【4】小さな城2
どうしてこういうわけになったのか。
時は天惘恢恢な時代。
人間、主にディーグル国の王率いる兵士たちが魔王城に攻め入り、魔王とその妃を捕らえることに成功した。姿、力もろともに水晶の中に封じ込め破ることは不可能な状態にした。
そして、その配下の魔族たちの攻撃も押し退け、実質滅びさせた。
城のあちこちに火が回り、殺戮した戦いに多くの命が犠牲となった。
結果、人間たちが勢力をものにした。
城があった場所は焼け野原となり、今でも残骸が残っていると伝えられている。
人間と魔族が決着をつけた場所として、歴史に残る場所として、そして今なお魔族の怨念を恐れるが余り踏み入られることのない場所として。
今からさして遠い昔のことでもない、十年前の話。
人間たちは平和を迎え、めでたしめでたし――じゃあない!
その魔王と妃は私の両親。私は魔王のただ一人の娘なのである。
当時六歳だった私は戦火にいて、目を真っ赤にはらして泣きじゃくっていた。
「パパ……ママ……」
裸足で火の中を必死に駆け回っていた。目を覚ます前の突然の出来事。
闇の中に立ち上る火の粉の先をも凝らして探しまくった。
ティナはそんな私を見つけると抱き上げて、近くにいた料理人も引き連れ外に出ようとした。しかし、迫り来るディーグルの大軍に部屋の隅に追いやられる。
もう終わりかと思われた瞬間、直々に指揮を執っていた王がティナたちを見つけた。