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第十二話 テスト勉強の予定が。

朝から蘭華の突撃に遭う柘魔。

彼女がなぜ突撃してきたのか。

「せ…先輩…ら、来週テストなの忘れてました…」


 休日の朝、我が家で朝食を取るために来た蘭華。

 彼女は酷く青ざめ、ガタガタと震えながら、俺にすがりついてきた。

 考えると、確かに来週は学力テストか。

 最近遊び回ってたからな。

 まぁ…俺、一夜漬け得意だから問題無いか。


「テスト?来週はテストの日だったのか?」


 アンタは何を言ってるんだ?

 学校でちゃんと説明されただろう。


「あらあら、テスト期間に入るのなら…私が特別に家庭教師をしてあげましょうか?お金次第では、確実に80点以上は取らせてあげるけど?」


 未成年相手に商売するなよ。

 それも後輩だぞ、しかも金もない。

 俺の姉貴って、こんな馬鹿だったか?


「金払って教えて貰うなら、俺が教えた方が断然マシだ」

「タッちゃんが教えるって、アナタいつも一夜漬けじゃない?お姉ちゃんの出す条件を飲むなら、教えてあげるわよ」


 確かに…姉貴に教わる方が断然、良い点は取れる。

 それは明白だ。

 だとしても、俺が教える。

 なんたってよ、秘策があるんだからな。

 問題は場所だ。

 この部屋でやるとなると、姉貴は妨害をしてくるだろう。

 何より…この部屋で勉強をするには狭すぎる。

 大体テスト期間一週間前になると。


「タク!タク!助けてタク!勉強が!来週うちの学校テスト!勉強分らないから教えて!タクの勉強にもなるからいいでしょ!?」


 なんとも自分勝手な。

 毎度の事ながら、これは中学時代から続いている。

 言わば、恒例行事。

 俺はこれを、サマテフェスと呼んでいる。

 サマーとテストとフェスティバル、この三つを掛け合わせる事で完成した行事。

 いつもテストが終われば、夏美が祭りの如く騒ぎ始めるから命名した。


「そうだ!秋恵お姉ちゃん!私に勉強を」

「ごめんなさいねぇ。タッちゃんが自分で教えるって張り切ってるから…どうせ泣きついてくるでしょう」


 ため息を着く姉貴。

 隣では驚愕の顔で俺を見つめてくる夏美。

 どうせ夏美に関しては、いつも俺が教えてるんだから問題ないだろ。

 70点は取れてるんだから。


「どうだろう?勉強をするなら、私の家でしようじゃないか」


 …狂子の家で勉強…どうして?

 どうして狂子の家で勉強会になるんだ?


「えっと…この場合は蘭華の部屋でも」

「私は皆を家に招きたいんだ、特に母が…皆を家に連れてくるように、毎日連絡をしてきて困ってるんだ…」


 彼女の携帯に表示される履歴。

 そこには、全て同じ名前が並んでいた。

 履歴をマジマジと見ていると、突然着信がなり始めた。

 スゲぇ…これはタイミングが良すぎる。

 流石に後ずさりしちまったぞ。


「噂をすれば…すまないが、少し電話をしてくる」


 部屋を後にする狂子、すると外から大声が聞こえてきた。


「何度も言ってるじゃありませんか!我が家に来れるかは本人達の都合もあります!それはお母様の我が儘です!どうして振り出しに戻るのですか!?」


 今のって…本当に狂子の声か?

 普段の口調と全然違い過ぎる。

 つかあまり大声出すのやめて!

 朝だから部屋に人射るんだから!

 もしかして…家と外でキャラ変えてるのか?

