【9】女剣士の思い
このレイアって女性は隠そうとしていたのかもしれない。
私に水晶を見せることでなだめて、自分のしたことをあやふやにして。
別に責める気で来たわけじゃない。
それが、先陣を切っていた本人に何事もなかったかのような顔をされて、肝心な話を聞かされることもなくぞんざいに扱われた気がした。
わなわなと肩を震わす私は無力だ。
むき出しの感情を持っても、できることはない。
身を翻してその場を去ろうとした私の腕を、レイアは掴んだ。
「待って。あなたには申し訳ないことをした……」
後ろから聞こえる言葉は、私の横を素通りしていくだけだ。
何もかも薄っぺらい。
人間と魔族の戦いだって、仕方ないってわかる。だけど、なんだか…………。
私は、私は――どうしたい?
レイアはぐるりと私の正面に回って、手の中に水晶の塊を押し込んだ。握りしめようにも指が動かなくて、ただじっとそれを見据えた。
これは両親が生きている証。
顔を上げた私に、レイアが口を開いて告げた。
「どうしようもなくて、怒りが収まらないなら剣術に向けたらいい。私が教えてあげる」
そして、強い眼差しで続けて言う。
「かつて、私が故郷を追われてその悲しみの矛先を剣に向けたように」
その出来事は鮮明に頭に残っていた。
レイアの境遇について触れることはないけれど、あのときのレイアは私と同じ眼をしていた。
憂いのこもる双ぼうに、余計なことを聞くのは無粋ってもので。
こうして、剣術の練習をすることに至ったわけだけど、あの水晶の塊は私に強く意識させることになったんだ。
父親と母親を助け出す!
魔王復活なんて、大それたことを望んでいるわけじゃない。
仲睦まじく暮らしていこうと思ってるだけ。
悪いな、あのクリスタルの部屋にいた少年。
いつか、驚異を感じる日が来るかもだけど私のしたいことだ。
ただ今は、剣に邁進するのみ。
幸か不幸か私の腕はめきめき上がっていっていた。
名前を間違えるという……訂正。