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【シン屋根裏の散歩者】  作者: 石田ヨネ
第一章 発端、天井の穴

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2 カンチョーとかけまして、お口と解きます


 また、こんどは碇賀が質問する。

「ほんで? その仮説だと、ま、あ……、遠隔で、ガイシャを爆殺できるかもしれねいけど、さ? 天井に穴を開けたのは、どうやってなん?」

「「は、にゃ……」」

 と、刑事コンビのふたりが、「あっ、そっかぁ……」と云わんかのような顔をするも、

「まあ、ついでに言やぁ、天井に開けるのは、何で――? って、話になっけど、」

 と、碇賀がさらに、つっこみどころを突いてくる。

 ここで、賽賀があいだに入って、

「例の、その……、“シン・屋根裏の散歩者”の仕業に見せるための工作、とか?」 

「はぁ、」

「まあ、もし、その【小型爆弾】説が正しくて、“歯科医”を犯人と仮定すると……、“警察や私たちを、天井の穴に注目させることで【シン屋根裏の散歩者】説なんてものを思い浮かばせてミスリードさせる”――、っていうところまで、犯人は逆算をしている――、っていう話に、なるんだけどね」

「うわっ……? 何? その、めんどくさそうな……、すこし回りくどそうな仮定……」

 と、碇賀はつっこんだ。


 そのように話していると、オッサン刑事たちが、嫌そうな顔してきて、

「とりあえず、そんな感じで、だ……。我々は、その歯科医や、周辺の捜査も進める」

「アンタらは、その、【シン屋根裏の散歩者】説ってヤツでも調べとってくれよ」

 と、嫌味のようにいう刑事たちに、

「ういっ、しゅ」

 と、碇賀は返事した。



          ******



 そのまま、少し現場を外して――

 碇賀はというと、スマートフォンを手にして、“ある人物”に電話をかけていた。

 数コールして、


「――あ~……? もすもすー? 松もっちゃん?」


 と、つながった電話に、碇賀が呼びかけた。

 すると、

『あぁ”? 『もすもす』とか、抜かしてんじゃねぇよ。うっぜぇわ』

 と、返ってきたのは、露骨に苛立ちを隠さない女の声だった。

 まるで、『うっせぇわ』とすこし似た語感の、『うっぜぇわ』である。

 それはさておき、話を進めていく。

 この声の主はというと、碇賀たちと同じく特別調査課の所属なのだが、また別の調査室で室長を務めている、松本清水子まつもと・すみこだった。

“松本室長”と、昭和の文豪の“松本清張”の語呂が似ているからだろうか――? ややグレーがかったミドルヘアに、厚い黒ぶちメガネが特徴的という、アラフォー・ビューティでもあった。


『――で? 何の用なん?』

 松本が聞いてきた。

「いやぁ……、ちょっち、さ? 調査を手伝ってほしいと思って。その……? 何だっけ? いま調べてる、例の、おクツの中が爆発してる事件」

 碇賀が、わざわざ『お口』というところを、『おクツ』と、まるで田舎の方言っぽい言い方をしてみせる。

『いや、お前たちの調査室の案件だろ? そっちでなんとかしろよ』

「そ、なんだけど、さぁ? 松もっちゃんたち、VR室使えるじゃん? それが、必要になるかもしれんくて、ねい」

 とここで、碇賀の話した中に、【VR室】とワードが出てくる。

 VR室とは、まあ簡単に説明すると、特別調査課の中にある“近未来的な電脳空間を用いた部屋的なもの”――とでも考えておいたらよろしいか、と。

 また話に戻って、

『はぁ? めんどいし。こっちも、そんな暇じゃないんよ』

 と、松本は言葉どおり、協力するのをめんどくさがりながら、

「そこを頼んますよ……。それか、じゃあ……? 松もっちゃんの旦那さんにでも頼んでよ?」

『ああ”? “もと”だよ、殺すぞ』




          (2)




