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世界を救う英雄として一緒に戦った腐肉の中で、勇者はただぼうっと焦点の合わない目でどこか遠くを見つめるのみである。
かつては自信満々に輝いていた目は落ちくぼみ、乾いた唇は老人のようであった。
艶のあった黒髪も今は色褪せ、それが勇者であるとは俄には信じ難い惨状であることにやっと気付いたローゼマリアは、眉をひそめて後ずさる。
これは不味いと判断した宰相が、王と宰相以外全ての人間を下がらせたのは賢明な判断であったであろう。
「勇者レオンよ、此度は大儀であった。仲間達の事は案ずるな。大聖堂にて復活の義を執り行う手筈が既に進んでおる。とにかく今は休んでくれ。十分に滋養と休息を取った後に今後のことを話そう。」
王は何とも痛ましい状態のレオンを見て、今彼に必要なのは落ち着ける環境であると判断した。
宰相に何事か呟くと、すぐに広間の中に数人の神官とメイド達が現われた。