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【シン屋根裏の散歩者】  作者: 石田ヨネ
第五章 攻めの調査、ポンコツダヌキの秘策

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21 どう考えても、俺……、すっげぇ潔白だし



          (2)



 ここで、場面は郷田のほうへと変わる。

 逮捕された郷田は、そのまま拘置所に入れられていた。

「へ、へーき、へーき……! へーきだから!」

 郷田は、そう自分に言い聞かせようとする。

 だが、その表情は強張り、がくがく震えていた。

「だ、だって! どう考えても、俺……、すっげぇ潔白だし……!」

 郷田は、なんとか自分を保とうとする。

 しかし悲しいかな、やはり、ひどく動揺はおさまらない。

 そもそも、この事件のことは、ニュースやネットで多少話題になっていたため知っていた。

 歯科の従業員たちの間でも時折話題になっており、事件の犠牲者の中に、自分の医院の客がいることも知っていた。

 ゆえに、少しくらいは気にしてはいたものの、まさか、こんなことになるとは――、自分が容疑者として捕まることになるなど、夢にも思っていなかった。

 ひどく動揺するのも、仕方のない話だろう。

「お、俺が……!? ば、爆弾を、仕込んだって……!? そんな、バカな……!」

 郷田は憤りに、ひとり言を叫ぶ。

 今でも信じられず、まるで、狐にでも化かされているような気分だ。

 それでも、

「し、しかし……、クソッ! も、“もの”があった以上……、どう言い訳しても、難しいじゃないか……!」

 と、爆弾というものが実際に“あった”というのは、強烈な、揺るぎない事実だ。

 気持ちが折れそうにならずにはいられない。

 例えばの話――

 何かアウトロー漫画のように、自宅に帰ってみると、身に覚えがないが何故か覚せい剤の注射器と粉が置かれてあり、そして、これまたタイミングよく、タレコミがあったと称して警察が部屋に入って来ようものなら……、まあ、自分の身の潔白を訴えても、99.9パーセント、通用するワケがないだろう。

 それと、同じことだ。

「そ、そうすると……! これは……! 誰かが、俺を、ハメようとしているのか――!?」

 郷田は、そのような考えが浮かぶ。

 もし、そうだとすると、真犯人は商売敵だろうか? 

 それとも、過去に治療をした客が、気に入らない何かがあり、自分に対して逆恨みでもしているのか?

 あるいは、歯科技工士の仕業だろうか?

 しかし、彼も、自分と同じく警察に拘留されている。

「うぐ、うっ……! どうする!? どうする!? 俺!?」

 焦燥感が募る中、郷田は自答しながらも憔悴していく。

 そんな、気が気でない状態が続く。

 まるで、天国からいっきに地獄へ落ちるかのような夜ーー

 不安に、寝れずに、げっそりとしていた。

 だが、そこは人間という生き物のさがか? あるいは、もともと寝つきのよいからだろうか?

 夜も3時くらいを回ってきたころ、ここで、“睡魔”が急襲してきた。

「ああ……、もう、ダメ、だ……」

 何がダメなのか、郷田は薄れる意識の中、

 ――ドサッ……

 と、仰向けになった。

 そして同時に、そんな郷田の下へ、


 ――ヒ、タ……、ヒタ……


 と、悪意が忍び寄っていたのであったが――


          ***

   

 そういうわけで、その郷田のところから、頭上ーー

 板一枚、隔てただけの空間でのこと。

 狭い天井裏を通じ、郷田に近づこうとする“ナニカ”の姿があった。

 ただし、その、招かれざる“散歩者”というのは、乱歩作品の、『屋根裏の散歩者』のようには、異世界をフラフラと楽しんでやろうという好奇心はあまりなさそうだった。

 その“散歩者”は、どこかイタズラでも企むような口元で、

 ――キュル、キュル……

 と、サイレンサーでもつけているがごとくーー

 静かにして、正確に穴を開けていく。

「……」

 ジィッ……と、散歩者は“穴”から、下界を見る。

 まるで、冷酷な狙撃手のような視線を、天井板下の、“穴”の下の、郷田の口へと向ける。

 そして、


 ――ヒュッ……


 ――ストンッ……


 と、超精密爆撃のような投下線で、ドングリかパチンコ玉ほどの大きさの“何か”を、郷田の口へと向かって投下した。

 その、次の瞬間、


「はん、むたr――!?」


 ――ボ、ン……!!!


 と、反射的に口が反応するのと、ほぼ同時――

 投下された“ナニか”は爆ぜる!

 手りゅう弾ほどではないが、人間の頭部を弾けさせるには十分な威力!

 高性能爆薬の硝煙と、血しぶきが漂った。

 しばらくして、煙がはれるとともに、何が起きたかあらわになる。

 少々チャラくもイケメンでとおっていた、名の知れた歯科医の郷田だったが、その顔は見るも無残な姿になっていた。

 まるで、爆竹でも仕込まれたスイカのように、ひどく損壊して散っていたのだ。




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