「とある生徒会長とヒロインと」
*「01 ファンクラブの会長をやってます!」の少し前の話。
白兼聡視点。
――つまらない。
毎日が退屈だった。
高校生活もあと一年という時、幼馴染の葵が声をかけてくるまでは――
「聡、久しぶり」
「……葵」
玄関前。制服姿で現れたのは吉水葵。僕の幼馴染だ。
そういえば一年前。
母が葵も僕と同じ高校に進学したと言っていたが、中学の三年間ですでに接点も興味すらなくなっていて聞き流していた。
しかし、葵の噂は僕たち一学年上までのぼっていたから、在籍している事はしっていたのだが――成程。確かに男どもが沸き立っていたわけだ。
僕は久しぶりに会った距離感のつかめない幼馴染を、値踏みするような目でみていたのだろう、葵はその柔らかな容姿とは真逆な何かを含み笑顔を僕に向けて笑った。
「聡、運命の出会い……してみない?」
「はぁ?」
夢見がちな馬鹿馬鹿しい言葉。もはや他人といっていい幼馴染に対して、待ち伏せしてまで言う事だろうか。
しかし――
葵の試すような視線に興味がわく。
わざわざだ。わざわざ避ける様に接点を絶っていた年上の幼馴染に、わざわざ待ち合わせてまで伝えた言葉だ。
久しぶりに“おもしろい”と心が動いた。
―――そして見つけた。僕の恋人。
僕たちの出会いは意図されたものかもしれない。
でもね。それでもいい。
僕と君との視線が絡んだ時、君は一瞬で僕を捨て逃げた。
初めて他人に一方的に切られた視線は、僕の心に傷を負わせたんだよ?
次に出逢った時、僕のファンを名乗りながらも、一番遠い場所で震えていたね。
僕から逃げたいのか近づきたいのか、どっちだろうと思案していた時、君の肩が震えているのに気付いたんだ。
君を見ていると発見が沢山ある。退屈しない。心躍る。
僕に脅え、見つからない様に隠れ、ずっと震えているくせに、瞳は強く煌めいていた。
絶対、僕から逃げてやろうとする意志で。
その時、思ったんだ。
煌めいた瞳を砕きたい。
そして、一緒に壊れたい。
葵がやけに協力的だったのが笑えるよね。
君はスケープゴートだったのかな。
ははは。
ほんと、今となってはどうでもいい話。
僕を傷付けるのも、君を傷付けるのも。
僕だけ。
それだけは、覚えていてね?
――華澄。
*リクエストありがとうございました。