい。

 たまには、暴力無しでの勝利を手に入れるっていうのも、良い物だな。



 ついに我が家に、新しいパソコンが設置される日が来た。

 元々ゲーム用に買った物は設置してあったのだが、今回は金額が違い過ぎる。

 それと、パソコンを設置する為に、俺のコレクションをどかす事になるなんて思いもしなかった。

 箱はしっかりと保管してあったから、近いうちに実家に置いておかないと。


「もう、タッちゃんがもう少し部屋を綺麗にしてくれてたら、直ぐにお仕事始められたのに」


 俺が元々住んでた部屋なんですけど。


「突然居なくなったと思えば、二人で乳繰り合ってるから、びっくりしたじゃない」

「一度眼科でも行ってこい。あの状況を乳繰り合ってると言うなら、世界は既に終わってる」


 たまに、姉貴の目が心配になってくる。

 一度頼んで眼科に行って貰ったことがあるが、2.0で問題無しと判断された事がある。

 俺はあの頃、視力はマサイ族並かと思い込んでいた。

 どんな遠くに居ようと、必ず見つけ出されて、抱き締められる事が多かったからだ。

 たとえ何処かに隠れていたとしても、見つけられてしまう。

 人間なのかすら、疑いたくる程に凄い能力と言える。


「こうして考えてみると、この部屋も手狭になってきたわね」

「俺一人の時は、十分な広さだったけどな」


 狂子と出会ってから、大分部屋が賑やかになったものだ。

 前までは、夏美が飯を集りに来たり、愚痴をこぼしに来たりだけだった。

 今では蘭華や由実、たまに小百合と姫華が来るようになった。

 そして、姉貴と再び住むようになった。


「お金が貯まったら、一緒に引っ越すわよ。もっと広くて、台所も大きいところが良いわ、仕事をするための書斎も必要だしね」

「金が貯まればの話だがな…流石にこの部屋に、二人も住むのは狭く感じてきたかもしれないな」

「引っ越すッスか!?もしかして転校とかするッスか!?蘭華が泣いちゃうじゃないッスか!」


 誰も転校するなんて言ってねぇ!

 あとさっきから気になる事があるんだが、蘭華が俺のベッドに潜り込んでる。

 それもなんかモゾモゾと動いてる上に、アイツが来てたらしき服まで散乱してる。

 人が忙しい間に、何してんだよ。

 あと狂子も見当たらないのも気になる、自由すぎるだろ!


「椅子の組み立てが完了したぞ。でも大き過ぎないか?このままだとこのままだと棚にぶつかりそうだぞ」

「そうねぇ…タッちゃんは、フィギュアを片付けて、浩二君は棚を移動させて」


 人使いが荒すぎる。

 それと蘭華よ…浩寺が居るとき位は、自重しようぜ。


「お姉ちゃん心配になるわ。将来の事を考えると…引っ越す時は、グッズは実家に置きましょうね」

「普通に嫌だ、何が何でも持っていく」


 やめろ!全く仕方ない子ね、でも私は見捨てないわ的な顔をするな!

 俺にそんな顔を向けるなら先に、蘭華をなんとかしろ!

 よく見たら、ブラを俺の後頭部に投げつけてきたぞ!

 器用にも程があるだろうが!頭に綺麗に乗っかってんだよ!


