第14話 乙女心は波瀾万丈
結局、素奈多は、一睡もできずに朝を迎えた。
ガチガチに緊張していたので、体中が痛い。
なんであたしがこんな目に……。
昨日から何千回目かの「なんで」だった。
これが毎日続くのかと思うと、気を失いそうだった。
いや、まあ、気を失ったら自動的に眠れるから、もしかしたらいいのかも?
なんて考えて、その間に襲われるかもしれない!
と思って、身を震わせた。
ソファからむくりと起き出してベッドを見ると、先輩がさらさらの髪を惜しげもなく枕に投げ出して、スヤスヤと眠っていた。
美しくて、麗しくて、このままガラスケースに入れて飾っておきたいほど、綺麗だった。
しばし、その寝顔に見とれて、素奈多はハッとした。
違う。
こいつはニセモノ。
惑わされてはいけない。
クランが寝ているうちに、ササッと制服に着替えて、ニセキジにご飯をあげた。
少し迷って、ベーコンエッグを二人分作った。
クランのぶんにラップをかけ、キッチンカウンターに置いた。
食パンとベーコンエッグを急いで食べて、素奈多はメモを残して家を出た。
学校から帰ってくるまで、絶対に、外に出ないこと!
玄関のドアが閉まって、ガチャリと鍵のかかる音を聞いてから、クランは大きく伸びをして起き上がった。
「よく寝た~」
ぽりぽりと頭をかきながら、キッチンカウンターの上のメモを手に取る。
「絶対に……か」
面倒くさそうにメモを放り投げると、クランは足元にまとわりついてきた猫をヨシヨシと撫でた。
「イソーロー同士、仲良くしような」
ニセキジは、にゃあん、と可愛い声で鳴いた。




