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【シン屋根裏の散歩者】  作者: 石田ヨネ
第七章 決着

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27 だから、このままタイーホするよ! ウェヒヒ!



          (1)



 場面は代わって、ある一室。

 研究用のデスクにコンピュータ、何かの機器や、液体窒素のタンクのような設備がある。

 さながら、研究室のような雰囲気を感じさせる。

 まあ、実際に研究室なのだが……

 それは、さておき、

「さあ? 追い詰めたぞ、三四子たん!! もう、お前に、後はないはずだ。うぃひひひ!!」

「そう。だから、このままタイーホするよ!! ウェヒヒ!!」

 と、綾羅木定祐と上市理可のコンビは、根占三四子を指さした。

 ただのハイテンションでキモいだけの男女ふたり組に見えるが、確かに、彼らの異能力はそれなりのレベルものだ。

 ゆえに、それにもとづいた戦闘力も充分にあるだろう。

 そして、この状況ーー

 すでに勝負はついたようにも見える。

 しかし、

「へぇ……♪ じゃあ、やってみてよ♪」

 と、そんなふたりを前にしても、根占三四子はまだ、怯んだり諦めたりすることもなく、余裕そうな表情を見せる。

「じゃあ、やらせてもらおうか? 三四子たんのお尻ペロペロ!! 三四子たんのお尻ペロペロ!!」

「え!? 何で二回言ったの!? 綾羅木氏!」

「あん!? 大事なことだから、二回言いまし、たッ! 大事なことは二回言えって、学校の先生に習いませんでした!? 上市君!!」

「あっ、そっかぁ!」

「『そっかぁ』じゃないってば!! さっきからキショすぎるんだけど!! 貴方たち!!」

 と、確かにキモいハイテンションのふたりに、根占三四子がドン引きしつつ言う。

 そうしながらも、

「もう、調子狂うじゃない」

 と、根占三四子は苛立ちながらも気を取り直して、改めてふたりと対峙する。

 そして、先ほど見せた態度が強がりではないことを、ふたりは思い知ることになる。

 まず、


 ――スッ……


 と、気づかれないように、根占三四子は小型爆弾を後ろに放っていた。

 その、放った先というのは、液体窒素らしきタンクであり、


 ――ボン!! 


 と、爆発するや!!

 ――ジュワァァ!!!

 と、穴から急速に吹き出す液体窒素と、それによって空気中の急速に冷やされる空気中の水分が白煙のように発達する!!

「ちっ! 何てことを!」

 綾羅木定祐が舌打ちする。

 その間も、ドライアイスのように氷の煙幕が広がっており、

「ちょっ! 見失ったし、」

 と、上市理可が言ったように、根占三四子の姿を見失ってしまった。

 とりあえず、この場所からふたりも退避して、

「お、おい? 三四子たんは、どこ行ったんだよ?」

「さあ、分からないし」

「上へ逃げたのか? それとも、下へ逃げたのか?」

「さあ、」

 と、ふたりはいったん見失ったことで、根占三四子が上の階のほうに逃げたのか、それとも下へ逃げたのかさえも分からなくなる。

「まいったな……、そうすると、ふたりで上と下と、手分けして追跡するしかないな」

「そうね……。とりあえず、どっちが上いくのか下に行くのか、じゃんけんで決めない? 綾羅木氏?」

「そうだな」

 と、まさかのここで、綾羅木定祐と上市理可のふたりは、二手に分かれるのを“じゃんけん”で決めることにした。

「せぇー、のぉ……」

 綾羅木定祐の合図で、ふたりは振りかぶって、

「「じゃんけん、ほい」」

 と、綾羅木定祐がグーと、上市理可がグーを出す。

 すなわち、引き分けである。

「引き分けじゃん。つまらんのう」

「そうね。もう一回、やろ」

「ああ」

 ふたりは、ふたたび構える。

 その間、


「……」


 と、綾羅木定祐は、次のように思考していた――

 こういう時、次は手を変えるものだが、敢えて同じグーを出すというのも手だ。

 そして、ヤツは――、理可氏は、『この私、綾羅木定祐は“そのように考えて”、グーを出す』ということを想定して、次はパーを出そうと考えているだろう。

 まあ、“ここまで”は、浅い考えだ。

 恐らく、ここまでの思考は、理可氏も読んでいるはずだ。

 そうすると、理可氏の選択肢から、『私が、グーを出すことは』除外される。

 その、グーを除いた中で取りうるのは、チョキの可能性が高いだろう。少なくとも、引き分けで終わる。

 そう、ここまで読んで、私の思考は一周戻る。

 すなわち……

 私の取るべき選択肢は、“グー”だ。

 なぜ? 最初の、『敢えて同じ手を出すという思考』と同じではないかってーー?

 まあ、そう思うのも無理はない。

 ポーカーでも、プロと初心者のするアクションが同じになるということは、そこそこあることだ。

 ただ、初心者と玄人で違うのは、裏の裏まで読みあうというべきか?

 すなわちーー!

 自分の思考だけでなく、相手がどのように思考しているのかを考えるはもちろんのこと、“相手から見て”、自分がどのような思考をしているように見えるのか考えるという、メタゲームをしなければならない!

 ――と、ここで、綾羅木定祐は思考の世界から戻る。

 そうして、再び、

「……」

「……」

 と、両者はジッ……と息を止め、対峙する。

 そのまま、

「「せぇの! じゃんけんほい!」」

 と、剣豪がぶつかり合うように、振り下ろした二回戦――


 ――グワ、シッ……!


 と、綾羅木定祐が、拳を力強く握った形。

 すなわち、“グー”である。

 そして、肝心の、上市理可の手であるが、


 ――グ、グ……


 とこちらも、拳を握った形……

 つまり、

「何だ……、引き分け……、かよ」 

 と、落胆した綾羅木定祐の見た先、上市理可の手も自分と同じく“グー”だった。

 まあ、たぶん、こちらも綾羅木定祐と同じような思考をしたのか。

 あるいは、ただ手を変えるのが面倒くさかっただけなのかもしれない。

 そういうわけで、勝負は再度引き分けに終わる。

「うぅ~ん……、勝負が、つかんなぁ」

「いや、もう一回やればいいじゃん? 綾羅木氏」

「いや、そうなんだが……、何か、また引き分けになりそうな気がするんだが」

「じゃあ? 次、私チョキ出そっか?」

「何、その宣言? そのうえで、メタゲームをやるってわけか?」

 と、上市理可の宣言に、綾羅木定祐が怪訝な顔をする。

 そのように、じゃんけんひとつに時間をかけていると、


『おい、何をしておる。早く決めんか。このゴミ芥ども』


 と、遠隔から、しびれを切らしたような妖狐の声が聞こえてきた。

「「うるせぇよ!! 黙れよ!! うんこ!! てめぇは、黙ってタケノコでも掘ってろってんだよ!! クソポンコツクソダヌキ!!」」

 と、急かす妖狐に、ふたりは大人げなく“うんこ”呼ばわりし、理不尽にも切れてみせた。




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