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2・紫の瞳の「少女」~三

 街から少し離れた高台の上にある鉄板と木の継ぎ接ぎの小さな家。

 ここに、ガンは住んでいる。亡き祖父ボンが建てたこの家にガンは犬のドンと共に生活をしている。


 いま、ガンはベッドの上で眠っている。特に、急ぐ用も無いので久しぶりにグ~タラと朝の時間を、彼曰く「有意義に」消費していた。


 そんな彼の寝室に、何かが、入ってきた。かなり低い位置の気配だ。

 ガンはそれに気付いていたが


(ドン、またきたか)


と、そのまま「有意義な」消費を続ける。



 そんな彼の耳元に何かが響く。


 「おはよ・・・・ございます」


これは、ドンではない・・・・・・・・明らかに人間。しかも、この声としゃべり方に覚えがあった。


ガンはバサッと飛び起きて横を見た。


 「ん・・・・起きました」



視界に入る。

 白に近い銀の髪と薄い紫色の瞳。


 そこに少女・リタ・テリュークがいた。


 昨晩と同じく首をカクッと傾げてこちらを見ていた。

 昨晩と違う所は少々大きな長袖の茶色いカーディガンを這おっている所だ。今のガンの視界からは見えにくいが昨日の服の上から這おっているようだ。


 いや、ガンにはそんなことはどうでもよかった。それよりもなぜ


 「なんで、ここに」


「・・・・起こしに」


答えてくれたがガンの質問とリタの答えは違うものであると思われる。


 「えと、なんで家に、うん、いるの?」


ガンは言い直した。少し、リタを見つめていると起こる妙な感覚が顔を見せ始めているが、特に気になる事ではないのでリタの答えを待つ。

 リタは目をクリクリと器用に回し、少し間を開けて、「・・・・あ」と言うと


「・・・・遊びにいこう・・・・と、ロロに・・・・言われて・・・・来ました」


ここにいる理由を答えた。


「え? ロロも? てか、二人だけで来たの?」


ガンは驚いた。確か、リタは少し足下が覚束ないし、ロロナはまだ四つ。そんな二人がここまで来るのはかなり大変だったはずだ。


 「んん・・・・ここまでは・・・・おやかたに・・・・帰りは、ガンちゃんに・・・・送ってもらう・・・・ようにと」


謎はすぐに解けた。なるほど、それなら合点がいくというものだった。親方自慢の動力三輪車を引っ張り出したに違いないとガンは思った。

 「あの・・・・起き・・・・ますか・・・・起き、ませんか?」


リタが目をパチパチとさせて尋ねてくる。


 「ああ、そうだな。起き――」


せっかく来てくれたのだ。起きないわけにはいくまいと、動こうとした時はたと気付いた。いま、自分は独り暮らしの男特有の寝姿だという事に


「ごめん、着替える」


「・・・・ん」


下はシーツで隠れていてよかったと思いながら動こうとする。


 「・・・・・・・・」


が、リタが出ていこうとせず、ジッとガンを見ている。これでは、動けるものではない。


 「あの、なにか?」


とりあえず聞いてみる。


 「着替え・・・・待ってる」


そんな応えかたをされても、そこで待ってもらわれては困るというものだ。


 「部屋の外で、待っててくれないか?」


「・・・・なんで?」


「な、なんでも」


「・・・・ん」


リタはよく解らないといった感じに首を傾げて部屋を出ていこうとするのだが



「あの、なんでそんな態勢になるの?」


リタは屈んで四つん這いになっていた。


「ん・・・・ここ・・・・散らかってる、から・・・・動きにくい、から」


どうやら足下が覚束ないために、色々と散らかっているこの部屋を動くにはこの態勢のほうが移動しやすかったらしい。 なるほど、最初に入ってきた時に気配が下にあった事に納得できる。

 が、その態勢だと色々とヤバい事になる。リタのスカートは短めだ、這おったカーディガンでギリギリにガードができているのだが、それでも目のやり場には困るというもので。

 ガンは極力見ないように反対の壁をジッと見るように努力した。



 「じゃ・・・・ロロと、待ってます」


ドアまでたどり着くと少し危なかっしい立ち方で立ち上がると、そう言い残し部屋を出ていった。


 部屋に残されたガンは、悶々とした頭を掻きむしって自己嫌悪した。


 (俺の、バカヤロ~!?)








