第二話
微かな物音でルイスは目が覚めてしまった。
ローズの顔を見てからもう一度眠りに着こうと思い、寝返りを打つ。しかし、そこには妻の姿は無かった。
ベットから少し身を乗り出して文字が光る時計を見る。やはりとうに0時は超えている。妻は寝ている時間のはずだ。
なんて、寝ぼけた頭でそんなことを考えていたら、廊下から話し声が微かに聞こえた。
なにかあったのではないかと、護身用に隠してあった剣を持ち恐る恐る廊下に出る。
心底ビビっているルイスは、今にも剣を落としそうな手の震えをぐっと抑え込み、慎重に歩を進める。
(もしかしたら悪い奴が入ってきて、妻達を人質に取ったのかもしれない、)
ガタガタと手が震える。剣の持ち方がぎこちない。
こういう時にだけしっかり剣術を習えば良かったと後悔するのだ、
後悔の渦の中、薄暗い廊下に一筋の光が見えた。
(ルイーズの部屋だ)
そっと近づくと人の気配がある。
気が付かれてはならないと息を潜め、ドアの隙間から部屋を覗く。
「ローズの存在は私の心を温かくするわ」
「私も同じくらい幸せよ!このまま時が止まればいいのに、」
「愛してる」
「私も」
(!?!!?!)
ルイスに声にならない驚きが電流のように走った。
思考が停止したまま、とりあえず部屋に戻る。
ベットに入りながら先ほどの光景が頭を支配する。
(見てはいけないものを見てしまった。あれは、なんだ?、恋人のように感じたが、、まさか、)
悶々と考えを巡らす。しかし考えはまとまらない。
なのにだんだんと夜が明けていく。
「旦那様起きてください」
メイドの声で起きる。
考えているうちに寝てしまったのか、
なぜかドキドキしながら妻達が待つ食堂に向かう。
「遅かったわね?食事にしましょう」
「あ、ああ」
昨晩の出来事が脳裏に焼き付いて離れない。
いつものように妻達は仲良さそうに食事をする。目が見れない。
ルイスは終始無言で食事を終え、そそくさと食堂を後にする。
ルイスは部屋に戻ったものの、気分が晴れずに庭に散歩をしに行くことにした。
ぼんやりと花を見つめながら歩いているうちに、向こうから妻達が向かってきたのに気づいた。
(ああ、妻達は食事を終えたら散歩するのが日課だったな)
などと考えているものの、身体は反射的に物陰に隠れていた。
「今日のルイス変だったよね?」
「そうねぇ、変だったわ」
「もしかして昨日のことがバレたのかなぁ?」
「まさか!ポンコツルイスよ?バレるわけないわ。でも。絶対バレないようにしないと」
(あああああ、やっぱり二人は恋人なんだ!薄々勘付いてはいたけど、昨日見たことは忘れなければ!)
忘れなければと誓ったものの、そう簡単には忘れることはできなかった。
悩んだルイスは従兄弟に助けを求めることにした。
従兄弟は「アルベル・ダプテ」と言う。聡明でアドバイスをくれる従兄弟だ。困ったらアルベルと言うものだ。
グレア家には分家として「ダプテ家」がある。
しかし、初代が不仲だったため世間ではグレア家とダプテ家は仲が悪いとされている。光と闇とも言われているらしい。
が、実際は仲はとても良いのだ。世間のイメージを守るために不仲を装っているが、、
なので、直接家には尋ねることが出来ない。
しかーし!グレア家とダプテ家は地下を通り行き来出来るのだ!
ということでダプテ家にやってきた。
「いきなり訪ねてきてどうしたんだい?」
「アルベル!助けて欲しいんだ、!!」
「はぁ、今回はなんだ?」
反応から分かる通り毎回毎回助けてもらっている。
一人では何もできないからだ。ポンコツだからねぇ
これでも少し怒っているんだよ、
「なるほど、ルイスの奥さん達は恋人同士だったんだね。、、、、LGBTQか、」
「える??、まぁ、そうなんだ、どうすればいい?」
アルベルは昔から知らないことをボソボソと話す。
えるじーなんとかきゅう??
なんのことかさっぱりだ。そんな言葉あったかなぁ?
まぁいい、いつものことだし、
「とりあえず、君はいつも通り過ごして、忘れるんだ。僕は二人を調べることにするよ」
「分かった!アルベルの言う通りにするよ!」
長居は出来ない。無断で出てきたから。もう帰ると伝えてドアをあける。
「きゃ!」
「あっ、すまない」
ドアを開けたらメイドとぶつかった。
妻の顔が浮かぶ。平然を装って家に帰ろう。
明日には平和な日常が戻ってるはずさ、