第二話:香り松茸、味しめじ……って、歩いてるんですけど!?
「ふんふふーん♪ お腹も満たされたし、いざ森の探索へレッツゴー!」
私は草鞋の感触を確かめながら、ふかふかの森の中を進んでいく。
それにしても、ネコミミの能力ってすごいのね。遠くで葉っぱが擦れる音とか、花の甘い香りとか、情報量が都会とは段違い。
「くんくん……。ん? なにこれ、すっごくいい匂い……。芳醇で、土の香りがして、でも高級感あふれるこの香りは……」
クンクンと鼻を鳴らして「気配察知」を全開にする。
生い茂るシダの葉をバサッとかき分けると、そこには信じられない光景が広がっていた。
「……え。松茸?」
そう、そこにあったのは、どう見ても松茸。
でもサイズがおかしい。私の腰くらいまである、子供サイズのでっかい松茸。
しかも——。
「歩いてる……!? 根っこが足みたいになって、トコトコ歩いてる! さすが異世界、キノコが散歩するなんて聞いてないよ!」
でも、私の脳内センサーは「敵」というより「食材」としてロックオンしちゃった。
秋の味覚の王様、松茸。それがこんなに大きいなんて……これ一本で何人前のお吸い物が作れるの!?
「よし、サクッと討伐して、今夜は松茸祭りだ! ……あ、あれ? そういえば私、武器持ってなくない?」
腰を触っても、あるのは日記と水筒だけ。
忍者なら苦無とか刀とかあるはずじゃん! 神様、おまけ忘れてない!?
……いや、待てよ。頭の中に、なんか変な知識が流れてくる。
「……『火遁の術』? おお、なんか忍者っぽい響きだ」
私は「火遁」の印を結ぶふりをして、その言葉を口にする。
「えいっ! 火球!」
ボシュッ! と私の手から放たれた炎が、トコトコ歩く巨大松茸を直撃。
……お、おおお! 狙い通り、いや、狙い以上にこんがりと!
「わあぁ……! 焼ける松茸の香りが、森中に広がっていく……。これ、討伐っていうか、ただの調理だよね?」
焼き上がった巨大松茸は、もはや「モンスター」ではなく「最高級の焼き物」。
私はウエストバッグ(中身が宇宙のやつ)から、さっきのおにぎりに付いていた予備の塩をパラリと振りかける。
「いただきまーす! ……はふっ、はふっ! ……んんん〜〜〜!! 弾力がすごい! 歯ごたえがアワビみたい! 鼻から抜ける香りがもう、お大名様になった気分!」
え?さっきのおにぎり?
でも、松茸だよ。普通食べるでしょう。
私は夢中で、こんがり焼けた松茸を頬張った。
一人きりの森の中だけど、豪華すぎるキャンプ飯に尻尾がパタパタと激しく動いちゃう。
「幸せ……。でも、一匹(一本?)でこれだけ美味しいなら、もっと探せば『味しめじ』も歩いてるのかな?」
残った、松茸はバックに入れておこう。
私は日記を取り出し、炭化した木の枝でさらさらと書き留める。
**『○月×日。歩く巨大松茸を火球で焼いて食べた。異世界グルメ、今のところ百点満点。でも、次はちゃんとした武器が欲しいな。あ、あと、そろそろ誰かとお話ししたいかも』**
すると、その時。
「気配察知」に、松茸とは違う、もっと「重たい」何かが近づいてくる反応が……。
「……ん? この匂い……松茸じゃない。なんだか、もっと獣くさいっていうか……。もしかして、焼肉の匂いに釣られて誰か来た?」