 ガンが着替えを済ませ、なんだか気まずく感じながらリビングに来てみると。


 「おっもしろ~い!」


ちょうどロロナがドンに跨がって長く垂れた耳をパタパタとさせてキャッキャッと笑っていた。

 ドンは跨がられても嫌そうにしてはおらず、特に興味が無さそうに目をトロンとさせて寝そべっており、その様子をリタが椅子に座ってジッと眺めていた。


 「おはよう」


ガンが朝の挨拶をしてみると


「あ、おはよう! ガンちゃん!!」


元気な挨拶が返ってきた。ドンは尻尾を二~三振るだけの挨拶をしてきた。


 そして


「ん・・・・おはよ、ございます・・・・ガンちゃん」


リタも二度目の挨拶を返してきた。そんな彼女の姿を見ると先程の光景がガンの頭の中で蘇り、それをガンは慌てて掻き消して


「あ、その、ごめん!」


謝ってしまった。リタはなぜ自分が謝られているのかよくわからずカクッと首を傾げる。


 「・・・・なんであや、まるの?」


「いや、なんか、な、うん。何でもないです」


特に説明をするとなんだか泥沼に填まるような気がして、理由を言うのはやめておいた。


 「ガンちゃんおかしっ! へっんなの! ね~!」


無意識に変な動きになっていたガンにロロナが楽しそうに笑って、ドンの耳を持ち上げ、耳元で大きな声で言った。ドンは欠伸を噛み殺すだけであった。


 「・・・・ん、ガンちゃんは・・・・変ですか?」


リタが目をパチパチさせて聞いてきた。

 「や、変じゃない」


取りあえずの訂正。


「・・・・ん、ガンちゃんは・・・・変じゃないです」


「あの、さっきからなんで俺をガンちゃんて?」


リタがずっとガンちゃんと呼ぶので何か気になって聞いてみた。


 「・・・・ロロが、ガンちゃんと・・・・呼んでるか、らです・・・・だめ?」


「いや、別にダメじゃないけど」


「・・・・ん、なら・・・・問題ないです・・・・ね」


特に嫌ではないからそのまま呼ばせてあげようとガンは思った。それよりも、もうひとつ気になる事があるので聞いてみる。


 「なんで、敬語?」


するとリタは不思議だと言いたげにしばらくジッとガンを見つめてから理由を言った。


 「ん・・・・ガンちゃんは、こんなかんじ・・・・の、言葉が・・・・凄く・・・・好き、だと・・・・おばさんが、言うので」


(なにを吹き込んだんだ! あのおばさん!)


おかみさんの悪戯な笑顔が目に浮かぶガンであった。


 「あの、特に敬語はいらないから」


「・・・・ん、わかった」


そこは訂正を要求すると、すんなりリタは応じてくれた。


 「それで、おいロロ。何しに家に来たんだ?」


「え? 遊びに来たんだよ? ガンちゃんお休みでちょうどいいからリタちゃんと一緒に遊んで来いってケンが言ってた!」


なにがちょうどいいんだとガンは思ったが、特にやることが今日は無いのでまぁ、言いかとも思った。


 ちなみに、ロロナは親方の事をケンと呼び捨てにする。これは、おかみさんが親方の事を二人きりの時にこう呼ぶのを覚えたかららしいのだが、親方はできればパパと呼ばせたいらしく、矯正の努力をしているが効果は出ていない。


