31 この、口という器官に感謝しつつ。わ、ワッフル、ワッフル
そこへ、
「さぁ、お口をアーンする時間でーすよ!! 三四子たん!!」
「み、三四子たんのお尻ィィンッ!!」
と、無力化された根占三四子の口に、上市理可が続けて“ナニカ”をする。
「や、やめてよッ!! この変態コンビ!!」
「理可氏!! まず、お尻ペロペロさせて!! お尻ペロペロさせて!!」
「ああもう!! 邪魔だし!! 定祐氏!!」
と、上市理可が綾羅木定祐をどかせつつ、叫んで抵抗しようとする根占三四子を伏せる!
そのまま流れるように、
「よ、よし!! い、行くおッ!! お、お仕置きタ、イム!!」
上市理可は根占三四子の口に、拷問具の“妖梨”をねじ込んだ!!
「ごッ!? ゴディ、バッ――!?」
その、ねじ込まれた根占三四子だが、声にならぬ声を漏らす。
その次の瞬間、
――ゴ、パンッ……!!
「ぐっ!?」
と、膨張した妖梨により、根占三四子の口の内部から強力な力が加わり、その口を3センチほど“欠損”させる。
「が、ああ”あ”ぁ”ぁ”!!!!!」
根占三四子が、口から血をボタボタ垂らしながら絶叫する!!
まあ、現代法はともかく、彼女が今まで口の中に爆弾を入れて爆殺してきた人間の総計を考えれば、それくらいの罰も当然かもしれないーー
ただ、被害者のほとんどは寝ている途中に爆殺された、なおかつ即死であることから、痛みを感じたのかは微妙かもしれないが……
それはさておき、本来なら、“これ”で大抵の犯人の心は“折れる”。
耐え難い苦痛に悶えることーー
そして、さらなる苦痛を与えられるのでは、との恐怖に……
――だが、そこは、この根占三四子は狂人だ。
――ブ、チッ……
と、口の欠損の痛みに耐えつつなのか、魔界植物の拘束を破る音がした!
続けざま、
「ああ”ぁ”ぁ”ッ!!! 何すんの!!! このクソアマがァァッー!!!!!」
と、口からまだ血を多くたらしながらも、完全に激高した根占三四子がゆらり――と立ち上がる!
そのまま、根占三四子は二人のほうへ凄まじい勢いで突撃する!!
「口開けるか尻の穴こっちに向けなさいッ!!!!! 穴という穴に爆弾ぶち込んで殺してあげるわ!!!!!」
と、鬼神のごとく、根占三四子が上市理可に襲いかかる!!
「くっ――!!」
「り、理可氏――!!」
上市理可がその攻撃を回避しようとするも、その圧に圧されかける!
その、ピンチと思われた刹那ーー!!
――ポ、ワン……
突然に、今度は斜め上のほうの空間に、異世界のごとき穴が開いたと思いきや、
「ーーその辺に、しておくのだ」
と、箱根温泉Tシャツ姿のクソダヌ――、否、妖狐の神楽坂文が現れる!
「な”っ!? 何よ!? このタヌキ!!」
予想だにしない出来事に、根占三四子の動きが一瞬とまる。
そのまま、
「おいコラ。私は、タヌキではないぞ」
と、妖狐は冷静な顔で、動揺する根占三四子に“ナニカ”を振りかぶる。
その、ブン!! と大きく振りかぶった瞬間、
――ゴ、ッカァァンッ……!!!
「ガッ――!?」
と、何かゴツゴツした、竹輪のような筒に強引にして根占三四子を突っ込ませる!!
それは、よく見るまでも木だった。
筒状に、中が中空の木の幹に、根占三四子が閉じ込められる。
米国に、“獲物を追った猟犬が中に閉じ込められてミイラ化してしまった木”というのが博物館にあるが、それを想像すればよろしいだろう。
「ぐぅ”ぅ”!! 何すんの!! このタヌキ!!」
完全に動きを封じられながらも、根占三四子が強がって叫ぶ。
「ふむ。貴様は、屋根裏という狭い空間が好きなのだろ? なら、その中はちょうどよかろうに?」
と、妖狐がドヤ顔で嗤う。
そのようにしていると、
――ドドド……、ド、ワンッ――!!
と、外が騒がしくなったと同時、警察らが勢いよくドアを開け、
「根占三四子!! 逮捕するぞ!!」
「まったく!! 派手にやりやがって!!」
と、ドタドタ!! と雪崩れ込んできた。
そんな彼らに、もう動くこともできない無力化された犯人、根占三四子のほうを任せつつ、
「うわぁぁん……、お尻ペロペロできなかったしぃ……」
綾羅木定祐が、力の抜けたように膝を落とす。
「まあ、とりあえず、事件は解決したしさ? このあと、朝食にワッフルでも食べるし? 綾羅木氏? この、口という器官に感謝しつつ。わ、ワッフル、ワッフル」
と、気を落とす綾羅木定祐に、上市理可が声をかける。
「ああ、そうだな……。口に関する事件だっただけに。ワッフル、ワッフル」
「うん。ワッフル、ワッフル」
顔を上げて朝日の指す中、口の中に広がる心地よい甘さを想像しながら、綾羅木定祐と上市理可のふたりは言った。
(終了)




