第三話:フェンリルって犬?……シロ、君に決めた!
「もぐもぐ……ふぅ、食った食った。異世界松茸、おそるべし……」
お腹いっぱいで満足感に浸りながら、尻尾をパタパタさせていたその時。
「気配察知」がビビビッ! と反応したのだよ。ちょ、便利・・・なのか?
ガサガサッ! と茂みを割って現れたのは……。
「……デカい。狼? いや、犬?」
そこにいたのは、雪のように真っ白で、私の背丈を優に超える巨大なワンコ……じゃなくてオオカミ。
冷たい青い瞳が私を射抜いて、なんだかすごく強そう。
でも、その鼻先はクンクンと、私がさっきまで食べていた松茸の食べ残しを必死に追っている。
「……君も、お腹空いてるの?」
私が思わず、一切れの焼き松茸を差し出すと、その巨体はピクッと震えて……。
パクッ! と一口で飲み込んじゃった。
すると、信じられないことが起きたの。
『……うむ、美味。この我にこれほどの供物を捧げるとは、殊勝な小娘よ』
「……しゃべったぁぁぁ!? ワンコが喋った!?」
『ワンコではない! 我は誇り高き伝説の魔狼、フェンリル……』
「はいはい、わかったよシロ。おかわりいる?」
『……シロ? 我、そんな安直な名前……?』
「えー、だって白いじゃん。分かりやすくてオッケー! 嫌なの?」
上目遣いで、ネコミミをちょっと伏せて聞いてみる。
あ、肉球ぷにぷにしながら。
すると、その伝説の魔狼(自称)さんは……。
『……くっ。……まぁ、呼びたいなら呼ぶが良い。シロ……悪くない響きだ(ボソッ)』
「あ、今『悪くない』って言った! 返事したね! よし、君は今日から私の忍犬第一号だよ!」
その瞬間、なんだか私の胸の奥と、シロの体がキラキラした光で繋がった気がした。
『……な、何!? 我としたことが、この小娘にテイム(従属)されたというのか!? 名前を受け入れて返事をしたばかりに……!』
「えへへ、私って万能? 火球が使えて、今度はテイマー? もしかして私、異世界でめちゃくちゃ勝ち組なんじゃ……」
しゅんとして座り込んでしまった巨大な白オオカミ(シロ)の背中に、私は「えいっ」と飛び乗ってみた。
おぉ……毛並みが最高。モフモフ。ミスリル鎖帷子の冷たさが気にならないくらいあったかい!
「よし、シロ! 忍者の相棒はワンコって決まってるんだよ。これからよろしくね!」
『……主よ、我は犬ではないと言っておろう……。はぁ、まぁ良い。これも何かの縁、この森を抜けるまで付き合ってやる』
「あ、シロ、そっちじゃないよ。あっちに『美味しそうな気配』がするから! 突撃ー!」
『……やはり食い意地か……』
私は日記帳を取り出し、揺れる背中の上でさらさらと書き込む。
*『○月×日。伝説の魔狼をゲットした。名前はシロ。モフモフで乗り心地最高。これで移動も楽ちん! 忍犬がいるなら、次はやっぱり……里とか、街とか、行きたいな!』*
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「ねぇシロ、この先に人が住んでる場所ってある?」
『……ふむ。数里先に、人間どもの小さな集落があったはずだ。だが、その手前には厄介な縄張りを持つ連中もいるがな……』




