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【シン屋根裏の散歩者】  作者: 石田ヨネ
第四章 急展開、頭の悪い鳥

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19 もう、これだけで絶望的にダサい


          ***


 ――というわけで、綾羅木定祐と上市理可のふたりは、テレビ電話にて、クソダヌキこと妖狐の神楽坂文に、これまでの調査に関して、ひととおりの事を話した。

 ラブ・ホでの調査のこと。

 詰め物爆弾説と、小っちゃいナニカ説。

 歯科医院理事の郷田が逮捕されたことと、それから、小っちゃいナニカ説のキツツキ説のことを。

『ふむ――、まあ、それなりに興味深い説ではあるな、ゴミ芥ども』

 妖狐が、意外にも感心した様子で言った。

 なお、カタンコトンと揺れることから、妖狐は電車に乗っており、デッキで通話しているのが分かる。

「誰がゴミだ、このクソポンコツクソダヌキ。調子に乗るなよ」

「そうよ、文さん、貴方は私たちのドラえもんなの。自分の立場、忘れてない?」

 と、ゴミ芥呼ばわりにイラっとしながらも、

「しかし、よく考えただろ、我々の仮説は。クソダヌキのお前がよう、箱根で優雅に旅しているときによう? え? 何か言うことはないんか? このクソダヌキ」

「そうよ。それに、タケノコ、ちゃんと掘ってくるんですかぁ? ドラえもん」

『はぅ、』

「『はぅ』じゃねぇよ、しゃんと答えんかい!」

『やれやれ、しつこいヤツらだな』

「しつこいにきまっとろがい。食べ物の恨みは恐ろしいぞ、このドラ焼き野郎。こちとら、〇郎系並みの濃厚さを以ってな、追求し続けるぞ。おうコラ」

「じ、じゃあ! わ、私は家系!」

 と、ふたりは怨念のようにしつこく、タケノコの念を押す。

『それで、タケノコは置いておき、まだ話の続きはあるのだろ? ゴミ芥たち』

「ああ。その、小っちゃいナニカ説のキツツキ説を、どう調べるかが問題でな。何か、いい道具出せよ、このドラえもん野郎」

『まったく……、仕方ないな。貴様たちに、遠隔で妖術を使わせてやる』

 と、妖具を要求する綾羅木定祐に、妖狐がそう答える。

 同時に、


 ――ファァ、ン……


 と、黒いオーラが、綾羅木定祐と上市理可のふたりに生じた。

「おい、何だね? これは? クソダヌキ」

「早く説明してよ、ドラえもん」

『まあ、そう急かすな。“これ”は、妖術の、“ヤタガラス”といってな――』

「「ヤタガラス――、とな?」」

 綾羅木定祐と上市理可のふたりが、声を合わせる。

『ふむ。“葛葉”とはまた違った情報蒐集術でな、その名のとおり、カラスから情報を得る妖術だ』

「カラスから、だと?」

『ああ。それなりに頭のいい、このカラスという鳥は、様々な出来事を観察していてな、言うなれば”優秀な目撃者”でもある。ゆえに、都市に数多いるカラスの記憶を合わせれば、ときに、人間の監視網を遥かに凌駕する“目”となることもできよう』

「はぁ、」

 上市理可が相槌し、

「まあ、そいつは分かったが、具体的に、どうするのだ? カラスから情報を得るってのは」

 と、綾羅木定祐が聞く。

『ふむ。その妖術を用いるとな、まず、数多といったように、多くのカラスが集まってきてな……、連中の頭にある記憶だったり、情報などを伝えてくれるのだ』

「ほう。まあ、カラスが集まってくるというのが難点だが、悪くはないかな? 理可氏」

「そうだね、綾羅木氏」

 と、ふたりは話しつつ、

「それで、分かったから、さっさとそのヤタガラスとやらを発動してくれよ。ドラ焼き野郎」

「そうよ、早くしよ、ドラえもん」

 と、ふたりは急かすも


「――む? その妖術の発動だが、遠隔で、私の妖力だけでは発動はできないぞ」


「「は、いぃ?」」

 と、思わぬ妖狐の答えに、二人は疑問の声を合わせた。

「え? それって、どゆこと? ドラえもん」

「そうだ、妖力だけでは発動できないとは、どういうことだ? このクソダヌキ」

『まあ、聞くのだ。その、ヤタガラスの発動には、ちょっとした“前動作”が必要でな。“それ”を、今そこにいる貴様たちゴミカスたちが行う必要があってな』

「「前動作だって?」」

『ああ。この、チュートリアルの動画を視るのだ』

 と、妖狐がいうと、

≪てーててって、ててててー♪ 妖術、ヤタガラスの使い方♪≫

 などと、唐突に、ずんだもん風の音声が流れる。

≪まず、ふたりで、二メートルほどの距離をとって並びます♪≫

 の音声とともに、ひょっとこ顔のスリーディモデル二体と、説明役のガイドの女の姿が表示される。

「「は? ナニ、コレ?」」

 と、ふたりがポカンとするが、動画は進んで、

≪次に、トコトコトコとステップを刻んで、動画のポーズをキメます♪ その際、「ヤー、ター、ガァー、ラァー、スゥー……」と、戦隊モノのように、妖術名を叫ぶこともポイントです♪≫

 と、説明とともにに、チュートリアルのモデルたちが、まるで、某ドラゴン〇ールの“フュージ〇ン”のごとく――、トコトコ動きながら、ポーズをキメていく。

「「いや、もう、これだけで絶望的にダサいのだが……」」

 唖然とするふたりに、

≪そして、最後に動画のポーズをふたりでキメ、ます!≫

 と、動画の最後は、まるで某お笑いコンビの『命』のポーズのごとく――、カラスのポーズをキメていた。

「……」

「……」

 と、無言になるふたりに、

『見てのとおりだ……、その、前動作をやる必要があるのだ』

「は? ふざけんなよ、クソドラ焼き野郎。こんなダッサいポーズできると思ってんのか? もう、死んじゃえよ? お前?」 

「そうよ、ふざけてんの? ドラえもん? いっぺん、死んでみる?」

『まあ、そういうことだ。とりあえず、それで頑張ってみるのだ――』

 と、ふたりは抗議するも、妖狐は言い残して、


 ――プッツ……、プー、プー……


 と、電話を切った。

「あのクソダヌキ、帰ってきたら殺す」

「そうだね。自分の立場、分からせる必要があるね。あのドラえもん野郎」

 と、綾羅木定祐と上市理可のふたりは、ただ苛立つより他なかった。



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