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合わせ鏡が描く天弓(にじ)~卵から憧れのイケメン先輩が生まれちゃったんだけど、セーカクサイアクで困ってます  作者: 東條零
第五章 臨界へのカウントダウン

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第27話 カーディガンと猫

 帰宅する前に、ニセキジのお留守番のご褒美に、チュールを買った。


 さすがにお腹をすかせているだろうと、二人で心配しながらドアを開け、クランがお皿にカリカリを多めに盛ってニセキジを探した。


 熟睡しているのか、置いて行かれて拗ねているのか、呼んでも姿を見せない。


「ニセキジ~」


 クランは、カリカリの皿を持ったまま、部屋の中を探した。

 といっても狭い部屋だ。

 どこか隅に潜り込んでいるのだろう。


 素奈多は、着替えながら、クランに声をかけた。


「ニセキジ、拗ねちゃった?」

「あー……うん……」


 クランが上の空で返事をしたとき、不意にインターフォンが鳴った。


 素奈多はビックリして、インターフォンに出る。

 画面に映っていたのは、素奈多の両親だった。


「えっ!? ちょ、どどど、どうしたの!?」

「どうしたのって、知らせておいたでしょう?」


 ん? そういえば、上京するとか知らせが来ていたような……気もする。

 このごろ、バタバタしていて、感情もジェットコースターで、すっかり忘れていた。


「早く開けてちょうだい」


 インターフォン越しに、母が言った。

 素奈多は、一階のドアを開けるボタンを押す。


「クラン!」


 ニセキジにご飯をやっているはずの、クランを振り返った。


「うん。聞こえた。ご両親は、今日はここに泊まるのか?」


 凄く真面目なトーンで、クランは言った。

 違和感。

 でも、両親が今にもエレベータで上がってくると思ったら、素奈多にはクランの違和感の正体に気づく余裕はなかった。


「ううん。お布団とかないから、夕飯食べたらホテルに泊まると思う」

「そうか……」


 クランは、素奈多のサーモンピンクのカーディガンにくるまって眠っているニセキジを抱いていた。

 あの日、卵をポケットに入れていた、始まりの日のカーディガンだった。

 ニセキジは、それが大好きで、油断するとすぐ潜り込んで毛だらけにする。


「じゃあ、こいつ連れて、階段で降りるわ」

「えっ?」

「俺がいたら、困るだろ?」

「でも」


 素奈多は、完全にテンパっていた。

 なんだか、このまま会えなくなってしまうような……。

 ここで別れてしまったら、もう二度と会えなくなってしまうような、そんな予感がした。

 胸の奥で、何かが、ダメだと言っていた。


「行っちゃヤだ!」


 クランは、ふっと笑った。


「お前のとこ以外、行く場所なんてねーよ。映画は、また今度な」


 クランは、サンダルを突っかけると、大仏のTシャツのまま、出て行った。

 クランの後ろ姿を隠すようにドアが重い音をたてて閉じる。


「……な……んで……?」


 その背中が見えなくなって、ガクンと素奈多は膝をついた。

 まるで、運命という名の何かが、急加速で襲ってきたような、気がした。


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