「…由実、提案がある。蘭華に洋服を着せてくれたら、夕飯の後にアイスを奢ってやる」

「ハーゲンガッツ五個でなら手を打つッス。味は特濃抹茶2つに、レモンケーキ3つで」


 よりにもよって、高いアイスを要求して来やがった。

 お前はハイパーカップで十分だろ、俺も食べたいから買ってやるけどさ。

 しかし、抹茶を選ぶとは…渋い所があるな。

 とりあえずは、交渉成立と言ったところか。

 由実に投げつけられた下着を渡し、突撃して貰ったのだが。

 この頼む相手が間違いだった。

 ベッドの中に突撃したと同時に、蘭華が大げさに悲鳴を上げて、二人して暴れ始めた。

 その結果、ベッドが見事にぶっ壊れた。

 部屋の中で愕然とする俺に、音に驚き、隣から顔を覗かせる二人。

 そして…ベッドを壊した二人は見事に、青ざめ始めていた。


「ら、蘭華が暴れるからッスよ!私はあくまで!先輩に頼まれただけッス!蘭華が大人しくしてくれてれば、こんな事態にならなかったッス!」

「違います!私は先輩のベッドで香りを堪能してただけです!由実が悪いんです!いやがらせをするからです!」

「罪をなすり着け合うのはやめなさい。どちらにも非はあるのだから、分ってるわよね?」


 二人に対して、姉貴の両拳が飛んで行った。

 あれは相当痛いな…多分43%ぐらいの力を出してる。

 俺でも耐えるのには多少涙目になるレベルだが、二人共思いっきり涙目になってるな。

 あれだけ鈍い音が響いたからな、馴れてても辛い。


「どうするのよ?ベッドこんなにして…これじゃあ…タッちゃんと一緒に寝るしかないじゃない」

「俺は床で寝るからいい。それより二人共、怪我とかしてないか?」

「頭が痛いです…でもなんだか、これが良いです」

「首折れてないッスか?鳴ったらマズイ音がした気がするッスけど」


 怪我は無さそうだな。

 まぁ別にベッドが壊れた事は気にしていない、どうせネットで安く買ったヤツだから。

 直ぐに壊れるだろうと思っていたのだが、思った以上に長持ちしたな。


「真ん中の支えが折れてるな…怪我がなくて良かったよ、破片とかが刺さらなかったのが奇跡だな」

「本当にすみませんでした!まさかベッドが壊れるとは思わなくて、蘭華も頭を下げるッスよ!早くするッス!」

「すみま…せんでした…へへ」


 由実からの謝罪は、どちらかというと姉貴への恐怖心だな。

 俺の背後を気にしているのが、丸わかり過ぎる。

 蘭華に関しては…ダメだな、もう手遅れだ。

 反省するどころか、むしろ何か別の事を考えてやがる。


「二人にはしっかりと弁償をして貰うわよ。ちゃんと理解してるの?この件については、ちゃんと親御さんに報告させてもらいます」

「姉貴…蘭華の前で親の話はやめてくれないか。事情は後で説明するから、とりあえずは由実の方に話をしてくれ、蘭華とは俺が話しておくから」


 不服そうな顔で見てくる姉貴だが、少しは察してくれたようだ。

 由実と浩寺を連れて外へ出て行く姉貴を見送り、俺は蘭華と話しをする事にした。

 浩寺を連れ出したのは、気を利かせてくれたからだろう。

 まずどう話をすれば良いのか悩む所だが、ここは先輩らしくしないといけない。

 ちゃんと俺のベッドで変な事をしない事を、約束させないと。


「とりあえずだが、弁償はしなくて良い。しっかりと片付けを手伝ってくれさえすればな…あとこれからは、あまり変な事をしないようにしろよ」

「怒ってないんですか?先輩と私の思い出が沢山詰まった…ベッドを壊してしまったのに」


 確かに…沢山の思い出があるな。

 あまり思い出したくもない物も、結構含まれてるが。


「俺は、お前達が怪我をしなかっただけで良い。逆に怪我でもされたら、楽しい思い出が嫌な思い出に塗りつぶされちまうだろ?だったら、嫌な思い出で壊れるより断然マシだ」

「その通りだ。実際の現場を見ていたわけではないが、柘魔の言う事は正しい」


 狂子…シャワーを浴びていたのか、だから姿が見えないわけか。

 てか人の家のシャワーを無断で使用しないで!あと全身びしょ濡れじゃん!?

 せめてタオル巻いてくれない!?色々と目のやり場に困るから!

 あれ?俺って…いつから、こんなに恥ずかしがるようになったんだ?