 「それでね、どうせならリタちゃんに街をガンちゃんと一緒に案内しようと思ったの!」


ロロナが今日のプランを提案してみた。ガンもこれには賛成し


「いいなそれ。うん、行こう」


グッとロロナに親指を起てる。ロロナもフフンと得意げに笑って親指を起て返した。リタもよく解らないが取りあえず親指を起ててみた。


 「じゃ、せっかくだからバイクで行こう」


ガンは足の覚束ないリタとまだ小さいロロナの事を考えて、荷台付きのバイクを出すことにした。


 「やった! バイクだ!」


ロロナは大喜びをして万歳をし


「ん・・・・た」


リタもよく解らないが万歳をしてみた。

 「ドン。お前もどうせ街に行くんだろ? 一緒に行こうぜ」


ガンの声にドンは軽く


「アォフ」


やる気の無さそうな鳴き声で返した。





 こうして、三人と一匹は街に繰り出すことになった。










 炭鉱街「エコー」

炭鉱業により日々の生活が潤う街。

 ここで採れる「ディーラ鉱石」は生活燃料として重宝し、世界中に送られている。

 が、特に観光客が訪れることは無い。ごくたまに遺跡調査の学者が入れ替わっていくぐらいが外からの訪問者と言えるだろう。


 故に、この街に観光名所なる物は存在しない。ある意味、遺跡の上にあるこの街そのものが観光名所といえるのだろうが、ここに住む住人達には生活の場であるためそういう考えには到らない。


 それ故に、住人であるガン達にはリタを案内できそうな場所が思い付かない。

 取りあえず、ロロナの提案で広場に行く事になり、バイクの荷台に揺られながら、広場に到着した。



 「あ~、ガッタガタで面白かったね!」


途中の悪路を思い出しながらロロナがキャイキャイと笑う。


「ん・・・・面白か、た」


リタも面白かったようだ。


 「オォ・・・・ゥ~」


反対にドンは気持ち悪かったようで、小さく唸って荷台の隅で経たり込んでいた。


 「だい・・・・じょうぶ?」


リタが背中を擦ってあげると「オッ、ホゥ」と気持ちよさそうな鳴き声を鳴らす。


 「ああ、ドンは時間が経てば元気になるよ」


「・・・・そう?」


ガンの一言でリタはそっ、と撫でるのを止めた。


 「ブフゥ~」


余計な事をと言いたげな批難めいた鳴き声を挙げて飼い主を恨めしそうに睨むドン。


 「で、広場に来たはいいが、どこ案内するきだよロロ」


その鳴き声等を気にせずに、ガンはロロナに尋ねた。


 「ん~っとね」


ロロナが唸る。辺りを見回してもこの広場には特になにもない。あるといえば端にある行事等を連絡する掲示板ぐらいのものだ。

 ロロナはたまにやってる大道芸に期待していたのか、キョロキョロと辺りを見回すが、今は生憎なにもやっていない。

 ロロナは更に考え込むと急に何かを思い付いたようで、お腹をポンと叩くと元気にこう言った。


 「おなかすいた! なにか食べようよ!!」







 特に反対する理由もないので、一行は広場の端にバイクを停めて食べ物を求めて市場に移動する事にした。


 ロロナがドンにしがみつきながら前を歩く。その後をガンとリタは歩く。


 リタは覚束ない足取りで辺りを物珍しそうにキョロキョロと見回していた。


 「やっぱ、バイク持ってきたほうがよかったか?」


ふらつくリタを見ていると少し心配になる。


 「・・・・んん」


しかし、リタは首を横に振る。


「・・・・こう、みんなで歩くのが、いい・・・・とても、いい」


「そっか、ならいいか」


「・・・・ん、いい」


リタがこっくりと頷く。その姿がとても可愛く見えた。

 すれ違う人達も振り返るほどの可憐さであろう。


 いや、本当に振り返っているようだ。やはり、リタの髪と瞳は物珍しいのだろう。それがなくとも美しい顔立ちをしている。そのうち、誰かに声を掛けられてもおかしくはない。


 「お、おお! おいおい!!」


そう思った矢先に大きな声が近づいてくる。しかもこの無駄にでかいダミ声には聞き覚えがあった。


 (面倒なひとにあった・・・・)


