第一話:ネコミミ異世界転生日記、はじまるよ!
「……えー。コホン。やっぱり最初からお話ししないとだね。読者の皆様、準備はいい? 私は各務れい、ちょっとかわいい女の子だよ。私の激動の半生(13年+ちょっと)を語っていい?いいよね。語っちゃうよ!」
事の起こり——ああ、なんて古風で素敵な響き!私が「忍者修行」(という名の、ただの早朝自然公園お散歩)に出かけた時のこと。
朝早かったからね、朝食代わりに持ってきてた「れいちゃん特製おにぎり」を取り出したその時!
「ああっ! すってんころりん!?」
おにぎりが、まるで意思を持っているかのように転がる、転がる、さらに転がる! どこの童話だよ!
そして、その先にはなぜか、昼間なのに星空より真っ暗な「黒い穴」。
「おにぎり待てーーっ! ……って、ひぎゃあああああ!?」
そのまま私も、盛大に、重力に従って、ダイブ!
……で、気づいたら真っ白な空間に、自称・神様って人がいたわけ。
「あたしゃ神様だ、偉いんだぞ」なーんて、おじいちゃんみたいな口調で偉そうにしてたから……。
「おにぎり、返さんかい!ワレ!なめとんのかい!」
渾身の回し蹴り!ゲシッ!。ぺちって音しかしなかった。
食べ物の恨みは、親兄弟をも殺すのだ。覚えておきなさい、神様。
そしたらその神様、鼻血出しながら(イメージね)「申し訳ございませーん!」って土下座しちゃって。
「異世界に転生させるから! おまけも超つけるから! 許して、蹴らないでぇ!」って。
ふん、私は海より広い心を持ってるからね、そこまで言うなら許してあげなくもないよ。
……で、現在。
「……ここは、見たことのない空だ(キリッ)」
よし、言った! 異世界転生のノルマ達成!
でも……正直に言っていい?
「空はどこまで行っても空だよ! 青いよ!雲は白いよ、 違いなんてわかるわけないじゃん!」
それに都会っ子の私に、空のグラデーションの違いなんて無理難題だって。
そんなことより、私の身体に一大事が起きてるわけ。
頭にはピコピコ動く猫耳。お尻にはシュルシュル動く黒い尻尾。
爪が出し入れできるよ!
「高天原……だっけ? 古事記? 日本書紀? そんな世界って言ってたけど……ネコミミ娘がいる日本神話って、それどこの同人誌?」
自称・神様の説明不足を呪いながら、私はふかふかの草の上に座り込んだ。
すると……。
「ぐ〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ」
鳴った。乙女のお腹が、森に響き渡るレベルで鳴っちゃった。
「そういえば、ウエストバッグにおまけ入れるって言ってたっけ……。まさか空っぽじゃないよね?」
ガサゴソと腰のバッグを漁ってみる。
……あった!!
「……おにぎりだぁぁぁ! 鮭とワカメの絶妙なマッチング! しかもまだ温かい気がする。神様、意外と気が利くじゃない」
パクッ、ともぐもぐタイム。美味しい。塩加減が身体に染みる。
食べながらバッグの奥をさらに探ると、何やら時代劇に出てくるような古い「本」と、「携帯用の筆と硯」が出てきた。なんか、それっぽいよ、ぽいよ。
「なになに? 表紙には……『日記』? 中身は真っ白じゃん。これに修行の記録を書けってこと? ……って、えええええ!?」
私は思わず、おにぎりを喉に詰めそうになった。
「お金は!? 着替えは!? 13歳の女の子に必要なものは他にもたくさんあるでしょーが!」
でも、おかしい。
この小さなウエストバッグ、手を突っ込むとどこまでも入っていく。
肘まで入る。肩まで入る。……え、これ、もしかして底がない?
「……深淵が見える。このバッグ、中身が宇宙だわ」
色即是空だわ。
おにぎりを完食した私は、筆をぺろっと舐めて、真っ白な日記の1ページ目にこう記すことに決めた。
『○月×日。おにぎりを追いかけて異世界に来ました。とりあえず、お腹はいっぱい。ネコミミは、意外と可愛い』
「よしっ! 腹ごしらえも済んだし、日記のネタ探しに行きますか!」
私はピコピコと耳を動かし、誰かいないか「気配察知」をしてみた。
……くんくん。
どこからか、おにぎり以外の「いい匂い」がしてくる気がする!
「さて、れいちゃんの初・住人遭遇か?、いっちゃう?」




