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「はッ?! ちょ、ちょっと、離し...って、あんたら人の話し聞いてる――ッ?!」
何故か学校に向かう途中だったあたしこと兵藤晶は突如現れた厳つい体格の男たちに掴まりズルズルと路上に止めてあるどう見ても怪しさ満点の黒い車まで引っ張られています...って、ちょっとどこ触ってんのッ?!
必死にジタバタと抵抗するも無駄に終わり、まるで荷物のように怪しさ満点(以下略)の車の中へと押し込められるとその後に続くようにして男たちも乗り込んで来た。
狭苦しい空間に男が四人。いや、車は大きいし広いはずなのに乗ってる人間たちの体格があまりにも良いため狭苦しい。そんな状態であたしを乗せた車は無情にも走り出した。そして走り出してから30分程経った頃、目的地らしい建物の地下駐車場に車が吸い込まれ...いや、実際吸い込まれてはいないが心情的には...まぁ、そんなかんなで最終的に行き着いた場所は社長室。
「――初めまして兵藤晶さん。私の名前は東海林征次と言います。」
「あ、はじめまして...てッ、なんであたしの名前知ってるんですかッ?!」
なんて思わず突っ込んだがそれは物の見事にスルーされた挙句、何事も無かったかのようにソファを進められる。憮然としながらも仕方なしにソファに腰掛けると目の前の青年...征次さんも同じように腰掛ける。
「――かれこれ1週間程前でしょうか? 君が不良に絡まれていた人間を助けたのは...」
「な、なんでそれを...」
「フフッ...あれ、私の異母弟なんですよ」
「え? あのコ男の子だったのッ?! あのふわふわクッルクルの栗毛の髪に大きな茶色のお目々...あ、なんか悲しくなってきた...」
若干、涙目になりつつあるあたしを尻目に同意するかのように何度も肯く征次さん。しかしそれが今のあたしの状況と一体どんな関係があると言うのか。ホントまったく以って理解出来な...
「滅多に我侭も頼みごともしない異母弟でね。そんな異母弟が私に頼み事をしてきたんですよ」
あれ? 気のせいかな? なんかすんごい嫌な予感がするんですけど...
「フフッ...『君と同じ学校に行きたい』と。しかし残念な事に異母弟の学力では君と同じ学校に通えない。だから...」
効果的な間を置き尚且つ、それはそれはとてもキレイな弧を描く征次さんにシックスセンスが働きかける。
「――それで君には今日から龍栖学園に通ってもらう事にしたんだよ」