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第十一話 引っ越し作業は大忙し。

放課後、狂子によって連れて行かれた柘魔達。

彼女が皆を連れて行ったのは、大きいマンションだった。

学校帰り、俺たちは狂子の案内でとあるマンションに来ていた。

明らかに俺達が住んでる所より家賃が高いはず。

まさかここが蘭華の借りる部屋なのか?


「ここは私の母が所有しているマンションの一つで、幾つか空きがあってな、ここが色々と便利だと判断した」


どうするんだよ、蘭華と由実のヤツが思考停止してるぞ。

これ以上は情報入りません的な顔してるぞ。


「部屋は十三階まであるが、丁度三階の角部屋が空いていたので母に頼んで見たら勝手に使って良いと言われてな、蘭華にはここで生活をして貰おうと思って居る」

「いやいや、明らかに家賃高いでしょ…蘭華は小遣いとか貰ってないんですよ、それでこのマンションって…家の何倍すると思ってるんですか?」


すると狂子は携帯を取り出し、何処かへといってしまった。

放心してる蘭華、隣で唖然としている由実。

そりゃそうなるよな…こんなところに住めって言われれば。

俺でも絶対に放心する…軽く十数万は吹っ飛ぶだろう。

俺の住んでるマンションでさえ、月九万程。

対してここのマンション、レベルが違い過ぎる。

オートロック機能は当たり前として、部屋とか絶対一人暮らしには広すぎるだろ。


「母に聞いて見たら、私の友人と言う理由で家賃や光熱費等はいらないそうだ、むしろ空いているより良いと言っていた」


太っ腹過ぎだろ。

もうなんて言うのか、次元が違いすぎる。


「ちゃんと御礼を言えよ、高校生なんだからそれくらいはしっかりとな」

「先輩も一緒に住むんですよね?」


どうしてそういう結論に持っていく!?

俺は今の部屋が気に入ってるんだ!

色々と見てきて、あの部屋を選んだんだ!

何より学校とコンビニとスーパーが近いんだよ!

だけどなぁ…姉貴が住み始めたから、狭くなってきたんだよな。

姉貴の部屋も探さないと、つか仕事どうしたんだよ!?

本当に重要な所だけ話さないんだよ!あの人はよぉ!


「俺は今のマンションで満足してる、それにお前は一人暮らし出来るようにしておいた方が良いぞ…まず学校に同居してるのがバレるほうがマズイ」

「確かにその通りっす、蘭華が先輩の部屋に住んでいる事がバレれば、二人共退学ってのもありえるっすよ」

「そうなったら…先輩が…」


頬に手を添えながら赤く染めるな!

あと最後まで言い切れ!気になるだろうが!


「じゃあエレベーターに乗るとしようか、部屋の中を確認しようじゃないか」


皆でエレベーターに乗り込もうとすると、後ろから聞き慣れた声が聞こえてくる。

慌てているのが分る、俺達の名前を叫んでいるからな。

だがあえてここは、扉を締めるとしよう。

あの声の主が来ると言う事は、ケチを付け始めるに決まってるからだ。


「今のって、なつっち先輩っすよね?いいんすか?」

「いいわけないだろ…ただアイツが来ると、絶対に余計な事をしでかすからあまり連れて行きたくないんだよ…特にこんな所で暴れられてみろ…」


青ざめ始める由実、状況を察したか。

夏美は本当に何をしでかすか分らない、そこが一番怖い。

あくまで予測だが、このマンションに設置されている物は全てが高い。

もしかしすると、風呂場はガラス張りになっているかもしれない。

ガラスに夏美が転けて突っ込んでみろ、修理費と同時に両方の親から俺が怒られる。

絶対に嫌だ。

つかあいつ、どうやってこの場所を嗅ぎつけてきたんだよ。


「着いたここが三階だ、後はこの先を真っ直ぐ行ったところにある部屋がそうだ」

「待ってたわよ…ゼェ…覚悟は…ハァ…出来てる、んでしょう…ゼェ…ね!…もう無理、走れない…タク、おんぶして」


こいつ…一瞬で階段を上ってきたのか…。

なんて無茶をしてくるんだよ。

まぁ、ここまで来たことを称えて、背負ってやろう。

…やっぱりコイツ、軽いな。

昨日の富閖野先輩よりは重い、だが蘭華よりは断然軽い。

やはりぶら下げてるものの差か?


