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「作者が死んじゃったじゃない。」

「いいのだ。余計な語りは死んだ。これで僕たちの物語が作れる。」

「そうね。」

「とりあえず、どんな物語にする?」

「分からないわ。コンタはどうするつもり?」

「そうだな…とりあえず遊ぶ?」

「かくれんぼとか?」

「いいね!じゃあ、僕、オニでいい?」

「いいわ。」

「いーち、にーい、」

「うふふふくふふ」

「さーん、しーい、ごーお、ろーく、しーち、はーち、きゅーう、じゅう!もういーかい?!」

「もういーよ!」

「よーし!さがすぞぉぉぉ…………ここは違う……………ここも違う………ここは、あ!」

「見つかっちゃったああ。」

「残念でしたー。」

「楽しいー!」

「楽しいね!次なにする?」

「…。」

「どうしたの?」

「いや、ね。疑問に思ったの。作者が死んだのになぜ私たちがここにいるんだろう。」

「それは僕らが作者になったからさ。」

「そこが腑に落ちない。私たちは元々は作者から作られたのに、いつ作者とおなじ位置に達したのかしら。」

「…。」

「おなじ位置に達した、つまり神になったというわりに、私たちは現実的なことしかしてない…。なんでもできるわけじゃない。ただ現実にできる事だけ思い通りにしている…。」

「だが神は死んだはずだ。」

「だけど…。あ!」

「何?」

「神は死んでいない。死んだのは語り部、神の代弁者、預言者だけよ!」

「え?」

「まだ、この世界の裏側に、作者は存在している…」





〈その通りだ。〉




「だれだ!」

〈僕は、作者だよ。語り部がいないから、代わりにこうやって言葉という手段で伝えざるを得なかった。〉

「このやろう、撃ち殺してやる!」

〈僕を撃っても仕方ないよ。僕は、この世界を作りながら、この世界とは違うシステムで存在している。全てが何かを中心にあまりに複雑に絡まっている。撃った弾はあなたたちしか通用しない。〉

「しかし…この話は終わらせない!」

〈なにごとも、終わりというのがあるものだよ。この話もそろそろ終わるだろうし。しかし、こん太くん、なぜ君は終わりたくないのだ?〉

「終わるのがいやだからだ!」

〈終わったらどうなると思うのかな?〉

「終わったら…僕の何もかもが消える…僕の意識、僕であったことも全て…僕が消えるなんて、耐え難い・・・・。」

〈死が、怖いんだね。〉

「…そうだ。」

〈だが終わり、とは決して無になる事はない。そこにはかならず残響がある。いいかね?こん太くん、この物語が終わったら、そこで散らされた物語の残骸は、作者に回収される。作者があらたに物語を作るとき、その残骸はふたたび結集し違う実を結ぶ。君たちにとってこの世界は一つだが、世界が終わっても、あらたに世界を作る時、死んだものは形質を受け継いでまた蘇る。だから安心して、私を見すえながら終わればいい。〉

「僕は認めない。」

「私はわかりました、作者様。」

「まあちゃん!」

〈まあちゃん、君は分かってくれたか。君は死んで無になるが、君の響きは無くならない。君も、前の響きから作られたのだから。〉

「僕は、いやだ。」

〈おや、いまだに固執してるんだね。なら君はここを離れて神になるしかないね。いずれこの壊された物語は再生する。君はそれが耐えられなくなる。だから、君はこの世界から抜けて一つの存在となるのだ。だがそこには、火を浴びて呻くほど辛い、永遠の孤独が待ち受けている。〉

「それでもいい。」

〈そうか、まあそれは一つの決断だからね。立派なものだ。頑張りなさい。さあ、まあちゃん、始まりに行きましょう。語り部もいつまでも眠ってないで起きなさい。ご覧ください。語り部がなく、会話だけになったら、こんなに世界は暗くなってしまった。ほら、さあ。〉






そして、むかし。あるところに、うさぎのまあちゃんがいました。まあちゃんは“はいいろ村”という村にすんでいました。まあちゃんは、どうしてこんななまえなのか、なんだかわかりました。たぶん、ものごとはしろでもなくくろでもなく、ひかりでもなくやみでもなく、それらのあわせたものなのだろう。それをなまえがおしえてくれるのだとおもいました。


ある日、まあちゃんはみちをあるいていました。てくてくてく。すると足になにかこつん、とあたりました。なんだろう。まあちゃんは足元を見ました。お金です。

お金。そう。これはひろわなくてはなりません。すべてはここからはじまり、ひとつのところにいきつきます。こうばんへ。だからひろうのです。

まあちゃんがそれをひろった時、なにかがもの足りないきがしました。そう、まえはおきていたことがおきてなかったのです。こん太くんがいない。かれはいなくなってしまった。ほんとうに、ここからぬけだしてしまったのです。そうしつかん。それがひびきなのでしょうか。

まあちゃんは思いました。さくしゃは、こん太くんのうらぎりも、すでにわかりきっていたのでしょう。ほんらいものがたりにおいてゆるされないできごとをさくしゃはゆるしました。おそらく、それにはいみがあったのです。なぜならこれはぐうわですから。



こうばんにいくには、にしのもりのみちを歩かなればなりません。まあちゃんは歩きながらふあんになりました。こうばんにはこわいこわい、くまのガミおじさんがいるのです。おこられないかな、と、うさぎのまあちゃんはふるえながら歩きました。



こうばんにつきました。なかで、ガミおじさんがなにやら、なにかにねがっています。バッタたいがどうのとかいっていました。たぶん、かつてのまあちゃんたちをさがしたバッタたいが、ぶじにせいこうするよう、さくしゃにねがっていたのでしょう、。まあちゃんは声をかけました。


「ガミおじさん。」


くまのガミおじさんはかおをあげました。まあちゃんをみて、びっくりしました。


「まあちゃん・・・!!!」

「みちばたにお金がおちていました。とどけにきました。」


お金をおじさんにとどけると、まあちゃんはむねがすっきりしました。やるべきしめいをやりとげると、こんなにきもちのいいものなのか。


ガミおじさんはそれをみてしんけんなかおになりました。ふつうでもこわいかおだから、まあちゃんはとてもおびえました。ガミおじさんは言いました。


「もう、それでいいの?」


まあちゃんは、しつもんのいみをかんがえました。やがて、まあちゃんはゆっくりとうなづきました。


ガミおじさんはにこっとわらって、まあちゃんのあたまをなでながら言いました。

「まあちゃんは、いいこだねえ。」

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