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合わせ鏡が描く天弓(にじ)~卵から憧れのイケメン先輩が生まれちゃったんだけど、セーカクサイアクで困ってます  作者: 東條零
第四章 君と見た未来

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第26話 この時間がずっと続けばいいのに

 素奈多が目を覚ますと、横にクランの寝顔があった。

 そういえば、温泉に浸かってぐるぐる考えていたのは覚えているが、そのあとの記憶がない。


 おでこに冷えピタが貼ってあって、あー、またやっちゃったんだ……。

 と、長風呂の癖を反省した。

 きっと、宿の人にも迷惑をかけたに違いない。


 そして、この、添い寝しているクランにも。

 きっと、もっと、ロマンティックな夜になるはずだったのに……。


 冷えピタ女の看病させちゃったな……。


「ごめんね、クラン」


 そっと顔にかかったさらさらの髪に手を伸ばした。


 その瞬間、パチッとクランは目を開ける。

 驚いて、素奈多は手を止めた。


「おはよ」


 クランは、微笑む。


「具合、どーよ?」

「うん。もう、平気」


 言いながら、半身を起こした素奈多は、枕元のドライヤーをみつけた。


「あれ? ドライヤー……」

「あー。乾かさないと、風邪引くかなと思って……。まあ、変な癖ついてるかもしんないけど……」


 うわぁ~……。


 素奈多の心の温度が上がる。

 憧れのシュチュエイション。

 風呂上がりの髪を、彼氏に乾かして貰う!


 ああ~……。


 素奈多は、ちょっと拗ねたように唇をとがらせて言った。


「今度は、起きてるときにやって」

「えー。そんなの自分でやれよー」

「だってぇ……」


 クランは、子供みたいな反応をする素奈多が可愛くて、フフッと笑った。


「いい子にしてたらな」

「やったぁっ!」


 嬉しそうに、素奈多は、目を(><)こんな形にして右腕を突き上げる。

 特大のガッツポーズだ。


「具合も良くなったなら、チェックアウトするか」


 クランが、大きく伸びをして、ベッドから降りた。


「ニセキジも待ってるしね」


 素奈多も、なんだか清々しい気持ちだ。


 こういうのを、なんというのだろう?


 絆が深まった?


 なんか、そんな感じだ。


 帰りにフロントで昨夜の騒動を詫びるクランが、とても大人っぽく見えて、素奈多は不思議な感じがした。

 もちろん、素奈多もペコペコと平謝りに謝った。


「素敵なお兄さんね」


 と年配の従業員さんに声をかけられて、素奈多は照れまくった。


 お兄さん……か。

 世間の大人の人から見れば、クランはしっかり者の大人の男の人で、素奈多は高校生の世間知らずの妹なのだ。

 ということを、思い知った。


 わずか数日前に生まれたばかりなのに……。


 クランが気にいって着ている大仏を見学して、おしゃれなカフェで食事して、午後いっぱい、素敵なデートを楽しんだ。


 家に帰る電車の中で、素奈多はとにかく喋りまくった。


「明日は、どこ行く?」

「どこでも?」

「クランの行きたいとこ、全部連れてってあげたいの!」


 クランは、笑った。


「そんなに焦らなくても……」

「あたし、焦ってる?」

「多分ね」


 確かに、花南にイレギュラーという言葉を聞いて、居ても立ってもいられなくなって、学校をサボって帰ってきちゃったけど……。


 焦り……なんだろうか?


 この、胸の奥にある正体不明の不安が、焦ってしまう原因なんだろうか……?


「じゃあ、おうちでまったり映画でも見る?」


 映画と聞いて、クランはちょっと身を乗り出した。


「あ、俺さ、見たい映画があって……」

「なんていう映画?」

「しんかんせん?」

「新幹線? 鉄道映画?」

「いや~……」


「あっ! 新幹線大爆破だ。止まったら爆発するヤツ」

「いやぁ~……」

「まあいいや。サブスクにあれば、すぐ見れるし」


 素奈多は一人上機嫌で、「ご飯買い込んで、おうちで映画三昧もいいね~」なんて楽しそうに笑った。


 クランは、素奈多が一人で盛り上がっているので、見たい映画は『新感染ファイナル・エクスプレス』だ、ということは、言わずにおいた。


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