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しまった!ダメダメなやつを勇者としてスカウトしてもうた LV02 初めての戦闘編

 ワシの名前は「パウワウ」だ。

 今の姿は、わけあってイケメン超優等生の中学二年生だがな、普段は素っ裸に白い羽が生えとって、そこら辺によくいるごく普通の天使みたいなカッコしとる。

 詳しい描写はR15指定に引っかかるからな、追求つっこみやおっぴらに想像すんなよ。

 まあ、ワシの神々しい真の姿はそれぞれの心の奥底にしまっておくように。


 かつては、いけいけドンドンの破壊神とまで言われたワシでも、現在の世代のカミサマになってからどえらい説教くらってな、まじめに生活しとる。


 カミサマの使徒ぱしりってのがワシの役目だな。

 超能力というか魔法が使えるが、特に得意なのは攻撃系、破魔系、破壊系だな。

 なんか、こう、ずばぁあああん、とか、ドッカーンとかいうのが好きだしもっとも得意とするわ。

 それ以外の魔法は効果発動までに恐ろしく時間がかかったり、規模や効果がすごく小さかったりするから、面倒なだけでようせんわ。


 で、このしょぼい中二は「宮地翔太みやじしょうた」という。

 ワシは「みや」って呼んでる。

 運動音痴で14歳にして18禁MMOエロゲーマー、はるかに年上の変態すけべ野郎プレイヤー数十人をまとめあげるギルマスにして、まことにけしからんヤツ。

 エロに関してはまだまだ青すぎるが、ゲーマーとしての才能があると思うわ。


 ワシは、噂のネットエロゲ「もんもんはぁ~ん」で見つけたこいつを勇者にするためにスカウトしたったがな。


 ま、勇者になることの規約にノータイムで同意ボタンをクリックしたアホだ。


 だが、カミサマの勇者認定受けた以上、人類の歴史に残るような勇者になってもらわなな。

 ワシの相棒であり、ワシがこいつの武器となってカッコいい勇者様になってもらわないとな。

 


 AM2:03月曜日か。


 ここは宮地翔太の部屋だ。

 壁や天井に痛々しい、おにゃのこのポスターが貼ってある。

 おお、こいつはワシでも知ってるぞ、ゲーム「もんもんは~ん」の双子の「誤爆天使もみん」と「爆撃堕天使ぷりん」のお仕置きメイドVar.のポスターじゃねえか。

 けしからん、あとで没収してやる。


 「なあ、みや、「もんはん」しながらでいいから聞けや」

 「うん、おお、レア素材のおもらし聖水パンツげっと」

 「あのな、勇者になるためにワシと組むちゅう事になるがな」

 「そのパンツ、レア召喚獣のケモミミタイプぶっこみショウコたんに与えるぞと。おお、レベルあーっぷ」

 「せめて、今日から学校いけよな」

 「おお、愛+3、感度+4、バスト+5、ウエスト+1、ヒップ+6、ツンデレ+5、思春期が発動しましただと!? 」

 「が、学校行かないと、マジ、糞ニートにだな」

 「ショウコたん、君はちっぱいのままでいい、バスト増やしたらしっぱいだぁぁ」

 「て、てめえ、話し聞いてるのか」

 「すんません」

 「とにかくだ、何があっても学校にいけよ」

 「……あい」


 「おい、みや、いいものをやる、ほいっ」

 「なにこれ?」

 「インカムだ。オークションで送料込み980円のバッタモンだ、大事に使えや」

 「で、これどうすんの?」

 「ワシ離れたところにいるから、みやはこれ使って繰り出す技や魔法を言え。わしが指示通りに魔法をぶっ放すからな」

 「お、おう」

 「いいか、説明書をよく読むように」


 「えー、僕一人で戦うの?」

 「現場での戦闘は基本、お前一人でやることになるわな。お前は唯一の勇者だ。ワシはお前の最強の武器ウエポンになってアシストするだけだ。勇者だから俺Tueeeee状態アーンド俺様無双でやってもらう」


 「いいか、人様にみっともないとこ、見せるんじゃねえ。勇者様ってのはな、昔からかっこいいものだ」

 「みや、もしカッコ悪いところを晒してみ、お前には勇者の規約に従ってあんなことやこんなこと的なヒデエ目に合ってもらうからな」


 「ど、どんな?」


 「そうだな、ケツバットとか、電気アンマとか、頭ごんごん殴りとか、ケツの穴から手え突っ込んで奥歯をガタガタいわせるとか、自主規制やばいこととか、自主規制やばすぎるとか、もうね、なんかね。へへ、ドSの地獄の使者が召喚されて、この作品をR15指定に格上げせなならんぐらいの事態になる。筆舌に尽くしがたいことがお前を責め立てるからな」