 そうだとしたら、大変だろうな。


「先輩…私勉強できないです…助けて」

「分ってる、あとでしっかりと勉強を教えてやるから」

「ちょっとタク!私の勉強も見てよ!別に私の実力があれば…赤点ギリギリは余裕だけど…」


 夏美…そこは威張る所違う。

 威張るなら、せめて70点以上取れるようになってからにしろ。


「お前さぁ…なんでもない、とりあえずこれで二人か…夏美は想定してたとして、蘭華の勉強となると…お前学力どれくらいよ?」

「運動神経はよくないですが…子どもの作り方とかには自信があります」


 …ふむ、保健体育には自信ありということか。

 俺は蘭華に幾つか問題を投げかけた。

 簡単な二ケタのかけ算、出来ない。

 漢字の読み、悪と魔がつくものなら大抵読める。

 理科は…生物系が得意。

 社会…魔女狩りと神話については博識。

 英語に関してだけ、悪魔の名前を全て覚えている。

 これは先が思いやられるな。


「どうやって高校受かったんだよ…偏差値とか大丈夫だったのか?」

「…由実に手伝ってもらって…なんとか乗り切りました」

「そんなのどうでもいいから!はやく勉強教えてってば!」

「ほらほら、早くしないと貴重な一日が終わっちゃうわよ」


 姉貴のヤツ、余裕の顔で煽りやがって。

 なんかすげぇ腹立つ。

 あの顔は誰が見たって腹立つに違いない。

 …よし、煽り返すか。


「すまないな…電話でヒートアップしてしま…なんだこの高度な戦いは!?」


 俺と姉貴による煽り合い。

 お互いに何も言わず、ただただ相手を煽る顔をするだけ。

 やはり姉弟というのもあってか、ところどころ似たパターンが出てしまう。

 それを見て、狂子は何やら興奮をしているようだ。

 しっかし、すげぇ腹立つ!

 とくにあの目!お前は決して勝てないと言った目!

 なにあの目!?姉貴の煽りにいままであんな目なんて無かったぞ!?

 まさか海外に行っている間に、進化したのか?


「多分これは秋恵お姉ちゃんの勝ちかな…いつもタク負けてるから」


 負けてねぇし!

 負けてぇねしぃ!

 いつもは勝ちを譲ってやってるだけだし!


「頑張ってください先輩!」

「どちらが勝つのか、とても気になるところだが、頼む!私の家に来てくれ!」


 この勝負に決着がついたら、いくらでも行ってやる。

 ただ俺は、この勝負に勝ちたい。

 毎度毎度姉貴には馬鹿にされる事が多い。

 だからこそ、ギャフンと言わせたいのだ。

 姉貴に勝つ為の、必勝法…それはただ一つ。

 最近発見された、女装をすると姉貴そっくりになるという戦法。

 あれをやれば、姉貴に勝つ確率が上がる。

 しかしだ、俺は自分で化粧なんてしたことがない。

 ましてや…姉貴の化粧品を使うのが怖い。


「諦めなさい、私に勝とうなんて無理な話なのよ」

「うるせぇ、姉貴に勝たないと先に進まないんだよ」


 結局…姉貴に生意気な口を利いたことで負けた。

 正確には、しびれを切らした夏美に殴られた。

 次に目を覚ましたのは車の中。

 なんか映画とかで見る車内、これがリムジンか?

 それに外は森?

 つか夏美達はしゃぎ過ぎだろ!


「先輩が目を覚ましました!これから真手場先輩のお家に行くんですよ!お菓子とかケーキとか出してくれるそうです!」

「俺…どれくらい寝てた?」

「ざっと一時間くらいってところだ、お?このジュース超うめぇ」


 どうして浩寺のヤツが車にいるんだ?

 よくみれば由実も乗ってる…全員集めて来たのか?


「いやぁ、そろそろ夏美のヤツがお前に突撃する頃かと思ってさ、助太刀しに来たらこれだよ」

「柘魔、申し訳無い事をした…ちょうど良いと思ってしまって無理矢理につれてきてしまって」

「いいのいいの!タクはどうせ来るって言い出すんだし!それより私のテストのほうが大事だから!」


 いやいや、お前のテストより俺の意見が大事だろ。

 もう夏美のテスト勉強、教えるのやめようかな。

 もう浩寺のヤツに手伝って貰って、蘭華の勉強教えるだけでいいよな?

