「消えた傍観者」IF BAD END
*過去の活動報告に載せたSSS
「消えた傍観者」の続きです。
もしも、BADEND だったら? というIF話です。
「舞ちゃん」
陸が私に甘い声で囁く。
「舞ちゃん、寝てるの?」
海が私の肩に手をやり、優しく揺さぶる。
「舞ちゃん、死んじゃった?」
空が私の顔の前で手を振る。
私は、ぼんやりした視点で3人ではなく、ここから見える――ずっと変わらない景色を見ていた。
帰 り た い
瞬きをせずとも、出てくる涙。
あれほど、泣いてもまだ枯れていなかった。
「あ、泣いてる。生きてるみたいだよ」
「よかったー。 泣き顔も可愛いね」
「もう、吃驚したじゃない。悪い子だよ? 舞ちゃん」
もう何日になるだろう。
ここはどこなんだろう。
あの日どうして私は、ジュースを飲んだんだろう。
あの日どうして私は、空を当ててしまったんだろう。
あの日どうして私は、傍観なんてしようとしたんだろう。
私はいくつもの「どうして」を思い、取り戻せない過去を後悔している。
身体が重たい。
手が上がらない。
足が動かない。
鉛を飲み込んだようで。
でも、まだ生きてるの。
フルフルと震える右手を持ち上げる。
おんなじ顔の3人が、無邪気に私を見て笑った。
うふふふふふ。
私はウサギ。
飼われて、飽きられたら殺されるの。
数センチ上がった右手が…パタリとシーツの上で――落ちた。