 「ひぃー、や、やめて」


 「でワシはお前の目の届かないところも見ているからインカムで危険を教える。これは大事なことだからよく覚えとけ」


 「避けろとか逃げろとかの回避指示は絶対な」

 「避けろとか逃げろとかの回避指示は絶対な」

 

 「大事なことだからな、2回言った」


 「ワシな、攻撃に関しては自信があるが、基本お前を守ることは出来ん。前にも言ったとおり、お前は一般人以下の糞ニートでしかない。普通に殴られれば痛いし、キョーレツな打撃受けたら即死だ」


 「一応、蘇生は出来なくはないが、ワシの実力では数週間かかるから、その間にみやの身体は腐るだろうな。生き返る頃にはウジ虫湧いたクッセエ汁撒き散らすゾンビになっちまう」

 「ゾンビじゃ、どんなに頑張っても誰も勇者とは認めねえわな」

 「だから回避は絶対だ、死ぬ気で避けろ。あ、死んだらあかん」


 「ねね、とりあえず実践してみない?弱いところでスライムとかスライムとか、スライムなんかね」


 「いやいや、普通のRPGゲームならスライムは一番弱いかもしれんが、ここの世界、アホの作者設定ではスライムはそんな雑魚キャラじゃないぞ」

 「でろでろな液体みたいなヤツなんで、どこでも入り込むし、普通の武器はまったく効かん。切っても叩いても全然ダメージならんわ」


 「それに、分裂するわ、見えにくいわ、どこぞのおっさんのカーペッ液みたいで汚えわで、もうね、なんかね」

 「それに、小さいスライムもこええぞ。皮膚に張り付いたら最悪だわ。ワシの魔法では剥がすことは出来ん。みや、お前の肉ごと焼くか、凍らして皮膚や肉ごと削ぎ落とすしか出来ん」


 「そっか、じゃあ、初心者向けのおすすめはある?」

 「んーそうだな、ワシの秘密情報専門紙「夕刊ケシカラン」によるとな、と」

 「おお、すっげ、えろい……けしからん……」


 「むっ、みやは見るんじゃねえ、この専門誌はな、地球上のあらゆるケシカラン情報が満載でな、たかが14歳の若造は見てはならん。それに、あの18禁MMORPG「もんはん」の裏攻略情報も連載されとるしな」

 「なにそれ、もっと見してっ、ねえ、見せてよぅ」

 「ダメだっちゅうに。みやに見られたら「もんはん」で、ワシは絶対お前を超えられなくなっちまうわ」


 ふーむ、ケシカラン情報によるとだ、近場だと野獣系か。 


 「クマとかイノシシとかはどうだ? カオスの影響で動物が巨大化して凶暴になってるし、被害もそれなりに出ている。 奴らの一撃はヤバイがな、群れることないし、出現場所は限られてるわな」


 「クマ出没注意地域か、クマでたー! って騒いでいる場所で注意すれば問題ない。出くわせば、よゆうで一撃でやれるわな」


 「わかってると思うが、どこぞの県公認のほっぺの赤いクマはあかん。やっつけたら即犯罪者だ、ブタ箱で反省せなあかんことになる」


 「うん、ほかにはない?」

 「他にはゾンビの類な。最近な、魂の抜けた動物や人の遺体に強引な蘇生魔法するケシカランヤツがおってな、村や町が襲われとる。まあ、今のところ日本ではわずかしか発生してないらしいがな。土葬やってる地域とか紛争地域にたくさん発生してるようだわ」


 「ヤツらは筋組織が腐ってるか乾燥してるんで動きは非常に遅い。脳か目と鼻、耳を潰せば追ってこない。首落とすのもありだ。近づいてくれば独特の甘ったるい腐った匂いがするので分かる。 喉が潰れてなければ唸り声あげて近寄ってくるし、まあ、見逃すことはないと思うで」


 「アンデッド系については日本でも注意報が出てるけどな。まあ、出くわしてもヤツら知性がほとんどなくて、見えた生者に向かってくるだけなんで基本余裕だろ。他にもなくもないが、初心者おススメはこんなとこか」


 「なあ、みや。今夜辺り、クマでも狩ろうか」

 「昼間の明るいうちはだめ?」


 「たりめーだ。お前、学校は絶対行け、嫌でも行け、死んでも行け。学校さえ行けば、少なくともニートにはならんわ」


 「ちっ」

 「ちっ」



 おっ、みやきたな。

 19:50か。

 

