勇者の凱旋
魔王が討伐された。
その報せが国で待つ国王に届くのと、国が威信をかけて勇者一行として送り出した5人が大広間に転移してきたのは、ほぼ同時の事だった。
だが、人間としての原型を留めているのは勇者のみで、他の4人は臓物をぶちまけ腐臭を発する、ただグロテスクな肉片と化していて、本当に4人いるのかもわからない有様だった。
「すぐに蘇生を!」
城内が慌ただしくなり、唯一の生存者である勇者へと自然と視線が集まる。正確には、グロテスクな肉片と化した4人を見るや、眉をひそめ扇で顔を隠す貴族や王族も多かったが、血と内蔵と肉片と髪の毛がごちゃまぜになった物体を見れば、誰だってそのような反応をするであろう。
腐肉のなかで憔悴しきった勇者に声をかけられるものはおらず、誰もがその一挙手一投足に注目していた。
そこに、場違いなほど明るい少女の声が響く。
「勇者様!無事魔王を討伐なさったと聞きました!おめでとうございます!...それにしても、なんですの?この凄まじく臭い肉片は。勇者様、どうか王族専用の大浴場で湯浴みをなさって旅と戦の疲れをお癒し下さいませ。」
そう声をかけたのは、つやつやのブロンドヘアーに真っ白な肌、ほっぺと唇はピンクに色付き、豪奢なドレスを身にまとった美しい少女だった。
彼女の名はローゼマリア。その美しさと天真爛漫さから、聖女との呼び声も高いこの国の第三王女である。