 だって勉強しろって行ってるのに、やらない夏美が悪いんだ。

 そうだそうだ、全部夏美が悪い。

 これまでの事も夏美が悪い。


「戦争が起こるのも…夏美が悪い」

「はぁ!?なんで戦争が私の責任になってるわけ!?」

「落ち着くっすよ…先輩の顔が…なんか悟りを開いた見たいな顔をしてるっす」


 そう全て夏美が悪いんだ。

 最近、俺の小遣いの消費が激しいのもきっと、夏美の影響だ。



 目的地に到着した俺達を出迎えたのは、巨大な森に覆われた屋敷。

 周りを黒いスーツを着た男が徘徊してるが、これってSPってヤツだよな?

 だって手に銃とか持ってる。

 サングラス掛けてる。

 何より、全員がオールバックなのが絶対そうだろ。

 なにより腹立つのが、全員イケメンって所だぁ!


「お帰りなさいませお嬢様。奥様が首とコルトパイソンのバレルを長くしてお待ちです」


 なんだよ、首とコルトパイソンのバレルって。


「皆…覚悟をしておいてくれ…ここから先は戦場になることは間違いない、だから皆の分の装備を用意してあるから、好きな物を選んでくれ」

「こちらからお選びください。どれも品質に拘り、ご友人様方のご趣味に対応出来るよう、有名メーカーは全てご用意させて頂いております」


 こりゃまた驚いたな。

 後ろから沢山のメイドが来たと思ったら、銃を運んでたのか。

 にしても…本当に銃の数が豊富だな。

 AK47に、M16、AA12とか有名どころが勢揃いだ。

 おお…RIDストライカー…これってエアガン出ていたのか?

 おいおい…マジかよ…冗談だろ?


「こ、これはウィンチェスターM1887…それもあのターミ○ーター仕様だと!?このレバー!通常よりも大きい仕様にされてる!それに細部までしっかりと作り込まれたこの造形!木製にプラじゃなく全て鉄製!?」


 このずっしりとくる重量…素晴らしいの一言だ。

 前に一度だけ、行きつけの店で貰ったことがあったが。

 全然比べ物にならないくらい違う。

 まるで本物を持ってるようだ。


「目が生き生きとしてます…あんな先輩見た事ありません」

「まぁ、タクってアニメオタクな上に、結構映画オタクでもあるからね」


 オタクの何が悪いんだよ。

 オタクで何が悪いんだよ!?

 俺が何か迷惑を掛けたってのか!?


「これと来たら…俺はやっぱりこれを選ぶぜ」


 俺が手に取ったのは、マテバ。

 やはり、真射子愛用の銃がしっくりとくる。


「ふむ、柘魔は私と同じ銃を選ぶというのだな?良いだろう、共に組むとしよう」

「ズルいです!先輩と組むのは私です!私もこれにします!」


 蘭華もマテバにするのか。

 てか狂子がマテバ好きなの、すっかり忘れてた。

 別に三人でも組んでも問題はないが、蘭華は銃を使えるのか?

 蘭華の事だから、教えれば直ぐに覚えそうだがな。

 浩寺のヤツも、昔は俺と一緒にゲームをよくしていた。

 だから武器に関しては知識があるはず。


「なぁ春魔、俺AKで行くけど良いよな?」


 好きなの使えよ。

 こっちは扱い方を教えるので精一杯だ。

 簡単に覚えると思っていたが、結構苦戦をしいられている。


「えっと…これをこう構えるんですか?」

「違うって…この先端のサイトに合わせて狙うんだよ、それで銃は両手で持って構えると安定するから」


 確か、テスト勉強をしに来たはずだよな?

 どうして俺が、銃の使い方を教えなきゃならないんだ。

 …おい、蘭華の息づかいが荒くなってきたぞ。

 これって…スイッチが入ってるよな?

 絶対入ってるってこれ。


「手が、先輩の手が私の手を握ってます…うひひ、ベッドでも毎晩先輩と手を…そして先輩の手で…」


 こいつに対して、銃のレクチャーやめようかな。

 スイッチ入ったせいで、変な事言い始めたし。

 そんな事を考えて居る間にも、後ろで夏美達が銃を選び終わったようだが。

 どうしてお前はそれを選ぶ?