 「準備はいいか?」

 「うん、ご飯と風呂は済ましたよ。いつでもおっけ」

 「学校行ったか?」

 「まあ、その、それなりに、努力を試みたけど」

 「けど? いったのか?」

 「ごめっ、僕には、ううっ、学校が遠すぎた」

 「まあいい、イヤでも明日から行くことになる、心配するな」

 「はぁ」


 「うし、そんじゃ、装備の支給と確認だ」


 「まずはインカムと電池、さきに渡したやつな。説明書読んできたか?」

 「読まなかった」

 「あーん、読まなかった、だと?」

 「読めなかった」

 「てめえ、やる気あんのか?」

 「だって、漢字だらけで……」

 「これぐらいは読めなあかんだろ、説明書出せ」


 漢字だらけって、つか、ひらがな、カタカナがまったくねえ。

 「うん、読めない。これ日本語じゃねえ、すまん、うかつだった」


 「このインカム、大げさかもしれんがワシとみやの相棒としての絆な。互いに見失ったり、ワシに見えてみやに見えない危険や、逆にみやに見えてワシに見えない危険とかを共有する道具だ。常に通信が出来るよう、電池残量と通信距離には注意な」

 「あい」

 「それに障害物無しで通信距離100メートル程度だけど過信するなよ、所詮バッタモンだ。逃げる場合はワシから離れるような逃げ方は危ないからな。ワシがみやを見失ったらどうすることもできん、緊急的に攻撃して危険の排除も出来んようになるからな」


 「あい」


 「それと、サングラス。夜でもそこそこ見えるよう、薄めの色がついてる。まあ、武器を使えば、周りが相当明るくなるから心配するな」


 「これは、黄色いバンダナ、これはかぶっとけ」

 「派手すぎるー」

 「ワシがみやを視認しやすくするから、派手なくらいでいい。それにな、サングラスと黄色いバンダナで謎めかしといて、注目されるようになったらもっと派手にしていくからな。これらは勇者として有名になるための布石だ」

 「おお、どこぞの若いやつが戦っとるぞ、あのバンダナとサングラスのヤツつえーぞ、ってことにするためのな」

 「あい」

 「最初から正体がわかるとつまらんし、ただの子供だとバカにされてケーサツとかにつまみ出されるのがオチだから、まずはサングラスとバンダナ姿で有名になるようにしようや」


 ふふん、とっておきだ。


 「それと、武器を支給する」

 「おおっ」

 「ほい、懐中電灯と電池」

 「むぅ、どうせ、これはライトセーバーとかビームサーベルみたいにして使うというのだろ?」

 「おう、正解。みやは、バカでアフォだと思っていたが、壊滅的まででなくてよかったわ」

 「パウさんの足元には及びませんよ」


 ちっ、褒めてやったんだがな。


 「まず、スイッチ入れてみろ」

 「ほい」

 「ん、普通だな。ただの懐中電灯だぬ」

 「まあ、まて。こいつにエフェクトかける」


 ふぉおおん。


 「おお、すっげ、まぶしい。まじでライトセーバーだ」

 「どや、かっこいいだろ。うし、振ってみ」


 ふぉおん、ふぉおおん、ふぉん。


 「おおお、これがフォースの力か、かっけー」

 「音も変えられるぞ。振ってみ」


 ぶぃいいいいん、ぶぃいいん。


 「おお、通常の3倍くらいかっけー」


 ひゅううん。

 ぷぃいいいいん、ぷいん、ぷいん。

 ばいいいいいん。


 「その音、いまいちかっこいくない」

 「ふむ、かっこ良くないのはあかんな。そのうちカッコいい効果音は決めていけばいいだろ」

 「つぎにその剣の威力をどう発動させるかを考えてみたい。なあ、みや、その剣の光ってる部分を触ってみ」

 「いやだよ。熱いとか、手が蒸発するとかに決まってるだろ」

 「つべこべ言わずに触れ」

 「あ、あい。ん? 全然なんともない」

 「そうだな。今は、懐中電灯の電球から発する光にエフェクトしてるだけだ。視覚効果と音声効果だけだな」

 「で、みやに聞くが。このエフェクトさせている部分、つまり刀剣で言うと刀身や刃に当たる部分な、どうしたい?」

 「どゆこと?」


 「つまり見えてるエフェクト部分に、斬撃や打撃効果を付加したり、超高温プラズマも発生させることによって初めて武器になるわな。ただ、手元が狂ったらみや自身が危ないわな。エフェクトに魔力というかエネルギーを込めるから、刃物はえてして扱い方を誤ると怪我するのは当然だがな。どうする?」


