第五話、どっかのお姫様のように・・・あう、噛んじゃった
「……オ、オゲがはありませんか?」
「噛んじゃったぁぁぁ!!」
もう、私のバカバカ! せっかくどっかの映画の姫様っぽく、凛として颯爽と登場したのに!
恥ずかしすぎて尻尾がピンと逆立っちゃったじゃない。
「あ、今のなし! 取り消し! 怪我はありませんか、冒険者の皆さん!」
言い直した私を、リーダー格の戦士、リナさんが信じられないものを見るような目で見つめてる。……あ、私じゃなくて後ろのシロを見てるのか。
「その……伝説のフェンリルを、あなたが? 従えてるの……? 一体何者なの……!?」
「え? ああ、これ? 散歩中に懐かれた忍犬(自称女子)のシロだよ。怖くないから大丈夫!」
『主よ……「これ」とは何だ。あと我を犬と呼ぶなと……』
シロが呆れてるけど無視!
リナさんは、シュッとしてて頑丈そうな鎧が似合う、かっこいいお姉さん。すごく礼儀正しそうだけど、今は顔が引き攣ってる。
「……と、とにかく助けてくれてありがとう! 君、こんな危険な森に一人で……ここに住んでるの? もしよかったら、お礼もしたいし、私たちの街に来ない?」
「街! 行く行く、行きます! 美味しいもの食べたいです!」
即答。だって森の中はお腹は満たせても、甘いお菓子とかないんだもん。
すると、横にいたおとなしそうな魔法使いの子(名前聞きそびれた、無口キャラかな?)がコクコクと頷いてる。
……あれ? スカウターの子がいない。と思ったら、木の上で周囲を警戒してた。仕事が早い。アウトドア派の引きこもり……じゃなくて、プロの動きだ!
と、感心してたその時。
「…………可愛い。ねぇ、そのお耳、触っていい……?」
「え? あ、ちょっ……」
返事をする間もなかった。
神官のミナさんが、さっきまでの恐怖はどこへやら、信じられない瞬発力で私にダイブ!
「ふにゃああぁぁっ!? ちょっと、ミナさん! 近い、近いよぉ!」
「んんん……柔らかい、温かい……本物……。これ、神の造形……」
ミナさん、さっきまで祈ってた聖職者だよね!?
目がガチだよ! 何かに目覚めちゃってるよ!
ネコミミを両手でもふもふ、ぷにぷにされて、私の背骨に電気が走る。
「や、やめ……あ、そこ、ちょっと気持ちいい……じゃなくて! 私は忍者! 油断大敵なんだから! 忍法・いないいないばあ(気配隠蔽)!」
スルリとミナさんの腕から抜け出して、シロの影に隠れる。
「ふぅ……危なかった。ミナさん、意外な素早さ。これぞ天性のテイマー(私じゃない方)の資質……?」
『主……。自称忍者が、初対面の神官に組み敷かれてどうする』
「うるさいよシロ! 反応しちゃうのは猫の特性なんだから仕方ないでしょ!」
私は日記帳に、逃げながら殴り書きをした。
*『○月×日。人間の街へ行くことにした。戦士のリナさんは頼りになりそう。魔法使いの子は静か。スカウターの子は消えるのが得意。そして神官のミナさんは……ある種、ゴブリンより危険かもしれない。耳は死守せねば』*
「よし、リナさん! 街まで案内お願いします! 私、各務れい。れいちゃんって呼んでね!」




