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【13】脅かされた村

 謝肉祭――生き物の命に感謝し、何頭かの牛を飾り立てて村を練り歩く。その後に、その牛らを食して村の人々がこの先の生活にさらに精を出す。そんな祭りがあるといつだったか聞いたことがある。


 しかし、そんな喜ばしい儀式には遠慮願いたい者たちが襲来した。


「めでたいやつらだな! こんなバカ騒ぎでお恵みとやらがもらえると思ってんのか! さっさと食いもん持ってこいよ」


 バカ騒ぎしてるのはお前らだ。

 ちょうど村に着いた私は目の当たりにした光景に心底うんざりした。


「あなたのペースで走ってたから時間かかったじゃないの!」


 スピードを落として走ってきた私に比べて、リザはくたくたで息を切らせている。

 両脇に角の伸びた安っぽそうな冑をかぶった大男がふんぞり返って、怒号を浴びせていた。そいつの従者と思われる獣人たちは、村の人々に大男の要求に応えるように指示をしている。


 中には抵抗する者もいるのだけど返り討ちに遭っていて、助けを求めて私の城に辿り着いた武骨な男もその一人だろう。


 早くこの横暴な行いを止めるべく、私は両手で剣を抜いた。


 見せしめと言わんばかりに民家が破壊され、おののく人々を見てにやりとする大男。


 ふざけんな……っ。


 皮の厚そうな手に握られた棍棒は巨大なもので、ひと振りさせただけで家が瓦礫と化してしまう。


 走り込んで大男の側に行くよりも早く、小さな男の子がおそらく藁をかき集めるためのフォークを抱いて私の前に出た。


 こら、あぶなっ。


「よくも、うちの父ちゃんの弟のおよめさんの兄ちゃんをっ」


 うっわ、どんなつながりだよ。

 ともかく、戦いに巻き込むわけにはいかない。村中がパニックになる中、まだ小さいのに挑もうとしてレイアに教えたら兵士としてのスカウトがくるかもしれない勇猛さだとしても。


「おめーは、ぶっ殺されてーのかよ」


 大男が言うと同時に、棍棒が地面を叩きつけて私は戦慄が走ったが、


「わ、わわ……」

 男の子はフォークの重量に耐えきれず、脇によろけてギリギリにかわした。


 振り下ろした棍棒を持ち上げようとする隙を狙って、大男の横に移り膝を蹴り上げて鈍色の剣で脚を斬りつける。

 生々しい鮮やかな血が垂れてはっとしてしまったけど、容赦するわけにはいかない。


 周りでは手下たちが、逃げ出そうとする村の人に痛みを加え続けている。

 建物は壊され、花や旗などの装飾も無残に踏み潰されていた。家畜のいななきが一層村を混乱の中に陥れている。


 リザが襲いかかる獣人を相手にして人々を守ろうとしていた。よく見れば手下たちの攻撃は容易く受け流され、素早い剣さばきに敵うこともできず次々と打ちのめされ地面に伏せていく。


 王子の剣の腕前を聞いていたけど、それを間近で見てここまでとはとその凄さを認めざるを得ない。正統な剣術ってたいしたものね、なんて心の中で思う余裕も生まれながら、体力がなくとも器用さに長けた動きから大男に視線を移す。


 ついでに高く飛び上がり、あごの下に私のかかとを食い込まされていた冑の大男は憤慨していた。


「こ……っの!」


 ティナにも武術を教えてもらって良かった……!!


 頭であろうこいつさえなんとかすれば、と腕を斬りつけ棍棒で薙ぎ払われるよりも前に、渾身の突飛ばしを与える。


 しかし、後ろに倒れるところだった大男は口元を歪ませて笑った。


「おめーは魔族だな?」


 私は思わず目を見開いた。戦闘と違う別のものが鼓動を速くさせているのを感じた。



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