「おい誰かと思えばガンじゃねぇか! おいおい、誰だこのべっぴんな嬢ちゃんは!!」


「はは・・・・どうも」


取りあえず、苦笑い。相手はいつも朝に挨拶替わりの野次を飛ばしてくる男だった。悪い人では無いが立ち止まると結構絡みがしつこいのだ。


 「ん・・・・おはよう」


だが、リタは律義に立ち止まって挨拶をした。


 「おお! おお!!」


なにがそんなに嬉しいのか男は妙に高揚しているようにみえる。


 「ど、どこで引っかけたガン! お前には勿体ない! 生意気だ! 俺なんて、俺なんてなぁ!」


まるで、酔っ払いだ。いや、もしかすると酔っているのかもしれない。なんだか余計に面倒な事になりそうな予感がガンはした。


 「なにしてんの!!」


その時、ドンと一緒に先に行っていたロロナが戻ってきた。


 「ああん! なんだ! ケン所のチンチクリンじゃねえか!!」


ロロナをみやると男はダミ声で笑う。チンチクリンと言われてロロナはムッとした。


 「チンチクリンじゃない!!」


「いいや、チンチクリンだ!! ちんまいちんまいチンチクリンだ!!」


「大きくなるもん!」


「ダハ! 大きくなってもチンチクリンだ!」


「違う、母ちゃんみたいにでっかくなるんだもん!」


男は凄く大人げなかった。このままではロロナがそのうち泣き出してしまいそうだった。

 ガンはそのあたりで止めるように男に言おうと思った。その時


「・・・・ダメ」


リタが先に間に入ってきた。


 「ロロ・・・・かわいそう」


「おい、お嬢ちゃん」


「・・・・・・・・」


「俺はちょっとからかうつもりで」


「・・・・・・・・」


「あの」


「・・・・・・・・」


「ごめんなさい」


男はジッと睨んでくるリタに気圧されて謝った。


 「すまなかったな、ロロ、おっちゃん調子にのった」


ロロナにもきちんと謝った。


 「うん、いいよ」


ロロナも男を許した。


「じゃ、じゃあな。おい、ガン。結構、おっかねえぞあの嬢ちゃん」


男は「ケンカにゃ気を付けろよ」とガンに耳打ちして去っていった。


 (気を付けろよと言われても・・・・)


「ロロ・・・・だいじょうぶ?」


「うんありがとリタちゃん」


「・・・・ん」


(この娘を怒らせることなんて俺にはなさそうだ)


ロロナの頭を撫でるリタは本当のお姉さんのようでそれを見てると


「ん・・・・なに?」


「いや、別に」


微笑ましくて、自然にリタに笑顔を向けられる気がガンにはした。


「・・・・?」


リタはカクッと首を傾げた。




 「おやガン? おはよう。今日はお休みかい?」


市場に来ると馴染みのおばちゃんが声を掛けてきた。


 「ああおはよう。」


ガンが挨拶をする。


 「あらあら、今日は両手の花じゃないか」


おばちゃんがロロナとリタに気づくとニヤッと笑う。


 「ロロと散歩かい? そちらのお嬢さんは始めてみるね?」


「おっはようございます!」


「ん・・・・おはよ、ございます」


ロロナが元気なおはようの挨拶をする。リタもそれに続く。


 「はい、おはよう。いい挨拶だ」


おばちゃんも挨拶を返す。


 「ガン、あんたのコレかい? 見たところ外国人みたいだけど、どこで騙して来たんだい?」


「コレでもねぇし、騙してもねえよ。変な勘繰りはやめろ」


「お嬢さん。お名前は?」


おばちゃんはガンの話しなど聞いちゃいなかった。


 「ん・・・・リタ」


「そう、リタちゃんかい。ガンのことよろしくね」


「・・・・・・・・」


リタはしばし考えてから


「ん・・・・よろしく、されます」


と応えた。


 「アッハハ、面白い娘だね! ガンもいい娘を貰ったもんだ」


「まてまて! なに勝手に話が進んでんだ! というか、何を言っとるんだ!!」


おばちゃんは邪推して、からかい倒すつもりだろう。これ以上ここにいてもガン的に良いことはない。この場を移動することにした。


 「じゃ、そういうことで」


「あ、待ちなよ」


「何だよ?」


「お祝いだ。持ってきな」


おばちゃんは紙袋を投げ渡した。その中身は袋いっぱいの砂糖たっぷりの揚げ菓子だった。


 「へ? こんなに? えっと、いくら?」


「お祝いっていったろ? おばちゃんの奢りさ」


「そういうわけにもいかないだろ?」


「いいってんだよ。その代わり、責任取るときには挨拶にくるんだよ」


(責任ってなんだ? なんの挨拶だ!!)


