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幻想奇譚

思想を体現するが如く

作者: 秋暁秋季

注意事項1

起承転結はありません。

短編詐欺に思われたら申し訳御座いません。


注意事項2

甘茶ってこんなに美味しいんですね。

銀の花弁が舞う様子を延々と見たのです。一枚一枚が風に揺られて落ち行く様は、余りにも儚く、まるで静かな雪を見ている様なのです。そうして落ち切った花弁は雪のように積もる事はせず、ただ風に流されるままに、ただコロコロと地面を走り去ります。

顔を上げます。もっと豊かなものに触れたかったから。けれどもまだ満開には至らない五分咲き。満開になれば、もっと素敵な光景がそこに広がっておりますでしょう。

あぁそういえば、昨年はこの時期……。そう思いを馳せたら行くべき場所は決まっておりました。


上質で甘い香りが立ち込める仏閣の境内。青々とした木々が風に揺られるのを感じながら、私はあるお方の元へ参りました。

本日、四月七日。明日はお釈迦様の誕生日で御座います。昨年までは存じ得ず、ただ促されるままに甘茶を掛けた私で御座いますが、本日は誕生の祝福を込めて、お掛けさせて頂きます。

なんでもこの行いには、世が平和になると、甘い露が降るそうな。その事にかけて行われているようです。貴方様が降臨なさった暁には、きっと甘露が降り注ぐ事で御座いましょう。それまでの長い長い年月、どうか、少しでも平和に……。

甘茶をお掛けした後の事、ふと一つの気付きが。お釈迦様の真後ろに給水器なるものが鎮座なされております。くるりと回り込んで注意書きを拝見させて戴くと、『どうぞご自由に』との事……。

私は前に置かれた杯を手に取ると、琥珀色の茶を杯いっぱいに満たします。お茶は暖かく、ただその温もりが容器を通じて指に伝わって参ります。

鼻を近付けて、息を吸い込むと、上質なただ清涼な甘さが肺へと注がれて行きます。口を付けて、その甘露を舌に乗せると、思わず息を呑みます。

確かに甘いのです。極上に甘いのです。けれども皆様がご想像なさる様な、砂糖菓子の甘さとは程遠く、あっさりとしたもの。確かに濃いはずなのに、何処か淡さを感じるお味。

私は花に囲まれたお釈迦様を拝見致します。

貴方様の存在は、世界各地の方々を救う程に色濃くあります。けれどもその思想は、見知らぬ誰かが受け入れられる程に淡く馴染む。

……貴方様を体現した様な飲み物なのですね。

桜吹雪の話にしようと思ってこうなった話。


花祭りって、お釈迦様の誕生日を祝う行事だそうで。

私も甘茶掛けて、甘茶飲んで、お参り終わらせました。

※細部に至るまで気遣いが凄い。


甘茶初めて飲みましたが、こんなに美味しいんですね。

甘さが押し付けがましくないんですよ。水を飲みたくなる甘さじゃないんですよ。

でもしっかり甘いんです。凄く甘いと分かるくらい。


押し付けがましくないけれども、確固たる深みがある様が、お釈迦様の思想と似ていると思って出来た話。

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