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顛末

「死ね」

 魔力が放たれた。

 それは間違いなく黒斗の人生に幕を降ろす、絶対的な死そのものだ。そして白門黒斗の生はここで終わる。





 はずだった。

「な、に……?なぜ?」

「ふぅ、間に合った。ったく黒斗ぉ、俺にだりぃことさせんな」

 突然空から(・・・)現れた人物に驚愕する。

「だり公!?なんでここに」

「そりゃおめぇ、仕事だからだよ。だりぃけどな」

「その一言さえなきゃ素直に尊敬してたよ…」

 今この瞬間まで命の危機だったのにいつもどおりの様子にため息すら出そうである。

「ま、さか空気ではなく空間を支配する大気制御魔術、だと?ありえない……そんなこと実現可能なはずは……」

 魔術が発動しない理由が何となくでも分かったのか、顔を青くする鈴木。

「空気を操るってなぁ、場を、フィールドを操るってことだ。空気を使ってるだけじゃあまだまだだな」

 適当な説明の後、鈴木に手錠を掛ける。

「だりぃけど、これも仕事だ」

「鈴木明人。お前を魔術犯罪組織の組員として逮捕する」

「大人しく署まで来てもらう。じゃねぇとだりぃからな」

 捕まった鈴木は翼には適わないと悟ったのか一切抵抗せず着いていった。

「春菜ぁ、後のこと頼むわ」

 春菜に適当に声を掛けてその場を飛んで去っていく。

「え!?つっくん、どういうことぉ!?」

「つっくん!?」

 何よりもその呼び方に驚く黒斗だが、疲れて限界だったのか急に眠気が襲ってきた。

「あ!白門くん、しっかり」

 薄れゆく意識の中で、春菜の他に色んな人の、友達の声が聞こえた気がした。





 ――そして。

 決闘の一週間後の休日。

 黒斗たちは再び真奈の病室に集まっていた。

「で?先週のあれはどういうことなんだよ、だり公?」

 前と違うのは、最初から翼がいることと。

「そうよ、つっくん。二年も私を放っておいて、浮気しちゃったかと思ったじゃない!」

「全く、翼くん。あまり春ちゃんに心配掛けないでください」

「あ~、だりぃから一辺に話すな」

 春菜と肇がいることである。

「まず、俺が浮気なんてだりぃことするはずねぇだろ?」

「まぁね……でもじゃあなんで――」

「あの~、その前にいいかにゃ?」

 話の途中で、前回はいなかったミケが手を挙げる。ちなみに椿も来る予定だが、遅れるらしい。

「えと、翼さんかにゃ?あなたが、春にゃん先生の彼氏なのかにゃ?」

「あぁ、そうだけど」

 えぇぇええええええええええええええええええええ!!!!!!!!!!!!!!!!!???

 絶叫が病室に響いた。

「春菜先生、頭大丈夫!?」

「ちょっと白門くん、どういうことかなぁ?」

「いやいやだって、だり公だぜ?考え直した方が絶対いいって」

「私が惚れたからいいんですぅ」

「んな、子供じゃあるまいに……」

「好きだから、いいったらいいの!」

 恥ずかしそうに顔を真っ赤にし、この話題を終わらせる。

 このことは、そのうち必ず問い詰めようと心に誓う黒斗だった。

「んじゃ、俺の質問は?」

「あぁ、それな。実は世界警察にだりぃ仕事があってよ……」

 何でも世界立魔法学校に通う生徒は全て、過去から親の属している組織など徹底的に調べるらしい。

 入学式から一ヶ月ほど掛けて行われるのだが、その途中で黒斗と決闘しようとしているらしい犯罪組織に属している生徒を発見。裏を取って急いで来てみれば、まさに人殺しの瞬間で間一髪間に合った、ということらしかった。