「じゃーん!私はこれにする!これだけ大きければ負けないでしょ!?」

「夏っち先輩力持ちっすね!私には無理っすよ!」


 夏美の手が手にした銃。

 ゲームで言うところのミニガン、またはガトリングとも呼ばれている。

 確かに強そうだけどよ、無理しているのが丸わかりだ。

 足がさっきからぷるぷる震えてる。


「夏美…ひとつ言っておきたいことがある」


 顔を赤くした夏美は、こちらへと振り返る。

 一度行ってみたかったセリフ。

 今、まさにこのタイミングで言える。


「せいぜい持って十秒、別に銃を用意しておけ」

「はぁ!?なんでタクにそんな事いわれないといけないわけ!?タクのくせに生意気!ああもう腹立つ!」


 地団駄を踏むな、幼稚園児かよお前。

 由実に関しては…モシン・ナガンを選ぶか。

 渋い上に…良いセンスだ。

 気がつけば、俺は由実の頭に手を乗せていた。

 そして彼女の前に親指を立て、意思を示した。


「理解したっす!先輩から強い思いを感じたっす!つまり、この銃はとても使いやすい銃なんっすね!?」

「いや…ただ単に良いセンスしてるなって…他にもライフルがあるのに、そいつを選ぶところが」


 どうして絶望的な顔をする!?

 俺何か悪い事でも言ったのか!?

 普通に褒めたつもりなんだが!?


「皆装備が整ったようだな、全員ゴーグルを装着したら突入だ…相手は手強いぞ」


 あ…あの狂子が青ざめてる。

 それだけ屋敷の中はヤバいのか?

 扉が開き、俺達は突入をした。

 中に入ったと同時に、発砲音が響き渡り始める。

 一斉に見えた柱へ隠れる俺達、すると上の方から女性の笑い声が聞こえてくる


「HA!HA!HA!HA!HA!よくぞ来た!勇敢な兵士達よ!ここが貴様達の墓場になるのだ!我が魔銃により、貴様等のおみそとおめめを別々に吹っ飛ばしてやろう!」


 このセリフ…聞いた事があるぞ。

 思い出せ俺…絶対に聞いた事がある。

 よくぞ来た、勇敢な兵士達よ。

 これは相手が兵士である事が確定している。

 次に、ここが貴様達の墓場になるのだ。

 これは完全に悪役キャラのセリフ。

 我がマジュウ…クソッ!

 我がマジュウとは、魔獣と魔銃どっちの事を言ってるんだ!?

 まさか犬がいるのか?

 だが考えると、この状況的には銃の方が正しい。

 そして…最後のセリフだ。

 貴様等のおみそとおめめを別々に吹き飛ばしてやろう。

 思い出したぞ!魔銃淑女真射子の第564話!?

 真射子が敵の罠に嵌まって、闇墜ちしてしまう回。

 あの時に真射子が言い放ったセリフと同じだ。


「こいつは面白くなってきた…乗ってやろうじゃねぇか」

「怖いっす!先輩の顔がもの凄く凶悪な物に変ってるっす!」

「おお!春魔のヤツ、バーサーカーモードに入りやがった!俺も負けてられねぇ!」


 柱から顔を出すも、直ぐに弾が飛んでくる。

 相手はスナイパーか…それともマサイ族並に目が良いのか?

 どちらにしろ、戦うしかない。


「痛い痛い痛い痛い!馬鹿じゃないの!?なんで撃ってくるのよ!?馬鹿!死ね!タク守ってよ!」


 さっきから騒がしいと思ったら、夏美が原因か。

 つかアイツ…思いっきりBB弾当たってる。

 それでもなお、撃ち続ける根性は見上げた物だ。

 だが…被弾してる姿が痛々しい。

 …今…一瞬見てはいけない物をみた気が…する。

 夏美の鼻に…プッ!鼻の穴に!