「今…変な事考えたでしょ!」


人の心を読んで殴るな、痛いだろうが。

やめろ!髪も毟りとるんじゃない!

禿げちまうだろうが!いいのか!?俺が禿げたらみっともないんだぞ!

いや、本当に毟るのだけはやめて、マジでお願いだから!

この年でまだ禿げたくない!


「先輩の髪を毟らないでください!もったいないじゃないですか!先輩の抜けた髪の毛は全部編み込んで毛布とか下着にするんですから!」


何この子!?超怖い!もう人間じゃない!

既に人間の発想の域をを超えてるって!

普通人の髪で毛布とか編まないから!

髪の毛使って下着とか作らないから!

つか一体何十年掛かるんだよそれ!?俺死んでるんじゃねぇのか!?


「遊んでいる暇はないぞ、部屋に到着だ…驚く準備は出来ているな?ムーブ(進め)!」


俺達は特殊部隊か!?


「見てくれ、これが蘭華の新居となる部屋だ」


俺達の視界に写り込んできたのは、あらゆる高級そうな家具が色とりどりに設置された部屋。

真っ赤なソファ、巨大なテレビ、映画に出てきそうな虎の毛皮絨毯。

まさかこれ全て、蘭華の為に用意したというのか?

もしそうだとしたら、総額何十、いや何百万かけたんだ!?


「殆どが母のお下がりですまない、だが全部ちゃんと消毒殺菌はしてあるから問題ないはずだ、寝室にあるものに関しては一度も使っていないと言っていたしな」

「いやいや、金額的にマズイですって!これは流石にやりすぎじゃ」

「はぁ?何これ?馬鹿じゃないの?後輩にここまで金使うって当てつけのつもり?アンタがどれだけ金持ちだろうか知らないけど、一応私とタクの家もお金だけはあるから!これくらい普通に出来るから!」


夏美がつっかかり始めた。

てか俺の家もお前の家でも無理だろ!

明かにレベルが違い過ぎるだろ!

見栄を張るのもいい加減にしろよ!

金は確かにある、そこは否定しない。

あの部屋だって親から金を出してもらってるからな。

だけどよぉ、流石にそこまで見栄を張るってのは無理がありすぎるだろうが!


「そうだったのか?この部屋は元々母が暇な時に来て時間を潰す為の部屋だったのだが、私達が帰って来たと同時に使わなくなって譲ってくれたのだが」

「先輩達もお金持ちなんっすか!?だからあんなマンションに住めるっすか!?なんで教えてくれないんすか!?あー!だから蘭華の世話まで余裕で出来たわけっすか!」


金持ちかどうかと聞かれれば、金はある方だろう。

しかし、俺はあくまで無駄遣いとかをせずに出来るだけ考えて使ってるからだ。

夏美に関しては毎回懲りずに浪費してるが…それで俺が殆ど食費を出してるわけだがな。

金があるからと言っても、余裕なんてそこまでない。

毎日安い物を買ったりして、やりくり生活をしてる。

否定出来ないのは…俺のコレクション費用な訳だが。


「先輩達の実家に行ってみたいっす!是非取材をさせて欲しいっす!」


実家の取材をしてどうするんだよ!?


「家に来ても何もないぞ、俺の両親も夏美の方も海外にいるからな」

「え?お二人の両親は不在なんすか?」

「もうずっと海外に居るけど?数年に一度帰ってくるくらいで、殆ど秋恵さんにお世話になってたし」


がっかりする由実。

何を期待していたんだが…たまにコイツが分らなくなる。

呆れた目で彼女を見ていると、別の部屋から蘭華の物らしき悲鳴が聞こえてくる。

驚いた俺達は、声のした方へと向かって行くと、突然俺は押し倒された。

犯人は蘭華で間違いないのだが、やけに興奮している様子。

例えるとすれば、少ない小遣いを使い、ガシャポンで一番欲しいのが十回目で当たった子どものような感じか。


「見てください!この部屋!私の趣味にピッタリです!これはサタン様が私に与えてくれたに違いありません!」

「ふむ…母はこういう雰囲気も好きだったのか…知らなかった」


寝室である部屋を見わたすと、黒と紫で飾られたゴシック調の部屋。

蘭華が興奮しているのも納得だな。

壁にも十字架や…あれは死神のライトスタンドか?