 今までは、全然問題なかったのに。

 まるで普通の男子みたいな感情、二次元にしか興味がない俺がだ。

 俺自信の心境に、どんな変変化が現れてると言うんだ。


「顔が赤いです!先輩の顔が真っ赤になってます!もしかして熱があるんじゃないですか!?早く寝ないとダメです!私が看病してあげます!」

「熱があるのか!?待っていろ!今迎えを呼ぶ!我が家の方で看病をするから任せろ!」

「風邪じゃねぇって!いいから狂子は服を着ろ!蘭華はベッドのシーツをどかせ!」


 なんなんだよ…今まで平気だったのに。


「もしかして、真手場先輩の裸を見て恥ずかしいんですか?なんでなんですか!?私今半分下着ですよ!?真手場先輩で興奮するなら、私のも見てください!」

「落ち着け馬鹿!こっちだって混乱してんだよ!激しく揺らすな!脳が揺れる!」


 蘭華に激しく揺らされたせいで、しばらく姉貴のベッドで、ダウンしてしまった。

 マジで気持ち悪い…マグカップで大回転した気分だ。

 あとで覚えてやがれ、担いで振り回してやるからな、必殺怪獣車輪だ。

 でもあの技、俺にも効果があるから諸刃の剣なんだよな。

 …姉貴のベッド…結構良いのを使ってるな。

 これがあの、低反発と言う物ななのか…なんか羨ましい。


「元気出してください、私のパンツを見たら…元気になりますか?」


 スカートを捲る蘭華に対して、俺は逆側を向くことにした。

 絶対にふり向いたらダメだ、とてつもなく嫌な予感がする。

 コイツは、何かを企んでるに違いない。

 まずはここから逃げ出すのが得策なのだが、ベッドから転がり落ちるのも痛いからいやだ。


「大丈夫ですよ、毎日変えてますから」

「そういう問題じゃねぇだろ!お前はエロゲーのヒロインか!?今日という今日は言わせて貰うぞ!俺はお前の将来が心配になるんだよ!?そういうことばっかりやられるとな!」


 妙にスッキリした、心の中に詰まってた物が撮れたような感覚。

 うん、ずっと溜め込んでいた物を、吐き出せたからか。

 今の今まで言いたかった事をついに、言えた。

 これで少しは理解してくれると良いんだが、コイツはただ者じゃなしいな。


「そこまで心配してくれるなんて…私、感激です!先輩愛してます!私の全てを受け止めてください!」

「だから脱ぐなって言ってるだろ!全然理解してないな!?」


 コイツにはどうやれば理解させられるんだ…もう手段が思いつかないぞ。


「じゃあどうすれば受け入れてくれるんですか!?私は先輩が良いんです!」

「蘭華…私も同意見で、柘魔が良い!」


 同意見って、この状況で使うか?

 もう家に帰りたい…考えたら、ここが家だ。

 てか二人の後ろに…悪魔が仁王立ちでこちらを睨んでるんですが。

 もう完全に処刑執行する気でいらっしゃる。

 腕を振り上げて…悪魔の爪が炸裂しようとしているのに。

 どうして二人して、気づかないんだ!?

 俺が見ている間にも、悪魔の手は二人を捕らえ、奥の部屋へと引きづりこんでしまった。


「なかなか面白い展開だったッスけど、惜しかったッスね」

「春魔…お前って、結構大胆な事されてたんだな…似た者同士、今日はお前に付き合うよ」

「お前等…さては見てただろ?途中から見てただろ?しっかりとバッチリと見てただろ?ついでに蘭華の下着も見てただろ?」


 俺が困ってる間にただただ見てやがったな。

 多分由実の事だから、写真かビデオを撮っている可能性が高い。

 もしもそうだとしたら、いつも通りに削除させてもらう。

 浩寺には不可抗力だったのだろうから、許してやるとしよう。

 元々、浩寺はこの光景を見たことがなかったからな。


「久々に映画鑑賞でもするか?中学の時みたいに、夏だから怪談物でも借りようぜ。由実、お前は強制的に見せる、目にセロハンテープ貼ってでもな」

「マジっ…すか?私、ホラー系は苦手なんッスけど」

「それいいな!明日は終業式だから、明後日は夏休みだろ?なら泊まって行って良いか?明日も泊まりがけでホラー特集やろうぜ!」


 気が合う友が居るというのは、良い物だな。

 ホラー特集をする事が決まった俺と浩寺は、嫌がる由実を連れてDVDを借りる為にに外へ出た。



 この時期は、どこのDVDレンタルでも、ホラー特集をしてくれている。

 ゲームソフトを取り扱ってる店なら、そっちの方もやってくれてる場合も多い。

 特にゲームソフトは嬉しい、掘り出し物が出てくる事もあるからだ。


「なぁ、このロリータ・プレイ・シンディの花婿借りようぜ。春魔の方は何か見つけたか?」

「…大体見たから、あんまりないな」


 なんだよ、八尺様VSスレンダーマンって、高身長対決か?

 もう邦画VS洋画と言ってるようなもんだろ。

 よくもまぁ…こんなチャレンジャーな映画を撮ったものだよな。

 明らかにB級からC級臭が漂ってくる…監督も日本人か。


「デモンズ・シャッターか…由実、これ借りるか?お前の悪い癖が治るかもしれないぞ」

「無理無理無理!マジで無理!マジダメだから!見せないで!」


 凄い拒絶の仕方だな。


「悪かった、そこまで怖がると思ってなくてよ。帰りにアイス六個買ってやるから、許してくれ」

「本当にダメなんッス。小さい頃、二番目の兄に…無理矢理ホラー特番に付き合わされてから…本当に怖くて仕方ないッス」


 じゃあなんでカメラで写真を撮るんだよ、心霊写真撮れると思わないのか?

