19 もう、これだけで絶望的にダサい
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――というわけで、綾羅木定祐と上市理可のふたりは、テレビ電話にて、クソダヌキこと妖狐の神楽坂文に、これまでの調査に関して、ひととおりの事を話した。
ラブ・ホでの調査のこと。
詰め物爆弾説と、小っちゃいナニカ説。
歯科医院理事の郷田が逮捕されたことと、それから、小っちゃいナニカ説のキツツキ説のことを。
『ふむ――、まあ、それなりに興味深い説ではあるな、ゴミ芥ども』
妖狐が、意外にも感心した様子で言った。
なお、カタンコトンと揺れることから、妖狐は電車に乗っており、デッキで通話しているのが分かる。
「誰がゴミだ、このクソポンコツクソダヌキ。調子に乗るなよ」
「そうよ、文さん、貴方は私たちのドラえもんなの。自分の立場、忘れてない?」
と、ゴミ芥呼ばわりにイラっとしながらも、
「しかし、よく考えただろ、我々の仮説は。クソダヌキのお前がよう、箱根で優雅に旅しているときによう? え? 何か言うことはないんか? このクソダヌキ」
「そうよ。それに、タケノコ、ちゃんと掘ってくるんですかぁ? ドラえもん」
『はぅ、』
「『はぅ』じゃねぇよ、しゃんと答えんかい!」
『やれやれ、しつこいヤツらだな』
「しつこいにきまっとろがい。食べ物の恨みは恐ろしいぞ、このドラ焼き野郎。こちとら、〇郎系並みの濃厚さを以ってな、追求し続けるぞ。おうコラ」
「じ、じゃあ! わ、私は家系!」
と、ふたりは怨念のようにしつこく、タケノコの念を押す。
『それで、タケノコは置いておき、まだ話の続きはあるのだろ? ゴミ芥たち』
「ああ。その、小っちゃいナニカ説のキツツキ説を、どう調べるかが問題でな。何か、いい道具出せよ、このドラえもん野郎」
『まったく……、仕方ないな。貴様たちに、遠隔で妖術を使わせてやる』
と、妖具を要求する綾羅木定祐に、妖狐がそう答える。
同時に、
――ファァ、ン……
と、黒いオーラが、綾羅木定祐と上市理可のふたりに生じた。
「おい、何だね? これは? クソダヌキ」
「早く説明してよ、ドラえもん」
『まあ、そう急かすな。“これ”は、妖術の、“ヤタガラス”といってな――』
「「ヤタガラス――、とな?」」
綾羅木定祐と上市理可のふたりが、声を合わせる。
『ふむ。“葛葉”とはまた違った情報蒐集術でな、その名のとおり、カラスから情報を得る妖術だ』
「カラスから、だと?」
『ああ。それなりに頭のいい、このカラスという鳥は、様々な出来事を観察していてな、言うなれば”優秀な目撃者”でもある。ゆえに、都市に数多いるカラスの記憶を合わせれば、ときに、人間の監視網を遥かに凌駕する“目”となることもできよう』
「はぁ、」
上市理可が相槌し、
「まあ、そいつは分かったが、具体的に、どうするのだ? カラスから情報を得るってのは」
と、綾羅木定祐が聞く。
『ふむ。その妖術を用いるとな、まず、数多といったように、多くのカラスが集まってきてな……、連中の頭にある記憶だったり、情報などを伝えてくれるのだ』
「ほう。まあ、カラスが集まってくるというのが難点だが、悪くはないかな? 理可氏」
「そうだね、綾羅木氏」
と、ふたりは話しつつ、
「それで、分かったから、さっさとそのヤタガラスとやらを発動してくれよ。ドラ焼き野郎」
「そうよ、早くしよ、ドラえもん」
と、ふたりは急かすも
「――む? その妖術の発動だが、遠隔で、私の妖力だけでは発動はできないぞ」
「「は、いぃ?」」
と、思わぬ妖狐の答えに、二人は疑問の声を合わせた。
「え? それって、どゆこと? ドラえもん」
「そうだ、妖力だけでは発動できないとは、どういうことだ? このクソダヌキ」
『まあ、聞くのだ。その、ヤタガラスの発動には、ちょっとした“前動作”が必要でな。“それ”を、今そこにいる貴様たちゴミカスたちが行う必要があってな』
「「前動作だって?」」
『ああ。この、チュートリアルの動画を視るのだ』
と、妖狐がいうと、
≪てーててって、ててててー♪ 妖術、ヤタガラスの使い方♪≫
などと、唐突に、ずんだもん風の音声が流れる。
≪まず、ふたりで、二メートルほどの距離をとって並びます♪≫
の音声とともに、ひょっとこ顔のスリーディモデル二体と、説明役のガイドの女の姿が表示される。
「「は? ナニ、コレ?」」
と、ふたりがポカンとするが、動画は進んで、
≪次に、トコトコトコとステップを刻んで、動画のポーズをキメます♪ その際、「ヤー、ター、ガァー、ラァー、スゥー……」と、戦隊モノのように、妖術名を叫ぶこともポイントです♪≫
と、説明とともにに、チュートリアルのモデルたちが、まるで、某ドラゴン〇ールの“フュージ〇ン”のごとく――、トコトコ動きながら、ポーズをキメていく。
「「いや、もう、これだけで絶望的にダサいのだが……」」
唖然とするふたりに、
≪そして、最後に動画のポーズをふたりでキメ、ます!≫
と、動画の最後は、まるで某お笑いコンビの『命』のポーズのごとく――、カラスのポーズをキメていた。
「……」
「……」
と、無言になるふたりに、
『見てのとおりだ……、その、前動作をやる必要があるのだ』
「は? ふざけんなよ、クソドラ焼き野郎。こんなダッサいポーズできると思ってんのか? もう、死んじゃえよ? お前?」
「そうよ、ふざけてんの? ドラえもん? いっぺん、死んでみる?」
『まあ、そういうことだ。とりあえず、それで頑張ってみるのだ――』
と、ふたりは抗議するも、妖狐は言い残して、
――プッツ……、プー、プー……
と、電話を切った。
「あのクソダヌキ、帰ってきたら殺す」
「そうだね。自分の立場、分からせる必要があるね。あのドラえもん野郎」
と、綾羅木定祐と上市理可のふたりは、ただ苛立つより他なかった。
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