色々と凄い趣味が広がってるな。


「うわ…趣味悪すぎ…なんで黒と紫ばっかりなわけ?普通はピンクを取り入れるでしょ」

「なつっち先輩は小悪魔系が好みっすか?人は見た目に寄らないと言うっすけど、本当なんっすね」

夏美(こいつ)は小悪魔系と関係無く、ただただ可愛いければいいだけだ」


それにしても、凄い部屋だな。

まるで蘭華の為に用意されていたかのような…もうそうとしか考えられない。

つか狂子の母親ってどんな人だよ、性格は正反対なのか?

一度会ってみたいものだな…いつもお世話になってるし。

今回の蘭華の件もあることだし、近いうちにでも会えないか聞いてみるとするか。

だけど怖かったら嫌だな…怖いというより、狂子に変な知恵を教え込む人だしな。


「私この部屋気に入りました!ありがとうございます先輩!」

「おいコラ、なんで俺に言う?狂子先輩ありがとうございますだろ?」


蘭華の頭を軽く鷲掴みにして、狂子の方へと向けて頭を下げさせる。

しかし蘭華はここで抵抗を始めた、どうしてお前は頭を下げない?

普通ここまでして貰って、頭を下げても足りないくらいだぞ。


「頭を…下げろって!」

「私は!柘魔先輩にしか下げたくないんです!でも…先輩に無理矢理、屈辱的な状況にされるのも良いかもしれないです!」


今、一瞬背中がゾワゾワって来たぞ。

ここは一度…試して見るか。

姉貴秘伝の奥義を…確か、親指をこう肩の所に押し込んで。


「痛い!痛い!痛いです!先輩痛いです!」


おお…見事に下がっていく。

この勢いなら、土下座までこぎ着けそうだな。

俺はその後、蘭華に頭を下げさせる事に成功するも。

夏美と由実から最低と言われ、狂子も若干苦笑いされてしまった。

一番の問題とすれば、蘭華が完全に変な方へ目覚めてしまったことくらいか。



現在俺達は、蘭華の新しい洋服を買いにモールに来ていた。

ここで一つ問題が発生した。

夏美のヤツだけが何処かへと行ってしまったのだ。

狂子は珍しそうに辺りを見わたし、蘭華は完全に背に隠れている。

そして由実に関しては…。


「私、ちょっと近くの電気屋行ってきていいっすか?カメラの機材を見たいんっすよね」

「別に構わないが、何かあれば直ぐに電話しろよ、駆けつけるから」


さてと、これで三人になったわけか。

一番手っ取り早く服が買えるのは、ヨリシロなわけなんだが。

蘭華の洋服サイズがあるかどうかなんだよな。

俺の経験上、多分蘭華は普通の洋服は着れない。

理由は胸のサイズが凄いからだ。

昔から姉貴の買い物に付き合わされてきたが、大抵はサイズが合わずにデカいのを買ってた。

一度ヨリシロで試着した時に、三つの胸ボタンを散弾に変えた前科がある。

あの時は被害が俺で済んだが、しばらく痣が消えなかったな。


「お前はいつもどこで洋服買ってた?」

「…男性物のお店で…大っきいサイズを」


やっぱり男性物を着ていたか…。

このパーカーも俺のと同じメーカーだしな。

正直生きたくないが…あの店に行くしかないのか。

蘭華に合うサイズを取り扱って居る店は、一つだけ心当たりがある。

姉貴の友人が経営をしてる洋服店。

確かこのモールの中に一店舗だけあったはずなんだが。


「ねぇねぇ、そこのお嬢ちゃん達、何してるの?」

「俺等今からカラオケに行くんだけど、一緒に来ない?こんな男ほっといてさ、俺達と居る方が絶対に楽しいから」


全く…人が思い出そうとしてる先で面倒だな。


「おい、よく見たらコイツ愛神だぜ…ほらあれ、ビール瓶の底で貫通させた」

「ああ!思い出した思い出した!確か涙と鼻水で酷い事になってたあの愛神か!あははははは!なんだよお前!男捕まえたのか!?使い物にならないのに」


今なんて言いやがった…ビール瓶の底だ?