「じゃあ、なんだってこの間ここに来たんだよ?」

「いや、どうにも今回はお前の妹に繋がりそうな情報は得られなさそうでな」

「だからだりぃけど、個人的に謝りに来たってとこだ」

「そか……」

 二人の視線が真奈へと向けられる。

 相変わらず呪いは掛かったままで、茨のゆりかごに包まれたような妹を見て悲しそうな顔をする。

「サンキュな。だり公」

「どうした?突然気持ち悪い」

「素直にお礼言ってんだよ!普通に受け取れ!」

「クーリングオフで」

「おいこら」

「そいつは諸々全部解決してから受け取ってやる。じゃねぇとだりぃからな」

「だから最後が余計なんだよいつも……」

 呆れて笑う黒斗には、前ここに来た時のような暗さはない。

「ほら、それじゃあ皆お弁当食べよう!」

 話が一段落したと見て、絢芽が弁当を広げる。

「お弁当って言うか、お重だにゃ~」

「えへへ、何か張り切っちゃって」

「全くだ、身体強化が必要な重量ってどんだけだよ……」

 ため息を吐く黒斗だが、並べられた豪華な中身を見て文句も引っ込んだ。

「んじゃ、椿にゃ悪いけど先に食べるか」

「少しは残しておこうね」

「わぁ!美味しそう!門峰さんお料理上手ねぇ~」

「いえ、それほどでも……」

「謙遜する必要などないぞ絢芽。実際、君の腕前はそこらの料亭で出しても恥ずかしくない出来だ」

「い、言いすぎだよぉ」

「よくもまぁ、こんなだりぃこと出来るな。俺にゃ無理だ」

「あなたも趣味を見つけたらどうですか?翼くん」

「んなだりぃことしてる暇ねぇもんでな」

「相変わらずねぇ、つっくんは」

「ほらほら、そんなことより食べましょう」

「そうだにゃ!それじゃあ皆でお手を合わせて……」

 いただきます

 それからは楽しく少し騒がしく豪華な重箱弁当を食べていく。

「うお!すげぇ美味い!!」

「ほ、本当!?よかったぁ~」

「マジマジ、この出し巻き卵、こんなにふわふわなのによく型崩れしねぇな」

「それは、コツっていうより慣れかな?出来るようになったのは半年くらい前だから、比較的最近だよ」

「にゃ~、幸せ~」

「うむ。全くだ」

「だけどミケさん、魚だけじゃなくて野菜も食べなきゃだよ?」

「にゃ~、悠治っちの意地悪~」

「ホントに美味しい……門峰さん、本格的に料理教えてくれないかしら?この肉じゃがとか」

「えぇ!?私そんな人に教えるだなんてとても……」

「ふぅむ、前から思ってましたが、門峰さんは自分に自信がなさすぎるきらいがありますね」

「そうなのか?そりゃだりぃ感性だな」

「え、そうなんですか?」

「おうよ。魔法なんてのは世界の法則を自分で操ってんだ。極端な話、自分が世界を変えるつもりじゃねぇと魔法なんて扱えねぇんだよ、だりぃかもしれんけどな」

「いえ、参考になりました!ありがとうございます」

「礼なんざ言うな。だりぃ」

「も~、つっくんも素直じゃないんだから」

「ですね、翼くんは昔からそうやって人の感謝を受け取りたがらないのは直ってないんですね」

「え、何々?だり公の昔話?聞かせてくれよ」

「わたしはむしろ、今の世界警察としての仕事の方をだな……」

「にゃ~、それより春にゃん先生との馴れ初めが先にゃ」

「あ、それ私も気になります」

「んなだりぃこと話さねぇよ」

 適当に騒ぎつつ、絢芽の料理を堪能する。

 横で寝ている真奈には悪いと思いながら、この状況を楽しいと思ってる。

(真奈をこんなにして、両親を殺した魔法だけど……)

 それが無ければ、この大切に思える仲間たちと友達になんてならなかったろう。

 もしかしたらなってたかもしれないが、たらればで語れないほど良い人たちと知り合えた、仲良くなれた。

(まだ大嫌いだし、良い代物だなんて思っちゃいないけど)

 もし魔法の、魔のおかげでこの友達と出会えたというのなら。

(ちっとは感謝できそうかもな……)

 小さく笑いながら、そう思った。

 と、

 ガラガラ

「失礼しまーす、って何やってんの!?」

 椿が病室に入ってきた。

 さすがに病室でお重を広げて昼食を食べているとは思わなかったのだろう。とっても驚いている。

「よぉ椿。遅かったな」

「いや、遅かったなじゃないわよ!あんたたちTPOってもんを――」

 カツーン

 椿が言及しようとするが、誰かが箸を落とした。

「?絢芽、どうした?」

 落とした絢芽は、目を見開いて唖然としていた。

 手を見ると、震えている。

「お姉ちゃん……?」

「え?」

 絢芽の一言が、病室に小さく響いた。

 その波紋が、いずれ大きな波を呼び寄せることなど、誰も考えもしないまま。

よっしゃ!MF大賞間に合った!

この小説を読んでいただいた皆様いかがでしたでしょうか?

面白いと思っていただければ幸いです。

それではこれからもよろしくお願いします!

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