 「んー、なんでもさっくり斬れるのがいいな」

 「みや、やっぱりおまえも厨二なやつだな。ほんならそういう効果を付加しようか。これで懐中電灯剣そいつは触れるモノは全て分子レベルで離れていくからな、鉄でもダイヤでもすっぱり逝くで。試しにみやのあまったアレを切ってみるか」


 「お断りします」

 

 ちっ、意気地なしが。


 「そろそろ行こか。みや、ワシの手を握れ、飛ぶぞ」


 「あい」



 ここがクマ出現エリアだな。

 暗くて見えづらいが、山の麓辺りの新興住宅地だ。


 ワシの情報源の夕刊ケシカランによるとだな。


 クマの大きさは8~10メートル、カオスのヤツが巨大化させたようだ。

 人の気配のある家を破壊しては人間を襲い喰っている。

 で、確認されている個体数は1体だな。


 で、今現在危険区域として住民は区域外の鉄筋コンクリートの建物に避難している。

 うろついてるのは、おまわりさんばかりだ。

 つか、警察の機動隊な。


 この情報源の発行時点で警官はすでに6人殺られとるから、もしかしたらもっと死んでるかも知らん。

 銃弾を相当喰らってるらしいが、くたばるどころか凶暴化して手が付けられん状態らしいな。


 「みや、作戦だがワシはあの鉄塔の先端に登ってお前とその周りを見ている。警官に見つからんようターゲットに近づくための指示するから言うこと聞けよ。戦闘前に見つかったらつまみ出されるからな」

 「あい」

 「うし、良い返事だ。お前は、地上から移動しながら見えたものを報告しろ。案外、ワシからは見えないものもあるかもしれん」

 「戦闘が始まったら派手に始めようぜ。今度は逆に警官が集まるぐらいにな」

 「おう」


 「で、戦闘だが。安全をとるためにクマから最低10メートルは離れとけな。最初は魔法を飛ばしていくぞ。練習通りにインカム越しに魔法を詠唱、そして懐中電灯の剣をターゲットに向かって振り下ろせば発射させるからな」


 「これは重要だが、本当は瞬殺できるけどな、あえて威力を弱めとく。なに、みやに近づかないよう、ノックバックさせるから安心せえ」


 「ノックバックてなに? ゲームみたいに敵を仰け反らせたり、ふっ飛ばすやつ?」


 「そうだ。戦闘の様子が派手に見えるし、僅かな時間だが敵の反撃も出来ない」


 「ふむふむ」


 「みやの戦闘は誰かに見られてないといけないからな。最低限、勇者の噂にならんと始まらん。つまり魔法を数発打って弱らせ、誰かがみやの戦闘を見てからクマにトドメを刺すちゅうことだ。トドメのタイミングはワシが指示を出す。そん時は接近して懐中電灯で殺ってくれ、いいか」


 「あ、あい」

 みやのやつ、震えとるわ。

 「怖いんか?」

 「だ、大丈夫、だと思う、ような、気がしない」

 「安心せえ、死んだらお前の骨拾ったるわ」

 まあ、アレと一緒で初めては怖いものだわな。

 慣れるから心配すんな。

 なあにすぐ気持ちよくなって、猿にでもなれるわ。


 「あい」



 ふむ、ここは消防団の建物の鉄塔か。

 で、こっちの鉄塔は携帯電話基地のアンテナだな。

 うむ、ここが見晴らし良くていい。

 先端が尖ってるので普通なら座れんがな、ワシにはM属性スキルがあるのでまったく問題ないわ。


 「あふっ」

 

