「囚われた元ファンクラブ会長」 IF BAD END
*過去の活動報告に載せたSSS
「囚われた元ファンクラブ会長」の続きです。
もしも、BADEND だったら? というIF話です。
チャイムが遠くで聞こえました。
扉の外で、人の声。
足音。
気配。
私の顕になった太ももはブレザーを腰に巻きつける事によって隠し、準備室の隅に積まれたダンボールを盾にして、身体を小さくして隠れていました。
ドドドドド
心臓の音が煩いです。
ひんやりとした、肌に直接触れる床の感触が嫌でも、今の時間が夢でない事実を突きつけます。
人の気配が消えて、ホッとしたのもつかの間。
私の目線は……先程、白兼様が私のスカートと鞄をいれたロッカーに集中していました。
ロッカーの扉は、私がつけた引っかき傷が沢山ついていて――
白兼様が教室に向かった後……しばらく動けずにいましたが、お昼に使ったフォークでロッカーの隙間をガチャガチャとやったり、何か鍵をこじ開けられる物はないか探したりと、準備室内をウロウロしていました。
(怖い)
私は、恐怖していました。
怖いのです。
前世でのゲームの知識が私にはあります。
白兼聡ルートの結末は?
(……)
嗚呼、どうしよう。
思い出せない。
思い出せない。
思い出せない。
思い出せない。
ヒロインは最後にどうなりました?
スチルは?
白兼様はどうしました?
――どうして
この世界は乙女ゲームのはずです。
BAD ENDだけじゃないはずなのです。
でも、私には思い出せない。
ゲームの結末――HAPPY ENDが思い出せない。
――ガチャ
ガラガラガラ
「華澄? いい子にしていた?」
私は見たくありません。
彼を、彼を見てしまったら……
この後、起こる
「かーすーみー?」
BAD ENDのスチルが浮かんでしまうから――