おばちゃんはシタリと笑って背中が寒く感じた。


 「ロロにはクキ飴もあげようね」


「わっ! ありがと!」


思わぬ所で、食べ物を手に入れてしまった。


 「で、そっちのご予定はあるのかい? なんならロロを預かっても」


「だから何の話しだよ!?」







 手近に座れる場所で揚げ菓子を食べる。ロロナはそうそうに食べ終え、ドンと戯れていた。


 残された二人は横ならびに残りの揚げ菓子を片付けていく。


 「あの、さっきのごめん」


ガンはなんとなく話しかけてみる。


 「・・・・ん?」


リタは口元を砂糖だらけにして食べながらガンを見た。


 「ほら、おばちゃんのやつとか」


「ん・・・・気にしない・・・・はなし、わからなかった、から」


「あ、そっか。解んなかったんならいいや」


「何の、はなし・・・・だったの?」


「や、俺にもよく解んないかな!?」


ガンは誤魔化しながら揚げ菓子を一気に頬張った。鼓動が自然に早くなる。


 「・・・・・・・・」


「んぐっ、どうした?」


ジッと見つめられてガンは喉に詰まらしそうになった。


 「・・・・ん。なんでも、ない」


いって揚げ菓子を口にするリタ。


 「ここは・・・・たのしい」


「ん?」


「わるい・・・・ひと、いない。いい・・・・ひと、ばかり」


「ああ、ま、ちょっと度が過ぎる人らも多いけどいい奴ばっかだな。て、いきなりどうしたの」


「ここ・・・・リタの、世界に・・・・なるかな」


急にそんなことを話し始めてガンは少し困惑した。

 世界になるとは、どういうことだろう。

 リタは自分の居場所を探しているということだろうか?


「あ、砂糖つきまくりだな。ほら」


とりあえず、ガンはリタの砂糖だらけの口を拭ってあげた。

 (あ・・・・)


口元が綺麗になると、油で艶っぽくなった唇が強調され、ガンは息を呑んだ。

 なんだか吸い込まれるような気分になる。いままで耐えてきたものが流れ出すようなそんな気分に


「・・・・ガンちゃん」


なんだかリタの声が遠くに感じる。


「ん・・・・やっぱり」


これは、最初の感じに、戻りそうな。


「テリー・・・・みたい」


テリー? その名前で一瞬遠くにいっていた意識がはっきりとする。


 「顔も・・・・声も・・・・けど・・・・テリー、みたい」


何度も聞くリタの口から聞いた名前。テリー。一体、何者なのだろうかとガンは知りたくなった。同時に胸の奥がとても熱くなった。


「テリーって誰?」


「・・・・ん・・・・テリーは」


ガンの問いにリタは少しづつ答えようとしてくる。


その時


「な、何だ!?」


「!!?・・・・ぁ」


遺跡の炭鉱街「エコー」に、爆音が響いた。

何だ!? 何があった地震か? わからないよあたしに聞かれても!


 ざわめく住民達の声。こんな耳をつんざく暴力的な爆音は炭鉱夫以外の者は聞いたことがなかった。


 おい、谷が、炭鉱場近くの谷が煙を上げてる・・・・。


 誰かの声が聞こえる。そこはガンのよく知っている場所だった。


 (そこ、「気流」の流れ場じゃねえか!?)


仕事場の一つであり、リタを見つけたあの場所。


 「ガンちゃん、これなに、こわい!」


ロロナがいつの間にか、ガンの足元にしがみついて震えていた。


 「大丈夫だ。心配すんな」


ロロナをなだめるガンだったが、大丈夫なんて保証はなにも無かった。


 「なんなんだよ・・・・」


ガンは「気流」の流れ場の方角を睨む。建物に隠れているが、煙が確かに見える。


 「・・・・?」


不意にガンは手を握られた。


「リタ?」


隣のリタを見ると


「!!? おい!?」


リタはいままで見たことの無い恐怖に凝り固まった表情で震えていた。




 ――恐い、人が、来た・・・・。







特に必要の無い場面がありましたが。


話は、大きく動く予定です。

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