 場面は変わって――

 おなじく、東京は新宿区の、神楽坂にて。

 その昔、【神楽】が奉納されたのが、この名前の由来とのことである。

 なお、その【神楽】とは、【神遊び】との意味がある。


【神楽】――


【神遊び】―― 


 その実はというと、“世界の設計者である神々”というのが、“世界の行く末なるもの”を対象として、その運命を“ギャンブルして”遊んでいるというのが、本当の意味なのだろう。

 たぶん、だが……

 量子力学に、【不確定性原理】というものがあるのが、なによりもの証拠だ。

 知らんけど――


 まあ、それはさておき、話を進めていく。

 こちらの、現実世界の東京都の【神楽坂】であるが、小路地しょうろじに入ったところに、古めかしい洋館があった。

 合同会社【神楽坂事務所】――

 中にはいること、レンガ造りの暖炉や、漆喰の天井細工のある、スタイリッシュな執務室。

 そこで、中年男の綾羅木定祐は、リクライニングの椅子を大きく倒し、うたた寝していた。

「ふん、ぁ……、ふんぁ、はぁはぁ……」

 などと、まるで情けないイキ顔みたいに、綾羅木定祐は口を開ける。

 半ば、夢うつつにも、仮想世界と現実世界の狭間はざま――

 意識は残りながらも、近未来的にスタイリッシュなレオタード姿の女の像が、脳内へと降りてくるように浮かんできた。

 そうして、その“女の像”が、近くまで来ようとした。

 その時、


 ――ぽっ、ちゃん……


 ――ぽっ、ちゃん……


 と、突然に、口に液体がしたたった。

 その温度、触感に、

「はッ!? はむ、たろッ――!?」

 と、綾羅木定祐は、反射的に飛び起きる!!

 完全に目が覚めてしまった流れで、

「うにゃ、ぴ……?」

 と、目の前を見ること――

 そこには、相方の上市理可の姿があった。

 それも、尻を少しつき出したエロい形で、リクライニング椅子に覆いかぶさっているという。

 なお、その上市理可はというと、

「……」

 と、まるで、ゴルゴ13が一点を狙い定めるような顔をしながら、何ゆえか――? イ〇ジクカンチョーなど、手にしていた。

 なおかつ、“それ”を、綾羅木定祐の口に、スポイトのように垂らしているという。


「ぴゅっ、ぴゅっ、ぴゅ~……」

 上市理可は擬音を口にしながら、スポイトのように、イ〇ジクカンチョーの先端から液を出す。

 それを見つつ、

「お、い……? 理可氏? 何で? 口に? カンチョーなんか、垂らしてんの?」

 綾羅木定祐が、引きつりそうになりながら問うも、

「カンチョーとかけまして、お口と解きます……。その、“こころ”は――!! 綾羅木師匠!!」

 などと、上市理可からの、謎の大喜利が始まる――!!

「はぁ、」

 ポカンとして相槌する綾羅木定祐に、

「結論ッ――!! どちらも、【漏らす】のを、我慢することッ!! 【漏らす】ことが、快感にありますッ!!」

 と、上市理可は、ビシィッ――!! と決めるように答えてみせる。


「う、わぁ……」

 ドン引きの顔をする綾羅木定祐に、上市理可は続けて、

「人間、秘密や黒いものかかえると、“漏らし”たくなるじゃない? 綾羅木氏? その、ギリギリ秘密を漏らしそうな状況で、我慢する……、もしくは、言っちゃいけない状況で、秘密を暴露して、めちゃくちゃにしたくなる――。そう、口ってのは、お尻の穴と同じで、“スリリングな器官”だと思うの……。ウンチと同じように、漏らしちゃいけない思考や深層心理を、我慢するのが――」

「やめなさい!! やめなさい!! よい子が、浣腸プレーなんてパワーワード覚えちゃうじゃない、かッ!!」

「あっ? そっかぁ……。あぶない、あぶない……、教育的に、よくない絵面だったし……、安全な液体とはいえ、よい子がマネして口から入れちゃう可能性があるな、これ」

「いやッ!! よい子はそもそも!! 人にカンチョーを向けたりなんか、しまッツ、せんッ!!」

 綾羅木定祐は上市理可を、ピ、ィンッ――!! と指さし、憤怒してみせた。



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