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ほぉー、龍栖学園。あのお金持ちの坊ちゃん方が通う男子校...
「あのー、あたし自分は女だと認識してんですけど」
「突っ込むところはそこかい? まぁ兎に角、異母弟が君と同じ学校に通う為には君に転校して来て貰うしかないんでね」
「いやそこは異母弟くんに諦めてもらt「即答で却下されたよ」...じゃあせめて共がk「うちは代々この学園の卒業生でね。そのまま大学に進学するか、一族が経営する会社に就職するかなんだよ。ちなみに私も卒業生だ。それに理事長は私の知り合いでね、君の事はもう話してある。それと君が通っていた学校には既に転校により退学すると云う旨は届け済みだ」
思わず口元が引きつる。あたしが転校することは既に決定済みなのか?
「そう言う訳だから君、隣の部屋でこの服に着替えてくれるかい?」
紙袋1式を手渡され何も言えないまま隣の部屋へと追いやられたあたしは泣く泣く男子の制服に着替えた。最後の仕上げとしてネクタイを締めながら鏡で全身をチェック。その後、征次さんが待つ部屋へと戻ったあたしの目の前にはなぜか茶色の小型犬が嬉しそうに顔を綻ばせながら立っていた。
――いや、訂正しよう。以前助けた少年が嬉しそうに顔を綻ばせながらて立っていた。
「あ、あのッ、晶さん。僕、東海林真琴って言います。真琴って呼んでくれると嬉しいですッ!!」
キラキラと瞳を輝かせながらにっこりと微笑む真琴はなぜかあたしの制服の裾を掴んでいる。
「ああ、やっぱり。写真で見たときも思ったけど君って女の子って感じがしないね。ただ単に制服とちょっと髪型を変えただけなのに十分男の子に見えるよ。」
そしてそんな真琴に気を取られていたあたしにまったく持って失礼なことを言う征次さん...どうもすいませんねぇ、どうせあたしは女の子らしい膨らみが欠けてますよ。ええ言われるまでもなく分かってます。バイト先で似たような格好だってしてるし。
「どうだ真琴。これで何の違和感も無く彼女と過ごす事が出来るんじゃないかな?」
「うん、ありがとう異母兄さん。これで晶さんと一緒の同じ学校に行くことが出来て僕嬉しい」
はにかむ真琴とその笑みにでれでれとしている征次さんに引くあたし。そう、引いてしまってもおかしくはないはずだ。おかしくはないはずだが何時までも引いている訳にも行かず聞いておきたい事があるので仕方なしに問いかける。
「あー、ちょっといいですか? 学園に行ったら真琴と行動を供にしないとなんないんでしょうか? それとそこって寮生活だったと思うんですけど。そのへんはどうなんでしょう?」
「うん、君の言いたい事は分かるよ? 学校での生活は君の好きなように過ごせばいい。真琴に付いて居ろ、なんて私は言わないさ。寮についてもだ。君に無理をしているのは分かってるから特例処置として君にはマンションで生活して貰う事になる。もちろん、家賃も生活費も私が出す」
「あ、じゃあ、学校が終わったらいったん家に荷物を取りにもd「らなくていい。マンションで生活するのに必要なものはすべてこちら手配した。もちろん君のサイズの下着だってある」
さらりと述べられた征次さんのとある言葉が頭の中を反芻する。そりゃあもう永遠と...までは行かないが、それでも頭の中で繰り返されるそれに思わず脳内で突込みを入れる。もちろん本人にも。
「なんで知ってんですかっ?!」
「それはもちろん君の事を気に入った異母弟の為にある程度の事は調べたからね」
おい、個人情報保護法はどこ行った? つうか、ある程度になぜそんなことが含まれる? 心境的に釈然とはしないが取りあえずこの話しは終わらせよう。うん。人間諦めが肝心な時もある。
「あー、そろそろ学校に行こうと思うんで、あたしはこの辺で...」
「ああ、そうだね。そうそう真琴。お前も彼女と共に学校に向かいなさい」