こいつ等…まさか、この間の連中と同じ奴等か?

だがアイツ等なら、脅しておいたはず。

となれば違うヤツって事か。


「狂子…ちょっと蘭華を頼むわ、俺はお前等とお話したいから、着いて来てくれるよね?でないとその出っ張ってる前歯を中途半端にへし折るぞ?」


凶悪面を作るのが得意です、会社面接では絶対に受からないだろうな。

こんな特技は…喧嘩の時か脅し以外で。


「とりあえず…穏やかな話し合いじゃないから、そこのファミレスにでも移動しようぜ、丁度席が沢山空いてるしよ…坊主共」

「ひっ…お、俺達は何もしてません…本当です」

「そ、そうです…俺達はただ見てただけで」


ただ見てただけ…あっそう。

ということは、こいつ等から詳しいお話を聞くとしようか。

相手を尋問するときは、アメとムチを上手く使い分ける事が大切です。

そうしないと、相手が何も喋ってくれないからです。


「とりあえずカレーライス二つ、それからミートスパが一つと、ドリンクバー三つでお願いします」


まず、相手の信用を得ましょう、そこから少しずつ歩みよります。


「おい出っ歯、お前隣のおかっぱ頭のドリンクと俺の分の珈琲を持ってこい、そして次にお前が出っ歯のドリンクを持ってこい…なに、取って食いやしない…少し話が聞きたいだけだ」