 おもわず、変な声出てしもうたわ。

 まあ、これぐらいの刺激があった方が集中できてええわあああ。


 「おい、みや、マイクテストだ、聞こえるか」

 「あいっ、聞こえます」


 うし、ここから見ると警官とクマの位置が見えるぞ。

 「見えるクマは1頭だけな。他のクマは確認できん、一応注意しろな」

 「了解っ」

 「その先の路地を左に、って、おいそっちは右だ、バカ。ほら、警察に見つかった」

 「やべっ、ひぃー」


 警官5人か、こいつらギャラリーになってもらおか。


 「全力で回れ右、ダッシュだ。その交差点はまっすぐ、次は右いけ」

 「はぁはぁ」

 「そこを左に曲がりつつ、懐中電灯用意」


 「そこの少年、待ちなさい」

 「まだ追いかけてくるぉ」

 「分かっとるわ、ほら、懐中電灯用意だ、クマと接触に備えろ」

 「あいっ」


 ふぉおおおおん。


 「まっすぐ走って3つ目の交差点の左に曲がればクマはいる。いいか、走りながら右手のコンクリの壁をグチャグチャに刻め」

 「あいっ」


 ふぉおおおおん、ふぉんっ、ふぉおん、ふぉん。


 「壁がっ、はぁはぁ、壁が崩れる」

 「たりめーだ、下敷きになる前に走りぬけろ」

 「はぁはぁ」

 「大きく崩れるぞ、細かく刻みつつ、走れぃ」


 「はぁはぁ、抜けたっ」

 「よし、少しだけ警官の足止めになったぞ」

 ふむ、かなり驚いてるようだ。


 「みや、そこの交差点の左にクマいるので構えながら左に向え。いいか、ちびるんじゃねえぞ」

 「あ、あいっ」


 ふむ、良い返事だ。


 「あっ、クマッ、いた、なんじゃあああ、このデカさぁあああ」

 「おいおい、腰抜かすなアフォ、早く立て。クマもお前に気づいてるぞ」


 「うあ」


 んー、しゃーねーな。


 「振りかぶらなくていいから、剣先をクマに向けたまま、ゆっくり前進。ワシが魔法を撃つからな、おいっ、返事」

 「あいっ」

 「剣先に光球が出て一秒後に発射するからな。適当にリアクションしてもいいぞ。ほないくで」


 ばばばば、ぎゅいん、どーん。


 「おお、クマがふっとんでひっくり返った」

 「おう、それがノックバックだ。そのまま剣先をクマの方向に向けたままゆっくり前進。警官もお前の15メートル後ろにきたぞ。みやのかっこいいとこ、見せつけれ」


 「あいっ」

 「そこの少年、危ないからこっちにきなさい」


 ばばばば、ぎゅいん、どーん。


 「クマがふっとんで家ごとぶっ壊れたぁ、やべえ、ご、ごめん」

 「戦いに多少の被害は付きもんだ、それに、このエリアの住民は避難しとる、気にすんな」

 「なんだか唸ってるぞ、怒ってるみたい」

 たりめーだ、殴られたらワシでも怒るわ。

 

「ひるむんじゃねえ、そのまま剣先をクマにっ、ゆっくり前進」

 「またクマが立ち上がってくる、こええ」


 ばばばば、ぎゅいん。


 「ああ、だめだ、クマがよける」


 どーん。


 「おお、追いかけて当たった」


 ふん、必中だ。

 こっちから見えている限り絶対にはずさん。


 「少年、そんな危ないものこっちよこしなさい」

 「警察はビビってるから無視、みやっ、次の発射でクマをシビレさすからトドメな、カッコいーとこ、見してみい」

 「あ、あいっ」


 ばばばば、ぎゅいん、どーん。


 「いまだ、ドドメだ」

 「お、おう」


 「はああああああ、うりゃあ、うりゃあ、うりゃあああ、っでえ、仕上げの一撃ぃ」

 バカ、刻みすぎだ。

 「おお、ほとんど手応えなしにサクサク切れたっ。うあ、クマの切り口が虹色に輝いてる。あは、クマがバラバラだ。すっげ」


 うし、初めてにしてはよくやったな。

 「みや、本当はもう少し、こう、綺麗に斬るといいんだがな」

 「どうすればいいん?」


 「ふむ、袈裟斬りとか、急所ひと突きとか、横一文字とか、十字斬りとか、脳天から竹割りとかな。今日のクマはぐちゃぐちゃバラバラ惨殺過ぎて、とても勇者の仕事とはいえん」

 「それにな、リアルに描写するとR15指定になっちまうからな。クマの肉塊に虹色キラキラエフェクトをかけたったわ。次からはエレガントかつ華麗にいこうや」

 「あい」


 「少年、武器を捨てて手をあげなさい」

 「パウさん、警察が拳銃を向けて手を上げろって。どうしよう」


 ぱん。

 「ゆっくりその武器を捨てて、手をあげなさい」


 「うわっ、撃ってきた」

 「落ち着け、ただの威嚇射撃だ。みや、退散するぞ、閃光フラッシュさすから剣をまっすぐ上に向けて3秒目を閉じれや」

 「あいっ」


 びかっ。


 「少年、武器を、って、うあ、目が、目がああ」

 

 「よし、目を開けて懐中電灯のスイッチ切れ。ワシがお前の手を掴むぞ、こっから飛んで退散だ」


 「ばいばーい、おまわりさーん、後片付けよろしくー」

 「くっ、少年、待ちなさい」

 「あははははは」


 うっしゃ、初めての任務完了、ははははは。

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