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1-8 逃げ足が早い二人

「重力操作≪グラビティ≫」


 ドン、と大きな音が鳴り響き、その場にいたルビィとアランを除く全員の人間が――――地面に、這いつくばった。

 視認できる対象にかかる重力を、一気に三倍にしたのだ。

 長くは続かないが、対集団戦におけるアランの力技である。

 

「今だ!」

「うん」


 それはアランが作り出した完璧な「隙」だった。間を置かず、アランはすぐに詠唱する。


「空間遮断≪カットオフ≫」

「行くわよ!――――――麻痺毒≪パラライズ≫」


 ガコン!と銃弾が打ち込まれる。集団全体に、一気に麻痺毒のモヤが広がった。二人分の空間だけ遮断しているため、毒はルビィとアランだけには及ばない。


「閃光弾≪フラッシュ≫」


 次いでガコン!ともう一発ルビィが弾を打ち込むと、その場を眩いばかりの光が包み込んだ。

 敵の魔法使いたちは痺れている上に、この光で目を開けていられない。

 

 そうして二人は示し合わせたように、あっという間にその場から離脱した。



 ♦︎♢♦︎

 

 

「ま、まて……!」

「ゔう、身体が……痺れて……」

「畜生!!災厄め……!!」


 二人が離脱した後、麻痺毒にやられた魔法使いたちは倒れたまま身じろぎもできずにいた。するとそこへ、スッと女が現れた。何もなかった場所に出現した彼女は――透明化したままだったのだ。


「追跡しようとしたけど、見事に撒かれたわ」

「畜生……畜生!!」

「はあ。だから私は、透明化したまま襲おうって言ったのに」


 隠密の特異魔法を持つ女、ディアンヌ・ラノワは呆れた声を出した。

 

「それじゃ……それじゃあダメなんだよおぉぉおおお!!イドルヴ様の目に見える形で、災厄を鎮めないといけないんだ!!我々はかのお方の!!かのお方の目を、しっかりと覚まさないといけないのだから……!!」

「ヘクター、あなた……麻痺を受けてまで爪を噛もうとするのを止めなさいよ……」

 

 ディアンヌはため息を吐いた。これでもヘクターは侯爵家の嫡男だ。子爵家のディアンヌが歯向かうわけにはいかないのである。


「まあ……全員透明化したまま戦っても、きっと負けていたでしょうね。相手には随分と余力があった。特にあの『赤ずきん』――――逃走の時まで全く動かなかったけれど、只者ではない気配を出していたわ」

「くそぉ!!我々が負けるなどあってはならないのに!!あってはならないのにぃぃ!!」


 ヘクターはまだ狂乱して叫び続けている。ディアンヌはもう一度ため息を吐きながら、思案した。

 

「これは一度本部に戻って、編成を練り直す必要があるわね……」


 その声はヘクターには、全く届いていなかった。

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