ここで目を離してはいけません、逃げられてしまうからです。

座る時は必ず、相手が見える位置に座りましょう。

例えば、相手の後ろ側にドリンクバーがあり、自分がそのドリンクバーが見えるように。

こうして上げる事で、相手は安心感を覚え、きっと信用してくれることでしょう。

しっかりと視界に捉え、笑みを作るように。


「こ、珈琲です…あの、愛神さんとはどういったご関係でしょうか?」


ここで相手を威圧してはいけません、小動物に話しかけるように答えましょう。


「お前等に答えて俺に何の特がある?あるなら今すぐ三つくらい言ってみろよ、言えたなら開放するか考えてやるよ、制限時間は十秒だ」


相手が怯えている場合、目を見ながら話をしてあげましょう。

安心感を与えるのです。


「お前等は…これからどうしたい?無事に家に帰りたいとか、カラオケに行きたいとか、ゲーセンに行きたいとか、俺に奥歯をガタガタ言わされたいとかよぉ、色々あるだろ」


このクソガキ共、どう料理してやろうか。

返答次第で、半殺しにするかもしれないな。

まぁ…ただで帰すつもりなんてない。

蘭華に刻んだように、トラウマを植え付けてやらないと気が済まない。

あの時と同じ…蘭華は後ろから服を強く掴んできた。

怯えてた…いつもスイッチが入ると暴走する蘭華がだ。


「い、家に…帰りたいです…お願いです、家に帰してください」

「本当にお願いです!僕達は何もしてません!ただ見てただけなんです!」

「大声を出すんじゃねぇよ…他のお客様に迷惑になるだろうが…それに俺の質問に、嘘偽り無く答えれば帰してやるよ」


俺は珈琲を一口飲み、一息つく。

…自分で珈琲を入れるべきだったか。

沈黙が続く…俺はどちらかというと短気な方だ。

二人も段々と気づいてきてるだろう…俺が苛ついて来てる事を。

ただでさえイジメに対して苛ついてる、それは前からだ。

俺を一番キレさせた原因は、ビール瓶の件だ。

俺はこのとき、心に決めていた。

犯人全員に地獄を見せてやると。


「お待たせいたしました、カレーライスのお客様は」

「そこの二人です、スパゲッティは自分です」


これで…求めていた状況は揃った。

俺が二人にカレーを食わせる理由、俺がミートスパを選んだ理由。

こいつ等に地獄を見せるためだ。

丁度二人が怯えながらカレーを食べ始めた頃に、開始する。


「お前等…ノートに全部書き出せ、蘭華にしてきた事、見てきた事、知っている事を全部、事細かにだ…しっかりと微塵も忘れずに思い出せ…それから、全部残さず食えよ」


二人が鞄からノートを取り出し、書き始めるが、顔が青ざめていく。

そりゃそうだ…こいつ等はイジメに関して詳しく知っている。

だからあえて、この料理を選ばせて貰った。

カレーを食べてる時に、あまり汚い話や、嫌悪感に陥る話は聞きたくはないものだ。

俺も昔、姉貴と一緒にホラー映画を見ながらカレー食って吐いた事がある。


「吐くなよ…このミートのようにしてやるからな…思い返してみろ、何か忘れてたりしてないか?」

「お願いします…トイレに行かせてください…」

「これ以上は…無理です…気持ち悪い…」


気持ち悪いじゃねぇんだよ。


「もう単刀直入で聞くけどよ、お前達…蘭華に手出したか?言っておくけどよ、嘘ついても分るからな」


二人は観念したのか、ぽつりぽつりと小声で話し出した。

そして、俺の一番嫌だった予感が的中してきた。

クラス全員による集団暴行、教師による隠蔽の事実。

その中にこの二人も含まれていると言う、しかも進んでやったとの事。

ここで面白い事を聞かされた。

連中の中に、春咲秋恵の弟が居るという。

それを理由にやりたい放題、今回の事件もそれを利用してだそうだ。

姉貴の名前が出てから、二人の態度は一変し始め、俺に高圧的になり始めてきた。

まるで思い出したかのようにだ。


「そうだよ…俺達には秋恵姐さんが着いてるんだ、お前!今までの事を詫びろよ!悪魔と呼ばれたあの秋恵様を呼び出されたくなけりゃな!」

「そうだそうだ!秋恵様にかかれば、お前なんてゴミクズ以下だ!」


水を得た魚ってのは、こういうヤツ等に使う言葉なんだな。


「呼べよ、今すぐ呼び出してみろよ…どうしたんだよ?お前等のバッグには悪魔が居るんだろ?じゃあさっさと呼べよ、あれれ?それとも口から出任せってヤツなのかな?」


おもしれぇな…こいつ等の反応。

本当に携帯で呼び出してやがる。

お前等が呼び出せる訳がないんだよ、あの姉貴(悪魔)を。


「今来るってよ、あと仲間と弟も連れてきてくれるそうだ…お前終わったな!」


ああ…楽しみ過ぎて泣けてくる。

一体どんなピエロが来るのか、本当に楽しみだ。

しばらく待っていると、来たらしく出っ歯が手を降り始めた。

さてさて、一体どんなヤツか。

お顔を拝見させて…なる程なぁ、期待外れだ。


「ゼェ…ゼェ…お待たせ…ゼェ…誰をぶっ飛ばせば良いの?」


既に息切れしてるのか…体型は、とてもふくよか。

パワードスコイ型と言ったところか、これなら中学生も圧倒させられるだろうな。

これなら、四手で終わらせれる。

隣にいるのは弟か?姉にそっくりな顔をしてやがるな。

後は…数名が入り口付近でうろついてるな…本当に仲間がいるってのも面白い。


「これはこれは、お初にお目に掛かります、春咲秋恵様」

「アンタが…ゼェ…私の喧嘩…ゼェ…する相手?顔はそこまで悪くないけど…ゼェ…私とデートするなら見逃してあげる」


コイツ頭の中、完全に湧いてるんじゃないのか?

喧嘩をする相手にデート持ちかけるとか、俺には考えられないな。


「お前がビッチ柛の彼氏?アイツ俺達の中古だけどよく選んだよなぁ?アイツさぁ、ビール瓶で処女無くしたんだぜ、その後全員の相手、お前知らないだろ?」


俺はこのとき、頭の中に一つの言葉が過ぎった。

殺すの二文字。

そして弟の方に新しく入れておいた珈琲を、女の方には冷たい水をぶっかけた。

あまり後悔はしていない、友人を酷い目に遭わされた挙げ句に侮辱された。

それが許せないが、人として、こいつ等が許せなかった。

蘭華にトラウマを植え付けて、のうのうと生きてるこいつ等が。


「調子に乗るなよブス、殺すぞ?それにそこのデブ、お前もだ、蘭華が中古だろうがなんだろうが関係あるかよ、お前達がしたのは立派な犯罪だ…蘭華を悪く言うなら顔面整形レベルに壊してやるぞ」