「痛いです…先輩に撃たれるなら受け入れます!でもほかの人は嫌です!」

「足に纏わり付くな!狙いづらくなるだろ!?お前も柱に隠れろ!」


 蘭華の襟首を掴み、隣に引き寄せたが、失敗だな。

 ピッタリと横に疲れて、狙いが定まらない。

 やっぱりM4かスカー辺りにするべきだった。

 ゲームと違って、スコープが無いだけでここまで苦戦させられるなんて。

 完全に調子に乗りすぎた。


「貴様等の力はその程度なのか!?力不足にも程があると言う物!それとも何か!?貴様等は入隊したばかりの兵士なのか!?違うだろう!?お前達はただの兵士じゃない!私に殺される為だけに産まれた玩具に過ぎないのだ!」


 困ったぞ…このまま降参をするってのもありだが。

 真射子ファンとしては、負けられない。


「由実…ライフル貸せ、FPSで鍛えたエイム力を見せてやるよ」

「いやぁ難しいっすね、私自身銃は向いてないっす、やっぱりカメラの方が安定っすね」


 ライフルを受け取り、スコープを覗き込んだ。

 これで、多少は狙いが定まるはずだ。

 相手は恐らく数人居るはず…それも凄腕とみた。

 もしかすると、相手は銃撃の経験者かもしれない。


「へぇ…コイツは驚いた…全部一人で攻撃を仕掛けたのか…」


 特に相手が、メイド服を着用しながら動いているのが凄いな。

 左手にはドラグノフ、右手にはマテバ。

 まさか…ここまで真射子を再現するなんて。

 だけど…甘いぜ。

 真射子の知識なら俺の方が上だ。

 アニメでは、真射子はカチューシャを撃ち落とされて、撤退した。

 位置的に考えて、一度リロードが入る。

 そこを着けば、俺達の勝ちというわけだ。


「リロードタイムに入った…喰らぇ!」


 俺は一瞬の隙を突いて、カチューシャを撃ち落とした。


「何!?私のカチューシャを見事撃ち落とした!?やだー!負けたいくない!今の無し!絶対無し!油断しただけだから!もう一回勝負!」


 は?

 なんだよ今の子どもみたいなセリフ。


「お母様!いい加減にしてください!」

「狂子が怒ったー!セバスチャン!狂子が怒ったー!ママは何も悪い事してないのに!ただ遊んであげていただけなのに!それにママに勝たせてくれないし!」


 幼稚園児か!?

 なんだよその反応!?

 完全んい幼稚園児じゃねぇか!?

 見た目は完全に大人だ、まさに狂子と瓜二つなのだが。

 性格が違いすぎるだろ!?


「あれが真手場先輩のお母様っすか?」

「なんというか、お子様です」

「でもなんか可愛くない?小さい子が駄々捏ねてるみたいで」

「だけど以外だな、真手場先輩の親だからもっと過ごそうなのを期待してたのに」


 全員、反応がバラバラだな。

 つか…この人があの射撃をしていたのが驚きだ。

 あとカチューシャを狙って正解だったな。


「ちゃんとしてください、私が恥を掻くのですよ?」

「これがお友達?狂子の大好きな柘魔君ってどれ?あの背の高い人?ママはこっちの目付き悪い方が好みだけどなー!パパも昔はこんな雰囲気だったから!いつも黒いパーカー着てて」


 …あれ?

 そういえば…狂子が俺の部屋に裸で寝るようになったのって。

 この人の影響だって言ってたよな?

 本当にこの人がそんな事を言ったのか?

 全然想像が出来ない。

 幼稚過ぎて、全然想像出来ない。


「お父様に似ているのが柘魔です…お母様が勘違いをしているのは、友人の浩寺です」


 ヤバい!なんか目付きが変った!?

 完全に獲物を狩る獣の目だ!

 他の奴等は気づいていないのか!?

 明かに俺を狙ってる、超目輝いてる!

 まさか…こっちに近づいてくることなんて…やっぱり来た!

 アレは殺すとかの目じゃない、獣そのもの。

 長い間、何も食えずに堪え忍んだ獣。

 それが今、まさに獲物を見つけ出した瞬間と同じだろう。


「これが柘魔君かぁ…やっぱり狂子はママの娘だね、パパの若い頃に似てる人を選んでくるんだから…特に瞳の奥に見える、隠された狂気のような物とかが」


 へ?今なんて言いました?

