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合わせ鏡が描く天弓(にじ)~卵から憧れのイケメン先輩が生まれちゃったんだけど、セーカクサイアクで困ってます  作者: 東條零
第四章 君と見た未来

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第22話 空と宇宙の境目って

 堂々と学校をサボってダッシュで帰宅した素奈多は、家のドアをガバッと開けた。


「たっだいまぁ~!」


ニセキジと遊んでいるクランが、戸口を振り返って、目を点にする。


「学校は?」

「サボった」

「は?」


 舞うようにクランの傍に駆け寄って、素奈多は、じっとクランを見つめる。


「体の具合、どう?」


 えっ? という顔になって、クランは破顔した。


「ピンピンしてるぜ? なんで? それでサボってきたのかよ?」

「うーん……。なんか、朝、少し様子がおかしかったような気が……」

「ばーか」


 クランは、素奈多のおでこを、ピンと指ではじいた。


「いたっ」


 素奈多は、目をつぶって、両手でおでこを押さえる。

 その隙に、クランは、素奈多の鼻先に、チュッと軽いキスをした。


「えっ?」


 素奈多は、おでこを押さえたり鼻を押さえたりしながらドギマギする。


「俺を心配して、学校サボってきてくれるなんて、可愛いな~って」

「かっ、可愛い……」

「うん。このまま押し倒したいくらい」


 言いながら、クランは再び顔を近づける。


「ちょ、ちょっと待って待って。こんな昼間っから……」


 クランは、ピタッと動きを止めた。


「それは、夜だったらいいってこと?」

「えっ?」


 素奈多は、混乱した。

 赤くなったり青くなったり、百面相に忙しい。

 ふふっ、とクランは笑った。

 

「じゃあまず、デートからってことで、どっか、行こう!」


 クランが提案した。


「どっかって?」

「そーだなー……。すっげー高いとこ、とか?」

「えー? どっかの展望台とか?」

「いや、宇宙」


 いやいやいやいや……。

 素奈多は、ないない、と首を振った。


「さすがにそれは、無理でしょ」


 クランは、声を出して笑った。


「そこ、からかってんじゃないわよ! とかって怒るとこじゃねーの?」


 言われて、素奈多は、あれっ? と思った。


 そう言われてみれば、そうか……も?


「あたしって、そんな、怒ってばっかだった?」

「うん。すごく」

「で? 宇宙なんて、からかってるの?」


 クランは、遠い目をした。


「いや。行ってみたいなーって。なんとなく」

「そっか」


 ようやく、素奈多にもわかってきた。

 クランは、何事にも正直なだけなのだ。

 思ったことをそのまま言う。

 だから、ときどきそれが、意地悪に聞こえる。


 いや、意地悪で言ってたこともあったかもしれないけれど。


「宇宙はさすがに無理だからさ……」


 素奈多は提案した。


「海、行かない?」

「海?」


 クランは目を輝かせる。


「ほら、空ときたら、海じゃん」

「いや、俺が言ったのは、空じゃなくて宇宙だけど」

「だって、空と宇宙の境目なんかわかんないから、あたしにとっては全部、空だよ!」


 よくわからない理屈を言って、素奈多は胸を張る。


「まあ、境目はあるだろうけど、一理あるかもな」

「でしょう?」


 素奈多は得意げに笑って、善は急げと海へ行く支度をしはじめた。


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