「そういうことをするなら、私に一声掛けるのが筋じゃない?」


背後から聞こえてくる声。

それは冷たく、凍えそうなものだった。

俺は確信をした、こいつ等は完全に終わったと。

後ろから感じる殺気、覚えのある感じ。


「へぇ、見ない間に随分と大っきくなったね、柘魔君」

「姉御、こいつ等全員沈める?それとも去勢とかしておく?」

「馬鹿、そこまでしたらダメだって、こいつ等は後で俺が警察署に連れて行くから、もちろん俺のお手柄で」

「姐さんの名前語るってことは、エンコ詰める覚悟は出来てるんだろうなぁ?」

「一応弁護は俺に任せてくれ、絶対に負けないからさ」


最高だ…本当に最高だ。

姉貴がこの場にいた事には驚いたが、まさかあの人達まで呼んで居たなんて。

ガキの頃はお世話になったな、お菓子貰ったり。

遊んで貰ったり、喧嘩の仕方を教わったり。

最強の武人が揃ったと言える。


「どうも、春咲秋恵本人でーす、家の可愛い弟がお世話になったようで?しかも大切なお友達にまで何か酷い事を言ったようじゃないの?お話聞かせてくれるわよね?」


連中は姉貴達に連れて行かれた。

後日、全員で集まるから俺も来いと言われてしまったが、たまには良いか。

姉貴は顔が広い、よって友人が沢山いる。

警察の友人から弁護士、獣医と多種多様にいるが…あれ?極道になった人なんて居たか?

別に良いか…ただ皆から小遣い握らされちまった。

これで蘭華に何かしてやれって言う事か?

とりあえずは、何か美味い物でも買っていくか。


「ひっぐ…先輩が…先輩が…殺されちゃう…」

「柘魔ならきっと無事だ、秋恵さんにも連絡をしたんだ、きっと直ぐに助けに言ってくれてるはずだ」


二人が、あの場に姉貴達を呼んだのか。

だけどよぉ…俺が殺されるってひどくね?

俺はあの程度の連中に殺されないから。


「さっきからピーピー泣いてるのはお前か?どっかの子どもが泣いてるのかと思ったぞ」


二人が振り返ると、一瞬の隙を突いて蘭華が飛び込んできた。

危うく転ぶ所だった。


「よがっだ!しぇんばいがぶじでよがっだ!」

「怪我とかはないのか!?何処か殴られてたりとかはしてないのか!?」

「ええ…姉貴達が連行していきました…ありがとな、呼んでくれたおかげで助かった」


聞こえてはいないみたいだな。

仕方が無いか。

相当怖かったみたいだし、しばらくはこの状態でも良いか。


「見てあれ…女の子凄く泣いてる…」

「もしかして長い事待たせて泣かせたとか?」

「うわぁ…最低、あの男」

「死ねばいいのに」


おいコラ!今死ねばいいとか言ったの誰だ!?

しっかりと聞こえてるからな!

覚えてろよ!次あって覚えてたら仕返ししてやるからな!

あれ?蘭華…なんか重くね?

てか泣き止んでるよな?泣き止んでるどころか寝息立ててるんだけど?

寝てるよな?これは寝てるでいいんだよな?

まだ背負ってる時に寝てくれるならいいけどよ。

こう、人目が着くところで寝られると困るんだよ。

周りの視線が痛い。


「ふむ…すっかりと寝てしまったか…今日は一度帰るとしよう、あの男達が言っていた内容は分らないが、蘭華には辛い記憶だったのだろう」


蘭華を静かに抱き上げる。


「…大分、重くなってきたな」


しっかりと食事を取らせてる結果が出てきたか。

まるで子どもを育てる親父だ…。

ふぅ…今日から蘭華も一人暮らしか。

こまめに様子を見に行かないと、餓死でもされたら困る。

由実のヤツに肉でも買ってきて貰うのも、ありか。

金は後で渡すとして、ホットプレートは家のを使えば良いしな。

買い物に出かけたばかりに蘭華に辛い思いをさせて絞まった事を後悔する柘魔。

彼は彼女を背負いながら、これからの事を色々と考えるのであった。

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