 まぁ写真撮影が好きらしいから良いだろうが。

 もし本当に心霊写真でも撮れたら、発狂するだろうな。


「映画も微妙なのしかないな…浩寺、由実とゲーム探してくる」

「あ、俺もそっち行く。会計一緒で良いだろ?ちゃんと代金は出すからよ、あと俺もゲーム欲しい」

「二人は本当に仲が良いッスよね。全く違う人種なのに、どうしてそこまで長い付き合いが出来るッスか?」


 全く違う人種って、イケメンと狂暴男って意味か?

 確かに浩寺は羨ましい程のイケメンだが、同時にロリコンなんだぞ。

 周りに黙ってるだけで、知ってるのは俺と夏美くらいだが。

 由実に話した所で、信じてもらえる華道家だな。

 それに浩寺が学校でなんて言われるかだ。


「昔…秋恵さんが、中学生にカツアゲされてる俺を助けてくれたんだよ、春魔も中学生相手に大分暴れてたけどな。お?春魔、このゲーム懐かしくねぇか?昔四人でやってただろ、夏美がビビって号泣したやつ」


 興味深そうに浩寺を見つめる由実、対して俺にソフトを渡してくる浩寺。

 渡されたソフトは確かに懐かしいがお前…俺達がやったのは、フロッグタワー2で3じゃねぇぞ。

 確かにパッケージは似てるけどよ…主人公、2だと金髪なのに3だと茶髪なんだよな。

 これのおかげで、しばらく夏美は蛙に怯えるようになったっけか。

 それを利用したイジメをしてくるヤツに、顔面に蛙を押しつけたな。


「なんだか三人が小学生の時みたいな感じッスけど…いつの話ッスか?」

「あれは確か姉貴が中1で、相手が中3だったか?」

「そうそう、俺達がまだ小1か小2の時。お前等姉弟は本当に強かったな…お前が脛に蹴り入れてからの、秋恵さんの顔面膝蹴りだから」


 そういや、そういう喧嘩もした事があったような気もする。

 半分忘れてるからな、そんないちいち喧嘩を覚えてられるか。


「えげつない過去を持ってるッスね…今後気を付けます」

「本当に気を付けた方が良いぞ。春魔のヤツ、普段は加減してるだろうが、俺に対しての蹴りは相当力入れてくるからな」


 そりゃ当たり前だろう、相手はあくまでも女だからな。

 加減をしないと…これ以上考えるのはよそう。

 それよりも、掘り出し物のゲームを買いたいからな。

 先ほどから俺の目に付いたソフトがある。

 小さい頃に俺が手を出そうとして、姉貴に止められたゲーム。

 その名は「惨」シリーズ。

 惨とはみじめとも読めるが、このシリーズはサンと読む。

 システムは面白く、悪霊を吸い込むビデオカメラ使い、悪霊を駆逐するゲームだ。

 ストーリーは主人公の過去が関わっており、姉貴が買わせない理由も納得の一品である。


「お?それって一時期学校で話題になったよな?確かプレイしたら、一ヶ月間悪夢を見るって噂の」

「よく覚えてるな、その通りだ。あの姉貴でさえも拒絶した作品…しかもコイツはシリーズ最恐と言われる、幻の姦姦陀羅編だ」


 このソフトが幻と呼ばれる理由、それは怖すぎて生産が中止されたからだ。

 マニアの間では、10万とかでも取引されてもおかしくないノだが。

 ここの店はなんと、破格の1500円で販売している。

 買うしかないだろう!


「決まりだな…夏休みは、コイツを遊び尽くすぞ!」

「おう!久々に徹夜してやる!部活を休んででも遊ぶぞ!なんたって…今サッカー部はなんやかんやあって休部中だからな!」

「なんすか!?サッカー部が休部って!?」


 テンションが上がりまくった俺と浩寺は、由実の質問に答える暇もなく、レジに精算しに向かった。

 その後は、コンビニで全員分のアイスを買って帰った。

 ただ由実のアイス代が結構痛かったな、まさか限定味ばかりだったとは。

夏休みが近づき、テンションが上がる柘魔と浩寺。

そんな二人が夏休みの計画を立てるも、いつもの如く、上手くいくはずもなく。

次回、なんと柘魔が蘭華の部屋にお泊まりする!?

心境に変化が現れている柘魔は、しっかりと理性を保つのか、あるいは新たな進展を見せるのか。

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