第22話 空と宇宙の境目って
堂々と学校をサボってダッシュで帰宅した素奈多は、家のドアをガバッと開けた。
「たっだいまぁ~!」
ニセキジと遊んでいるクランが、戸口を振り返って、目を点にする。
「学校は?」
「サボった」
「は?」
舞うようにクランの傍に駆け寄って、素奈多は、じっとクランを見つめる。
「体の具合、どう?」
えっ? という顔になって、クランは破顔した。
「ピンピンしてるぜ? なんで? それでサボってきたのかよ?」
「うーん……。なんか、朝、少し様子がおかしかったような気が……」
「ばーか」
クランは、素奈多のおでこを、ピンと指ではじいた。
「いたっ」
素奈多は、目をつぶって、両手でおでこを押さえる。
その隙に、クランは、素奈多の鼻先に、チュッと軽いキスをした。
「えっ?」
素奈多は、おでこを押さえたり鼻を押さえたりしながらドギマギする。
「俺を心配して、学校サボってきてくれるなんて、可愛いな~って」
「かっ、可愛い……」
「うん。このまま押し倒したいくらい」
言いながら、クランは再び顔を近づける。
「ちょ、ちょっと待って待って。こんな昼間っから……」
クランは、ピタッと動きを止めた。
「それは、夜だったらいいってこと?」
「えっ?」
素奈多は、混乱した。
赤くなったり青くなったり、百面相に忙しい。
ふふっ、とクランは笑った。
「じゃあまず、デートからってことで、どっか、行こう!」
クランが提案した。
「どっかって?」
「そーだなー……。すっげー高いとこ、とか?」
「えー? どっかの展望台とか?」
「いや、宇宙」
いやいやいやいや……。
素奈多は、ないない、と首を振った。
「さすがにそれは、無理でしょ」
クランは、声を出して笑った。
「そこ、からかってんじゃないわよ! とかって怒るとこじゃねーの?」
言われて、素奈多は、あれっ? と思った。
そう言われてみれば、そうか……も?
「あたしって、そんな、怒ってばっかだった?」
「うん。すごく」
「で? 宇宙なんて、からかってるの?」
クランは、遠い目をした。
「いや。行ってみたいなーって。なんとなく」
「そっか」
ようやく、素奈多にもわかってきた。
クランは、何事にも正直なだけなのだ。
思ったことをそのまま言う。
だから、ときどきそれが、意地悪に聞こえる。
いや、意地悪で言ってたこともあったかもしれないけれど。
「宇宙はさすがに無理だからさ……」
素奈多は提案した。
「海、行かない?」
「海?」
クランは目を輝かせる。
「ほら、空ときたら、海じゃん」
「いや、俺が言ったのは、空じゃなくて宇宙だけど」
「だって、空と宇宙の境目なんかわかんないから、あたしにとっては全部、空だよ!」
よくわからない理屈を言って、素奈多は胸を張る。
「まあ、境目はあるだろうけど、一理あるかもな」
「でしょう?」
素奈多は得意げに笑って、善は急げと海へ行く支度をしはじめた。