 俺の瞳の中に…狂気?

 なんですかその中二みたいなワード!?

 つか顔近ッ!?若ッ!?

 どうみても二十代にしか…いや、やっぱり二十代にしか見えない。


「ねぇ、私の孫はいつ見れるの?来年には見たいと思ってるけど、分った!今夜仕込むのね!?」

「はぁ!?孫ォォォ!?」


 確信した…この人は…危険人物だと。

 流石は狂子の母というか…何というか。

 包み隠さず,オープンな人なのだろう。

 だが…色々とオープンにしすぎだ!人前で着替えるな!

 何普通にメイド服脱ぎ始めてるんだ!?

 ほら見ろ!本物のメイドさん達が慌てて走って来た!


「奥様!お止めください!お嬢様のご友人の前ですよ!?」

「だってこのコスプレ暑いんだもん!狂子だって柘魔君の前で裸になってるって言ってたもん!」


 そのまま、狂子のお母さんは何処かへと連れて行かれた。

 これで勉強が出来る。



 冗談もキツすぎるぜ…いや真面目に。

 夏美があまり勉強が出来ないのは知ってる、いつものことだからな。

 だが…蘭華のヤツ…予想以上に勉強が出来ない。

 そこへ加えて、狂子に関しては英語以外全滅と来た。

 お前等…どうやって高校に入ったんだよ。


「だから違うって…サタンが六人人間を殺しました、そこへ、ルシファーが現れてプラス6984人殺しました、合計は?」

「666です!666はダミアン誕生の意味を示していますから!」


 かれこれこの会話を、十二回は繰り返してる。


「違うって言えば何度分る!?これはあくまでも計算式で!お前が言ってるのは悪魔の理論だろ!?」

「私は悪魔になるんです!だから計算式が出来なくても大丈夫です!それよりも!真手場先輩に仕込むなら!私にしてください!」

「蘭華…数学が出来ないと、妊娠しても周期が計算出来ない」


 由実(お前)も大概にしろよ!?

 なんでそういう話に持っていくんだ!?

 見てみろ!狂子が理解出来ずにポカーンタイムに入ってるだろ!


「柘魔…母が言っていた仕込むというのは…今夜戦争でもするために、銃に弾を仕込むと言う事なのか?」


 そんなピュアピュアな目で見つめないで!

 俺の事を、そんな期待を込めた目で見ないで!

 なんて説明をしようか…教科書で説明するのが一番良いのだろうが…そんな自信がない。

 むしろ身の危険すら感じている。

 例えば…蘭華の暴走が悪化する。

 夏美が文句を言い始め、ボコボコにされる。

 ダメだこりゃ。


「確か日本では実銃は禁止されているはず…やはりBB弾を詰めるのか!?」

「えっとですねぇ…由実、夏美と蘭華を連れ出してくれ…厄介事になるから」

「そんな事も知らないんですかぁ?男の人の×××を…ひぃ!いやぁ!先輩助けてください!」


 トラウマぶり返してどうするんだよ。


「落ち着け、大丈夫だから、な?ここには俺と変態くらいしか男いないから」

「変態ってひどくね?俺はただ単に年下で背が小さい子が好きなだけで、別に犯罪者になるつもりはないんだけどな」


 もう既にグレーゾーン発言してるぞ、このロリコン野郎。

 困ったぞ、蘭華がいても説明が出来る性教育。

 狂子に関してはいつも裸、蘭華も俺に対しては下着を見せてくることもある。

 嫌…それはダメだ…。

 スイッチをオンにして教える、完全に負担が大きすぎる。

 特に俺が!


「良いこと思いついたぜ春魔、俺達が女装をして、蘭華のトラウマ対象じゃなくすりゃ教えやすいんじゃないか?女同士みたいなやりとりでやれば」


 ありかもしれないな。

 だが…どうしてお前がそれを提案する?


「そんじゃ決まりだ、狂子先輩、メイク道具とか借りますよ」

「メイクをするならメイド達に手伝わせよう、丁度母が最近コスプレにハマっているからな」


 何でもあるのかよ。

 てか普通女装したいとか言い出すか!?

