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シン屋根裏の散歩者  作者: 石田ヨネ
第一章 発端、天井の穴
2/31

2 カンチョーとかけまして、お口と解きます

 また、今度は、碇賀元がふたりに聞く。

「ほんで? その仮説だと、まあ……、遠隔でガイシャを爆殺できるかもしれねいけど、さ? 天井に穴を開けたのは、どやってなん?」

「「は、にゃ……」」

「まあ、ついでに言やぁ、天井に開けるのは何で――? ――って、話になっけど」

 ここで、賽賀忍が間に入って、

「例の、『シン・屋根裏の散歩者』の仕業に見せる工作、とかかしら?」 

「はぁ、」

「まあ、その歯科医が犯人と仮定して……、警察や私たちが、『シン・屋根裏の散歩者説』をミスリードするまで逆算をしてる――って、話になるんだけど」

「……」

 と、碇賀元は無言で、「それも、そやね」と、ジェスチャーをしてみせた。


 そうしていると、オッサン刑事たちが嫌そうな顔してきて、

「とりあえず、そんな感じで、だ……、我々は、その歯科医や、周辺の捜査も進める」

「アンタらは、その、シン・屋根裏の散歩者説ってヤツでも調べとってくれよ」

「ういっ、しゅ」

 と、碇賀は返事した。


          ***


 そのまま、少し現場を外して。

 碇賀元はスマホを手にして、“ある人物”に、電話をかけていた。

 数コールした後、つながると、

「あ~……? もすもすー? 松もっちゃん?」

『ああ”? 『もすもす』とか抜かしてんじゃねぇよ、うっぜぇ』

 と、露骨に苛立つ女の声が返ってきた。

 声の主は、同じく特別調査課の所属だが、別の調査室の女室長こと、松本清水子まつもと・すみこだった。

 “松本室長”と、昭和の文豪の“松本清張”の語呂が似ているせいか、ややグレーがかったミドルヘアに、厚い黒ぶちメガネが特徴的なアラフォー・ビューティという。


『――で、何の用なん?』

「いやぁ、ちょっちさ? 調査を手伝ってほしいと思って――。その、何だっけ? いま調べてる、例の、おクツの中が爆発してる事件」

 碇賀が、わざわざ、『お口』というのを田舎の方言っぽい言いかたしつつ、

『いや、お前の調査室の案件だろ? そっちでなんとかしろよ』

「そなんだけどさ、松もっちゃんたち、VR室使えるじゃん? それが、必要になる、かもしれんのよ」

 と、返答した。


 VR室とは、まあ、特別調査課の中にある、“近未来的な電脳空間を用いた部屋的なナニカ”ーー、と考えておいたらよろしいかと。

『はぁ? めんどいし。こっちも、そんな暇じゃないんよ』

「そこを、頼んますよ……。それか? じゃあ? 松もっちゃんの、旦那さんにでも頼んでよ?」

『ああ”? “もと”だよ、殺すぞ』



         (2)



 場面は変わる。

 東京は、新宿区の神楽坂。

 その昔、神楽が奉納されたのが、名前の由来だという。

 なお、その神楽とは、『神遊び』との意味がある。

 世界の設計者である神々が、世界の行く末を賭けて遊んでいるという意味だろう、たぶん。

 量子力学に、不確定性原理というものがあるのが証拠だろう。

 知らんけどーー


 まあ、それはさておき、その神楽坂の小路地しょうろじに入ったところの、古そうな洋館のこと。

 ーー合同会社『神楽坂事務所』。

 レンガ造りの暖炉や、漆喰の天井細工のある、スタイリッシュな執務室にて。

 綾羅木定祐は、リクライニングの椅子を大きく倒し、うたた寝していた。

「ふん、ぁ……、ふんぁ、はぁはぁ……」

 締まりのないイキ顔のように、口が空いていた。

 半ば夢うつつと、仮想世界と現実世界のはざまのごとく、意識は残る。

 そうしている中、まるで仮想現実体験のように、近未来的にスタイリッシュなレオタード姿の女の像がうかんできた。

 そうして、女の像が、近くまで来ようとしたーー

 その時、


 ――ぽっ、ちゃん……


 ――ぽっ、ちゃん……


 突然、口にしたたった液体に、

「はむ、たろッ――!?」

 と、綾羅木定祐は、反射的に飛び起きる。

 続けざま、

「うにゅ、ぴ……?」

 と、目の前を見た。

 そこには、相方の、上市理可の姿があった。

 尻を少しほど、つき出したエロい姿勢で、リクライニング椅子に覆いかぶさっていた。

 さらに、

「……」

 と、上市理可は、ゴ〇ゴ13が一点を狙い定めるような顔で、あろうことかーー? イ〇ジクカンチョーを手にし、綾羅木定祐の口に向けていた。


「ぴゅっ、ぴゅっ、ぴゅ~……」

 上市理可は擬音を口にしつつ、スポイトのように、イ〇ジクカンチョーの先端から液を垂らす。

「おい、理可氏? 何で? 口に、カンチョーなんか、垂らしてんの?」

「カンチョーとかけまして、お口と解きます。その、こころは――! 綾羅木師匠!」

「はぁ、」

「どちらも、漏らすのを我慢すること! 漏らすことが快感にあります!」

「う、わぁ……」

 綾羅木定祐が、ドン引きの顔をしてみせる。


 だがも、上市理可は続けて、

「人間、秘密や黒いものかかえると、漏らしたくなるじゃない? 綾羅木氏? その、ギリギリ秘密を漏らしそうな状況で我慢する――、もしくは、言っちゃいけない状況で秘密を暴露してめちゃくちゃにしたくなる――。そう、口ってのは、お尻の穴と同じでスリリングな器官だと思うの。ウンチと同じように、漏らしちゃいけない思考や深層心理を、我慢するのが――」

「やめなさい、やめなさい! よい子が、浣腸プレーなんてパワーワード覚えちゃうじゃない、か!」

「あっ、そっかぁ……? あぶないあぶない、教育的によくない絵面だったし……、安全な液体とはいえ、よい子がマネして口からいれちゃう可能性があるな、これ」

「いや、よい子はそもそも、人にカンチョーを向けたりなんか、しま、せんッ!」

 綾羅木定祐は上市理可を指さし、精いっぱいの憤怒した。




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