 こいつ、さては女装するのにハマりやがったな。

 と、そんな事を考えて居る間にも時間は進み、再びあの姿にされた。


「まぁ!なんてお美しいのでしょう!お二人とも、本当に男性ですか?目を疑いたくなる程の変身ぶりです」

「特に柘魔様、アナタは絶世の美女クレオパトラに匹敵する程ではないでしょうか?私、あまりの美しさに嫉妬してしまいます」


 よく喋るメイドだな!?

 俺は好きでこんな恰好をしてるんじゃないんだよ。

 あと浩寺!お前も自分の姿に見とれるな!

 なんかこっちが複雑な心境になるわ!

 それと、どうして俺達までメイド服を着用させられないといけないんだ!?

 他にも服ならあるだろうが!


「あははははは!お腹痛い!ヒーッ!ヒーッ!超似合い過ぎ!とくにタク!なんで秋恵お姉ちゃんそっくりなのよ!?まるでクローンレベルだから!」

「うるせぇ!姉貴そっくりなのは分ってるんだよ!俺達の事を笑ってる暇があるなら、問題集を解いてろこのアホ!」


 本当に人の事を馬鹿にすることしか脳が無いのか?

 ないだろうな…断言出来る。

 それでも…蘭華に対しては効果が出てるようだな。

 俺以外に浩寺に対しても、若干馴れが見え始めてきた。

 若干だが、ライオンに近づく犬にも見えなくもない。

 例えるなら、浩寺がライオンで、蘭華はチワワ辺りだな。

 相手が女の姿になっても、ぷるぷると震えてるのがチワワそっくりだ。


「ほら!ぼけっとしてないで勉強の続きだ!直ぐにやらないと時間だけが過ぎてくだけだ!」

「そうだぜ、こうして俺達が仕方が無く女装までして勉強を教えるんだからな」


 仕方が無くじゃなくて、お前が女装したいだけだろうが。

 俺はあくまでも、巻き込まれた。

 ただ勉強を教えようとしただけであって、巻き込まれた。

 それだけのことだ。



 テスト期間も無事終わり、今日が返却日。

 念の為に範囲以外も予習しといて正解だ。

 あの禿山の事だ、どうせ教えてない範囲まで出すつもりだったんだろう。

 そして出来ない生徒を馬鹿にする。

 だがそうは行かねぇ。

 予習しちまえばなんとかなる教科だってある。

 本当にいやらしい教師だよ。


「いやぁ、本当に春魔の予想は的中するな。見事全部が出てきたぜ」

「この借りは絶対に返せよ、そうだな…今日の晩飯お前の奢りな、全員赤点回避してたら、お前全員分奢れよ」


 これで晩飯を作らずに済む。

 まず、俺は全教科80点は余裕で取れた。

 残りは、蘭華と狂子の二人か。

 あの二人も一応は、勉強を教えたんだが…心配だな。


「先輩!赤点回避出来ました!むしろ過去最高得点がとれました!先輩のおかげです!」

「春咲先輩!私もかなり良い点が取れたっす!いやぁまさか私が90点以上を取れる日が来るとはおもってもみなかったっす!」


 由実のヤツ、蘭華と同時に教えてたんだが、結構頭が良い方なんだな。


「わ、私も60点以上は取れました!先輩の愛が導いてくれたんです!」


 お前が泣きついてきたのが始まりだろ!?

 愛もへったくれもあるか!?

 周りからも変な目で見られてるだろうが!?

 どうするんだよ!?

 完全に二股男と勘違いされてるぞ!?

 訂正しておく、俺は誰とも付き合っていない!

 と叫べたら良いのにな…。


「そういや、狂子が来ないのは何でだ?」

「ああ、真手場先輩なら補習授業らしいっすよ。なんでも英語と数学以外全部赤点だったらしくて」


 俺の努力はなんだったの!?

テストも無事終わり、変らぬ日常を過ごそうとする柘魔達。

だがそこに、思いも寄らぬ事が起ろうとしていた。

生徒会長が狂子に対する態度が、ついに明かになる。

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